わたしは価値を創る

大阪在住の経営コンサルタントのブログです。

ユーチューブでさえ時代に遅れる?動画配信ビジネスの勃興に危機感を募らせるグーグル

youyubeさえ時代に遅れる


(2021年6月10日メルマガより)



最近、ユーチューブが、やたら有料会員を勧誘するような動きに出ていて、これが、自社のビジネスモデルを否定しているのではないかという記事がありましたので、紹介します。


ユーチューブプレミアムとは、月1000円超の有料サービスです。会員になれば、動画に掲載される広告がなくなるそうです。

確かに、ユーチューブを観ているとその広告の多さに辟易します。動画が始まる前や動画の途中、容赦なく広告が挟まれます。

字幕が入る画面下あたりにも、広告が表示されて迷惑極まりない。

何とかならんのかー!と誰もが思うでしょうから、お金さえ払えば広告を消すよというサービスは、的を得ています。

それにしても月1000円超というのは考えどころです。ユーチューブをやたら観る人は価値があるでしょうが、それほどでもない人にとっては、高いと感じるはずです。

1000円超といえば、ネットフリックスの最低月会費より高い。アマゾンプレミアムの倍以上です。

ネットフリックスやアマゾンプライムならば、プロがコストをかけて作った映画やアニメを膨大に鑑賞することができます。

が、ユーチューブはもともと素人が退屈しのぎに作った動画を観るところじゃないのか?そんなものに月1000円もかけてられるかーと思う人も多いでしょうね。

しかし、今や、ユーチューブもプロやセミプロが動画を投稿する場所となっています。ユーチューバーなんて、それを生業にしている人がいるぐらいです。

おかげで、素人が適当な動画を上げたら、コメント欄にボロクソ書かれたりして、びっくり仰天してしまう場合もあるようです。もはや素人の遊び場ではないのですかね。

もしかすると、有料サービスを作ることで「広告ばっかり入れやがってウザイんじゃー」というユーザーの気持ちを「無料なんだから仕方ないな」と転換させようという意図があるのかもしれません。


広告収益モデルからの脱却を目指すユーチューブ


ユーチューブを運営するアルファベット(旧グーグル)は、検索エンジンを梃子に、広告収入モデルを突き詰めて、今の地位を築き上げた企業です。

グーグルといえば広告収入モデル。広告収入モデルといえばグーグルです。

そんなグーグルが、2006年に買収したのがユーチューブです。グーグルは、ユーチューブにも高度な検索機能と広告配信機能を埋め込み、現在の高収益企業に育て上げました。

上の記事によると、2021年はユーチューブ単体で3兆円超の収益を見込んでおり、ネットフリックスを凌ぐ勢いです。

そんなユーチューブが、今さら、広告収入というビジネスモデルを捨ててまで、新たな収益モデルに移行しようとするでしょうか。

ただ、最近のユーチューブ側の、有料会員推しは、かなり本気度が高いと思うのも事実です。

確かに動画に挟まれる広告はウザイ。ウザイ。ウザイ。いいところで挟まれる広告にはほんとにガックリきます。

広告主も、そのウザさを理解すると、ユーチューブに広告を入れようなんて、思わなくなるかもしれない。

ユーチューブとすれば、いつまでも広告収益モデルを続けていたら、将来は危ういと判断したのかもしれません。

そのための壮大な試行なのだとすれば、アルファベットの自己変革性は、大したものだと思います。


動画配信ビジネス暫定1位のネットフリックス


ネットフリックスは、有料会員2億人以上を誇る世界最大の動画配信サービスです。

コロナ禍の巣ごもり需要が追い風となり、ここ最近、さらに会員数を増やしてきました。

直近の決算も絶好調です。売上、利益とも過去最高。ただし、会員数の増加ペースは鈍っており、株価が低迷しています。

業績過去最高なのに株価が低迷するというのも厳しい話です。が、それだけ、動画配信サービスの競争は激しく、トップ企業といえども気が抜けない状況が続いています。

なにしろ、動画配信サービスは、差別化しにくいビジネスです。

映画やドラマ作品を買ってきて、配信する能力さえあれば、誰でもできます。

だからこそ、ネットフリックスは世界に先行展開して、シェアトップの地位を盤石なものにしようと走り続けています。

ただ、ここでも立ち塞がるのは、破壊者アマゾンです。これまで、数々の業界を破壊してきたアマゾンが、動画配信サービスにおいても、低価格攻勢をかけて、2億人近い会員数を獲得、ネットフリックスに迫っています。

さらに巨大コンテンツ企業のディズニーも、ディズニー+という動画配信サービスを開始し、わずか1年で、1億人以上の会員を獲得しました。

ネットフリックスとすれば、全然安泰なトップではありません。

そこで、今取り組んでいるのは、他では観られないオリジナル作品を増やして、作品で差別化を図ることです。世界中の映像制作者に投資して、オリジナル作品を猛スピードで増やしています。

だから、儲けたお金は、作品への投資に回すという自転車操業状態が続いており、しばらく抜け出せそうにありません。


アマゾンは大型買収で動画コンテンツを充実させる


余裕綽々なのがアマゾンです。

このたびアマゾンが、老舗映画製作会社のMGM(メトロ・ゴールドウィン・メイヤー)を約9200億円で買収するという報道がありました。


MGMは、1920年代から活動するハリウッド黄金期を支えた映画会社の一つです。

もちろん制作した映画も膨大ですが、テレビの時代に対応できずに経営悪化、多くの作品の権利を売り払ってしまいました。

それでも、「007シリーズ」や「ロッキーシリーズ」など多くの人気作品を持っています。

アマゾンは、MGMそのものを買収し、4000本以上の映画と多くのドラマ作品を手中にします。

これら作品は、アマゾンプライムビデオのラインナップに加えられることとなるようです。

約9200億円とは、スケールの大きい買収ですが、時価総額177兆円を超えているアマゾンからすれば、何でもない買い物なのかもしれません。

そもそもアマゾンプライムビデオとは、有料会員アマゾンプライムのサービスの一つという位置づけです。

ネット通販を主業にするアマゾンは、一回一回の取引収入では経営が安定しないと考え、継続的な収入確保の手段を模索してきました。

これは創業当初からの課題です。創業者のジェフ・ベゾスは、コストコの会員制度を参考にして、アマゾンプライム制度を発想したといわれています。

ちなみに、日本では年間5000円程度払えば会員になれます。アメリカでは1万円以上するそうですが。

最初のサービスは、プライム会員ならいつでも送料が無料になるというものでした。

が、アマゾンは、サービスを次々と付加し続け、お急ぎ配送便無料、衣服の試着無料、動画見放題、音楽聞き放題、電子書籍読み放題、写真用5ギガストレージ無料など、てんこ盛り状態にしていきました。

とくにアマゾンプライムビデオは、15000本以上の映画やアニメ、ドラマが見放題となる本格的なサービスです。

アマゾンオリジナルの作品もありますし、追加料金を払えば、他社の作品も視聴できるオプションもついています。

そこにMGMのコンテンツが加わるのですから、ライトな映画ファンなら、アマゾンプライムビデオで充分に満足できます。

サービスの一環という位置づけなのに、この充実度は何それ?とライバル会社は言いたくなるでしょうな。

ただ、アマゾンは、MGMが持つ映画館とのつながりも利用して、動画配信と劇場公開を併合したビジネス展開を考えているといわれています。

これまで何度も業界をかき回してきたアマゾンですから、映画産業にも巨大な隕石を落とすのではないかと期待されます。


成長初期を迎え動きが激しくなる動画配信ビジネス


ネットフリックス、アマゾンプライム、ディズニー+が、世界の動画配信トップ3です。

この他にも、Hulu、HBOマックス、アップルTV、パラマウント+などがあります。

最近では、HBOマックスを傘下に持つ老舗映画会社のワーナーブラザーズが、ケーブルテレビのディスカバリーチャンネルとの統合を発表し、話題となりましたが、こちらも動画配信ビジネス拡大展開を睨んだ動きです。

テレビからネット、テレビからスマホという流れに伴い、動画配信ビジネスは、拡大していくと考えられます。

とくに有料ケーブルテレビが発達しているアメリカにおいては、安価な動画配信サービスに切り替える流れが勢いを増しています。

無料の地上波テレビが普及している日本では、様相が違うという意見もありましたが、動画配信サービスの会員数は順調に増加拡大しているようで、その流れは変わりません。


動画配信ビジネスは、黎明期から成長期にかかったあたりであり、勝負はこれからという産業です。

暫定トップのネットフリックスとすれば、このままトップを突っ走ることが最大の戦略となります。年間1兆8000億円をコンテンツに投資し続け、会員数増加に邁進していくはずです。

ディズニーグループは、映画製作もグッズ販売もテーマパーク運営もできる総合力が強みです。昨年は、マーベルスタジオ(「アベンジャーズ」)やルーカスフィルム(「スターウォーズ」)も傘下におさめ、コンテンツの充実ぶりはさすがです。作品の毛色に偏りがあるので、そこが強みでもあり、弱みです。動画配信としては2番手、3番手狙いの戦略だと思います。


何をするかわからないと他企業に恐れられているアマゾンも、いまのところ、天下を獲ろうという意欲はないようです。

アマゾンは、ファイヤーTVスティックというテレビに装着することでネット視聴が簡単にできる装置を販売していますが、そのチャンネルボタンには、ネットフリックスも、アマゾンプライムも、ディズニー+も、Huluも刻印されており、自社だけを前面に推し進めようとはしていません。

消費者の利便性を追求することを最大のミッションとするアマゾンらしい振る舞いですが、アマゾンとすれば、動画配信ビジネスは、誰かがひとり勝ちするのではなく、多くの選択肢が残るという見方をしているのでしょう。

これも不本意に儲かりすぎて困っているアマゾンの余裕のなせる業かもしれません。

暫定1位のネットフリックスは、とりあえずトップを走らされているようなもので、苦しい闘いが続くでしょうが、走り続けるしかありませんな。



GAFAでさえ安泰ではない グーグルの危機感


こうしたプロの映像作品を一方向に配信するメディアと、誰でも投稿できる動画メディアのユーチューブを一緒にすることはできません。

ユーチューブには、世界中の素人、プロ、セミプロたちが、思い思いの動画を投稿しています。

その膨大な動画が再生されても動くようなシステムを維持し続けることが、ユーチューブ運営側が日々していることです。

投稿そのものにはコストはかかりません。

無料で集めた動画を利用して、広告収入を稼ぎ、その一部を投稿者に還元するという仕組みなので、収益管理しやすいビジネスモデルです。

先も言いましたが、これが、いわゆる広告収入モデルです。

アルファベット(グーグル)の代名詞ともなっている広告収入モデルをいったん否定してまで、広告掲載なしの有料会員を募り、会費収入モデルへの移行しようというのだから、企業としてはコペルニクス的転換です。

ただし、いまのところ、どちらに軸足を置くのか、決まっていないのでしょう。当面は、2本立てで展開し、どちらに振っても対応できるようにしておく構えのようです。

動画配信ビジネスと違って、投稿動画メディアという分野では、ユーチューブはひとり勝ち状態です。ダントツのシェアトップを誇るユーチューブの優位性は揺るぎそうにありません。

だからこそ、ビジネスモデルの転換を試行するユーチューブの革新性が際立つというものです。


ただ、最近のGAFAの動きをみていると、アルファベット(グーグル)自身、広告収入モデル1本やりの状況に、危機感を募らせているのかもしれません。

他のGAFA、アマゾンやアップルは、継続収入を得るビジネスモデル構築に成功し、抜群の収益性を誇ります。(アマゾンは、儲けない、という方針ですが、それでも勝手に儲かっています)

GAFAから漏れたマイクロソフトも、現経営者になってからは、継続収入モデルに移行し、超優良企業として復活しています。


いっぽう、同じ広告収入モデルのフェイスブックはいまいちです。業績も株価もぱっとしません。


思えば、動画配信ビジネスの殆どは会費収入モデルです。この市場が大きくなった時、広告収入モデルを続けていたら、ユーチューブでさえ安泰だと言っていられなくなるかもしれない。そう考えるグーグルの危機感は、正しいものだと考えます。

ネット時代の初戦を制したグーグルといえども、市場変化のスピードについていくのは、いかに難しいことなのかと、驚かずにはいられません。

ヤマダデンキが中古販売店を拡大 ビジネスモデルを試行中

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ヤマダデンキが、中古家電店を拡大するというニュースです。

