わたしは価値を創る

大阪在住の経営コンサルタントのブログです。

吉野家は、赤字脱却したといって喜べるのか?

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吉野家の「超特盛」が想定外のヒットだそうですよ。

ご同慶の至りです。

が、この手のヒットでは、抜本的な経営改善にはならないでしょう。


牛丼屋さんビジネスは、もともと薄利多売のギリギリを狙ったものです。

しかも国内市場は飽和状態で競争が激しいですから、価格を上げるのも難しい。

ちょっとした風が吹けば赤字になったり黒字になったりすることが続いています。


新メニューを出して単価を上げようにも、複雑なメニューは従業員の負担になります。

従業員の給与を上げると途端に赤字になりますから、いまの賃金でやりくりするしかない。ということは、従業員の負担を増やすことも難しい。

できることといえば、量を増やしたり、トッピングを変えたり。その程度のことになります。


今回、超特盛がヒットして赤字脱却したということですが、なんか抜本的な改革が先送りになっただけのような気がします。

厳しい状況は続きますね。

吉野家はいつ根本的な施策を打ち出すのだろうか

吉野家は過去の栄光を捨て去れるのか





ネットフリックスは、本気のディズニーに勝てるのか?

ネットフリックスは本気のディズニーに


(2019年7月11日メルマガより)


動画ストリーミングサービスを提供するネットフリックスの勢いが止まりません。

全世界で1憶5千万人近くの有料会員をかかえ、150億ドル(約1兆6千億円)の売上を誇っています。

無店舗型レンタルビデオの店が、いつの間にか、全世界にその名を知られるようになり、大手映画会社を戦々恐々とさせています。

昨年は、米映画の最高権威であるアカデミー賞にオリジナル作品を送り込み、話題を集めましたが、同時に業界のエスタブリッシュメントたちから露骨な拒否反応をも引き出しました。

それだけ大きな存在になったということです。


DVDの宅配レンタルから始まった


ネットフリックスの創業は、1997年。ネットで注文を受けて宅配する形のレンタルDVDの店でした。

パソコンやスマホで注文をすると、自宅にDVDが送られてきます。DVDを観た後は、返却用封筒でポストに投函すると返却完了です。

料金は月定額のサブスクリプションモデルです。返却期限がありませんから、延滞料もありません。

(創業者が、レンタルDVDを返し忘れて高額の延滞料を払わされた経験に基づいて発想されたといわれています)

このシステムが当たり、爆発的な人気を博します。宅配DVDのビジネスは、日本では、ツタヤディスカスや、DMMが、真似して成功していますね。

ネットフリックスが優れていたのは、ネットで注文を得る仕組みなので、顧客データが収集しやすいということでした。

どんなDVDが人気があるのか。どのような顧客層は、どんなDVDを好む傾向にあるのか。

アマゾンと同じく、自動で顧客に好みのDVDをタイミングよく提示することができますし、さらには、こうしたビッグデータを蓄積し、武器にすることができました。


動画ストリーミングサービスで進撃


ネットフリックスは、2002年に株式上場して資金を得ると、2007年、動画のストリーミングサービスに乗り出します。

DVDを配送したり返却したりする手間がなく、その場で即時動画を視聴できるサービスは、ユーザーにとっても、事業者にとっても合理的です。

通信環境が整備されつつある今、DVDが動画配信に置き換わるのは、自然な流れです。しかし、レンタルビデオ店を運営するライバル会社は、店との共食いを恐れて手を出しにくい事情がありました。

無人の地を行くようなネットフリックスの快進撃はここから始まりました。

同社は、映画会社やテレビ局などから、番組を配信する権利を購入し、自社サイトでの配信を開始しました。

料金は月定額です。全世界でおおむね1000円程度。会員になると、すべての番組が自分のタイミングで見放題です。

アメリカではテレビは有料放送のケーブルテレビが主流ですが、1契約1万円以上になるのが普通です。その代わり複数チャンネルを視聴することができますが、ユーザーにとっては、興味のないチャンネルの分もあわせて料金を支払っていることになります。

そんなユーザーの不満を取り込んで、ネットフリックスは爆発的に受け入れられました。


「ゴミ収集業者」と嗤われる


当初は、映画会社もテレビ局も、ネットフリックスの登場を歓迎していました。

彼らにとって、過去の作品は、あまり使い道がありませんでした。そんな作品に、ネットフリックスは、高い使用料を支払ってくれます。

ある映画会社の幹部などネットフリックスのことを「ゴミ収集業者」と呼んで蔑んでいたほどですが、作品の数が多いと、その料金は年間数十億円となりますから、とても馬鹿にできた存在ではありません。大切な収益源です。

また近年、製作費が高騰するハリウッド映画は、コケる可能性が少ないシリーズものを多く手掛けるようになっています。

シリーズものをヒットさせるためには、過去作をなるべく多くの人に観てもらわなければなりません。

そんなとき、ネットフリックスのようなサービスは実にありがたい存在です。勝手に新作映画の宣伝をしてくれているようなものです。


ドラマも同じですね。ヒットドラマの第二シーズンが始まる際は、やはり過去作を観てもらいたい。

テレビ局は、昼間の時間に再放送するなどして盛り上げようとしますが、ネットフリックスはそれを補完してくれています。

まさにWIN−WINの関係が出来上がっていました。


ヒット作の作り方を習得


ところが、その間、ネットフリックスは、恐ろしいデータを蓄積していました。

なにしろインターネットにつながっているので、データを収集しやすい。

どんなユーザーは、どのジャンルの作品を好むのか?どんな俳優が好まれるのか?監督や脚本はどうか?

ユーザーが、視聴を中途で止める場面はどこか?どんな場面のどんなセリフは早送りされるのか?どのようなストーリー展開は好まれるのか?飽きられるのか?

全世界の膨大なデータを収集蓄積し、分析していますから、どんな映画会社よりも、ヒットする作品、好まれる作品を理解していることになります。

そんなネットフリックスが、自社でオリジナル作品を作ろうとするのは、自然な流れです。

何しろ、ヒットの方程式を理解しているのです。しかもその方程式はグローバルヒットだけではありません。特定のマニア層に受ける作品にも対応しています。

ハリウッド映画が、あまりにも万人受けするものに対応しすぎている現状、むしろネットフリックスは、作家性の強い尖った作品を手掛ける傾向にあります。

それが、ハリウッド映画への差別化となり、通の映画ファン、ドラマファンを惹きつけています。(優秀な演出家や俳優も惹きつけています)


連続ドラマ一気見の快感


同時に、ネットフリックスは、テレビ対応を進めてきました。パソコンやスマホで観るしかなかった過去から、いまは大きなリビングのテレビで観ることができます。

最近のテレビのリモコンには「NETFLIX」のボタンが設置されているものが増えてきました。これも同社の営業の賜物です。相当の費用をかけたのでしょうが、それ以上の恩恵があります。

リビングの主役であるテレビに進出したネットフリックスは、ことドラマに関する限り、テレビ局と肩を並べる存在となりつつあります。

そもそも新作ドラマを1週間に1度のペースで観る必要があるのでしょうか?

それよりも、全てが完結した後に一気見するほうが、合理的ではないか?

特にドラマは、続きが気になる終わり方をしますから、すぐに観たくなる需要に応えらえるのはアドバンテージです。

漫画もそうですね。週刊誌で連載を一話づつ追いかけるより単行本になってから読むという人も多いはずです。

ちなみに私は一気見が好きなタイプです。

そんなユーザーが増えてきたとすれば、テレビでドラマを観る人が少なくなったとしても、不思議には思いませんよね。

映画も同じです。少し待てばネットフリックスで観れるようになるのだから、わざわざ映画館に行かなくてもいいようなものです。


映画は動画配信で充分だと気付かれた


ここにきて、映画会社やテレビ局は、ネットフリックスがただのごみ収集業者ではないことに気づきました。

それは、人の作品を使ってヒット作の作り方を学び、優秀な演出家や俳優を集めて実際にヒット作を作り、従来のテレビ局から視聴者を奪う存在です。

さらにそれは、映画の祭典であるアカデミー賞にも作品を送り込み「映画は、必ずしも映画館で観なくてもいい!」と観客を啓蒙しようとする存在です。

一部の映画人は「おれは大きなスクリーンで観ることを前提に映画を作っているんだ!」と怒りの声を上げています。

また一部の映画人は「今の映画会社は万人受けを狙いすぎるので面白くない。むしろネットフリックスのほうが、好きにさせてくれる」と歓迎しています。

賛否両論あるものが、その後、時代のムーブメントに育っていくことが多いものです。

たぶん一部の映画はより体験型になり、大画面大音響効果を狙ったものになっていくのでしょうが、その他の多くは、動画配信で充分だとなるはずです。

もはや動画ストリーミングサービスは、無視できないところか、主要ジャンルの一つとして認められた存在になったといってもいいでしょう。


コンテンツの帝王ディズニーの登場


ネットフリックスの興隆に合わせて、多くの動画ストリーミングサービスが立ち上がってきました。

最大手は、アマゾンプライムビデオです。こちらはアマゾンプライム会員のためのサービスという位置づけですが、それでも多くの映画やドラマが見放題となっています。

アメリカではHuluも大手です。その他、ドコモのdTv、auビデオパス、U−NEXT、テレビ番組に特化したParavi、スポーツ専門のダゾーンもあります。アップルも参入を決めています。映画会社のタイムワーナーもそうです。

多くの追随者が現れるのは、トップ企業のネットフリックスにとっては歓迎すべきことです。裾野が広がると、トップ企業が最も恩恵を受けることになります。


しかし、世界最強のコンテンツ王国であるディズニーが動画ストリーミングサービスを開始したのは、影響が甚大です。さすがに危機感を抱かざるを得ないでしょう。

なにしろディズニーのコンテンツは強力です。

伝統的なディズニーアニメとその実写版はもちろん、近年、アニメ映画をけん引してきたピクサーも今はディズニー傘下です。

スターウォーズシリーズも実はディズニーの一員ですし、アベンジャーズで大当たりしたマーベル映画も、ディズニーが権利を買い取りました。

老舗映画会社である21世紀フォックスも最近、ディズニーが買収しました。

アニメからSFからヒーローものから名作映画までラインナップを揃えたのは、まさに動画ストリーミングサービスを開始するためだと考えられます。

つまり、ディズニーは動画配信サービスの価値と将来性を充分に理解し、本気で勝ちにきているということです。

今後、ディズニーは、ネットフリックスから自らの作品を引き上げていくと考えられています。

ディズニーのコンテンツは、絶大な人気を誇りますから、それがなくなってしまうネットフリックスにとって、大きな痛手となります。


苦しい立場に追い込まれるネットフリックス


私がディズニーの戦略担当者なら、他社のコンテンツの権利を買い取るようにします。

つまり、ネットフリックスオリジナル以外の作品はすべてディズニーで観ることができる体制を整えます。

こうなると、ネットフリックスはつらい。同社のサービスに加入する意味は、オリジナル作品を観るだけ、ということになってしまいます。

そんなこともあり、ネットフリックスは、オリジナル作品の制作に力を入れています。

現在、同社は85憶ドル(約9180憶円)をコンテンツ制作費に計上しています。ハリウッド映画でも100本作れる規模です。

良質なコンテンツが増えれば、会員の退会を食い止めることができるかもしれません。

それでも、ディスニーのコンテンツ群は強力です。

すでに確固たる世界観を持った作品群が多く、コアなファンがついています。これをしのぐ魅力を作ることは簡単ではありません。

こればかりは歴史的な蓄積がなせる業ですから如何ともし難い。

ディズニーは今回のサービスを開始する前に、スポーツ専門チャンネルや、ローカルなストリーミングサービスの運営を経験しており、技術的にも大きな問題はなさそうです。

となると、本気になったディズニーに太刀打ちするのはなかなか難しいということになってしまいます。


イマイチはっきりしないディズニーの戦略


もっとも、今回のディズニーの配信サービスは、ネットフリックスに比べて低価格に設定されています。

これは、オープン記念価格の意味合いでしょうかね。もともと儲かっている会社ですし、コンテンツも豊富なので、低価格でもやっていけるという余裕がなせる業でしょう。

安い価格設定ができるのはいいのですが、それがコンテンツ制作や仕入れに影響するとなると、残念です。いまのコンテンツの豊富さにあぐらをかいているということになります。

既に存在するディズニーオリジナルのコンテンツが観ることができる。というだけでは、コアなファン以外を取り込むのは難しいでしょう。

やはり、ネットフリックスなみの費用をかけて、他社の作品の配信権利を購入すべきですし、自社では独自ドラマを制作すべきです。

特に連続ドラマが必要です。動画ストリーミングサービスの醍醐味はドラマ一気見ですから、ここを充実させなければなりません。(←これは計画しているようです)

資金的背景でいえば、ディズニーの方が恵まれています。ネットフリックスは、毎年お金が足りなくて、それを借金で賄っています。どこかの国の財政のようですな。

体力勝負になれば、ディズニー、アマゾン、アップルが有利です。優位性を発揮できるところで戦うべきですよ。

それなのに、今の時点では、ディズニーは自社ファンだけを取り込めばいいと考えているように写ります。

独自路線をとるのがディズニーの特徴ですが、それにしても覇気がないと思えるのは私だけでしょうか。


新たな価値創造ができるのか


いっぽうのネットフリックスの戦略は、オリジナルコンテンツの制作ということで明瞭です。

同社の強みの一つは、世界展開をいち早く進めていることです。190か国以上で事業展開しています。

各地域の制作者の掘り起こしにも熱心です。日本でいえばアニメ制作に予算をつけて、オリジナル作品を作ろうとしています。

ネットフリックスは、ローカル作品といえども、世界展開することを基本にしていますので、そうした中から世界的なヒット作が生まれるかもしれませんし、著名な演出家や俳優が生まれるかもしれません。

同社の取り組みが、各地域のコンテンツ制作者を育成することにつながれば、それは文化的にも意義のあることですし、同社の地位の安定化にもつながります。

世界中で作られた作品が、一つのストリーミングサービスで観ることができて、しかも世界で受けるとなれば、これはディズニーにはないスケールの大きな価値創造だといえます。

ディスニーのコンテンツが画一的すぎてつまらない!と言われるようになるまで、ネットフリックスには、世界中の多様な価値観を背景にした作品群を生み出してほしいと思います。


アマゾンの取り組みは、もう少しラフです。各地域にけっこうな予算を配分しているようですが、著名人を起用しながらローカル展開にとどまっています。

日本人の作るものは日本で観られればいいや。という展開です。

アマゾンプライムの会員サービスなので、大きな方向性などなくていいという姿勢なのでしょうかね。

その場その場で対応するアマゾンらしい取り組みだとは言えますな。


このほか、アップルがどのようなサービス展開をするのかも未知数です。


ちなみにアメリカにおけるネットフリックスの視聴時間は、まだ10%程度(テレビ視聴時間の内)だといいます。いわゆる市場的影響シェア(10.9%)を超えるか超えないかというところで、これから存在感を示すシェアに入っていきます。

戦いはまだ始まったばかりです。

大いに競争して、ユーザーに恩恵を与えてほしいと思います。


《参考》





ぺんてるとコクヨ またかよ!?と言いたくなるお家騒動がらみの揉め事

ぺんてるとコクヨ


(2019年6月27日メルマガより)


文具大手のコクヨが、筆記具メーカーのぺんてるの筆頭株主になったというニュースが流れたのは、1カ月ほど前のことでした。

文具、筆記具ともに、将来性に疑問が残る業界です。

特に総合文具メーカーのコクヨは、国内市場が少子高齢化により先細りですから、危機感は大きい。

比較的海外展開が進んでいる筆記具メーカーの販路と営業ノウハウが欲しいはずです。

一方、ぺんてるとすれば、さらに海外展開していくための資金がほしいところ。

両社の思惑が一致した両想いの提携話だと思っておりました。


ところが、その後のニュースを見ると、雲行きが怪しいですね。

コクヨ側は、ぺんてるのことを「素晴らしい会社」と持ち上げていますが、ぺんてる側は(コクヨのやり方は)「一方的だ」と警戒感を隠そうとしていません。

いったい何があったというのでしょうか。


ぺんてるの「お家騒動」


ぺんてる側が、コクヨを警戒する裏側には、過去の「お家騒動」が絡んでいるようです。

ぺんてるは、筆や硯の卸問屋を祖にした会社です。戦後の1946年に、株式会社化され、筆記具メーカーとして成長していきました。

代々創業家の人が社長を務めてきましたが、2012年に3代目の社長が解任されてしまいます。

どうやら海外で豪遊したり、遅刻や欠勤を繰り返すなどよろしくない行状があったらしい。会社も業績不振で、放漫経営の責任をとらされた形です。

辞めさせられた創業家の前社長は、返り咲きを画策するものの、親族の支持も得られずに頓挫。

諦めた彼は、自分の持ち株を日系ファンドを運営するマーキュリアインベストメントに売却します。

もともと創業家直系の筆頭株主が売却したのだから、マーキュリアが筆頭株主になりました。

さて後を継いだのは、工場長などを歴任した生え抜きの人物です。この方の手腕があったのか、ヒット商品も出るようになり、業績は回復しました。

2018年3月期の連結売上高は409億円。

ここ数年の売上高は、どちらかというと横ばいですが、利益は出るようになっています。前社長が解任された当初、赤字続きだったことを思うと、順調にきたと言ってもいいのではないでしょうか。


だまし討ちのような売却


ぺんてるといえば、サインペンや筆ペン、ボールペン、シャープペンシル、消しゴムなどを扱う会社です。

最近では、絶対に芯が折れないという触れ込みの3000円もするシャープペンシルをヒットさせています。

ぺんてるに限らず、日本の筆記具専用メーカーは、ユーザーの期待の上をいく面白い商品を開発し、ヒットさせている印象があります。

その努力には、頭が下がります。


しかし、いま、順調だからといって、将来的に明るいわけではありません。

ペーパーレスの時代に、筆記具が今まで通り売れ続けるのか?と言われれば、危機感を抱かざるを得ないでしょう。

そこでぺんてるの現経営陣が、生き残りのために選んだ施策が、文具大手プラスとの提携だったようです。

ちなみにプラスは、連結売上高1772億円。コクヨに次ぐ日本2位の総合文具メーカーです。

1990年代には、文具通信販売のアスクルで一大ブームを巻き起こし、世間をあっと言わせたこともありました。(現在は、ソフトバンクグループに売却)


そのプラスとどのような提携をしようとしたのか、外部のわれわれに詳細はわかりません。

分かっているのは、筆頭株主であるマーキュリアが提携に反対したことです。

マーキュリアの言い分は「その提携でぺんてるの価値が上がるとは思えない」

ところが、ぺんてるの経営陣は提携を強行しようとします。

経営陣と筆頭株主の対立というのも異様ですが、この場合、両者の歴史が絡んでいるように思えるので複雑です。

すなわち、マーキュリアの背後にはやはり創業家である前社長の影がちらついているのでしょう。現経営陣としては、なるべく距離を置きたいわけです。

ぺんてるにとって不利だと言われる提携話でも強行しようとした理由の一端がここに見えます。

最終的にはプラスに資本を入れてもらって、筆頭株主を交替させるところまで考えていたのかも知れませんね。


慌てたのはマーキュリアです。せっかく筆頭株主になったのに、現経営陣は言うことを聞かない。

株を売ってしまおうにも、ぺんてるの株は、譲渡には取締役会の承認が必要だという制約があるので、簡単には売ることができません。

そこでマーキュリアが考え出したウルトラCが、投資ファンドそのものを他社に売却することでした。

ここで登場するのが、文具最大手のコクヨです。コクヨが、101億円を投じて、ファンドを取得しました。これで、間接的にですが、ぺんてるの筆頭株主に躍り出たのです。

ぺんてる側とすれば、プラスとの提携を画策していたところ、突然、筆頭株主にコクヨが登場したのですから、青天の霹靂です。だまし討ちみたいな売却劇ですから、納得できるはずもありません。


なぜコクヨはぺんてるを欲しがったのか


コクヨは、売上高3151億円、文具、オフィス家具を手掛ける日本最大手の総合文具メーカーです。

強者企業らしく、文具店、量販店などに鉄壁の販売・営業網を作り上げており、高度成長期には、文具業界の松下電器といった風格のある会社でした。

依然、営業利益率は5%以上を保っており、収益力が衰えたわけではありません。

が、少子高齢化の日本市場に根を張り過ぎたというのは、マイナス要素になってしまいます。

コクヨが今後、じり貧に陥らないためには、

(1)文具だけに頼るのではなく、オフィス内ソリューションにサービスを広げる

(2)オフィス商品に止まらず、飲食、ホテル、小売店などにサービスの幅を広げる

(3)強い商品を開発して海外展開する

といった方向性が考えられます。

いずれの方向にも先行企業が存在しており、文具の王者コクヨといえども簡単な道ではありません。

しかし、泣き言を言っていたら、生き残れるはずもありませんので、やっていかなければなりません。

その一環として、海外販路を持つ筆記具メーカーとの提携は、コクヨとしても是が非でも推し進めたい施策でした。


海外展開に弱いのは、プラスも同じです。日本市場で充分儲けられた時代が長かった総合文具メーカーの今の課題ですな。

これに対して筆記具メーカーは、商品の幅が狭いので、日本市場でいくら売っても限度があります。勢い、海外展開に活路を見出そうとします。

パイロット、三菱鉛筆、ぺんてる、ゼブラともに、海外販売比率が高くなっています。

株式市場も、海外展開姿勢を評価する傾向にあり、筆記具専用メーカーの株式時価総額は総じて高くなっています。

パイロットなど、売上高はコクヨの3分の1程度なのに、株式時価総額はコクヨを凌いでいるほどです。

株価は、企業の将来価値を表す側面もあるので、コクヨよりも、筆記具専用メーカーの方が将来性があると目されていると言ってもいいでしょう。


お家騒動をしている場合ではない


もっとも、筆記具専用メーカーの将来性がバラ色なのかと言えば、そうではない。

先に書きましたが、ペーパーレスが進む時代に、筆記具の需要が右肩上がりになるとは思えません。

筆記具専用メーカーは、今後、ペーパーレス時代の筆記具を開発するか、あるいは他の分野のビジネスを作っていかなければならないでしょう。

いわば、総合文具メーカーも筆記具専用メーカーも、これから二枚も三枚も殻を破らなければいけない立場にあり、崖っぷちの企業同士の苦肉の提携策です。

くっついたからと言って、化学変化が起きて、素晴らしいビジネスが立ち上がるなんて能天気なことは考えられません。

そんな状況なのに、お家騒動を引きずって、あの企業と組むのはいやだとか、あの人の影が見えるからダメだとか言っているのはいかがなものか。

そんな場合じゃないでしょうと言いたくなりますな。


記事を読む限り、ぺんてる側の拒否感はそうとうのものがあるようで、このままコクヨとすんなり提携するとは思えない状況です。

かといってプラスとの提携が格別の価値を生むとは、関係者も感じていないようです。

結局、戦略方向性を前提とした話ではなく、組織の維持や関係者個人の思惑が前面に出た騒動だということですな。

まったくもって残念なことです。


参考:



驚異の高収益企業キーエンスの理由

キーエンス
(2019年6月13日メルマガより)



キーエンスの勢いが止まりません。

2019年3月期の決算によれば、売上高5870億円。営業利益3178億円。営業利益率は、なんと54%です。

これは7期連続の最高益更新でもありました。

一般に製造業といえば営業利益10%もあれば、高収益だと謳われます。

優良企業と目されているオムロンで営業利益8.9%、高収益で知られるファナックでも25.7%です。

それなのに、コンスタントに50%以上の営業利益を稼ぐキーエンスは、全く以て規格外です。

そんなの従業員を安い給与で使ってるんじゃないの?と疑いたくなりますが、この会社、報酬が高いことでも有名です。

従業員の平均収入は2088万円とか。それだけの報酬を支払いながらどうやって利益を上げ続けているというのでしょうか。


高収益の理由は、営業力


キーエンスは、自動制御機、測定機器などを製造販売するメーカーです。現在の本社は新大阪にあります。

自動制御機や測定機器は、自動化された工場のラインで使用される機器です。今の工場は高度に電子化されていますから、それを制御するコンピュータが必要ですし、あるいは自動で不良品を検知する装置が必要となります。そのような機器を扱っています。

ただ同社が単に出来合いの機器を販売しているだけでは、他のメーカーとあまり変わらない収益しか上げられないでしょう。

キーエンスが得意とするのは、ソリューションを含めた販売です。顧客企業の状況に応じて、どれだけラインを効率化できるのか、不良率を減らせるのかを提案します。もし年間数千万円分の不良品を削減することができれば、少々高い機器を購入しても充分もとがとれると工場側は考えるはずです。

キーエンスがやっているのは、顧客企業の個別事情に応じた特殊製品の販売なのか?