ヤマダデンキは、2021年3月現在675店。中古家電店を100店舗にするというのだから、相当の店舗数です。

業界トップの家電量販店が、中古家電品に注力するというのは、インパクトがあります。

大量販売大量消費の時代から抜け切れていなかった業界も、ようやく潮目を変える時期にきたということでしょう。

ビジネスモデルの転換を試行


もっとも、ヤマダデンキといえば、新品大量販売モデルの最右翼にいた企業です。

メーカーからのキックバックをあてにして、大量販売するという手法で散々儲けておきながら、今さら「家電を回収・再生、再資源化し循環型社会をつくるのは重要な使命だ」とはどの口が言うてるんや!と各メーカーは言いたいでしょうが、それぐらい厚顔でないと、トップ企業は務まりませんな。

私は、この動きは、家電業界全体の方向性を変えるものとして評価したいと考えます。


ヤマダデンキも、成長時代モデルからの脱却を目指し、試行錯誤を続けています。大塚家具を買収したりして、迷走気味のところもありますが、試行するのはいいことです。今回の取り組みもその一環でしょう。

山田会長の剛腕でやり切っていただきたいと思います。






アマゾンは、サブスクが機能して、利益が上がり続けてしまう

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そういわれれば、そうだな、と思うタイトルの記事です。

確かに、アマゾンプライムビデオでは、比較的人気の新作映画が無料で観れて、古いコアな映画を探すと、さらに課金しなければならないようになっています。

これ、ツタヤでレンタルビデオを借りるのと逆やん、という話ですな。

全く違うビジネス


ただ、両者は、動画コンテンツを扱っていることが同じというだけで、まったく違うビジネスです。

アマゾンプライムビデオは、アマゾンプライムのサービスの一つという位置づけです。

アマゾンプライムというのは、アマゾンで商品を購入する際に、送料が無料となるサービスです。年間、5000円程度。アメリカでは1万円以上するそうです。

ただ、送料無料だけでは、心もとないということで、映画や、音楽や、オーディオブックや、電子書籍が無料で利用できるサービスが付加されています。

特に動画コンテンツの充実度は群を抜いています。1万5千本以上の動画が常時、無料で配信されています。

これは、動画のみで勝負しているネットフリックスよりも多い本数だといわれています。ちなみにネットフリックスは月1000円程度で会員になることができます。


アマゾンプライムは会員ビジネス、ツタヤはレンタルビジネス


要するに、アマゾンプライムは、会員ビジネスです。

アマゾンの創業者、ジェフ・ベゾスは、コストコの「運営コストは会費で賄い、実際の商品は原価で販売する」というビジネスモデルを参考にしたそうで、事業の継続性をそこに託しました。

だから、基本無料で会員になれるツタヤとは全く別物です。

アマゾンプライムは、会員になってもらうのが第一目標になりますから、できるだけ魅力的な新作映画を観られるようにしておくことは、当然の施策となります。

これに対してツタヤは、1本1本、レンタルしてもらうビジネスですから、皆が観たいと思う人気商品が高い価格設定になるのは必然です。

市場独占しているうちは、ツタヤを利用するしかなかったのですが、動画配信が主流になった今は、費用といい、利便性といい、劣るサービスになってしまって、存亡の危機に瀕しています。

これはツタヤのビジネスモデルが悪いというわけではなく、あくまでも、市場環境が変わった結果です。

ツタヤも、レンタルビデオビジネスには見切りをつけているようですから、いいんじゃないでしょうか。

会員数が増加するごとに利益が上がり続ける


それにしても、アマゾンさん、年間5000円程度で大盤振る舞いしすぎですな。

1万5千本の動画って、普通の人が見切れるものではありません。

もちろん、動画の配信にもコストがかかっています。映画会社など権利者に費用を支払わなければなりません。

それでも、利益は全て消費者に還元するというのがアマゾンの創業以来の方針ですから、大盤振る舞いは止まりません。

ただ、世の中にある映画やアニメ作品は、1万5千程度ではありません。コアな映画ファンは、もっとレアな作品を求めるでしょう。

そんなコアなファンに逃げられたら困りますから、アマゾン側は、追加課金をすることで、観ることができるようにしています。

1万5千も観れるのだからそれで満足しとけよ、と思いますが、観たいものは仕方がない。実をいうと、私も何度か課金してレアな作品を観てしまいました。術中にはまっています。

そういう人は何人もいるようで、2021年度のアマゾンプライム会費を含めたサブスクリプション関連の売上高は、252億ドル(約2兆7千億円)

現在、アマゾンプライム会員は約2億人とか。ざっと計算しても、1兆円近くは、追加課金の金額となります。会員数が増えることで、追加サービスの利用も多くなるというわけですよ。

ついでにいいますが、アマゾン全体の2021年の売上高は3860億ドル(約41兆円)、純利益は213億ドル(約2兆3千億円)

利益は出さないと言いながら、2兆円以上出すとは、話が違いますな。




電子漫画グローバル化元年 日本の漫画は韓国勢に敗れてしまうのか?

電子漫画グローバル化


(2021年5月26日メルマガより)



電子図書館というサービスをご存知でしょうか。

読んで字の如し。図書館で、電子書籍を貸し出すサービスです。

電子書籍ですから、パソコンやスマホ上で、貸し出しの手続きを受けられます。返却もボタンを押すだけです。

いや、返却を忘れていても、返却期限を過ぎれば自動で閲覧できなくなってしまいます。

何と、合理的なサービスでしょうか。

電子図書館は、欧米で急激に規模を拡大しており、近々、紙の書籍を抜く勢いだということです。

ただ電子書籍そのものがまだ普及しきれていない日本では、例によって、電子図書館の普及も大いに遅れています。

日本は、出版社を中心とした出版流通の仕組みの完成度が高すぎたのでしょうね。完成度が高いほど、イノベーションが遅れてしまうという「イノベーションのジレンマ」に、みごとはまってしまった形です。


もっとも、電子書籍に拒否感のある層の存在も、普及を遅らせる要因の一つになっているのでしょう。

私のことですな。

紙の本でなければ、読んだ気がしない、頭に入ってこない、というのは、時代遅れもはなはだしい。

早く時代に追いつき、社会発展の妨げにならないように気を付けなければなりません。


大手出版社は業績回復


出版不況がいわれて久しいですが、事実、紙媒体の書籍や雑誌は、ピーク時の半分以下に減少しています。

(1996年の2兆6564億円に対し、2019年は1兆2360億円)

かといって、その分を埋めるほど電子書籍が増えているわけではありませんから、業界全体の業績は低迷してきました。

ところが、ごく最近については、大手出版社は健闘しています。

総合出版といわれる講談社、集英社ともに増収増益。小学館も売上高こそ横ばいですが、増益です。(2019年度)

講談社:売上高1358億円、営業利益89億円。

集英社:売上高1333億円、純利益98億円。

小学館:売上高977億円、経常利益55億円。

KADOKAWAは、全体の売上高は減らしていますが、出版事業の売上高1156億円は増収です。

業界全体でも売上高は、1兆5432億円。これは、前年比0.2%増。微増ではありますが、長年の減収に歯止めがかかったということは、ご同慶の至りです。

ちなみに、業界規模1.5兆円というのは、漁業・水産業や、工作機械産業と同じぐらいの大きさです。

※会社四季報 業界地図2021年版を参考にしました。
「会社四季報」業界地図 2021年版
東洋経済新報社
2020-08-28




電子書籍が、紙の落ち込みをカバー


出版業界が好調である要因は、電子出版の規模拡大です。

電子出版の売上高は、3072億円、全体の20%程度ですが、紙媒体が前年比4.3%減だったのに対して、電子出版は24%増。

ついに、電子出版の伸びが、紙の縮小幅をカバーできるレベルになってきたわけですな。

だから、いま大手出版社が取り組んでいるのは、電子出版の収益をいかに大きくするかです。

なにしろ、電子出版には、印刷コストも配送コストもかかりません。返品率も極小です。それなのに、紙の本とそれほど変わらない価格設定なので、儲かるはずです。

しかし、それだけではつまらない。出版社側は、さらなる利益の増大を図っています。

電子書籍の8割は、漫画だそうです。

テキストよりも、漫画の方が、電子出版に向いていたのですね。

それはともかく、漫画作品は、アニメ化やゲーム化、グッズ販売などに結び付けやすいので、これを放っておく手はありません。

すなわち、いま大手出版社が取り組んでいるのは、ヒットした漫画作品をアニメやゲーム、グッズに展開することにより、権利収入を得るビジネスです。

コンテンツを押さえるものは強い。権利収入というビジネスモデルに踏み出した出版社は、まさに金鉱脈を見つけた気持ちでしょう。


漫画のグローバル化を担う韓国勢


まさに順風満帆。出版業界の未来は、漫画とともに明るく開けている。。と思いたいものですが、そうでもないのがビジネスの難しさです。

漫画の電子出版にいち早く目を付けたのが、韓国の企業です。実は、日本勢は、かなり遅れています。

LINEとカカオ、チャットアプリを手掛ける2つの企業が、ウェブ漫画の覇権を争っています。

LINEマンガを展開するネイバーは、カナダの同業企業を約650億円で買収。

ピッコマを展開するカカオも、アメリカの同種企業を数百億円で買収する意向だということ。動くお金のケタが違います。


LINEマンガやピッコマは、日本にも進出し、2018年の売上ランキングでは、国内1位と2位です。

もっとも日本国内ではまだ日本勢にも逆転の可能性が残されています。なにしろ、漫画は日本のお家芸です。

ところが、世界レベルでみると、韓国勢の勢いはすさまじく「もう勝負ついたんじゃない?」とみる向きもあるほどです。

というのも、韓国のウェブ漫画アプリには、世界中の才能が集まり、作品を提供する流れが出てきています。

いつの世も、どの業界も、量は質を凌駕するものです。

作品数が多ければ多いほど、傑作が生まれる可能性も高くなるというものです。

正直に言って、画は下手な人が多い。大ヒットした「梨泰院クラス」(日本では「六本木クラス」に改名)なんて、素人レベルですよ。はっきり言って。

それでも話が面白ければいい、というのが、ウェブ漫画というメディアです。

さらに言うと、作家→ウェブ漫画アプリ→読者、という流れがシンプルで、日本の業界ほど既得権益を主張する利害関係者がいないので、作家により多くの報酬を払うことが可能です。

手軽で、単純で、報酬が高いとなれば、それは世界から才能が集まるはずですよ。


日本の漫画が電子化に遅れた理由


韓国勢のウェブ漫画アプリは、スマホで読むことに順応した結果、縦にスクロールして読むように作られています。

これをウェブトーン形式といいます。

ウェブトーン形式においては、縦読みしやすいような作画をしなければなりません。

これに対して、日本の漫画は、雑誌で読むように作られています。複雑なコマ割りで強弱をつける方法論は、雑誌の見開きで読むことを前提に作られたものです。(一説には、手塚治虫が発明した技術だとか)

日本の漫画をそのままウェブ漫画にすると、読みにくいものになってしまいます。

ウェブトーンは、上から下に流して読むものですから、複雑なコマ割りは邪魔になってしまいます。コマの大きさで迫力を演出することなどできません。

見開きページなどもちろん使えません。

強弱やメリハリを出すには、上下コマの余白の大きさを調整するしかありません。

それに、台詞も最小限にしなければなりません。スマホの小さな画面では、細かい台詞が多いとそれだけで負担になってしまうからです。

いわば、日本の漫画家が得意とする一つの技術が封じられた形ですから、雑誌連載を持っているようなプロは、そんな紙芝居みたいな漫画など書いてられんと思うでしょう。

ただし、コマ割り技術のない者にとっては、チャンスです。

ウェブトーン形式にも、それなりの技術や手法が必要です。

スクロールを前提とした場合の強弱の付け方、インパクトの出し方。台詞に頼らないストーリー運び。単調さを感じさせない山場の作り方。

ウェブトーン形式にいちはやく対応することで、人気作家になるチャンスが広がります。

なにしろ、ウェブ漫画の可能性はこれからです。大御所がでんと座って睨みをきかしているわけではありません。型にはめようとする編集者も少ないでしょう。

これから伸びる市場ですから、いまなら自分が第一人者になれるかもしれませんよ。

その広がりはグローバルです。しかも、収益配分が多いとなれば、こんなにおいしい市場はないと思います。

実際、日本の漫画家には勝てないと思っていた海外の人たちが、ここなら勝てるかも知れないと、ウェブ漫画に参入しているわけですが。


まだ逆転の目は充分にある


日本勢とすれば、危機感を持たなければなりませんよ。

しかし、いまのところ、大手出版社は、紙の漫画をそのまま電子化することにとどまっており、韓国勢の二歩も三歩も後ろを歩いている状態です。

先ほども言いましたが、量は質を凌駕します。

ウェブ漫画の需要が増えれば増えるほど、韓国勢の持つプラットフォームに作品が集まります。すると、その世界での手塚治虫や鳥山明が現れて、漫画文化の主導権を奪ってしまうかもしれません。

世界をリードしてきたはずの日本の漫画文化が、後退してしまうのは、気分的にも、ビジネス的にも、よろしくないことですよ。


なんて言いましたが、実をいうと、そこまで切羽詰まった状況でもありません。いまのところ。

漫画の市場規模は、日本国内では5000億円程度。それに比べて、世界の規模は1000億円程度だと言われています。

つまり、漫画は、未だ圧倒的に日本独自の文化であり、世界ではそこまで浸透していません。

むしろ、世界に漫画文化を広げることが課題であり、韓国勢が、ウェブ漫画を世界に広げてくれているのは、日本にとっても有難いことなのです。

いまは、漫画がスマホに順応することで、世界的になっていく端緒にあり、グローバル化元年という時期です。

とはいいながら、手をこまねいているのはまずい。ここで主導権を握っておくのは重要です。

何しろ、日本の漫画関連人材の層は厚く、世界展開においても、圧倒的な優位性があります。

いまなら、充分に、世界の漫画文化を主導する存在になることができます。


書籍の世界規模が15兆円程度だということですから、漫画の規模が1000億円というのは、いかにも小さすぎます。

グラフで見る世界の出版の現況と予想

日本を基準に考えると、4〜5兆円規模になってもおかしくありません。

そうなるとなかなかのものです。海外の新興テック企業が参入してくるでしょう。

スマホつながりで、グーグルやアップルが興味を示すかもしれませんし、アマゾンがちょっかいをかけてくるかもしれませんよ。

彼らが出てきてからでは面倒です。いまのうちに、世界戦略を描かなければなりません。

そのためにも、雑誌に特化した漫画手法は捨てて、グローバルメディアに対応した漫画を新たに育成していくことです。

ソニーあたりが、ウェブ漫画のプラットフォームを手掛けてくれると面白いのですがね。

これからの展開に期待しましょう。


小説も電子化に対応せよ


ついでに小説のことも。

小説も、紙から電子に移行する流れは変わりません。

その場合、スマホやタブレットで読むのだから、それに合わせた書き方にしていかなければなりません。

まずは縦書きをやめて、横書きに統一していくべきです。

縦書きの日本文学は、伝統として残っていくでしょうが、グローバル化のためには、また別の文学のあり方を志向すべきです。

自動翻訳の精度が上がってくると、日本語で書く小説も、一気に市場が広がります。

だから、これから小説を書く人は、翻訳ソフトに対応できる単純な文体にすべきです。単純な文体でも、ニュアンスを伝えられるように技術を磨いてください。

テキストだけで勝負しなければならないというわけではありません。

電子書籍ならば、写真や動画、音楽なども取り込むことができます。漫画を取り込むことも可能です。

そうした、コンテンツミックスを作品として創造できる才能が、これからの文学を担っていくのだと考えます。

人間に、物語を伝えたい、伝えられたいという本能がある限り、小説や漫画は生産され続けます。

ただその意匠を変えるだけですね。

量販店の未来を予想させるイオンの新店舗

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イオンが、150台のAIカメラを設置したスマートストアを開業するという記事です。こちら、埼玉の川口市です。

記事によると、今回の店舗は、AIカメラで顧客の消費行動を読み取り、店内レイアウトや陳列方法、店内広告に活かすようです。

また接客が必要な顧客の情報を店員に知らせる役割も持つようです。

これまで理論的には効果があると考えられていた情報活用の方法が、技術の進化により現実化しそうだということですな。

まだまだ自動化できる


確かに、この方法で、収益は上がりそうです。

ただ、今回の店舗は、スマートストアの第一歩ですね。

ここまでするなら、アマゾンの店舗のように、決済も自動化できそうです。レジ要員がいなくなればさらにコスト減となります。

もっと言うと、店内レイアウトを大幅に変更して、陳列も自動化すればいいのですよ。

回転寿司のようにベルトコンベアで、棚補充する仕組みを作れば、在庫管理、発注、棚出しまで自動化できるので、劇的に人件費削減となりますから。

顧客に直接つながるところに人件費をつかう


ただ量販店は、接客が必要ですから、完全無人店舗にするわけにはいきません。

催事用の複雑な陳列は、ロボットに任せるわけにはいかないでしょうから、その要員も必要です。

味気無さを払しょくするための何らかのエンタメ要素もいりますから、そのための人員も必要で、人件費がなくなることはありません。

しかし、ユーザーに直接サービスするための費用ですから、収益を上げることにつながるはずです。


そんなわけで、イオンの新店舗は、量販店の将来像を予想させるものとなりそうですね。



温暖化で複雑化する殺虫剤市場 業界トップといえども厳しい闘いに

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アース製薬川端社長のインタビューをもとにした記事です。殺虫剤業界について。勉強になります。

コロナ禍で、最高益を更新し、順風満帆かと思っていましたが、「(殺虫剤を)30年後は売っているかわからない」と発言しています。

温暖化で、蚊の活動が弱まる


素人考えで、温暖化により害虫の活動が活発化するので、殺虫剤の需要も伸びるのだろうなと思っていたのですが、そうでもないようです。

例えば、蚊は、気温が高すぎると活動しなくなるらしい。
35度を超える猛暑日が続いた18年は蚊の活動が鈍った影響で、アース製薬の18年12月期の虫ケア用品部門売上高は前期比5%減となった。

さらには、台風が増えると、蚊が吹き飛ばされて、需要が減るそうですよ。

そういうことになるとは、知りませんでした。

異業種からの参入が活発化


殺虫剤の需要も変化しています。

直接、吹き付けるタイプではなく、虫そのものを見ないで済むようなものが人気だとか。

また温暖化により、他の害虫が現れるということもあるでしょう。

つまり、新製品開発投資をしなければならないわけで、体力のあるところが有利です。

アース製薬は、業界トップ企業であり、有利な立場にあります。

が、最近、花王やシャープなど異業種大手が、独自技術の応用で、業界参入を果たしています。殺虫剤にどこまで資金投入できるかはわかりませんが、その気になれば資金は潤沢なので、脅威です。

ちなみに、2020年度の売上高を見てみると

アース製薬 1960億円

フマキラー 444億円

大日本除虫菊 325億円

花王 1兆3820億円

シャープ 2兆2712億円

となっており、規模が桁違いです。

先行した弱者だととらえなければならない


業界トップ企業の社長が、現行商品を「いつやめてもいい」的な発言をするのは、どうかと思いましたが、強い危機感の現れだととらえると納得できます。

実際、殺虫剤需要そのものは、温暖化により、多様化し、規模拡大していくでしょう。

おいしい市場には、企業が集まります。

業界トップ企業といえども、今のままだと、市場を後発大手企業の狩場とされてしまいます。

今のうちに、市場を細分化し、後発強者がきても死守できる市場を選定しておくべきです。

厳しい業界ですが、生き残るためには、必要な試練ですな。




「いきなり!ステーキ」社長の唖然とするインタビュー

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「いきなり!ステーキ」を展開するペッパーフードサービスの一瀬邦夫社長の啞然とするインタビュー記事です。

同社の業績は非常に厳しい状況です。
2020年12月期の売上高は310億円(前期675億円)、営業赤字は40億円(前期0.7億円の赤字)、さらに最終赤字は39億円(前期27億円の赤字)

業績低迷の原因は、「いきなり!ステーキ」の不振です。

最盛期には約500店舗あったのが、いまや半分近い店舗数になっています。

いきなり!ステーキが、危険な局面に?

上の↑記事では「何かよからぬことが起きるのではないか」と書いていますが、同社は祖業の「ペッパーランチ」をファンドに約85億円で売却し、なんとか債務超過を回避しました。

ちなみに一瀬社長は、「いきなり!ステーキの買い手を探したことはなかったけれど、(当時の状態では)買ってくれる人がいなかっただろうし、売りようがなかった」と発言しており、相当追い詰められた様子がうかがえます。

場合によっては、いきなり!ステーキの方を切り離すシナリオがあったのかもしれません。

「悪魔の増資」で生き延びている


しかし、現在は、MSワラントで生き延びている状態だと明かされています。

MSワラントとは、「市場よりも安い価格で新株を購入できる権利のついた予約券」のこと。

つまり株価が上がろうが、下がろうが、必ず市場よりも安い価格で購入できるので、会社がつぶれさえしなければ、購入したファンドは損をしません。

ただし、市場で株式を購入した一般株主からすると、ずるできる大口株主が存在することになり、いつ空売りを仕掛けられるかしれず、安心できません。

これでは、株価が上昇しずらい。だから、MSワラントは、通常は手を出していけない「悪魔の増資」と言われています。

そんな手段に頼らざるを得ないのだから、相当厳しい状況であることがわかります。

フランチャイズオーナーと消費者をダブルで軽視


今回のインタビューも、やけくそ気味です。

いきなり!ステーキの急激な業績悪化の原因を聞かれて、「過剰出店」と「利益優先」と正直に答えておられます。

要するに、調子がいいからと、ブレーキを掛けずに出店しまくり、さらに、薄利はキツイとこそこそ値上げをしまくったわけです。

フランチャイズオーナー軽視と、消費者軽視をダブルで行っているのだから、それは業績は悪化しますよ。

しかもそれを正直に白状しているのだから、恐れ入ります。

過剰出店については、「あのとき、私を止めてくれる人がいればよかったなと、今になって思う」って、それを言っちゃあおしめえよ、と言いたくなりますな。


フランチャイズビジネスにおいては、ちょっとヒットすると、どんどんオーナーを募集して資金を集め、あとは野となれ山となれ、といったいい加減なやり方をするところもあります。

一瀬社長は、そういう詐欺的なビジネスを志向したわけではないでしょう。が、結果は歴然としています。

今回のインタビューをみる限り、一瀬社長が力を発揮できるビジネスの規模を越えてしまったのだと思わざるを得ず、持続的な成功は難しいのかなと考えます。




アフターコロナには深刻な少子高齢化に向き合わなければならな

アフターコロナ 少子高齢化

(2021年5月13日メルマガより)

コロナ禍で、世界の出生率が急落しているようです。


上の記事は、今年と去年の1月を比較したものですが、日本では14%減、フランスで13%減、ポーランドにおいては25%減と、ありえない数字が示されています。

2021年全体でみれば、日本は6%減になると予測されています。


いやいや、コロナが収まれば、またベビーブームが来るよ、という楽観的な意見もありますが、実際にはそれはないだろうという見方が大勢です。

なにしろ、少子化は、コロナ以前からの現象です。コロナが収まったからといって、少子化の原因が取り除かれるわけではありません。普通に考えて、コロナによって、さらに少子化が進んだということです。

いまはコロナ禍という非常時ですから、すぐに取り組まなければならないことが多くあります。いかに感染を広めないか、いかに医療体制を整備するか、いかにワクチンを供給するか、これに集中するのは当然です。

が、問題の深刻さからいうと、圧倒的に重いのが、少子高齢化です。


少子高齢化は深刻な悪影響をもららす


日本の場合、戦後すぐの第1次ベビーブーム、その子世代の第2次ベビーブームがありましたが、第3次ベビーブームは訪れず、出生数は減少の一途を辿ってきました。

人口数は、2004年の1億2784万人をピークに、減少を続けており、2040年代には1億人を割り込み、2100年には4〜5千万人になる可能性もあると予測されています。

この凄まじい人口減少予測を劇的に覆し、人口増加基調に乗せることができるとは思いません。

いま、できることは、減少のペースを少しでも緩めることぐらいでしょう。それでも、大きな意味があります。

急激な人口減少、少子高齢化は、社会に様々な悪影響をもたらします。

人口が減ると、経済規模が縮小します。国内には消費の担い手が少なくなります。海外に売ろうにも、労働人口が減るので、供給が滞ります。

経済が縮小すると、税収が減るので、公的サービスを低下せざるを得ません。コロナ禍の今、国の責任でもっと医療体制を充実させなければいけないという声がありますが、経済規模が縮小するなか、画に描いた餅のような話です。