と思ってしまいそうですが、そうではありません。

実は、キーエンスは自社で製造工場を持たないファブレス経営を実施しています。自社でやるのは商品の企画、設計のみ。あとは協力工場に外注しています。

そんな企業が、いちいち商品の個別カスタマイズなんてやっていたら、経費倒れになってしまいます。

だから基本的に同社は、個別カスタマイズには応じていません。既製品の販売のみです。


ますますわからなくなってきましたね^^;

既製品を販売して、それだけ高く売れるとはどういうことか?

しかも、製造は外注に依頼しているわけですから、ものすごく高い品質で勝負する会社ではありません。

ということは、(1)既製品でも顧客が「欲しい!」と思えるような商品を他社に先駆けて販売する。

あるいは(2)既製品を使って顧客企業の問題を解決するような高度な提案をしている。

ということになります。


高度な提案をするためには営業の能力が高くなければなりません。また、顧客が欲しがる商品を企画するためには、それだけ濃い情報を集めてくる営業の力が必要です。

簡単に言ってしまえば、キーエンスとは、むちゃくちゃ営業力のある会社だということです。


ソリューション提案営業


一般に製造業といえば、技術力、生産力で勝負しようとしています。営業力は二の次という会社が多い。

元請け企業がしっかりしていて、その営業力の傘の下で製造だけしていればいいという状況では、それが合理的です。

ところが、キーエンスがユニークなのは、早い時期から下請け仕事に見切りをつけ、直接顧客開拓する道を選んだというところです。

自分で顧客を獲得するためには、営業力が必要です。小さい会社であればなおのこと、会社の看板に頼らなくてもいいほどの強い営業力が必要となります。あげくの果ては、生産力そのものも外部の協力工場に出してしまって、営業力で勝負する方向性をとりました。

製造業なのに、営業力で勝負しているというのがキーエンスの特殊性です。


じゃあ、一体、キーエンスはどんな営業をやっているのでしょうか?

このあたり、同社はあまり情報を表に出さない会社のようで、詳細はよくわかっていません。

ただ同社の営業の方や元社員の方から漏れ聞くところによると、そこまで特殊なことをやっているわけではないようです。

年収2000万円超の営業というと、なにか魔法のような凄いテクニックを持っているような気がしますが、そうではありません。むしろ、ごく一般的な当たり前のことをやっています。

基本的には「ソリューション提案営業」を、きっかりとしたプロセスに従って実行するスタイルです。

解説が必要ですね。

ソリューションとは、問題解決のこと。顧客の悩みや問題が、自社商品を使用することで解消する、というストーリーの提案をするのが、ソリューション提案営業です。

例えば、顧客企業が、原因のはっきりしない不良品の発生に悩んでいるとします。ある一定の割合で不良品が出るのは、製造業として仕方のないことではあるものの、不良品が出ることで、顧客に迷惑がかかるし、無駄なコストもかかります。

できれば不良品は出したくない。しかし、精密機械を作っていると、目に見えない感じ取れないほんの小さな傾きや傷が致命的な不具合を導き出すことがよくあるもの。それは製品ができたのち、不具合が発生してはじめて不良品だったとわかる類のものです。

ところが、ここに、人間では知覚できない微細な異常を感知してくれるセンサーがあればどうでしょう。製品として組み立てる前に、不具合の種を取り除いてしまえば、不良品を世に出さなくて済みます。

優秀な営業は、工場の製造工程を子細に調べ、どの工程のどの部分にセンサーを設置すれば、最も効率的に不良発生を塞げるかを提案します。しかも、そのセンサーを導入することで、年間どれぐらいのコストを削減できるのかまで明らかにします。

もしそのセンサーの購入費用が、コスト削減効果より充分に低いならば、その製品を購入することに何ら不合理はありません。

このように、顧客の抱えている問題がどのように解消されるのかを中心に説明するのが、ソリューション提案です。

もし同じ性能のセンサーを販売するとしても、単に製品の性能を説明するだけでは「この製品を買うとどんな得があるのか」は、顧客に考えてもらわなければなりません。

高い買い物をするのに、わざわざ「何の得になるのか」を自分で考えて、上司に説明し、説得しなければならないのは大変な負担です。

そんな面倒くさいことをするならば、いちばん安いやつを選んで「安いので、これにしました」と報告すれば、上司からの厳しい追及もなく楽ちんです。


営業をパターン化


ソリューション提案なんてムヅイわ!という声が聞こえてきそうですか。かなり能力のある営業にしかできないことだろうと思われるかも知れません。

しかし、いまは、ソリューション提案営業を行うための手順設計が、相当程度、明確にされています。

顧客の絞り込み方

最初の接触方法

信頼関係の作り方

顧客の問題を聞き出す方法

提案のパターン

契約に至る交渉術

契約後のフォロー

に至るまで、パターンを作りこむことが可能です。

パターンやマニュアルがあれば、営業センスのあるベテラン営業でなくても、丁寧に着実にやっていれば、ソリューション営業ができるようになっています。

もちろん創意工夫が必要な部分はあります。ベテランになれば、できることの幅や深さが違ってくるでしょう。

それは仕方ないことです。新人営業は、なるべく経験を積み、上司の指導を仰ぎ、教育訓練を真剣に受けて、練達していかなければなりません。

その育成システムを含めてパターンです。

キーエンスは、営業プロセスの標準化とその習得のための教育訓練を徹底しているようです。


やり過ぎ感のある営業マネジメント


キーエンスの営業の方に営業の方法について聞いたことがあります。

聞き取れたのは、概ね、一般的な営業プロセスに従って行動しているということでした。

一般的な、というのは、リストアップ、アプローチ、ヒアリング、プレゼンテーション、クロージング、アフターフォローという流れのことで、あらゆる営業にあてはまるプロセスのことです。

キーエンスの社内資料として、営業プロセスを図示したものを見せてもらいましたから確かです。

その時は「案外、普通なんだなあ」と思った記憶があります。


ただし、それを実行させるための営業マネジメントに特殊性がありました。

いや、特殊、というのは間違いです。

営業活動のために、目標を決め、それを行動計画に落とし込ませ、フィードバックさせる。というのは、ごく普通のマネジメントです。

ただし、その徹底ぶりが特殊だと言いたくなるものでした。

一般に、営業は一か月単位で目標達成することを求められます。ちょっと厳しい会社は10日ごと、一週間ごとに管理されます。

が、キーエンスは一日単位です。

毎朝、営業各人が今日の目標を公表し、午後にはその進捗状況について説明を求められます。

もちろん、目標というのは売上や利益だけではありません。目標利益を上げるためには、営業として何をしなければならないのか、その行動目標が求められます。

例えば、顧客を何件訪問するのか、何人のキーマンと会うのか、新規の電話アポは何件するのか、提案書は何件出すのか、フォロー訪問は何件するのか。

見込み客は何件確保しているのか、仕掛りの営業案件は何件あるのか、その進捗状況はどうなのか。

最終的な利益を出すためには、そのための行動が必要です。どの行動が、利益に結びつくのかは、会社内のデータを解析すれば、かなりの部分出てきます。

だから、営業は無駄な行動を極力避けて、利益に結びつく行動をとるように厳しく管理されます。

それがキーエンスの場合、徹底し過ぎて、追い立てるというか、追い詰めると言いたくなるような厳しさで行われるらしいです。

ここだけの話ですが、私が話を聞いたキーエンスの営業は、かなり疲弊しているように見えました。

決められたことをこなすのに精いっぱいで、全体的な戦略や方向性を考える余裕があるようには見えませんでした。

その時思い浮かべたのが「能く士卒の耳目を愚にして、之くこと無からしむ」という孫子の言葉でした。(兵隊にはあれこれ考えさせないようにして、逃亡させないようにする)

キーエンスというのは、孫子の忠実な実践企業なのかもしれませんな。


別のキーエンスの元営業が「いい思い出などひとつもない」と言っているのを聞いたことがあります。

合理的なマネジメントも度を越せば、非人間的になっていくのかも知れません。

キーエンスの平均勤続年数は約12年だといいますが、燃え尽きてしまうのも無理ありませんね。

給料が高いというのは、それ以上の仕事がついてくるということみたいです。


生き残るためには営業の力が必要


ここまで追い立てるようなマネジメントは賛成できません。

が、やらなさ過ぎるというのも問題ですよ。

キーエンスの営業方法が好業績に結び付いていることは、確かです。

参考にできる部分は、大いに参考にしなければなりません。

顧客第一主義の徹底。営業のプロセス化、標準化、目標を行動に落とし込む方法、行動をマネジメントする方法。

いずれも理にかなっています。

繰り返しますが、キーエンスが特殊なことをしているわけではありません。むしろその仕組みは、営業の基本原則をとことんまで突き詰めた結果です。

やり過ぎ感はあるものの、その効果は実証されたと考えます。


中小製造業に営業の仕組みを導入することは、私の本業です。

「キーエンスの方法をあなたの会社に」と言えば、キャッチーすぎますかね。

縮小する市場で生き残るためには、営業の力が必要不可欠です。

今からでも遅くありません。どうか営業機能の構築を目指してください。



≪参考≫




日本電産に差し迫る危機

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メモ。平成30年間で、株式時価総額を最も上げたのは日本電産だそうです。69倍。驚異です。

同社はモーターを製造する会社です。永守重信会長がプレハブ小屋で創業した会社が、今や連結売上高1兆5200億円。営業利益1400億円です。

低成長の平成時代に、爆発的に成長したのはなぜか?というと、M&A(企業買収)を活用したからです。

なんと63社買収して、一度も失敗がなかったというのだから、こちらの方が驚異です。ライザップは爪の垢を煎じて飲まなければなりませんよ。

高値掴みをしない体制


日本電産がM&Aで失敗しない理由は、買収価格を極力抑えること、いわゆる高値掴みをしないことがまず挙げられます。

この点については、仲介会社の調査報告に頼らずに、自社の専門チームで企業価値を精査して、買収価格を適正に見積もる体制を整えています。

安く買う、というのは調達の基本ですが、M&Aなんてのは非日常的な取引ですからつい甘い算段で買ってしまう場合が多いようです。が、日本電産は、経験がめちゃ豊富ですから、そこでミスはしないのでしょうね。

(逆にソフトバンクは常に高値掴みしていますが、それでも利益を出しています。方法論が違うのでしょう)


永守会長の細かすぎる指示


M&A成功の秘訣のもう一つは、やはり買収後の経営です。特に1年以内。安く買える企業は、赤字体質であることが多いのですが、そんな企業でも、短期間で黒字化することにこだわっています。

その中心は、徹底した無駄の排除。。と言えば当たり前に聞こえますね。

ただし、徹底ぶりがすごい。永守会長は「マイクロマネジメントの権化」と言われているそうで、伝票は1円単位までチェックするとか。

もちろん買収先の会社には、腹心の幹部を送り込むのですが、その幹部に与える指示が半端なく具体的で細かくて、またそのフィードバックがしつこいらしい。

要するに、ぜんぶ永守会長がコントロールしているわけで、永守会長だから、これだけ成功しているということです。

ちなみに、販売面でも無駄な施策は徹底して省き、シンプルで現実的な「弱者の戦略」にしていくそうです。永守会長は、ランチェスター戦略という言葉は使っていませんが、著作などを読む限り、販売施策は、ランチェスター戦略そのままです。

ワンマン会社からそのワンマンがいなくなれば…


こうなると、気になるのが後継者問題です。

日本電産の体制を見ていると、やはり永守会長のワンマン会社であると思えます。だとすれば、会長が引退すれば、これを維持できるのだろうか。

永守会長は、今年75歳ということですから、かなり差し迫った問題です。

「将の能にして、君の御せざる者は勝つ」

とは孫子の言葉です。(謀攻篇)