そうはいっても、最低限の公的サービスやインフラは維持しなければなりません。なにしろ高齢化が進み、人口に占める高齢者の割合は大きくなるばかりです。高齢者への福祉を切りすてるわけにはいきません。

そうなると、増税せざるを得ません。将来的に国家財政の破綻を逃れるためには、消費税を15〜20%にしなければならないという計算もあります。

税金は高いわ、公的サービスは悪いわ、街はボロボロだわ、諸外国に比べて給料は低いわ、なんて、悪夢のようなディストピアですよ。

我々は、この事態に何とか対応し、人口が少なくても幸せに暮らすことができる社会にスムーズに移行していかなければなりません。そのための時間がほしいわけです。

ただでさえ、動きが遅いのが国というものです。あまり変化が急激だと、本当に国が破綻してしまいます。

だからできることは、そのスピードを緩めることぐらい。。。とはいいながら、コロナで、スピードを早めてしまったのだから、大変なことです。


少子高齢化は、先進国に共通の問題


少子高齢化と人口減少に悩むのは、日本だけではありません。世界中の、とくに先進国が、この問題に悩んでいます。

ヨーロッパ諸国や日本、韓国など、社会がある程度成熟し、教育が充実した国では、子供は家計を助ける存在ではなく、負担となる存在です。これが少子化の要因となります。

女性の社会進出は、労働人口が減るなかでは必要なことですが、これが、晩婚化や出生率低下の要因ともなっています。

同時に、高齢者の戦力化も必要なことですが、これが、若い世代の活躍の機会を奪い、経済的な自立を遅らせ、未婚率を上昇させる側面もあります。

少子高齢化への対応が、さらに少子化の要因になるというなんとももどかしい事態ですが、ともかく、少子高齢化は、成熟した社会に共通する事象です。

だから、どの国も、少子高齢化のスピードを少しでも遅らせようと躍起になっています。

ヨーロッパで、少子化対策が比較的うまくいっているのが、フランスやスウェーデン、オランダなどです。

これらの国では、出産、育児、教育などに関する社会保障を厚くして、子供を産み、育てやすい環境を作ろうとしています。

それどころか、子供が多くなればなるほど税負担が軽くなる制度の国が多く、むしろ子供がいることで生活が楽になる仕組みを作ろうとしています。


移民の国アメリカは少子高齢化に悩まない


移民を積極的に受け入れることで少子化を逃れている国もあります。

ヨーロッパでいえばドイツ。

あるいは、移民そのもので国が成り立っているのはアメリカです。

特にアメリカは、移民を受け入れることが、経済のイノベーションにも大きな影響を与えています。

例えば、アメリカ経済を牽引するネット関連企業の多くは、比較的新しい世代の移民に支えられています。

アップルの創業者スティーブ・ジョブズはシリア系ですし、マイクロソフトの現経営者はインド系です。

アマゾンの創業者ジェフ・ベゾスはデンマーク系ですが、キューバ移民の義父に育てられました。

その他、GAFA創業メンバーには、ロシア系、ブラジル系など、いわゆるWASP(白人・アングロサクソン・プロテスタント)以外が必ず含まれています。

社会の多様性が、イノベーションを起こす要因になっていると考えられ、アメリカ社会の懐の深さとなっています。

ただし、新しい世代の移民が成功して格差が生まれてしまい、取り残された古い移民の白人層が不満を募らせ、社会問題となっているのは、移民社会の負の側面です。

ドイツの場合、それほど移民が多いわけではありませんが、それでも、移民層とその他マジョリティとの軋轢が問題となっています。

同調圧力が強く、異分子を受け入れたがらない日本社会には、移民受け入れは、ハードルが高いかも知れませんね。


男性の1/3が結婚しない近未来が来る


移民政策にかかわらず、ヨーロッパでうまくいった方策をそのまま日本に持ってきても、うまくいかない場合も多いでしょう。

例えば、事実婚やシングルマザーが多いフランスでは、出産や育児に手厚い支援をすることで、全体の出生数を上げる政策をとっています。

これに対して、婚外子が極端に少ない日本では、それでは不十分です。

日本の場合、統計としてみれば、女性1人あたり出生数は1.4人程度です。

ところが結婚した人だけで統計をとれば、おおむね2人です。

つまり、日本の女性全員が結婚すれば、人口減少は逃れる計算となります。

だからこそ、日本の少子化問題は、未婚率の低下が一丁目一番地だと考えられてきたわけです。

ちなみに、2015年の統計で、男性の生涯未婚率は、男性約23%、女性約14%です。

これも年々上昇しており、2030年には、男性30%、女性20%に達するのではないかと考えられています。

実に、男性の3人に1人近くが生涯結婚しないということですよ。

男性が、結婚しない、できない理由は、意欲の問題、経済力の問題、男女格差の問題などが複層に絡み合っています。

先ほど挙げたように、高齢者の戦力化や、女性の社会進出や、少子高齢化社会に対応するために不可欠な事象が、パラサイトシングルの増加や、女性の晩婚化を招いています。

経済の問題も深刻です。

昔と違って、就職したとしても、数十年の安定が約束されるわけではありません。不安定なまま親元を離れるのは合理的ではありません。結局、このまま親元にいた方が安心だし、そこそこ楽しいし、結婚なんてしなくてもいいや、ということになります。

明るい未来を想像しにくい現代なので、前向きなキャリア設計を描くことができるのは、ほんの一部のエリート層に限られています。

多くの若者は、夢や希望が持てず、最初からあきらめ気味です。


女性が結婚しない理由は経済負担


いっぽう、女性が結婚しない理由は、経済に関することが大きいようです。

統計によると、子供のいる女性の方が、いない女性に比べて幸福度が低いことがわかっています。


ヨーロッパの研究では、その原因は、金銭的な負担の増大です。だからこそ、ヨーロッパの少子化対策は、出産や育児への経済的支援にあてられています。

経済的負担が軽減されれば、むしろ子供の存在は、幸福度を高める要素となるからです。

ただし、子供を産んだ後、夫婦関係の悪化が起こることも報告されています。

ここの部分は詳しく研究はされていないようですが、恐らく、家事や育児を協力しようとしない夫への不満や、母になりたくまくしなった妻が精神年齢が低いままの夫に愛想をつかす場面があるのだと推測されます。

経済的に問題がなく、夫婦関係が悪いままだと、結婚生活を維持する理由がなくなりますから、離婚が増えるのは必然です。

ヨーロッパでは、そもそも結婚しない女性が多い。経済的に自立できる女性は、結婚する意味を見出せないでしょうから、合理的に考えて、事実婚で子供を授かる例が増えるのは当然です。いわゆる婚外子が増える所以です。


日本で唯一人口が増えているのは沖縄


日本のなかで唯一、人口増加しているのが沖縄県です。

沖縄の統計をみていると、全国でも飛びぬけて出生率が高いことがわかります。

※2018年度、全国平均1.42に対し、沖縄県は1.89


沖縄の場合、10代、20代の有配偶者率がダントツ高いのですが、30代以降の有配偶者率は全国平均以下です。

つまり、若い頃に結婚し、その後、離婚する率が高い。離婚率は全国1位です。

婚外子の割合も、日本国内平均の倍となっています。

まるでヨーロッパの国を見るようです。

もっとも、沖縄県が、特別に出産や育児に支援をしているという話は聞きません。

よく沖縄の女性はしっかりしていて働き者が多いと聞きますが、それは、そうせざるを得ない事情があるのでしょう。

ご苦労をお察しいたします。

だだし、沖縄には、シングルマザーを受容する懐の深さがあります。

大家族が多いので、子供の面倒を見てくれる人がいるという環境もあるでしょう。女性の働き口があるという状況もあるでしょう。

それに加えて、シングルマザーが特殊なものではないという社会通念があることが大きいと考えます。

若いうちに子供を産んで、一族の協力で育てるという沖縄の状況は、なんだか理想的すぎて羨ましいこと限りなしです。

核家族化が進む大阪や東京で、同じことが実現できるとは思いませんが、ヒントにはなるはずです。

すなわち、子供を育てるのは親だけの責任ではなく、地域社会の責任だという概念です。

だから、出産や育児、教育にかける支援を渋ってはいけません。地域社会全体で負担していくべきです。

加えて、何が何でも結婚しなければならない、結婚しなければ子供を作ってはいけないという社会通念は変えていかなければなりません。

シングルマザーであろうが、婚外子であろうが、特殊なものではありません。社会が変化している方向性を考えれば、すぐにそうなります。いまは、我々の古い頭がついていっていないだけです。

私のような老害は、少なくとも、浅はかな偏見で彼ら、彼女らを見ないように心がけていきたいと思います。


選挙の争点になりにくく対策が先送りに


いずれにしろ、コロナが収束すれば、もっと深刻な少子高齢化の問題に我々は向き合わなければならなくなります。

今までの政府や官僚が、この問題にまともに取り組んでこなかったように見えるのはなぜなのか?

ひとつは、将来の危機など選挙の争点になりにくいという事情があります。いますぐに結果のでることに取り組まないと、選挙に勝てません。先送りできることは、先送りするでしょう。

あと、いざとなれば、増税すればいいやと思っているのでしょうな。

消費税を財政破綻しないギリギリまで上げて、さらに問題を先送りすればいいやと思っているのでしょう。

だとすれば、相当、国民を舐めていますよ。

これからの選挙は、最も深刻な、少子高齢化対策を争点とすべきです。

我々も、選挙においては、候補者が、この問題にどれほど本気で取り組んでいるかを見極めていかなければなりません。

見極めるといえば、難しくなりますね。

少なくとも、マニフェストに言及されているかどうかは確認していきましょう。


緩やかな人口減少はむしろ歓迎


とまあ、コロナ禍で加速する少子高齢化について取り上げましたが、これはあと数十年の話です。

あえて言いますが、緩やかな人口減少は、決して悪いことではありません。いや、むしろ、地球全体にとっては必要なことです。

地球上の資源は限られています。このまま人口が増え続けると、食料危機になることは必至です。地球温暖化も、人口増加がなければ起こらなかった問題です。

先進国以外は、人口増加が進んでいるのが現状ですが、世界規模でも、2050年代を境に人口減少に転じるという予測が増えてきました。

おそらく人口減少しはじめた初期は、いまの先進国と同じように混乱が起きるでしょう。

しかし、ITかAIかロボットか、少しでも生産性を上げるテクノロジーを進化させて、混乱を小さくすることを期待したい。

混乱の先には、むしろ世界は適正な方向に進んでいくはずだからです。

自然なペースで人口減少が進み、適正な世界人口となる時、ゼロ成長やマイナス成長の中で、いかに我々が幸せに過ごすことができるのか、その教養と見識が試されるのだと思います。

もっとも、その頃は、私はいないでしょうけどね。

世界で最も深刻な少子高齢化に向かう中国

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13億人とも14億人ともいわれる人口を抱える中国が、日本以上に急激なスピードで少子高齢化に向かっているようです。

人口の増加によって経済成長してきた国が、ピークアウトすれば、少子高齢化に進むことは、日本をはじめ、あらゆる先進国の状況がそれを示しています。

が、中国の場合、「一人っ子政策」なるものをとってしまったために、より深刻です。

※一組の夫婦に、子供は1人までとする政策。

なにしろ、1979年から2014年まで、35年間も続けられた政策です。

中国の場合、実施する際には、有無を言わせませんから、徹底しています。

それが35年も続くと、もはや社会は、一人っ子仕様に適合しています。

中国は2016年から「二人っ子政策」に転換したようですが、社会はそんなに急には変われません。

中国の少子高齢化は避けようがない


これは、日本も同じですが、社会が少子高齢化に向かう要因は複層的です。様々な要因が絡まっています。構造的だといってもいい。

大雑把にいうと、経済的要因、社会的要因、文化的要因に分かれます。

経済的には、成長著しい中国では、あらゆるもののコストがバブル並みで、負担が大きい。結婚や出産、育児にかける費用も多大で、簡単に二人以上産むというわけにはいかないようです。

社会的には、中国は日本よりも男女格差が小さく、女性の社会進出が進んでいます。出産、育児を女性側が引きうける意義を見出せない人も多いと考えられます。皆が一人っ子なので、わがままに育ち、結婚するに至らないとも聞きます。

文化的にも、あらゆる社会文化が一人っ子に馴染んでいるので、2人目を作る障害があるらしい。例えば、一人っ子社会では、ひとりの孫に両親やそれぞれの祖父母の寵愛が集中します。孫に過剰なお金をかけることが慣習となっており、いまさら2人目、3人目に耐えられる経済力が一般人にはないと言われています。

そんなわけで、中国の少子高齢化は避けようがない状況です。

コロナ以上の危機


人口が大きいので、その影響も甚大です。

他国のことだ、と知らん顔をしていられないのがグローバル社会です。中国が倒れたら、世界中が連鎖的に昏倒してしまいます。

記事では、少子高齢化の前に、バブル崩壊が来ると指摘していますね。

投資家の間では「新型コロナウイルスのパンデミック」に代わって、「高水準の資産価格、いわゆるバブル崩壊」が最大の懸念材料になってきている


もちろんバブル崩壊も深刻ですが、少子高齢化は、さらに長期的にわたるので影響が大きい。

ということで、少子高齢化の問題は、アフターコロナの世界最大の課題となることは間違いありません。



ニトリが外食参入 多角化は成功するのか?