将軍が有能で、君主があれこれ言わないのがよい。とは、日本電産の真逆のようですな。

経営トップがいちいち現場に口出ししなくてもいいような方向性や組織体制を持っていることが、生き残る強い組織である、とは真実であると私は思います。

そんな組織を作ってこなかった日本電産はこれからどうなっていくのか。

注視していかなければなりません。





地方のローカル鉄道が一周まわって最前列に出た?話

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メモ。遠州鉄道と静岡鉄道。どちらも中部地方を拠点とする私鉄です。すみません、私は知りませんでした。

その2社が、業績好調で両社とも過去最高益の決算だったとか。

しかもこの2社、表題にあるように、鉄道以外の部分で99%稼いでいるそうです。


鉄道会社は多角化が定石


遠州鉄道のグループ売上高は2138億円。静岡鉄道のグループ売上高は1762億円。

しかし鉄道事業の売上は、遠州鉄道が17億円。静岡鉄道が15億円。吹けば飛ぶような規模しかありません。

もっとも日本の多くの鉄道会社が鉄道一本で経営しているわけではなく、多角化しています。多いのは、沿線開発と絡めた不動産関連事業、小売店事業、レジャー関連事業などです。

つまり「鉄道に乗る理由を作る」ことで鉄道の需要を高めようとしてきた結果、鉄道以外のビジネスが大きくなったという事例が日本中にあります。

関西でいうと近鉄などは、鉄道以外のビジネスが多い会社ですね。

代替ビジネスを自ら手掛けるしたたかさ


ただ、遠州鉄道、静岡鉄道は少し毛色が変わっていて、稼ぎの中心は、自動車の販売です。

両社とも地元でトヨタの販売会社を運営しており、その儲けが大きくなっています。

要するに、鉄道の最大の代替品であった自動車のビジネスに乗っかって、会社を維持してきたわけです。

地元客に移動手段を提供するという理念を突き詰めてきた結果でしょう。こういう会社好きですね。生き残るための、なりふり構わぬしたたかさを感じます。これぞローカル企業ですな。

次世代移動ビジネスの最前線に?


ただ鉄道についても、手を抜かず、規模の小さなローカル路線なりに立派に経営しておられます。

記事では、鉄道も自動車も手掛けてきた経営体制が、MaaSの時代に資するのではないかと言及されています。

ちなみにMaaSとは、Mobility as a Serviceの略で、直訳すれば「サービスとしての移動手段」となりますか。電車、タクシー、バス、カーシェアをひっくるめて、移動する最適方法が一括で提供されることにより、ユーザーの利便性や、交通渋滞などの問題を解決しようという考え方です。

次世代の交通 MaaS

このMaaSは、IT技術やAIの活用を前提にしています。これから出てくる自動運転車や、有人ドローンなども範疇になってくるでしょう。

実証実験は、都市部で行うよりも、地方都市の方がやりやすいでしょうから、遠州鉄道や静岡鉄道が、MaaSの最先端企業になるという考え方もあり得ることだと思います。

まさに一周回って最前列に出た、みたいな話ですよ。

面白い観点だったので、覚えておきたいと思います。







キーエンスの営業はけっこう普通らしい

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キーエンスは、売上高5871億円。営業利益3179億円。営業利益率54%という常識外れの好業績を持つ会社です。

FAセンサーなど計測機器のメーカーですが、自社では工場を持たず、すべて外注でまかなっています。

競争力の源泉は、顧客が求めるものをいかに提供できるか、その一点にあります。だから営業力が鍵となります。


製造業はいいものを作っていればいい。営業なんていらない。とひと昔前の製造業者は言っていたものですが、実際には、いいもの=顧客が必要とするものが何かを理解するには、営業の力が不可欠です。顧客とじかに接している人間が有能であるからこそ、何が必要かを知ることができて、いいものが製造できるわけです。

それを体現しているのがキーエンスです。

だから我々営業コンサルタントにとって、実にいい事例となってくれます。

プロセスの標準化とその徹底


ただ、キーエンスの営業がよほど特別かというとそうではないらしい。あまりノウハウを表に出さない会社なので、わかりにくいのですが、記事にあるとおり、オーソドックスな営業をやっているようです。

営業プロセスをかっきりと作って、ノウハウを標準化し、全員で共有するというスタイルです。

あまり標準化すると創意工夫がなくなるという意見もありますが、実際にはそうではありません。むしろ、決まり事がある方が、その上の余地で工夫しますので、有効なノウハウや経験を蓄積することができます。

標準化した中での教育と実践、そのフィードバックを徹底しているのでしょう。

最近の営業本をみていると、むりやり”売り”を作るために変なノウハウを付加したり、自己啓発本の変形みたいなものが増えてきたので、嘆かわしい限りです。

実際の営業ノウハウは、当たり前のことを徹底することだとキーエンスは教えてくれています。

普通だからといって楽なわけではないようです


従業員の平均年収が2088万円だとか。それは仕事もきついでしょうな。

勤続平均が12年あまりということですから、従業員にとって居心地のいい会社ではないかも知れませんが、その分、”卒業後”の活躍も目立つことになっています。営業力は一生ものですから、きつい甲斐はあるはずですよ。

孫子は「間諜に高い報酬を支払わない国は亡びる」と言っていますが、キーエンスはまさにその教えを守っているかのようです。

※間諜とはスパイのことですが、情報をとってくる者=営業、だと私は捉えています。

キーエンスほど…とまでは言いませんが、すべての製造業は、営業力を強化すべきです。

特に小さな製造業は、営業なくして生き残れないと思いますよ。




「いいちこ」がアメリカ開拓に挑戦

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メモ。麦焼酎のいいちこを製造販売する三和酒造が、アメリカ開拓を進めているという記事です。こういう努力には全くもって頭が下がります。

いいちこといえば、癖のない口当たりのいい焼酎を業界に先駆けて開発し、全国展開したパイオニア企業です。

ただし全国展開に血のにじむような営業の努力があったのかというとそうではないらしい。基本的には問屋流通路に乗って展開していった模様です。

「下町のナポレオン」と言ったコンセプトや印象的なテレビCMはうまいと思いますが、やっていたことは広域戦、遠隔戦、総合戦、いわゆる強者の戦略です。

いい時代に展開できたんですな。

今はそうはいきません。競争激化していますので、パイオニアで強者企業といえども、営業力強化に努めなければなりません。

特に、アメリカ開拓という戦略には、強い営業力が必須です。

その様子が伺い知れる記事です。


同社がアメリカ進出したのは30年前だとか。進出というか、現地問屋と契約したということでしょうな。それだけでは展開は進みません。

海外では和食ブーム、日本酒ブームが起きたと聞いていますが、焼酎はその波に乗れなかったらしい。

そこで同社は、自らの営業力で開拓に乗りだした、つまり弱者の戦略(接近戦)に挑んでいるというわけです。

同社が進出の足掛かりにしようというのがバーです。

「サンフランシスコのバーでは小規模なメーカーの銘柄を多く置いており、それらを自由にアレンジするクラフトカクテルを提供するバー文化がある。ここであれば我々の焼酎のテストマーケティングにぴったりだと思った」

入り込みやすいところから入る、というのは市場開拓の基本ですからね。しかも、バーの特性に合わせた商品開発まで行っているので、意欲充分です。

ただ今の時点ではどの程度受け入れられるのかは未知数です。おそらく方針転換を強いられることもあるでしょう。仮説、見込み違い、修正、再挑戦の繰り返しが新規開拓営業活動ですからね。その意味で、テストマーケティングと考えた方がいいのでしょう。

こういう泥臭い営業活動をする会社が大好きです。頑張ってほしいものですよ。






井上尚弥が導く異次元のボクシングビジネス

井上尚弥が導く

(2019年5月30日メルマガより)


さて今日はボクシングの話です。

実は、このメルマガではなにげにボクシングの話題をしています。




先日、「ワイドナショー」で松本人志が「凄さを世間がイマイチわかっていないのが悔しい」と発言していました。

井上尚弥選手のことです。

5月18日、WBSSの準決勝として行われたイギリスでの試合を受けての発言でした。

まったくもってその通り。

ほぼ全てのボクシング関係者が「日本史上最高」だと認める天才ボクサーの全盛期を目の当たりにしても、日本ではそれほど話題となっていません。

ボクシングもマイナーな競技になってしまったんだなあと寂しい気持ちになりますな。

そこで今回は、井上尚弥を通じて実現してほしいと思うビジネスの話を書かせていただきました。

どうか最後までお読みください。


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いやぁ、驚きました。

「強い」なんてものじゃないですね。

5月18日イギリスのグラスゴーにおいて行われたWBSS(ワールド・ボクシング・スーパー・シリーズ)バンタム級準決勝において、井上尚弥が、エマヌエル・ロドリゲス(プエルトリコ)を2ラウンドTKOに退けました。

その様子に世界のボクシングファンが衝撃を受けました。

世界に衝撃を与えた圧勝劇


WBSSとは、ボクシングの各団体のチャンピオン同士をトーナメントで戦わせて、真の世界一を決めようという趣旨のイベントです。

確かに今、ボクシングチャンピオンの認定団体が多すぎて、誰がいちばん強いのかわかりにくい。

バンタム級(53.524kg以下)だけでも4人の正規チャンピオンがいます。そこに暫定チャンピオンやスーパーチャンピオンなどが存在するために、わけがわかりません。

そんな事情ですから、チャンピオン同士戦わせて、誰がいちばん強いのか知りたいというのは、ファンの総意です。実にいいイベントではないですか。


もう一つ、今のボクシングビジネスをアメリカの一部の大物プロモーターが牛耳っているという事情もあります。

大物プロモーターは、人気ボクサーを抱えて離しませんから、その他のプロモーターは試合すら組みにくい。

そこで人気ボクサーのいない階級を選んで始められたのがWBSSです。いわば、人気ボクサーがいないのを逆手にとって、人気者を作ってしまおうという企画です。

WBSSはこれまで、クルーザー級(90.719kg以下)、スーパーミドル級(76.204kg以下)、スーパーライト級(63.503kg以下)、バンタム級(53.524kg以下)で開催されています。

目論見通り、クルーザー級を制したオレクサンドル・ウシク(ウクライナ)は、世界的な知名度を得て、人気ボクサーとなりました。

そしてバンタム級の人気ボクサー候補として大いに期待されていたのが、日本ボクシングの最高傑作と称される井上尚弥でした。


井上尚弥は、既にライトフライ級(48.988kg以下)、スーパーフライ級(52.163kg以下)、バンタム級の3階級で世界チャンピオンとなった実力者です。

日本でその実力を疑う者は皆無ですが、世界的にはまだスーパースターとは言えません。YouTubeで試合動画を観たボクシングマニアに高く評価されていたぐらいです。

しかしバンタム級に上げてからの井上は、WBAチャンピオンのジェイミー・マクドネル(英)、元WBAスーパーチャンピオンのファン・カルロス・パヤノ(ドミニカ)という強豪を二人とも1ラウンドでKOしてしまっていました。

好事魔多し。そんなうまい話がいつまでも続くわけがありません。今回の相手のエマヌエル・ロドリゲスは、世界的にも実力を評価されるボクサーでした。素人ファンは連続KOを期待するけれど「さすがに今回は苦戦するだろう」「実際の実力は五分五分」というのが業界の見解でした。

果たしてロドリゲスの実力は本物でした。1ラウンド、井上の強打を恐れず攻勢に出たロドリゲスは多彩なパンチで井上を下がらせました。ロドリゲスがKOするのではないかと思った人もいたはずです。

ところが井上は様子を見ていただけだったようです。2ラウンド、攻撃のスイッチを入れた井上に、ロドリゲスは為すすべもありませんでした。技術の粋を集めたような高度な左フックを顔の真ん中に浴びて1度目のダウン。足がふらつく中、左右のフックをボディに入れられて2度目のダウン。もうここで戦意喪失していたロドリゲスですが、悲しいかなボクサーの性で立ち上がってしまいます。すぐに左フックをボディに入れられ悶絶しながらダウン。ここで試合をストップされました。

2度目のダウンのあと、セコンドの方を向いて「むりむりむりむり」と半泣きで首を振るロドリゲスの顔アップが映った時には戦慄を覚えました。IBFチャンピオンにして井上尚弥の最大のライバルと言われた19戦無敗のボクサーが、恥もプライドも捨ててセコンドに試合を止めてくれと懇願したのです。

これを衝撃と言わずに何というのでしょう?

日曜日の「ワイドナショー」で松本人志が「この凄さを世間がイマイチわかってないのが悔しい」と発言していましたが、その通りです。

世界のボクシング関係者も同じ思いを持っているのではないでしょうか。

「井上が世界最高だとわからないのか?」マイク・コッピンガー(FOXスポーツ記者)

「井上の前にはまだまだ敗者が登場する」マイケル・ベンソン(英ラジオ局記者)

「すべてが信じられない」トム・グレイ(リング誌記者)

「本物のモンスターだ」フランク・ブリオーニ(元スーパーミドル級欧州チャンピオン)

「彼の一撃は食らいたくない」デーブ・アレン(英・ヘビー級ボクサー)

「全員逃げた方がいい」ビリー・デイブ(豪・元IBFフェザー級チャンピオン)

「もう誰も止められないでしょ」長谷川穂積(元バンタム級、スーパーバンタム級、フェザー級チャンピオン)

「攻略法がわからない」山中慎介(元バンタム級チャンピオン)

「井上に勝てるのは井上だけだ」イグナシオ・ベリスタイン(メキシコ・著名トレーナー)


大物プロモーターが接触


この活躍を受けて、大物プロモーターの一人ボブ・アラムが率いるトップランク社から契約のオファーがあったことが報道されています。

トップランク社とは、古くはモハメド・アリ、ジョージ・フォアマン、シュガー・レイ・レナード、マービン・ハグラー、ロベルト・デュラン、オスカー・デラ・ホーヤ、現在でも、テレンス・クロフォード、ワシル・ロマチェンコ、タイソン・フューリーなど錚々たるボクサーをプロモートしている会社です。米国のボクシングビジネスの中心を担っていると言っても過言ではありません。

それだけに、井上尚弥への契約オファーは異例です。米国では、軽量級選手は人気が出ないからです。

トップランク社がビジネスにならない行動をするはずがありません。つまり井上尚弥には、ビッグマネーが動く要素があるとみなされたのです。いかに井上尚弥が規格外の存在であるかを示しています。


ボクシング・ビジネスは、一部の人気ボクサーに大金が集中するシステムとなっています。

先ほども言ったように、世界チャンピオンというだけでは人気は出ません。本当に強くて、しかもキャラの立ったボクサーでないと人気も出ないし、報酬も上がらないのです。

その分「本当の人気ボクサー」の報酬は常軌を逸するレベルとなります。昨年大晦日、日本の那須川天心をKOしたフロイド・メイウェザーなど過去には1試合144億円なんて試合もありました。

(那須川との3ラウンドのエキシビジョン試合でも10億円稼いだそうですよ)

このように今のボクシングビジネスは、稼げる人気ボクサーを中心に組み立てられる傾向にあります。

キャラが濃くて実力もある人気ボクサーは、客を呼べるので、いつもメインで試合が組めます。

人気のないボクサーは、少しでも目立とうと、人気のあるボクサーの相手となるか、前座試合でインパクトのある勝ち方をしなければなりません。

勝つだけでは人気が出ません。より派手な勝ち方が必要です。(地味に勝つよりは派手に負ける方が人気がでるほどです)

ボクシングは興業ですから仕方ありません。お客様あってのビジネスですよ。


井上に足りない「キャラ」


その意味では、井上尚弥は、まだ世界の人気ボクサーといえるようなキャラ付けがありません。

井上尚弥のことをフィリピンの英雄マニー・パッキャオと比較する報道もありましたが、残念ながらその域には達していません。

いや、実力は充分です。軽量級サイズとしては、井上は過去最高のボクサーと言っていいでしょう。

しかし井上にはキャラを際立たせるようなストーリーがまだ足りないのです。


軽量級時代のパッキャオは、うだつの上がらない風采もあって軽んじられていました。「強いけど、ダサい奴」みたいな扱いです。

だからプロモーターも「かませ犬」としか見ていません。かませ犬とは、スター選手を引き立てる負け役です。

そんなわけで無理目の試合ばかり組まされていました。そらそうですな。かませ犬が勝ってしまったら、せっかく育てたスター選手がダメになってしまって大損ですから。

しかし空気を読まないパッキャオは、かませ犬のくせにスター選手をガンガン倒していきました。

「なんだこいつは?」と思われたのでしょう。ミドル級を含めて6階級を制覇したスーパースター、オスカー・デラ・ホーヤとの試合を組まされました。(ウェルター級(66.678kg以下)契約)

当日、二人の身体のサイズを観た観客は「さすがにこれは無謀だろー」と呆れました。パッキャオはふたまわりぐらい小さいのです。こうなるともう色物試合ですな。

ところが試合は逆に一方的になってしまいました。なんと小さなパッキャオが大きなデラ・ホーヤを滅多打ちにして試合放棄に追い込んだのです。

ここに来て、アメリカの観客は改めてマニー・パッキャオの底知れぬ実力を知ることになりました。

その後、パッキャオが世界から畏敬される偉大なボクサーとしての地位を確立したのは周知の通りです。


1試合10億円を超える!?


このようなストーリーが井上にはありません。これから作れるのか?というと難しいでしょう。トップランク社や井上サイドが、パッキャオに課したような潰されてもおかしくないような試合を組むとは考えにくいですから。

いや、何もパッキャオの進んだ道をなぞる必要などない。井上の実力からすれば小細工などしなくてもスーパースターに成り得る。という声もあるでしょう。そうかも知れません。

通常、軽量級のボクサーの報酬は、高くても2000万円程度だそうです。それでも井上は特別ですから1試合5000万円ほど。今回のWBSSにおける報酬は、1試合1億円に達するのではないかと言われています。

それがトップランク社のプロモートを受けるようになると、報酬はさらに跳ね上がるはずです。

何しろ井上の試合は派手です。グローブに爆弾が仕込んであると喩えられるほど相手をなぎ倒していくスタイルです。つまり素人にも分かりやすい。

まるでマイク・タイソンの再来です。派手なプロモーションで相手の実力を煽って煽って、試合になると派手に倒してしまう。そんな試合が続けば、1試合10億円に達するかも知れません。

これはもう破格を超えて、夢のようです。ボクシングを志す若者に大いなる希望を抱かせることでしょう。

だけど…と私は思うわけです。

井上がその程度で収まっていいのだろうか。


「金の亡者」が日本に興味を示す理由


PFP(パウンド・フォー・パウンド)とは体重差を超えた実力を測る概念です。「もし体重が同じだと仮定したら一番強いのは誰か?」という遊びの概念です。

このたびリング誌が認定するPFPランキングで、井上尚弥は4位にランクインしました。上位3名も錚々たるメンバーですが、井上はいつ1位になっても不思議ではない実力を持っています。

そのPFPランキングで引退まで永く1位を守り続けたのが、日本でもおなじみのフロイド・メイウェザーでした。

メイウェザーは、人気、実力ともにトップを維持し続けたボクサーです。

その実力は確かですが、守備的な戦い方をする人で派手さはありません。それなのに人気を維持し続けたのは、キャラ設定のうまさ、優れた自己演出のおかげです。

彼は意識的に「金の亡者」キャラを演じていました。試合相手や世間を挑発し、憎まれ役を務めました。

だから試合前には憎まれ度が最高潮に達し、ブーイングが起こる始末。それなのに試合では、判定狙いの馬鹿にしたような試合運びで勝ってしまいます。

「憎まれ役がまた勝った!」「次こそ負けろ!」と観客に思わせるのが、メイウェザーの演出意図でした。

これで人気を維持し続けるのだからすごいことですし、尊重すべきだと思います。しかも引退後も同じ演出方法で、総合格闘家やキックボクサーを翻弄し、稼ぎ続けているのだから大したものです。


そのメイウェザーが日本に並々ならぬ興味を持っていることをご存じでしょうか。

昔の名前を利用したエキジビジョン試合で数億円を稼ぐのが目的ではありません。本気で日本の格闘界やショービジネス界とのつながりを得ようとしています。

メイウェザーが見据えているのは、日本にできるカジノビジネスへの参入と、アジアマーケットを臨んだショービジネスを手掛けることだと考えられます。

おそらく大阪の万博会場あたりにカジノを含めた統合型リゾート施設ができるのでしょう。その際、ショービジネスの目玉の一つになるのが、ボクシングの試合です。

大阪にカジノができると、マカオ以上の賑わいができると期待できます。なにしろ関西には見るべきものが多い。大阪はアジアの中心といってもいい混沌さで何でもありますし、少し足を延ばせば京都もあります。兵庫県には、世界の聖地・阪神甲子園球場もあります。

世界中から、特に中国からさらに多くの人が訪れるようになるでしょう。そんな時、世界の一流ボクサーとアジア系ボクサーが戦う試合はどうしても欲しい。

やはりほしいのが、アジア系ボクサーのスター選手です。日本人と中国人のスターがいれば盛り上がります。

そこで井上尚弥の名前が真っ先に上がります。井上に任せれば間違いありません。世界の強豪といえども井上には歯が立ちません。アジアの観客を熱狂させる試合を必ずや実現してくれるはずです。

そうなるとアジアのショービジネス界も黙っていません。日本で成功するなら、東南アジアや中国でも成功させられるはずです。なにしろ人口が桁外れですから、途方もないマーケットが立ち上がります。

恐らくアジアのプロモーターが井上尚弥を欲しがるはずです。井上がいればイベントを派手に演出することができます。

つまりアジアの市場が大きくなればなるほど井上尚弥の価値も青天井に上がっていくわけです。

トップランク社のボブ・アラムが井上尚弥と契約しようとするのは、その近い将来を見据えているからなのではないかと思います。


日本やアジアのボクシング界に寄与


アジアの市場が立ち上がれば、井上側は何もアメリカまで遠征しなくても日本にいながらスーパースターの地位を築くことができます。

願ったりかなったりではないですか。

いやそんな小さなことはどうでもいい。

井上は、日本やアジアのボクシングビジネスの中心になれる存在です。そうならなければなりません。

最初はボブ・アラムの手駒でもいいじゃないですか。現役中は、誰よりも強いボクサーであることを証明するために、強いやつと闘って、1試合10億円、20億円をめざせばいいのです。

ただその中で、彼らのビジネスのやり方を換骨奪胎して、いずれは自分たちで主導権を握れるようにすればいい。

ゴールデンボーイと言われたオスカー・デラ・ホーヤが、現役中はトップランク社のプロモートを受けながら、引退後は自らプロモート会社(ゴールデンボーイ社)を立ち上げ、トップランク社のライバルになったように。

いずれは井上サイドも「モンスター社」を立ち上げるといいんですよ。


ひとりのスターが業界全体を変えてしまうことはよくあることです。

井上が活躍すれば、それを見ている若者が、井上を目指そうとします。

井上が出てくる前までは、世界中から期待され畏怖される日本人ボクサーが出てくるなんて誰も思っていませんでいた。が、今は違います。既に世界は身近です。井上に続いて世界で活躍したいという若者が、これから出てくるでしょう。