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ニトリが外食に進出したようです。

低価格ステーキ店です。チキンステーキが500円。リブステーキが990円。やっぱりステーキなみです。

ニトリ店舗の敷地内に出店し、肉は畜産農家から直接仕入れます。ただいずれは、畜産も自ら行う意欲を見せており、外食においても、製造小売りを目指すようです。

さすがニトリです。外食においても、その効率性が発揮していくのでしょう。

将来的には、ニトリの敷地以外にも展開する予定だそうで、事業として大きく育てていくのでしょう。


以前、メルマガに書きましたが、ニトリは、2032年に売上高3兆円を目標にしています。

業績絶好調が続くニトリだが、11年後に売上目標3兆円は、さすがに厳しいのではないか?

現在は、7200億円程度。11年後に4倍以上となれば、相当背伸びしなければなりません。

ユニクロのように、海外売上を伸ばせるならば、可能性はあるでしょうが、ニトリは海外に弱いときています。

家具や雑貨の需要だけでは目標達成は厳しいので、その他の分野の手を広げることが必至となっていました。

アパレルや家電に進出することは規定路線となっていましたが、ここで外食も柱の一つにしていくということでしょう。

いまは飛ぶ鳥の勢いのニトリですから、何をやってもうまくいくように思えますが、多角化の成功確率が低いことは歴史が証明しています。

(そういえば、ファーストリテイリングさえ、野菜販売を始めて撤退した経緯がありました)

3兆円という目標の是非とともに、多角化の行方を注意してみていきたいと思います。




日本映画がグローバル市場で通用しないのは、テレビ局の責任?

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題名の通り、日本の映画やドラマが海外でパッとしないのはなぜか、について書いた記事です。

面白い指摘です。

テレビ局の関与が、日本映画をつまらなくした?


記事によると、日本の映画やドラマは、テレビ局が出資した上に、制作側に回ることが多く、そんな既得権益にまみれたぬるま湯のようなテレビ局の制作で、世界的ヒットが作れるわけがない、と言っています。

私が言ったのではなく、記事が言っています。

一理あると思うのは、テレビ局は、日本のテレビで放映することを前提とするため、グローバル市場のことは二の次になるだろうということです。

どうしても、テレビ局が狙うターゲット層に向けた内容やキャスティングになり、似たような企画が揃うことになってしまいます。

しかし、これは仕方がないことです。テレビ局が出資・制作するのだから、テレビ局の都合のいいようにするでしょう。

ジブリの映画には、テレビ局ががっつり関与しているが…


ただ記事が違うなと思うのは、ジブリのアニメに関しては、テレビ局ががっつり出資・制作に関与していることです。

さすがに宮崎駿に対して、テレビ局側が、あれこれ指図する姿は想像できませんが、それでも制作側の意向を無視できないはずです。

結局、作品の内容や質が高ければ、国内でも、海外でも、ヒットするという単純な事実があります。

だから、テレビ局の関与が悪いとばかりは言い切れないと思うのですが、どうなんでしょうかね。

テレビ局が映画制作に乗り出した30年間


別の記事では、平成の30年間で、テレビ局が映画に関わってきた状況を指摘しています。

激変! テレビの映画枠とテレビ局製作映画 盛衰30年のワケ

テレビドラマの映画化が儲かることを知ったテレビ局が、それを再現しようとするのは当然です。

テレビドラマのヒット→映画化→テレビ放映→さらにドラマ化→さらに映画化、という黄金のループが利くとなれば、営利企業は必ずやろうとします。

ただし、その方式も、陰りが見えてきたことが指摘されています。

恐らく、テレビのパワーが落ちて、国内市場のマジョリティをとらえきれなくなってきているということなのでしょう。

このあたりで、韓国や中国の映画のように、グローバル市場を目指そうという考えが、映画界から起こってくるのは、当然だと思いますし、いいことだとも思います。

これから、日本映画のグローバル化が進むはず


日本映画の質が、韓国や中国に比べて劣っているとは思いません。

むしろ質という意味では、日本の方が高いのではないですかね。

ただ、韓国映画など、シナリオが矛盾だらけで破綻していても、それでも面白い場面をつないでそれなりに面白い映画にしてしまうパワーがあります。

日本映画はもっと繊細ですが、グローバル市場を目指すとなれば、また違ってくることでしょう。

今後、日本映画も変わってくるのだろうと期待しております。



ターゲット選定を見直して業績を回復させたモスバーガー

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モスがなにげに好調のようです。2019年8月から20か月連続で既存店売上高が前年比超え。コロナ禍の巣ごもり消費だけでは説明できません。

それを記事は、マーケティングを強化し、マーケットインの戦略に切り替えたからだと説明しています。

マーケティング本部を設立し、マーケティング、商品開発、商品流通を一つにまとめたようです。

さらにいうと、商品ごとにターゲット顧客を設定し、商品開発や販売戦略を練ったということですから、いまさら感ありますが、王道といえば王道です。

単純な差別化戦略から脱却できず…


日本でファストフードを展開するには、マクドナルドを意識せざるをえません。特に、モスは、マクドナルドと同じハンバーガーです。さすがにマクドを凌駕するのは至難の業です。

が、マクドがあるから、その逆をやればいいやという差別化戦略がとりやすいとも言えます。

だからモスは、マクドが価格戦略をとった時には、価格競争などには目もくれず、商品の品質向上に努めました。モスが、生き残ったのは、その割り切りが功を奏したからです。

ただ、価格競争を一段落させたマクドは、高品質商品にもミートするようになりましたから、こうなるとモスは苦しくなります。長期間、業績低迷に陥りました。

だからといって、商品開発の方向性をすぐに転換できないのが組織です。

商品開発部とすれば、品質や機能を追求して成果を残してきた成功体験があるものですから、その癖が抜けません。

経営環境にあわせて、戦略や組織を変えなければならないという当たり前のことができないのは、会社経営あるあるですな。

顧客層そのものを差別化し、独自のファン層をつくる


マクドができるミート戦略にも限界があります。弱者であるモスとすれば、細かくみていくと、できる差別化は無数にあります。

その部分を、ターゲットの状況を細かく見ていくことで、実現したのだと私は解釈しています。

そういえば、いかにも唐突に見えた食パンの販売も、ファミリー層というターゲットにリーチするための方法だったと説明されていますね。

モスの600円食パンは、なぜ金曜日限定販売なのか

これから、モスはターゲットの選定をより戦略的、構造的に行っていくはずです。

その先に、マクドとは重ならない独自のターゲット層、ファン層ができあがると思いますので、頑張っていただきたいと思います。



誰かを悪者にする思考から脱却しなければ何も進展しない

誰かを悪者にする思考

(2021年4月29日メルマガより)

アメリカでアジア系住民に対する差別が深刻化しているようです。


きっかけは、コロナウィルスのパンデミック化です。中国発祥のウィルスの責任を中国系住人に課す短絡的な姿勢が、差別や暴力という形で発露されているのです。

それが、中国系のみならず、韓国系や日系や、アジア系全体への差別につながっているようです。

時折り、アジア系の人が、道端や地下鉄などで暴力を振るわれる動画を目にすることがあります。

加害者は、白人だけではありません。黒人が暴力を振るう場合もあります。

さらにいうと、アジア系の中でも力の弱い女性に被害が集中しています。

つまり、マイノリティが、さらにマイノリティを差別し、攻撃する形になってしまっています。


なんともやるせない。

きっかけは、トランプ前大統領が繰り返した「チャイナウィルス」という発言だったといわれていますが、それはあくまできっかけに過ぎません。

バイデン政権になっても、それが収まらないのは、アメリカ社会にもとからあった差別意識に火がつき、顕在化してしまったからだということができるでしょう。

長引くコロナ禍で、たまった鬱憤を吐き出す手段として、アジア系への差別や攻撃がなされているという図式です。


特定の誰かや何かに責任を押し付ける心性


コロナ禍で、意識下にあった攻撃性があらわになったのは、我々も同じです。決して他人事ではありません。

どうも人間は、圧迫されると、誰かを攻撃したくなる心性を持っているようです。


この記事↑まったくその通りだと思います。

長い長いコロナ禍のなかで、我々は、行き場のない憂鬱さや憤りを抱え続けてきました。

たまったストレスを、知らず知らず、他人を攻撃することによって、解消しようとしていなかったでしょうか。

屋形船が悪い、ライブハウスが悪い、夜の街が悪い、パチンコが悪い。。。あるいは、感染した個人が悪い。

まあ、コロナウィルスの正体がわからなかった初期の頃はまだいいとして、正体が見えだした今でも、確たる証拠もなしに、若者が悪い、大阪が悪い、とやっています。

言うまでもなく、大切なのは、この状況を克服することであり、いま誰かを悪者にして溜飲を下げることではありません。

そんなことで溜飲を下げていたら、正確に問題や課題を追求することができなくなってしまいます。

この件に関しては、徹底した事実の追求でコロナ感染を抑え込んだ台湾の姿勢を見習わなければなりません。

台湾は、感染者の足跡を詳細に調査しながらも、個人のプライバシーは守り、マスコミに「防疫に必要のないゴシップは誰も流してはいけない。必要な情報は、すべて中央感染症指揮センターが発表する」と釘を差しています。



対立を煽るリーダーは世界中にいる


誰かが悪い、諸悪の根源はあれだ、などと決めつけるのは、思考停止状態です。

しばしば、我々は、そんな思考停止状態に陥ってしまうので、注意が必要です。

気を付けなければならないのは、政治家や経営者やリーダーら、優秀な人の中には、そうした我々の心性を利用しようとする者がいることです。

不安定な国の統治者は、国民の不満をそらすために、他国や自国内のマイノリティを悪に仕立て上げるようなやり口をよく使います。

第一次大戦後のドイツで「困窮の責任はユダヤ系住民にある」と煽り、マジョリティの圧倒的な支持を取り付けたナチス政権が、その典型です。

そんな昔の極端な事例。。と思われるかもしれませんが、似たような政治手法を臆面もなくとっている政治家は今でも存在します。

中央アジアや中近東、アフリカなど不安定な地域では、独裁政権が多くあります。北朝鮮もそうですね。独裁国家は、他国に責任を押し付け、国内問題を無効化しようとする傾向があります。

国際社会で責任ある立場であるはずの中国や韓国も、反日を煽りすぎです。両国とも、自国の不安定な情勢の矛先を反らそうとして反日を利用してきたので、今さら、抑えきれなくなっているのでしょう。

ナチス政権への反省から良識的で成熟した民主主義政治を心がけていたはずの欧州でも、不安定化が進む国では、独裁的な姿勢をあからさまにして上記のような施策を行い国民の支持をとりつけるリーダーが登場し始めています。

世界のリーダーを標ぼうしてきたアメリカでさえ、対立を煽る大統領が選挙で選ばれたのだから、第二次世界大戦から70年以上経ち、世界はあの時の反省を忘れつつあるのかもしれません。