井上尚弥には「井上をきっかけに日本のボクシングは大きく変わった」と言われるような存在になってほしいし、なることができます。

道頓堀から作る観光立国

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最近、心斎橋から中国人観光客の数が減っています。

昨年、一昨年頃は、心斎橋商店街といえば中国か台湾の町かと思えるぐらい中国系の人でうめつくされていました。それを思うと、劇的、と思うほど減っています。

中国系観光客にとって心斎橋は「世界一危険な場所」だと言われていると聞いたことがあります。

安いドラッグストアや高級ブランド店が混在しているので、お金がいくらあっても足りないほど購買意欲をそそる街だからだそうです。

が、早くもインバウンド需要に陰りが出てきたのでしょうか。

ポスト購買型インバウンド


一説には、訪日観光客の目的が、購買から体験型に変わったからだと言われています。

だから地方の温泉地や観光地などには訪日観光客が増えているのだとか。だとすれば、日本の観光需要も成熟化していっているわけでいいことです。

記事にあるように越境ECが一般化すればわざわざ日本で日用品を買う必要はありません。もっとイベント性のある体験型の滞在にシフトしていくのは当たり前です。

そんなわけで、道頓堀商店街は、ポスト購買型インバウンドに知恵を絞っているという記事です。


いくら中国系の観光客が多いといっても、それだけのための町になってしまったら、魅力がありません。

いまの道頓堀は確かにドラッグストアとたこ焼きしかない印象があります。これでは当の中国人観光客にも飽きられてしまうでしょう。

そこで進められているのが、食い倒れとエンタメの強化。本来、道頓堀が持っていたイメージへの回帰です。

日本人観光客をもう一度呼び戻し、道頓堀の魅力を再構築しようという動きです。これは大賛成ですね。

大阪ミナミのポテンシャルはこんなもんじゃない


大阪ミナミのポテンシャルはこんなものではありません。裏ナンバはアジアの混沌を体現していますし、心斎橋と難波の間は、昭和の歓楽街の雰囲気をそのまま残しています。

道頓堀川は水の都の痕跡がありますから、USJやカジノと行き来する遊覧船を通わせればいい。

個人的には人が乗れるドローンを夢洲と難波で結ぶべきだと思っています。

新世界には星野リゾートのホテルができるそうです。あんな場所を世界に晒して大丈夫かいなと不安は覚えますが、それはともかくとして難波から新世界を結ぶ動線には、夜市でも作れば盛り上がると思いますよ。

昼はUSJ、カジノ、芝居、お笑い、古墳、京都。夜は、ディープミナミ。滞在しがいがありますよ。

訴求のやり方さえ間違えなければ、世界の観光客を魅了することができるはずです。

ミナミから観光立国の姿を作っていってほしいものです。





WOWOWをV字回復させたサブスク・ビジネスの本質

wowow


(2019年5月16日メルマガより)


以前、メルマガで「サブスクリプション・ビジネス」のことをとりあげました。


今年の2月ですね。あれからそれほど時間も経っていませんが、今や「サブスクリプション・ビジネス」はすっかりバズワードとなってしまった感があります。

いや2月の時点で、既にバズっていました。「サブスクといえば、とりあえず客が集まる」なんて意見があったぐらいですから。

このようにバズってしまえば終焉も近いというのが世の常です。既に撤退したサブスク・ビジネスも見え始めており、淘汰の時期に入ったのかも知れません。

それにしても、どういうサブスクは生き残り、どういうサブスクは続かないのでしょうか。

なにしろ新しい概念のビジネスなので、生き残りの法則を見つけ出すのは難しいですが、ヒントはあります。

今日は、その「サブスク・ビジネス 生き残りのヒント」について書きたいと思います。


サブスク・ビジネスの本質的価値


そもそもサブスクリプションとは、新聞や雑誌の「定期購読」を示す言葉です。だから定額で長期間の契約をするビジネスのことをサブスクリプション・ビジネスというんだよ。。。と短絡的に考えたら、その本質を見誤ってしまいます。

いまや「サブスク・ビジネス」は、元の意味を超えて、新しいマーケティングの概念を伝えるものとなっています。


近代のマーケティングは「顧客志向」の名のもとに発展してきました。作ったものを売る、という企業の都合を前面に押し出していたら売れないからです。だからマーケティングとは、顧客中心、顧客の都合を起点に発想せられなければなりません。

近年、その流れが加速してきました。人口は減るのに、企業数は減らない状況があるので、競争が激しくなるばかり。ビジネスの力関係は、ますますユーザー寄りになってきています。

モノが溢れかえっているので、我々はそれを欲しいとも思いません。物資が足りない時は所有することそのものがステイタスだったはずです。が、今は、所有していても何の自慢にもなりません。むしろ要らないものまで後生大事に抱えているなんてかっこ悪い。必要な時にだけ利用すればそれでいいのです。

こんな時勢ですから企業側も無理に売ることはできません。使いたい時に使ってもらう形態を整えれることが必要です。

そんな時ですから、定額費用で好きな時に好きなだけ使ってもらうサブスク・ビジネスが必然性を持つわけです。


たとえばCDやDVDが売れないと言われていますが当たり前です。借りて聴いたり観たりすればいいのですし、いまは配信技術が進んでいますから、ネット上で聴いたり、観たりすれば事足ります。

1枚3000円のCDがツタヤで借りれば数百円です。これがネット配信ならさらに安くなります。こんなの商売にならんよ!と業者の悲鳴が聞こえてきそうですが、そういうわけでもありません。

ネットで聴いたり観たりしたデータは蓄積されていきます。企業側は、そのデータをもとに、個人の嗜好や好きなアーティスト情報を手に入れます。そうなれば、個人ごとにぴったりのおすすめ情報を提供することができて、無駄な提案がなくなります。さらには真に必要とされるアーティストや作品を集めることができます。

つまりサブスク・ビジネスの本質的メリットとは、個人との長期的なつながりを前提としたビジネスの高度化、最適化です。

ビジネスに関わる総費用が少なくなりますから、個人もお得ですし、企業も儲かりますし、社会的にも無駄がなくなります。

一時的に売上や利益は減るかも知れませんが、はやくこの変化に対応した方が、生き残れます。


WOWOWのV字回復事例


サブスク・ビジネスは、ネットビジネスのデジタルデータとの相性がいいといえます。が、ネットビジネス以外でも、データをうまく掴んで、ビジネス展開している企業もあります。

その一つが、有料衛星放送のWOWOWです。

WOWOWは、一方的に映像を提供する衛星放送ですから、ネットのデジタル配信のように自動的に顧客情報が集まってくるわけではありません。

そんなWOWOWでも、個客との関係性を強化するリテンション(関係維持)マーケティングに取り組み成果を上げています。

という本に、WOWOWの取り組みが詳しく書かれているので紹介させていただきます。


WOWOWは、1990年に開局した日本で初めての有料衛星放送です。毎月数千円(現在は2300円税別)を支払うことで、映画や音楽ライブやスポーツの試合など全ての番組が見放題になるサブスク・ビジネスです。いまでは280万人以上の加入者数を集め、売上高816億円、経常利益107億円をあげる成功企業の一つといっていいでしょう。

が、そんなWOWOWも、顧客数の減少に苦しみ、存亡の危機に立たされていた頃がありました。

開局当初は、日本初の放送局なので、特長を知ってもらう必要があります。WOWOWのキラーコンテンツといえば、最新映画のいち早い放送、テニスやサッカーなどの有名試合のライブ放送、有名ミュージシャンのライブ放送などですか。ファンには垂涎の番組コンテンツが揃っているのですが、知られないと加入してもらえません。そこで、開局当初の施策は、ひたすら広告宣伝に努めて、新規顧客を獲得することでした。

家電店などに販促費を大量投入して「いま入ると数カ月無料!」なんてキャンペーンを頻発していました。その思い切りのいい施策が功を奏して、加入数を集めることに成功し、早期の黒字化を達成しました。

ところが、徐々に加入者数が減っていき、2005年頃にはじり貧状態に陥っていました。

WOWOW側は、さらなる販促費を投入するものの減少は止まりません。新規加入は一定数いるもののそれ以上の解約者がいたからです。

そんな時「解約抑止専門部署」の責任者に任ぜられたのが、上の本の著者である大坂祐希枝氏でした。

大坂氏は、コールセンターを通じて解約を申し入れる個人を解析し、解約したい理由で62のグループに分類します。そのグループごとに、営業トークのパターンなどを作り込んで、とりあえず解約阻止率の向上に成功します。

が、辞めたいという顧客を営業トークで一時的に引き留めたとしても、これは根本的な解決にはなっていません。

そもそも顧客に「契約解除したい」と思わせた時点で負けです。そう思わないような番組構成や顧客構成にしていかなければなりません。

いかに優良顧客を増やしていくか、がサブスク・ビジネスの本質であり、この本の醍醐味でありました。


優良顧客をいかにして増やすか


解約したいという顧客に特徴があるとすれば、継続する顧客にも特徴があるはずです。

ところが、解約客と違って、契約を続ける顧客は意見をいいません。沈黙しています。

仕方ないので、解約客を分類した62のグループを詳しく見ていくことにしました。

すると、解約客の中でも、比較的解約しやすいグループとしにくいグループがあることを知りました。それをさらに分析すると「クロス視聴」している顧客は解約しにくいことを発見しました。

ここでいうクロス視聴とは、複数のジャンルの番組を見ることです。テニスの試合を観たくて加入したのに、映画も頻繁に観ることをクロス視聴といいます。

WOWOWの場合、テレビごとに契約します。子供がテニスを観たくて契約したら、親が映画を観ている、ということが起こります。その場合、比較的継続しやすいようです。

あるいはこういう場合もあります。スターウォーズシリーズが観たくて加入したが、時代劇を観てみると結構面白かった。この場合も契約を維持しやすくなります。


そこでWOWOWの番組を「感情」で分類しデータベース化することになりました。一つの番組を「冒険」「サスペンス」「ロマンス」というジャンルだけではなく、それを観た時に沸き起こる「楽しい」「ほっこり」「スカッとする」といった感情で分類したのです。

すると、SFを観てスカッとした人に、スカッとするアニメや時代劇をすすめることができます。

WOWOWの強みは、アナログです。直接、加入者に電話して、番組をおすすめするなどの施策をまめに行い徐々に、加入者の行動や考えを理解していきました。


WOWOWにとっての優良顧客とは長期契約客です。沈黙しているので確かに見えにくい長期契約客ですが、アプローチを繰り返すことで徐々に見えてくるものがありました。

WOWOWの場合、「複数の家族が番組を視聴していること」および「加入時に観たかった番組以外の番組を視聴していること」が優良顧客になるための重要なポイントでした。

さらに細かく「何人家族か」「どんな番組を観たかったのか」「いまどんな番組を観ているのか」「どんな感情になる番組を観ているのか」を分析していると、優良顧客モデルが見えてきます。

そうなると打ち手がいろいろ出てきます。

テニスを観たくて加入した人に、サスペンス映画を勧める。

SF映画を観たくて加入した人に、ワクワクする番組を勧める。

あるいは、元来優良顧客になりそうな家族構成の顧客を新規ターゲットにする。

特定のwebサイトに訪れる人を新規ターゲットにする。

など、WOWOWの内部データから得た独自の「勝ちパターン」をマーケティング施策として実行していきました。

こうした地道な取り組みの積み重ねが今の「有料放送はWOWOWの一人勝ち」といわれるような状況を作っていったのです。


完全デジタル企業に対抗できるか?


こうしたWOWOWの取り組みは非常に立派ですし、成功事例だと思います。

ただし、将来を見渡した場合、この会社の存続には疑問符がつきます。

なぜなら、映像配信という分野では、強力なライバルが次々と現れてきているからです。

映画という分野でいえばネットフリックスやアマゾンプライム。

スポーツ中継ではダゾーンがあります。

しかも、彼らは完全デジタル放送なので、個客の嗜好や行動の傾向を自動的に収集・蓄積しています。彼らの持つレコメンドエンジン(個客の好みを分析しおすすめ商品を提案する機能)は強力です。

ネットフリックスなどレコメンドエンジンで世界を制すると意気込んでいるだけに、日本の個客にイギリスのドキュメンタリー番組を勧めたり、トルコの個客に日本のアニメを勧めたり、ワールドワイドなクロス視聴を実現しています。しかもそれが面白いと話題になったりしています。

グローバルに番組を掘り起し、世界各国の個客にクロス視聴を自動で推奨するネットフリックスの機能にWOWOWのアナログな取り組みは対抗できるのでしょうか。

WOWOW側は「デジタルとアナログの融合こそが日本人に合う」と言っているようですが、私には"デジタルなレコメンド機能ではとてもネトフリやアマゾンに太刀打ちできませんわ!"という意味に聞こえます。

このように技術機能的にも市場規模的にもWOWOWが単独で生き残る未来は考えにくいと思います。それこそネトフリに負けた動画配信サービスと合併するなどして、日本国内の映像配信市場を死守していく、という方策しか思い浮かびません。

ビジネスモデルそのものを変えていかなければ生き残れないでしょう。

コクヨがぺんてるの実質筆頭株主に

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メモ。コクヨがぺんてるの実質的な筆頭株主に。人口減少時代に際して、弱点の海外展開を補完しようと意欲を示したかっこうです。