いや、日本でも同じです。コロナ禍、「夜の街が…」「大阪株が…」と発言し、責任の在処を一方向に誘導しようとする都知事のやり方は、いかにも短絡的です。

「自分に矛先が向かないように、他の何かを悪者にしよう」って、「いじめられないように、他のやつをいじめよう」みたいなもので、踊らされる国民が、いちばん馬鹿にされています。

そこまで大きな話でなくても、「誰かのせいで悪くなっている」という決めつけは、真の原因や問題を隠してしまい、課題克服につながらない思考法です。

だから、悪いのはこいつだ、なんて決めつける意見を言う人がいれば、安易に乗せられないように、警戒したいと思います。


ガス抜きだと意識しなければ問題はこじれる


いや、私だって、そういう思考から逃れられていません。

いままで、安易に、誰が悪い、何に責任があると、決めつけたことがなかったかと言えば、嘘になってしまいます。

ストレスが溜まって、心が弱った時、つい、責任を特定の誰かや何かに押し付けて、心の負担を軽くしようとしてしまうことがあります。

そんなの誰でもあることだ。他人の悪口を言って、ガス抜きをするぐらいいいじゃないか、という声も聞こえてきます。

そうかもしれない。仲間うちでガス抜き程度に軽口をいう程度なら大きな罪はないでしょう。

しかし、これはガス抜きだということを自分で意識していなければ、問題はこじれます。

言うまでもなく、特定の誰かや何かに責任を押し付けても、問題は解決しません。むしろ、問題と向き合う機会を奪ってしまい、真因をわかりにくくさせてしまいます。

それをわかっていなければ、いつまでたっても、問題を抱えたまま、鼻先でごまかし続けなければなりません。


問題を単純に捉えなおすのは、行動のため


われわれコンサルタントは、問題を構造的に捉える訓練をしています。

中小企業診断士試験が、ひどく広範囲なのは、問題を総合的に、複層的に捉えるために必要な知識だからです。

誰かが悪、何かが善、などという二元論まがいの思考は、本来、コンサルタントには馴染まないものです。

しかし、あえて、短絡的な姿勢をとることもあるので、注意してください。

というのも、問題を理解しただけでは解決になりません。課題を設定し、それを解消しなければなりません。

つまり行動を促さなければなりません。

どうすれば人は動くのか?

その方法については、コンサルタントによって様々でしょうが、私の場合、課題を一つに設定し、行動の方向性を絞るやり方を使います。

迷うことは行動を鈍らせます。迷うことなく目標達成に邁進するためには、他の選択肢を消し去ってしまうことです。

「孫子」も組織が大きなパワーを発揮するのは、勢いを一つの方向に向けた時だと言っています。

便宜上、これしかない、という目標を設定して、その達成に全力を尽くしてもらうわけです。

とどのつまり「これだけやれば、問題が解決できる!」という決めつけであり、チームの力を最大限引き出すための方便であるものの、結局は、煽っていることとなります。

その分、われわれは責任重大です。

動機が間違っていれば、詐欺師と変わりません。皆を煽って、壺を売らせるような真似もできてしまいます。

稲盛和夫さんのように「動機善なりや、私心なかりしか」と常に自分自身に問い続けなければ、ダークサイドに堕ちてしまいます。


コンサルタントが「これさえやれば、うまくいく!」「〇〇が9割!」とキャッチーな言葉を掲げる時は、あえて言っていると思ってください。

表面の言葉は短絡的でも、中身はちゃんと構造的、複層的に思考できる人が殆どです。

「ランチェスター戦略コンサルタント」などと、一つの手法を看板にするのは、自分の売りを際立たせるためであって、本気で、これですべての経営課題に対応できると思っているわけではありません。

とは言いながら、一部には、つけ刃的に一つの手法だけを習って、短絡的な指導しかできない人もいるみたいですけどね。

そこは、利用する方に見極めていただきたいところだと思います。


偉い人に安易に躍らせられないようにしよう


それよりも、もっと注意しなければならないのは、動機が善ではなく、私心で、人々を扇動する輩がいるということです。

対立を煽って、片側の支持を取り付けようとする者。

誰かを悪に仕立てて、組織の不満のはけ口にする者。

夢を信じ込ませて、長時間労働に追い込む者。

飴と鞭をちらつかせて、利用しようとする者。

すべて、欲求や感情に流され、複雑なことを考えたくないという心性を利用されてしまっています。

逆に、誰かをヒーローだと信じ、全ハンドルを任せようとする心性も、短絡的で危険です。

確かに、煽られて乗せられるにせよ、だまされるにしろ、何かをひたすら信じて突っ走る高揚感、陶酔感は、気持ちのいいものです。

それだけに危険だといえます。

すべては自己責任だと言ってしまえば月並みですが、騙されるにしろ、乗せられるにしろ、利用されるにせよ、すべては自分の選択の結果です。

私は、煽られて踊らされた末に、こんなはずじゃなかったという情けない思いをしたくありません。(今まで、何度もありましたが…)

だから、偉い人の話を鵜呑みにせず、自分の頭で考える癖をつけたい。

パナソニックが7700億円の決断 基幹産業は育つのか

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パナソニックが、かねてから噂となっていた米ソフトウェア会社ブルーヨンダーを買収するようです。買収額7700億円。

パナソニックは既に同社の20%の株式を持っており、今回、完全子会社にするということです。

ブルーヨンダー社の有難いソフト


ブルーヨンダー社は、製造業、流通業向けのソフトを手掛けています。独自開発のAIが、生産管理、在庫管理、配送管理、陳列管理、価格設定まで、サプライチェーンを一気通貫にやってくれる有難いソフトだそうです。

製造業にとって、生産と配送、販売のギャップは悩みの種です。売れる商品を作っていなかったり、売れない商品ばかり在庫していたり、こうしたことはつきものとなっています。

営業からは早く商品を出せと突かれ、生産からは無茶言うな、あるものを売らせろと突き放され、配送からはそんなもん知るかと無視され、間に入った調整役の社員は、大変です。

AIで自動的に最適化してくれたら、これほど楽なことはありません。しかも、需給ギャップが解消されれば、相当の収益となるはずです。

同社のソフトが、額面通りの働きをするならば、需要は大きいと考えます。

基幹事業の育成が急務


パナソニックは、自動車用電池を基幹事業にしようとしていたのに、テスラに振り回されるばかりでいまいち順調にはいっていないようです。

いっぽうで、ソニーは、ソフトとハードを融合したビジネスモデルを組み立て、継続課金モデルも使いこなして、いち早く業績を回復させています。

「鬼滅の刃」大ヒットで復活するソニー「全集中の戦略」

もの売りだけではあかんなあというのが、パナソニックに限らず、日本の大手製造業の総意としての課題となっており、パナソニックにも決断が迫られていました。

モノづくりとITの融合、デジタルによる製造業の改革、いわゆるデジタルトランスフォーメーションが、バズワードになっていますが、パナソニックほどの大きな企業となると、無暗やたらに取り組むわけにはいきません。
ハードに強い中韓の製造業との競争を避けつつ、地上と低空の領域という「(GAFAが)面倒くさくて手を出さない」とみる分野に活路を見いだそうとした。(パナソニック、事業モデル転換探る ソフト大手買収へ
そこにはまったのが、ブルーヨンダー社の事業だったということです。

今後、パナソニックの形が変わる


今回の買収は、かなり大きな決断です。

買収額も大きいですが、それだけではありません。今後、成長戦略から外れた事業を売却していくことになるので、会社の形が変わっていくことになります。つまり、今後の会社の在り方を決める決断でした。

ソニーに比べると、事業転換への取り組みが遅かったなあとは思いますが、仕方ない。パナソニックの未来はこれからです。

いずれにしろ形が見えてくるのは、2、3年後でしょう。

ただ気になるのは、ブルーヨンダーのソフトがそれほどいいものならば、パナソニック自身は、これを使って、よおどの効果を上げたことでしょうが、それがあまり聞こえてこないことです。

私が知らないだけかもしれません。

あるいは、目に見えた効果の後では買収額が跳ね上がってしまうので、隠しているのでしょうか。

買収を持ちかけた投資会社にうまくしてやられた、ということにならないことを願っております。



東芝はこのままハイエナ金融たちの餌食にされてしまうのか

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なんそれ!

と言いたくなるようなあっさりとした辞任劇でした。

少し前、ブログに

東芝の買収話に、何か裏の意図はあるのか?

と書きましたが、裏の意図ごと簡単に一蹴されてしまったようですな。

要するに、旧村上ファンドら「もの言う株主」対応が面倒くさいので、知り合いの外資ファンドに頼んで助けてもらおうとしたのに、そのやり方が、外資による買収というもので、うがった見方をすれば、車谷氏自身が、外資ファンドの利益を代表する立場になりえる形です。さすがにそれはあかんだろうと東芝側から拒絶されてしまった形です。

この時、ノーを突き付けたのが、永山治取締役会議長だといわれています。この方、中外製薬と世界的製薬会社であるロシュの提携を取りまとめ、中外製薬を大きく飛躍させるきっかけを作った人として知られています。

非常に厳格な姿勢をとる人らしく、今回の騒動が起こった時も、永山氏がこんな買収を許すはずがないという声が聞こえてきていましたが、まさにその通りになりました。


まともな成長戦略を描くことが急務


さて記事では、この騒動がきっかけになり、外資による東芝の買収、切り売りが進むのではないかと書かれており、こちらの方が、深刻です。

車谷氏の問題は、もの言う株主対策などではなく、東芝の確かな成長戦略を描けなかったことです。これが、アクティビスト(もの言う株主)につけ入れられる隙となりました。今後も、成長戦略なくしては、ハイエナ金融たちの餌食にされてしまいます。

東芝のCEOは、とりあえず前任者が務めるようですが、ワンポイントリリーフでしょう。次のCEOは責任重大ですし、能力ある人が求められます。

親方日の丸の重厚長大産業の代表企業だった東芝ですから、簡単につぶすわけにはいきません。誰が、登板するのか、注目していきましょう。





自然界で、強者が一人勝ちにならないのはなぜか?

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自然界が、必ずしも強者一人勝ちにならない理由について書いた記事です。

無駄や独自性を持つことが、一人勝ちを妨げる?


生物の生き残り戦略は、長い時間をかけて積み上げられたものなので、結果として合理的です。ビジネスの戦略を考える上でも、ものすごく参考になります。

自然界のランチェスター戦略

ところが、合理的に見える自然界の動植物の競争でも、強者と弱者の共存が見られます。合理的なのに、なぜ強者はとりこぼすのか?

記事によると、ある種の集団が小さい時は、集団が生き残るために合理的な行動をとるが、大きくなると、個が勝手な進化を始めるといいます。
集団の数が少ないうちは自分優先の行動への進化は控え、集団が大きくなると仲間を出し抜こうと自分勝手に進化を始めた。

この自分勝手な進化は、集団の生き残り戦略と矛盾することもあるので、結果として、強者が一人勝ちするのを妨げる役割を果たすのではないか?ということです。

記事では、企業戦略においても、個々の企業の習慣の積み重ねが、独自性となり、お互いの会社が真っ向勝負しないようになっているという研究データを紹介しています。

なかなか面白い指摘だと思います。

「弱者の戦略」と「強者の戦略」の両方を知らなければ生き残れない


別の観点から見てみると、組織には、目の前の敵に打ち勝ち生き残ろうとする「弱者の戦略」のフェーズと、敵に足をすくわれず地位を維持するために全方位に気を遣う「強者の戦略」のフェーズがあります。

目の前の敵に勝ち生き残るためには、戦略を決めてその実行に一丸とならなければなりません。が、あまりにも一方向ばかり向いていると、側面からの攻撃や想定外の環境変化に脆くなるので、多様性を持っておかなければなりません。

だから、組織がまだ小さい弱者のうちは、一つの方向性に対してまとまりを持つことが重要ですが、組織がある程度大きくなると、むしろ異分子を取り込み多様性を持った組織であることが長生きの秘訣となります。

つまり、弱者の戦略をとらなければ生き残れませんが、それ一辺倒だと、長生きできない。かといって最初から全方向性を見ていると、そもそも生き残れません。

弱者の戦略と強者の戦略は、自身のフェーズやポジションによって、切り替えていかなければならないということです。

そう考えると、やはり自然界の行動や進化は、生き残るために合理的にできているのだと感心します。

自然から学ぶことは、まだまだありそうですね。



自動車産業「最後の大物」鈴木修氏引退 スズキは生き残れるのか?

スズキ

(2021年4月15日メルマガより)

自動車メーカースズキの鈴木修会長が退任を発表し、会見を開きました。

御年91歳。

「生涯現役」「100歳までやる」と言い続けてきた人です。相談役に退く、とはいいながら、大きな影響力を保ち続けるのでしょう。

しかし、経営の第一線から退くことは間違いありません。

トヨタのCEOでさえ一目を置く、カリスマ経営者の退任です。

一つの時代が終わった。と綺麗にまとめたいところですが、それにしては、スズキも含めて自動車業界全体が、激動のさ中にあるこの時期の退任は、残念なタイミングです。

スズキや、日本の自動車産業は、これからどうなっていくのでしょうか。


世界一の自動車メーカーを驚愕させたアルト


鈴木修氏は、鈴木自動車工業(現在のスズキ)の4代目社長です。同社は、2代目も3代目も、鈴木家の婿養子が社長を務める珍しい会社でしたが、鈴木修氏も、婿養子だそうです。

それはともかく、鈴木修氏が社長に就任した1978年当時、スズキは、売上高300億円程度の中小メーカーに過ぎませんでした。

その会社を40年で、売上高3兆円以上、販売台数で世界11位(2020年度)に押し上げたのだから、その功績は称賛されて余りあります。


鈴木修伝説の始まりは、1979年に発売された初代アルトです。

修氏が陣頭指揮をとり製作された同車は、税制面で有利な商用軽自動車という車種であり、かつ、徹底したコストダウンにより、47万円という破格の販売価格で売り出されました。

修氏によると「タイヤ4本分の利益しかない」薄利の商品だったそうですが、ライバル会社のダイハツの社長が「あの商品は赤字だから続かない」と無視を決め込むのを幸いにして、売りまくりました。

この商品の大ヒットが、日本の軽自動車市場の存在感を一気に押し上げました。

同時に、アルトと、その後発売されたワゴンRの大ヒットが、スズキの自動車メーカーとしての地位を確立させていきました。

一説によると、当時世界一の自動車メーカーGMが、スズキと提携したのも、アルトの設計に驚愕したからだと言われています。


自ら歩いて、販売代理店を開拓


販売面でも、後発のスズキは、大きな販売網を築くことができませんでした。そこで、小さなディーラーや修理工場などにこまめに売り込み、販売代理店を開拓していきました。

スズキのような小さなメーカーは、専門の販売店を抱え込むことが難しい。だから主要な販売先となるのが、全国にある小さな修理工場です。

小さいといえども全国に数多ある修理工場が販売もしてくれるのならば、スズキにとって大きな勢力となります。

もっとも、修理工場は、どのメーカーの車を扱ってもいいので、スズキだけが優遇されるわけではありません。

ここで、発揮されたのが、鈴木氏の徹底した現場主義です。

代理店の開拓においても、社長自ら頻繁に現場に足を運び、実際に話を聞いて、ディーラーや代理店の信頼を獲得していったことが、今に伝わっています。

ことほど左様に、鈴木修氏の方針は、現場に足を運び、現実に即して判断し、行動することでした。


インド市場でナンバーワン企業に


その修氏の特長が、最大限発揮されたのが、インド政府との提携です。

1980年代、経済成長を目指すインドは、低価格な国産車の製造販売を目論んでいました。

そこで、世界中の自動車メーカーをまわって、提携パートナーになってくれる会社を探していました。

しかし、当時のインドというと、社会主義的体制で、国民所得も低く、いかにも儲かりなさそうな市場でしかありませんでした。

世界中の自動車メーカーがまともに取り合わないなか、スズキだけが本気で進出を考えたといいます。

修氏によれば「スズキは弱小企業なんだから、他のメーカーと違うことをしなければならない」ということです。

いわゆる「弱者の戦略」をとらなければならないということで、理屈としては正しいです。

が、政治体制も固まらないインド政府とがっぷり組むというのは、いかにもリスクが高く、普通の経営者なら慎重になるべきところでしょう。

しかし、修氏は、持ち前の行動力で、政府要人と交渉を重ねて彼らの本気度を読み取り、またインドにも足を運んで、かの地の勢いを感じ取りビジネスチャンスがあると判断しました。

修氏が自虐的にいう「勘ピュータ」の発揮です。

インド政府と合弁会社を立ち上げ、得意の低価格車をインドの国民車として量産していきました。

もちろん、国とのビジネスですから、難しいことも多々あります。インド政府との主導権争いはもちろん、国を追い出されそうになったことさえあったと聞いています。

それでも老獪な鈴木修氏は、丁々発止のやりとりで政府高官を抑え込み、2002年にはインド政府から合弁会社の株式を買い取り、子会社化しました。スズキグループは、いまでも、インドで50%以上のシェアを占めています。

この結果をみて、他の大手自動車メーカーが地団太を踏んで悔しがったのは言うまでもありません。

しかし時すでに遅し。インドに続いて、ハンガリーにも進出したスズキは、独自の地域シェアナンバーワン戦略をもって、世界企業の仲間入りを果たしました。


弱者の戦略で、大手企業を手玉に


各企業との提携戦略も独特です。

1981年には、世界トップだったGM(ゼネラルモーターズ)と資本提携しました。その際、「GMは鯨、スズキは蚊。鯨に飲み込まれずに高く舞い上がれる」という名言を残しましたが、2008年には提携を解消。

2009年にはVW(フォルクスワーゲン)と提携。ところがVWがスズキを子会社化する意欲を見せたとして、2015年に解消。

2019年には、トヨタと資本提携し、今に至っています。

大企業と提携と解消を繰り返し、手玉に取る様子は、さながら織田、上杉、北条、徳川、豊臣と臣従先を頻繁に変えて、戦国末期を生き抜いた上田の小国、真田家のようです。

老獪な真田昌幸が、その名を全国にとどろかせたように、鈴木修氏も、したたかな経営者として、世界にその名を響かせています。


ただ、二輪車を軽視したことは、鈴木修氏の失敗だと指摘しておきます。

2000年代まで、スズキの二輪車はそれなりの存在感を持っていましたが、いまや見る影ない姿になってしまい利益が出るか出ないかといった事業になってしまいました。

ホンダの二輪車事業が非常に好調で、四輪車の不調を帳消しにするぐらいの利益を上げていることを思えば、もったいない限りです。


現在、スズキは、販売台数で世界11位の企業グループです。

コロナ禍で売上高は3兆円まで落ちていますが、2019年には4兆円近くまで上がっていました。

販売台数の5割がインドです。売上では3割超がインド。

インドでのシェアが、スズキの存在価値となっています。

国内市場においては、販売台数でトヨタに継ぐ2位。(2020年)

トヨタとの提携は、鈴木修氏が、自身の引退後、トヨタ傘下になることを見越したものだと言われていますが、どうなることでしょうか。

トヨタとすれば、インドでの高シェアは、すこぶる魅力的でしょうから、近い将来、発表がなされるのかもしれません。


EV化の流れに乗り遅れる


このたび、鈴木氏の引退発表で、自動車関連企業の方々から、落胆の声が漏れたという話が聞こえてきています。

いま、自動車関連産業は、激動のさ中にあり、業界の危機感は並々ならぬものがあります。

この危機を乗り越えるためには、鈴木修氏の力が必要だという思惑が、やはり業界にはあったようです。

世界的なCO2削減の機運により、各国は、自動車の完全EV化に舵を切っています。

欧州各国は、おおむね2030年から40年の間には、EV以外の販売を全面禁止。アメリカも州によりますが、似た措置をとろうとしています。

ハイブリッド車も認めない急激なEV化規制は、ガソリン車で強すぎる日本勢を排除する意図が見え見えですが、CO2削減を旗印にされては仕方がありません。

日本国内では、ハイブリッド車は認めるようですが、ただのガソリン車の販売は、2035年には禁止されるといいます。

待ったなし。ガソリン車技術で王国を作り上げたわが日本の自動車産業とすれば、強みの前提を崩されてしまったわけで、また一からのスタートを強いられてしまいます。

とくに軽自動車は分が悪い。

テスラのように、機能とデザインに贅を尽くした高級路線なら、日本企業でも何とかなるかもしれませんが、軽自動車が高級路線を追求するのは、現実的ではありません。

低価格を実現するためには、技術的な成熟が必要であり、軽自動車のEV化にはまだ時間がかかると見られていました。

ところが、GMも出資する中国メーカーが、50万円を切る小型EVを開発し、大ヒットさせました。

走行距離も短く、エアコンもつかないしょぼい車ですが、それでも、この低価格は魅力です。

スズキがかつて初代アルトで社会を驚かせたのは、この割り切りのはず。

これを開発するのは、スズキであってほしかったと思います。


トヨタの傘下で生き残っていくのか


今さら言っても仕方ありませんな。

今のスズキに、EVを設計開発する力はないようです。だとすれば、とれる手段は限られてきます。

アップルのような異業種からの参入組の設計に従って、それを組み立てる生産工場になる。そのうえで、製造技術を蓄積し、いずれは、自社でEVを設計製造するメーカーになる。

あるいは、これからも存続が確実な会社の傘下に入って、生き延びる道を選ぶ。

そう考えると、やはり現実的なのは、トヨタの傘下に入り、グループ会社として、生き延びる道でしょうか。

鈴木修氏の引退は、トヨタ入りへ向けての布石になっていると、私には思えます。

インドでのシェアを土産にできる間に、またインドにEV車を投入しシェアを維持するためにも、早い時期に、決断しなければならなかったのでしょう。

カリスマ鈴木修氏の最後の仕事としては、寂しいと感じるかもしれませんが、生き残るためには、仕方のないことです。

いや、むしろ、生き残ることこそ最重要課題です。何をためらうことがあるのでしょうか。

「仕事が生き甲斐だ。人間は仕事を放棄したら死んでしまう。みなさんも仕事を続けてください。バイバイ」

相変わらず、人を食った言葉で、引退会見を締めくくった鈴木修氏です。

その経営者としての生き様を、最後まで見ていきたいと思います。






アフターコロナにはさらに暗い未来がある?

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コロナは、社会の課題を浮き彫りにしたり、変化を早めたりしていると言われていますが、最も大きな課題であり、深刻さを増しているのが、人口減少の問題です。

2020年と21年のデータを見るだけでも14%減少です。

このままだと、日本の人口は、2049年には1億人を下回る予測となります。

ちなみに、3年前の経済産業省の予測だと、2050年に約1億人となっていましたから、2,3年前倒しになる計算です。

かつては戦争や恐慌、災害後にベビーブームの反動が起きることもあったが、コロナ後は元通りにならないとの懸念もある。国際通貨基金(IMF)によると、世界で働く18〜29歳の17.4%がコロナ禍で失業・休業した。雇用への打撃は若者ほど大きく、変異ウイルスの感染も続き、将来不安の払拭にはつながっていない。

生産性向上に取り組まないと、本当に破綻します


社会保障費用が増大するのに、就労人口は減り続けていきます。借金で賄うしかありません。いまでも赤字国債を発行しまくっているのに、返す当てがゼロの状況が続くわけですから、いつ破綻してもおかしくない。恐ろしい事態になりそうです。

国民一人あたりの付加価値、いわゆる生産性を劇的に上げないと、本当に破綻してしまいます。

2050年に86歳になる私が言っても、切迫感はないかもしれませんが、コロナの危機の後には、さらに恐ろしい未来があるということを見越して、生産性向上策に取り組んでいかなければなりません。

とくに若い方、真剣になってください。





東芝の買収話に、何か裏の意図はあるのか?

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東芝に、外資系ファンドからの買収提案がきており、話題になっています。

が、この話、いろいろきな臭い。

東芝は、現在、事業を再構築の途上です。

再建に向けて半歩踏み出した「日立」、ドン底から這いあがろうとする「東芝」

東日本大震災とその後発覚した会計不正で多大なダメージを受けた東芝は、有望な事業を殆ど売却してしまい、一から出直しを強いられています。

その陣頭指揮をとるのが、車谷暢昭CEOです。この方、東大→三井銀行→大蔵省→外資系ファンドと渡り歩いた超エリートで、東芝に招かれて経営を任されました。

車谷氏がいた外資系ファンドというのが、今回、東芝に買収提案をしているCVCキャピタル・パートナーズです。

要するに、車谷氏の個人的な関係ででてきた案件です。

東芝に厳しい要求を突き付けてきた旧村上ファンド


というのも、車谷体制の東芝に、いわゆるもの言う株主が、厳しい要求をつきつけています。

成長戦略があいまいだとディスられる東芝

この株主というのが、シンガポールの投資ファンドのエフィッシモ・キャピタル・マネージメントですが、こちら旧村上ファンドの人たちが作った会社ですから、いろいろ厄介です。

車谷氏側からすれば、せっかく東芝の再建に全力を尽くそうとしているのに、横やりを入れられて面倒くさいから、とりあえず、旧知のファンドに頼んで買収してもらい、非上場化してもの言う株主を黙らせようということです。

車谷CEOの個人的な思惑があるのか?