文房具 国内トップメーカー


コクヨは、売上高3151億円(2018年12月期)文房具国内1位のメーカーです。

オフィス家具では国内2位。(1位はオカムラ)ギリギリ√3倍差は開いていないのでいちおうは逆転可能圏内です。

ちなみに文房具国内2位はプラス。こちらも逆転可能圏内です。

オフィス向け通販としてカウネットを展開していますが、こちらはアスクルに相当差をつけられており、逆転不可能圏です。

業績は順調に回復も時価総額は振るわない


コクヨはリーマンショックのあと、売上高利益高とも徐々に回復してきています。が、長いスパンでみてみると、バブル前のあたりから横ばい状態だともみてとれます。利益高もバブル崩壊、リーマンショックの下げを除くと、横ばいです。

現在の時価総額は1742億円。(プラスは非上場)オカムラが1215億円。そんなに悪くはないですね。

しかし筆記具メーカーのパイロットは、売上高1040億円なのに、時価総額は1910億円です。単体メーカーに水をあけられてしまっています。

国内は盤石も、海外展開に弱点


これはなぜかというと、海外売上比率の差です。

総合文具メーカーのコクヨは、文具ならなんでも扱うゆえに、強力な販売チャネル網を構築していました。作れば売れる状態を作っていたわけです。いわば文房具における松下電器ですな。

それがアスクルの台頭を許した理由にもなりましたし、海外展開意欲が薄かった要因です。

これに対して、筆記具単体メーカーは国内で売っても限度がありますので、早くから海外展開を志向してきました。

パイロット、三菱鉛筆、ぺんてる、ゼブラすべて海外販売に積極的です。

日本国内が人口減少に入っていく時代ですから、国内に地盤を持つ企業の分が悪くなってきています。

海外展開への強い意欲


だからドメスティック企業であるコクヨとすれば、海外に展開するのか、オフィス全体のソリューションに取り組むのか、オフィス家具以外に進出するのか、方向性が問われていました。

今回、ぺんてるの40%の株式を手にしたというのは、強い海外展開意欲を示したということです。


なおぺんてるは筆記具メーカーとして国内4位です。

「適時開示で発表された以上の内容は把握していない。今後、どういう対応を取るか検討する」

ととぼけていますが、これからのグローバル展開のための資金を手中にしたいという思惑があったのでしょう。

両社の今後の戦略展開に注目です。





ホンダは「弱者の戦略」ができていない

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記事を読む限り、ホンダの状況は深刻です。数字よりも、意識や姿勢に問題があると思います。

いびつな利益割合


本田技研工業の2019年3月期(速報値)の売上高は15兆8886億円。営業利益は7264億円。前年に比べて、増収減益となっています。

減益の原因は、主力の四輪車が振るわないからです。四輪車の営業利益率が1.9%ということですから寒い。

(トヨタの営業利益は8%以上、日産は4%台です)

ちなみにホンダの二輪事業の売上は四輪事業の5分の1程度。しかし二輪事業は13%以上の営業利益をあげており、営業利益額では四輪をしのいでいます。なんともいびつな利益割合です。

ホンダジェットも評判いいですが、こちらも会社を支えるほどの規模はありません。

四輪事業をなんとかしないとホンダの浮上はなさそうです。

現状の売上を守ることに汲々としている


二輪事業は、世界シェアトップですから、儲かるのは当然だといえます。

ただ四輪事業は世界で7位。弱者も弱者です。それなのに、記事を読んでみると、ホンダがやろうとしているのは、生産効率を上げて利益がでる体質にしようという話です。

生産効率を上げるのは大切ですが、それ以上にどうやって販売拡大していくかの方針がありません。

ホンダは欧州市場での苦戦が続き、昨年、英国とトルコの生産拠点の閉鎖を決めました。現実に対応するというのは大切なことですが、その分、どこに力を入れるというのでもなく、単に利益を上げる体質にするというだけでは、縮小均衡です。

かつてホンダは独自の設計思想を持ち、尖った車を開発することを得意としていたはずです。それが今は、すっかり保守的になり、現状の売上維持を願うあまり当たり障りのない開発姿勢になっているように映ります。

弱者の戦略ができているのか?

要するに、四輪事業は弱者の戦略を採用しなければなりません。

創業者が健在だった頃のホンダは理想の車を追求するという強い意志があり、それが上位メーカーとの差別化となっていました。

いまのホンダ車には、その頃の尖った感がなくなってしまったと思いますね。(その尖った感はホンダジェットに引き継がれたのかな)

製品戦略だけではありません。地域戦略においてはどのような思想を持っているのでしょうか。地域の集中や選択がなされているようには見えません。

販売戦略の内容はよく見えませんが、現地カスタマイズが過ぎて効率が悪くなるというのはいかにも受け身な姿勢に思えます。

単に製品差別化や地域の集中をせよというのではなく、四輪事業全体で一貫した弱者の戦略を立案しなければならないと思います。

ホンダさんにこそ「ランチェスター戦略セミナー」を聞いてもらいたいものですよ。





ランチェスター戦略で令和を生き抜く

ランチェスター戦略で令和
(2019年5月2日メルマガより)


令和の時代が始まりました。

年号が変わって何が変わるというものではないでしょうが、それでも気分的には節目を迎えた気がします。

私も今年に入ったあたりから平成とは何だったのか。ポスト平成はどういう時代になるのかを自分なりに考えてきました。

このメルマガでも何度か書きましたね。




私だけではありません。令和に入ってから、この時代をどうしていくかについては、多くの方が意見を述べています。

たとえば、『「新しい日本」を創ろう』 

これは、日経新聞の編集局長の記事です。(有料記事)


こちらは日経ビジネスの編集長の記事です。

いずれも、平成を「停滞の時代」ととらえて、令和の再浮上を期待する内容になっています。

僭越ながら私も同意見です。


経済停滞と先送りの時代


日本にとって昭和は成長の時代でした。

第二次世界大戦後の奇跡的な復興を高度成長と呼ぶことが多いですが、実際には、明治以来の殖産興業の取り組みの成果として、昭和の成長があったとみるべきでしょう。

(同じ意味で、20世紀(明治34年〜平成12年)に最も成長した国は日本だと報道されることもあります)

ところがいい時ばかり続くわけではありませんでした。昭和の終わり、世界経済に構造的な変化が起きました。一強だったアメリカ経済が相対的に退潮の時期を迎えたのです。たまりかねたアメリカが、ドルの切り下げを世界中に強要したために、各国の通貨は急激な高値をつけることになってしまいました。

特に影響が大きかったのが日本です。それまで1ドル240円程度だったものが、最大80円にもなってしまいました。3倍です。アメリカに100万円で売っていたものを、300万円で売らなければならなくなったのです。

資源のない日本は、原材料を仕入れて、それを日本で加工し、海外に輸出することで経済を成り立たせてきました。それが明治以来の日本の産業構造です。

その最大の得意先がアメリカでした。それがいきなり3倍の値段で売らなければならなくなったのです。いくらなんでも難しい。日本の輸出産業は、生産工場を消費地に移設するなどして対応することになるのですが、それは後の話です。当初はパニックに陥りました。

逆に活気づいたのが輸入産業です。アメリカからの商品が3分の1で買えるのだからお得感があります。海外で稼げないなら国内で稼げ、と多くの企業の矛先は内需拡大に向かいました。その末に、過剰な資金が土地に流入するようになり、実態の価値以上の価格付けがなされたことで、バブル経済とその崩壊につながっていったのです。

バブル経済の崩壊が平成の初めでした。その処理に手間取る間に、日本の本当の問題である人口減少と少子高齢化への対応が後手に回ることになってしまいました。経済停滞と問題の先送りが平成という時代だったということができます。

その間、アメリカはちゃっかりと経済の構造変革を成し遂げ、さらなる経済成長を続けています。あるいは桁外れの内需を持つ中国が急激に台頭しました。

足踏みを続けた日本は、すっかり置いていかれたかっこうです。

このまま日本は「かつての先進国」として美しく衰退していくのか。あるいは、アメリカのように構造変革を成し遂げ、再び成長軌道に乗るのか。令和の時代にその分岐点があることでしょう。


ランチェスター戦略で生き残る


私は自分のコンサルティングのテーマを「生き残る」ことに設定しています。

華々しく成長拡大したい企業さんからすれば物足りないことかも知れませんが、小さな会社でも生き残る方法を考え、ともに戦うことこそが、いま自分のすべきことだと考えています。

それもある意味当然です。平成の日本は停滞を続けていたわけですから、よくて現状維持、何もしなければ衰退していきます。

上場企業はそれでも成長しようとしますから他社のパイを奪いにきます。そんな中、小さな会社が安穏としていたらふるい落とされてしまいます。

経済が成長しないなら、成長しないなりの戦略を立てなければ生き残れません。

大企業が見捨てた小さな需要でも拾わなければなりませんし、面倒なことにも取り組まなければなりません。あるいは、大企業のフォロワーになって生き残ることも立派な戦略です。

ランチェスター戦略や孫子の兵法には、小さな会社がいかに生き残るのか、その方法論やヒントが書かれています。

私はその方法を研究し、実践で使うことに取り組んできました。それが私の役割だと思っています。


令和を「生き抜く」ことこそが責任


かつて田岡信夫先生がランチェスター戦略を作って一世を風靡した頃は、オイルショック後の不況時だとはいえ人口増加が続いている状況であり、各所に成長余地が多くありました。

ですが今は人口減少時代であり、かつての産業は殆ど衰退局面に入っています。

その中で生き残るのは難儀なことですが、どんな経営環境下でも生きていかねばならないのが経営者です。

できないわけではありません。むしろ需要が細分化し、不確実な時代には、小回りの利く小さな会社の方が、生きていく方法が多様にあります。

私はそう実感しています。


令和になって日本が再び成長軌道に乗るかも知れません。それは素晴らしいことです。

もちろんその方がいいに決まっています。

成長期には成長期の戦略があります。ランチェスター戦略にはそれが組み込まれています。

しかしたとえ日本がこのまま衰退していったとしても、我々は生き残っていかなければなりません。

その時にも、やはり生き残るための戦略を駆使していかなければなりません。

どちらに転んでも生き残っていきましょう。

私はいま55歳ですから、あと30年経つと、85歳です。それまで生きているでしょうかね。。わかりませんが、ギリギリ令和を見届けることができるかも知れません。

令和という時代を生き抜くことが、戦略を学んできた私の責任です。

鳥貴族の失速は必然だった?単一業態の壁

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とぶ鳥を落とす勢いだった鳥貴族が失速してしまいました。2017年10月に280円→298円の値上げに踏み切ってからです。たった18円の値上げだったというのに影響は大きく、2019年7月期の決算では、赤字になると予測されています。

ただ、鳥貴族の不振は、値上げだけではない、というのが上の記事です。

居酒屋チェーンは600店が限界?