しかし、これって、車谷氏自身を守るための措置であり、必ずしも東芝の利益を守ることにならないのでは?と、反車谷陣営は、騒いでいます。

それに、原子力技術を持つ東芝は、外資に買収されるためには、財務省や経済産業省の承認が必要です。村上世彰氏は、経済産業省に顔が利くらしいですから、すんなりと行きそうにありません。

まだまだ揉めそうですね。

もっとも、エフィッシモ側は、東芝をどう経営するかなどに興味はないでしょう。儲かればいいというファンドだと思いますので、どこか適当なところで決着がつくはずです。車谷氏は、何をこんなに慌てているのだ?と不思議な気がします。

この話、まだ裏があるのでしょうか。わかりませんが、また気づいたことがあれば、書きたいと思います。



業績絶好調が続くニトリだが、11年後に売上目標3兆円は、さすがに厳しいのではないか?

ニトリ


(2021年4月1日メルマガより)


家具小売りチェーン、ニトリの業績が絶好調です。

2021年2月期の連結売上高は、7200億円弱。

営業利益は、1400億円弱となる見込みです。

売上高においては、前年比10%以上、営業利益に至っては、前年比30%です。


量販店、コンビニなど小売店は全般に、コロナ禍の巣ごもり消費を捉えて、業績好調ですが、ニトリの好調ぶりは、群を抜いています。

もちろんニトリが凄いのは今だけではありません。

1988年以来、33期連続で増収増益です。

経営危機があったとすれば、1997年メインバンクの北海道拓殖銀行が破綻した時ぐらいで、ニトリ自身の責任ではありません。

素晴らしいという他ありません。


高度成長期に時流を捉えた創業


ニトリは、1967年、北海道札幌で似鳥昭雄氏(現会長)が創業した似鳥家具卸センターを祖とする小売りチェーンです。

当初は、名前の通り、家具を仕入れて、卸売り価格で一般顧客に販売する小売店でした。

1967年といえば、高度経済成長の真っただ中です。

人口増、所得増の時代であり、日本国内には旺盛な消費需要がありました。

大量販売大量仕入れを実現した量販店が小売りの主役になろうとしている頃であり、家具の低価格販売は、時流を捉えたビジネスです。

後に似鳥昭雄氏は、日経新聞の「私の履歴書」で、「たまたまうまくいった」的な趣旨の自虐的な創業エピソードを披露していますが、実際のところ、理に適ったビジネスです。

現に、同ビジネスは、順調に拡大し、1989年には、株式上場するに至っています。


運は創るもの ―私の履歴書
似鳥 昭雄
日本経済新聞出版
2015-08-26



製造小売りになる


ニトリがすごいのは、ここからです。

流通の段階を短縮化したり、大量仕入れでメーカーから安く買うだけでは、仕入れ値を下げるのに限界があります。

もっと安く販売するためには、どうすればいいのか?

これを追求し、出した答えは、ユニクロと同じです。すなわち、自社で企画し、製造販売するということでした。

上場前の1987年には、はやくも家具メーカーを買収し、製造小売りへ一歩踏み出しています。

それから約10年かけて、タイやインドネシアに生産拠点を作り、海外で作った製品を日本で販売する体制を整えていきました。

1998年には、国内工場を閉鎖していますから、徹底しています。

現在は、ベトナムに巨大工場をつくり、生産拠点の中心としています。


物流の効率化、高度化


さらに経費を下げるにはどうすればいいか?

ニトリが次に取り組んだのが、物流の効率化です。

2000年に関東物流センターが稼働。

倉庫管理のシステムや、配送管理のシステムも自社開発しています。

ピッキングロボットを導入し、自動化にも積極的です。

現在、物流センターは全国12拠点。配送センターは全国78拠点です。

物流効率化への投資はいまも続いており、同社の利益率向上に効果を発揮しています。


ニトリのビジネスモデルは、資材調達、生産、配送、販促、販売まで自社で行うSPA(製造小売)です。

先ほども言いましたが、これはファーストリテイリング(ユニクロ、gu)と同じ形態です。

自社で何でも手掛けるため、固定費が大きくなるものの、自社の努力で経費をコントロールしやすいので、長期的な利益向上を図ることができます。

ニトリが、毎年のように利益を上げ続けている要因となっています。


細かなマーケティング力


もちろん、経費を削減し、安売りするだけで、31年も増収を続けられるわけではありません。

販売量を上げるためには、店舗数を増やし、売れる商品を並べなければなりません。

現在、ニトリは国内外に、607店。さらに拡大を続けるとみられており、売上規模の拡大も続くと思われます。


「お、ねだん以上」のキャッチコピーが象徴する商品の企画開発力も素晴らしい。

店舗数ばかり増やしても、商品が売れなければ、在庫が余って破綻してしまいます。

そうならないのは、ニトリの商品開発と価格設定が適切だからといえます。

が、それだけではありません。

実は、ニトリの売上構成比で、家具は、40%以下にすぎません。

60%以上が、雑貨、キッチン用品、家電などです。

つまり、ニトリは、もはや家具小売りというよりも、ホームセンターや雑貨店のような品揃えになっているのです。

日本の家具市場は、ピーク時から4割減となっています。人口減、新築一軒家の減少、ライフスタイルの変化など、構造的な問題ですから、企業努力で何とかできるレベルではありません。大塚家具も破綻に追い込まれるというものです。

そんな大きな経済環境に適応するために、ニトリは、品揃えを変化し続けてきたわけです。

それも含めたマーケティング力が、ニトリの大きな強みとなっています。


目標は、売上高3兆円!


家具専門チェーンとして、ニトリはダントツトップです。

生活雑貨店や家具系のホームセンターを入れても、トップです。

しかもホームセンターの島忠を買収したので、さらに売上規模が拡大しています。

この勢いを駆って、ニトリは、2032年に、3000店舗、売上高3兆円を目指すと発表しました。


現在が、約607店、売上高7200億円弱ということですから、仰天の大目標です。

思わず、血迷ったか?と言いそうになりましたが、天下のニトリですから、充分に勝算があるのでしょう。

それにしても、10年で、売上高を4倍以上に、どうやって達成するというのでしょうか。


家電やアパレルに進出


ニトリのサイトなどをみていると、どうやら、同社の戦略は、

(1)商品分野の拡大

(2)ネット通販の拡大

(3)海外展開の拡大

という3方向にあるようです。


(1)商品分野の拡大というのは、ニトリがこれまで家具から雑貨や家電にシフトしてきた流れを推し進めるということです。

家電商品については、まだ数量も少なく、拡大余地は大きいでしょう。

いまは、大手家電メーカーの力が弱まり、小さな会社がアイデアを凝らして作る一芸家電が、人気を博しています。

おそらく、ニトリのPB家電も、機能特化し、価格を抑えたものになるはずです。

こちらは、相当の売上規模になることでしょう。

さらには、アパレル分野に進出するような報道もあります。

アパレル企業が軒並み苦しんでいる現在、いいチャンスかもしれません。

が、ユニクロやguとバッティングする方向性であり、困難が伴うとは思います。

(2)ネット通販に関しては、すでに積極的に取り組んでおり、急激に業績を伸ばしています。

が、こちらも、まだまだ規模は小さい。今後の伸び次第です。


海外展開がうまくいっていない


(3)海外展開が最も問題です。

実をいうと、ニトリの海外展開は、いまだ70店弱で、国内と比べると、うまくいっているとは言えません。

台湾で30店舗強、中国で34店舗強、米国に至っては、2店舗です。

海外展開にまで手が回らなかったのでしょうか。

ニトリ側はそういうでしょうね。しかし、私には、やろうとしてもうまくいかなかったのだと思えます。

ここが、売上の4割から5割近くを海外が占めているユニクロや無印良品などとの大きな差です。

家具の世界でいうと、イケアは、バリバリのグローバル企業です。

イケアの売上は、日本国内では870億円程度、ニトリの10数%にすぎませんが、世界全体でいえば、4兆8千億円を超えています。ニトリを遥か足元にも寄せ付けないレベルです。

いったい何が、このような差になっているのでしょうか。


海外展開するにはコンセプトが弱い


答えをいうと、海外展開に成功している企業は、コンセプトが明確です。

ユニクロは、ファッションではなく日用品としてのアパレル。

無印良品は、シンプルで無駄のない生活スタイル。

イケアは、北欧文化の生活スタイル。

こうしたコンセプトが受け入れられた国では、展開に成功しています。

(例えば、禅をイメージさせる無印良品のコンセプトは、派手好きなアメリカでは受けが悪く、欧州では受け入れられているようです)

では、ニトリは、海外に進出するのに、どのようなコンセプトで打って出ればいいのでしょうか。

ちょっと安い家具?

安いけど、ちょっといい家具?

日本の住環境に合った家具?


要するに、海外展開するには、コンセプトとして弱いのです。


3兆円達成の鍵は、グローバル展開


もともと似鳥昭雄氏は、渥美俊一氏の唱えたチェーンストア理論の信奉者として知られています。

チェーンストア理論とは、多店舗展開する際の、集中化と標準化を中心とした手法であり、人口規模を背景とした旺盛な消費需要を捉える際に、大きな効果を発揮しました。

ただバブル崩壊を経て、消費意欲が減退する時代になると、大手量販の業績は軒並み下がり、そのこともあって、チェーンストア理論は下火になってしまいます。

同理論の優等生だったダイエーの破綻が、それを端的に表しています。

もっとも、ニトリは、その理論を独自にカスタマイズし、変化する需要を巧みに捉えなおすことで、さらに業績を拡大していったわけですから、立派です。

ただし、海外においては、事情が異なります。端的にいうと、日本人とは、まったく違う欲求を持っています。しかも国や地域によって欲求がバラバラなので厄介です。

ニトリの成功要因は、経費削減や、細かなニーズの拾い上げを一歩一歩積み上げてきたことです。何か突拍子もない仕掛けや裏技ではなく、当たり前のことを積み上げてきたところに盤石の強さを持っています。

じゃあ、その強さを海外でも発揮できるでしょうか?

これまでのように、各国各地域の事情に合わせて、細かな需要を拾い上げ、商品開発に取り組んでいけばいいのでしょうが、そんなことが果たして可能でしょうか。

できないことはないでしょうが、時間がかかりすぎます。

やはりグローバル展開するためには、世界に通用する明確なコンセプトを打ち立て、世界全体に展開していくことが現実的です。

イケアも、ユニクロも、無印も、それをやっています。


国内においては、おそらく、このまま、商品分野を増やし、他の量販店やホームセンターを買収することで、売上規模を拡大していくことは可能でしょう。

ただ、3兆円を達成するためには、海外展開は不可欠です。

そのためには、海外に受け入れられるコンセプトが必要であり、それが作れるかどうかが、展開の可否を左右することでしょう。

国内では無敵のニトリも、海外展開には苦労しそうだと思えるのは、なんだか人間的ですね。

プロフィール
komai 小

営業関連のコンサルティングをしています。
製造業や卸売業などの営業組織を強化する仕事を得意としております。

株式会社クリエート・バリュー代表取締役
NPOランチェスター協会理事
NPOランチェスター協会関西支部
NPOランチェスター協会認定インストラクター
中小企業診断士   販売士1級

コンサルタントになる前は、日本酸素株式会社魔法瓶事業部(現在のサーモス株式会社)で14年、営業担当をしておりました。
その時、廃業寸前の赤字だった事業部がわずかの期間で世界トップ企業になった経緯を体験したことが、経営コンサルタントになったきっかけとなりました。
当時、経験したことや見聞したことを物語風にアレンジしたのが、拙著『「廃業寸前」が世界トップ企業になった奇跡の物語』です。
面白い本なので、ぜひ読んでください(^^)

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