実際、値上げ後しばらくは客数の落ちもなかったのです。が、2018年1月頃から急に業績悪化しました。これは、鳥貴族の店舗数が600店を超えてからだと記事は指摘しています。

著者は、これまでの経験則から、居酒屋チェーンは600店が限界だと書いています。つぼ八もそうでしたし、ワタミもそうだったとか。あまりにも急激な拡大路線をとってきた鳥貴族も、600店の壁にぶち当たってしまったかっこうです。

もちろん人件費や材料費の上昇に居酒屋チェーン全体が苦しんでいる状況ですから、値上げは必須です。ここでチキンレースをするつもりはないという鳥貴族側の決断は尊重すべきでしょう。

しかし、成長の壁に当たる頃に、値上げに踏み切ってしまったというのは、これはちょっと悪いタイミングだったと言わざるを得ません。

縮小する市場でシェアを奪ってきた鳥貴族


居酒屋・BARの全体売上は、現在1兆円程度ですが、これは2000年当時からみると、2割近く減っています。

これから日本は人口減少時代に入るので、V字回復は考えづらく、ますます縮小していくでしょう。若者のアルコール離れは顕著ですし、歳をとれば酒量も減りますからね。いい要素がありません。

そのなかで各企業はパイを取り合っています。

まさにそんな状況下で成長してきたのが鳥貴族でした。同社は、競争の源泉を「低価格化」に求めました。それを実現するために、メニューを減らしてオペレーションコストを下げる方策に出ました。鳥専門店というやり方です。これなら、低価格路線でも、メニューにある程度「深さ」を出すことができます。

最悪のタイミングで値上げ


総合居酒屋の「広く、浅い」品揃えへのアンチテーゼとして新鮮だった頃はよかったのでしょうが、確かに店舗数が増えてトップチェーンになったら、「狭さ」が気になってしまいます。たまに行く店だからよかったのに、どこにでもある店となったら、行きづらい。要するに飽きられてしまいます。それにマネされやすい業態ですから、似た業態店が続々登場しました。競争の激しいとろこで値上げしたら、シェアを奪われるのは自明のことです。

居酒屋チェーンでいま元気なのは、磯丸水産や串カツ田中だそうです。いずれも専門業態店です。両社とも拡大意欲まんまんですから、しばらくは増収増益が続くのでしょうが、やはり鳥貴族と同じく、ある程度の規模になると失速してしまうのだろうと予測できますね。

他業態展開か、さらなる拡大か


鳥貴族の成長はこのまま∞に続くのか←2017年2月に書いたメルマガの内容です。いまとなっては、そんなもん永遠に続くわけないやろ!ということですが、鳥貴族とすれば図らずも単一業態の限界をみてしまったわけです。

普通に考えれば、鳥貴族はもう少し店舗を減らした状態で維持し、他業態をつくって成長を目指すというのが一般的な考えです。

が、それだと先達飲食店グループのミニ版になってしまって面白みがなくなりますな。

いや勝手を言ったらだめですね。企業は生き残らなければなりません。そのためなら、面白いとかどうとか言っている場合ではありません。どうか現実的な路線を行ってください。

が、大倉社長は、単一業態での成長に並々ならぬ意欲を持っていた方ですからね。諦めていないかも知れませんね。それはそれで注目していきたいと思います。



じり貧のTポイントに復活の道はあるのか?

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Tポイントが危機的状況に陥っているようです。

確かに最近、Tポイントの使いづらさが目立つようになってきました。ドトールコーヒーでも終了するようですし、ファミマでは他のポイントも使えるようになってきました。

だいぶ前、古本チェーンのブックオフがTポイントを終了した時もショックでしたが、あの時はまだブックオフの判断は間違っているのでは?と思えるぐらいTポイントに勢いがありました。ブックオフじたいがその後、不振に陥りましたし。

ただここ最近のTポイント離れは、深刻です。競合ポイントの勢いが凄まじいからですね。

先行弱者になってしまったTポイント


Tポイントといえば、ショッピングポイントの草分け存在です。ユーザーにとっては買い物ごとにポイントが溜まって割引になりますし、店側にとっては業態業種横断的な買い物データを取得できるので、マーケティング施策に役立てることができます。

一業種に一社しかTポイント陣営に参加できない。という縛りも、データを戦略に役立てる上での優位性になると思えます。実際に、そのデータを活かした企業も多くいたことでしょう。

ところが、本腰を入れる競合が出現してきたことでユーザー側のメリット、店側のメリットともに見劣りするようになってきました。メリットが同等程度なら切り替えることはないでしょうが、明らかに見劣りするのだから問題です。

まず楽天ポイントは、楽天市場を背景に持つので、多くのユーザーにとって使い手があります。また店側にとってはネット購買データも参照できるのでメリット大です。

dポイントは、いわずと知れたドコモの携帯電話ユーザーにポイントをばらまいているので、こちらも使う動機があります。使うユーザーが増えれば、扱い店も増えるはずです。私はドコモユーザーではありませんが、最近、店でdポイント対応のところが増えているので、dポイント登録しようかなと思うぐらいです。

ところがTポイント陣営は、基幹会社であるツタヤが勢いを失っているので、ポイントが溜まりにくいし、使う場所も限られてしまうという事態になりつつあります。

非常にまずい状態ですね。いわゆる先行弱者となってしまいました。

※先行弱者というのは、パイオニアとして市場開拓したものの、参入障壁を築けなかったために資本力のある後発企業にまくられてしまう存在です。この場合、各企業には「ポイントサービスはマーケティングデータとして使える!」という情報が浸透してしまったために、資本力のある強者企業の進出を容易にしてしまいました。

ツタヤがネットフリックスなみに勢いのあるサブスク企業に転身していたら展開も変わったのかも知れませんが、そうはならなかったのだから仕方ありませんわな。

じり貧になっていくのは避けられないと思います。

ソフトバンクグループの不気味な沈黙


Tポイントに出資しているソフトバンクやヤフーが沈黙しているのが不気味ですが、恐らく運営方針などを巡って何か意見の違いがあったのでしょうね。

ソフトバンクグループが全面協力すれば、携帯電話もネット通販もペイペイも参加することになるので強力ですが、その気配がありません。

うがった見方をすれば、ソフトバンクはいま兵糧攻めの最中でTポイント側が音を上げるのを待っているのかも知れませんよ。

音を上げたら、ソフトバンクかヤフーがTポイント運営会社を買収して自分のものとし、そこから大反攻に移るのでしょう。そうなれば、Tポイントも復活の目が出てきます。

近い将来、そういうことになるかも知れませんな。





コーヒーチェーンはいち早く脱デフレに向かっている

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メモ。外食産業全体の客単価が回復してきているようです。

利用客1人が飲食店で支払う客単価は1998年を100としたとき、2018年は全体が96.5とデフレの状況から抜け出せていない。だがカフェは125.8まで上昇した。

ということですが、一時期は80を下回るほどデフレ傾向にあったことを思うと、ずいぶん回復してきています。

その中でも、カフェは125.8ということですから、脱デフレを牽引しています。

ドトールコーヒーの不振


そういえば、ドトールの不振がニュースになっていました。

ドトール、2年連続“客数減” 客離れ深刻化

記事によると、2018年2月期、2019年2月期ともに、客数を減らしています。ドトールといえば、低価格コーヒーチェーンの草分けですが、競合のベローチェとの競争激化、コンビニコーヒーの台頭などにより苦戦を強いられているようです。

逆に、スターバックスやコメダ珈琲、タリーズなど価格帯が少し高いコーヒーチェーンは、店舗数を拡大しており、元気です。

ちなみにドトールグループは、傘下に星乃珈琲を持っており、こちらは好調だということです。

同じものを安く売る。というビジネスの期限切れ

要するに、コーヒーチェーンの成長を牽引し、客単価を向上させているのは、単価が高く居心地のいい空間を提供しているチェーンです。コーヒーや食事とともに、空間や時間にお金を払うような店ですね。

私も、長時間粘っても白い目で見られないコメダ珈琲はよく利用しますね。コーヒーの味はお世辞にも美味しいとは言えませんが、時間と空間には価値があります。

思えばドトールは町の喫茶店の半額以下の値段でそこそこ美味しいコーヒーが飲めるという衝撃とともに登場したチェーンでした。それが今は、いちばん安いわけでもなく、価格も味もそれなりです。

同じように「すげー安い!」と思っていた均一価格の居酒屋も、以前ほどの驚きがないばかりか、ちょっと値上げすると「宅飲みしようぜ」と言われる始末です。

同等の価値を思い切った低価格で提供する。というのはフォロワービジネスの王道ですが、真似されやすいし、期限切れも来ますので、仕方ないことです。

ドトールはずいぶん長く生き残っていると思います。いや、ドトールの店舗全部がダメになるとは言いませんが、普通なら賞味期限はもっと短いはず。

次の価値提供に向けて各社頑張っていただきたいと思います。





日高屋が苦戦、幸楽苑が復活って、どうなっているのか?

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日高屋と幸楽苑、いずれも関東に多い中華チェーンです。大阪人には馴染みが薄いですが、関東では日常的なお店です。

日高屋が苦境にあることは先日のブログでも書きましたが、上の記事では幸楽苑の好調さと比較する形で書かれています。

もっとも、この2社、ほんの1年前までは、好調の日高屋と不振の幸楽苑と伝えられていました。

ラーメンチェーン国内トップの幸楽苑はなぜ不振に陥っているのか

いま、全く逆の記事が書かれていることに飲食業界の激動ぶりがわかります。

日高屋 不振の理由


記事によると、日高屋の不振は、(1)値上げと(2)市場の飽和であるとのこと。

(1)値上げに関しては、またか!と言いたくなるほどお馴染みの理由です。低価格を売りにしたチェーンが、原材料費や人件費の高騰により値上げをする→客数が想定以上減り売上減、というパターンは、ここ最近のトレンドとなっています。

日高屋も業績が下振れ 「デフレの勝ち組」はどうなった?

要するに、原材料費、人件費コスト増が先にきて、脱デフレが追い付いていない状態です。これが一時的な現象なのか、あるいは低価格チェーンという業態そのものが限界を迎えているかはわかりませんが、軒並み厳しい状況に陥っているチェーンが増えていることは事実です。

(2)市場の飽和というのは、日高屋の特徴である関東の駅前立地に、同じ日高屋が増えすぎて、食い合いになっているということですから、作りすぎたわけです。

高度成長期のビジネスなら、関東以外にも一気に拡大していくところですが、ビジネスモデルが危ういと思われている現在、手を広げていくのは躊躇するところです。

幸楽苑 なりふり構わぬ生き残り施策


一方、業績が底を打った幸楽苑は、逆に好調だとみられています。

幸楽苑は、郊外ロードサイドに店が多いというこちらもファミリー層狙いの高度成長期に流行ったビジネスモデルです。

こちらもラーメンチェーンとしては、日本一の店舗数を誇りますが、ファミリー層そのものが元気のない時代に合わなくなってしまいました。ロードサイド店なので、日高屋のようなちょい飲み需要にも対応できません。

そこで、自社店舗を「いきなり!ステーキ」のフランチャイズ店にするというなりふり構わぬ施策に出て、あっと驚かせました。

あるいは280円ラーメンの復活や、チョコレートラーメンを作ったということですから、メニューや値段でもなりふり構わなさが出ています。生き残るためには、これぐらいしなければなりません。結果としてこの姿勢が奏功したようです。

人口動態的には、都心回帰が有利では


しかし、この流れがいつまでも続くとは思えませんな。

そもそも郊外のロードサイド店は、需要を失いつつあります。車の販売台数も減っています。ここが根本的に解決されていません。

一時的な復活はいいのですが、今後、長年にわたって生き残っていくためには、需要を捉えなければなりません。

2040年には、人口の4分の1が75歳以上になるといわれる日本ですから、やはり都心への人口集中が加速すると考える方が普通です。だとすれば日高屋の方が、有利な位置にいると考えます。

幸楽苑がそこをどう考えるのか、これからの施策をみていかなければなりません。






豊臣秀吉に学ぶ「人を動かす」秘訣

豊臣秀吉に学ぶ

(2019年4月18日メルマガより)




人を動かす。

というのは企業経営者や管理者にとって永遠の課題です。多くの方が、最も頭を悩ませているのではないでしょうか。

私だって同じです。正直にいって、戦略を立てたり、行動管理をしたり、といったことはある程度、システムが出来上がっています。たぶん、勉強した人がやれば同じような内容のものが出てくるはずです。

ところが難しいのは、立案した戦略を実行することです。正確には、その会社の皆さまに実行してもらうことです。実行してもらえなければ、戦略など画に描いた餅です。全くの無用な長物になってしまいます。

これが難しい。「戦略は作ったのだから実行はそちらの責任!」と開き直れたら楽なんでしょうが、そうもいきません。戦略は実行されて意味がある。そこに責任を持つのは、コンサルとしての良心の核心部分です。

かくして、私が最も頭を悩ませるのも、いかに人に動いてもらうか、その方法論です。

今回は、有名な戦国武将の分かりやすいエピソードを中心に、人を動かすヒントを考えていきたいと思っています。


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日本の戦国時代を代表する3人の天下人、織田信長、豊臣秀吉、徳川家康は、性格もそれぞれ個性があって、何かと比較される存在です。

いずれも優れた人たちですが、人の扱い方にも特徴があって面白いと思います。


織田信長の「実力主義」


組織デザインやリーダーシップの研修などでよく語られるエピソードですが、豊臣秀吉が若い頃、清洲城の修復を任された話があります。


織田信長がまだ天下を窺う前、隣国美濃の攻略に手間取っている頃の話です。居城の清洲城の石垣が台風によって崩れるということがありました。

戦国時代のことですから、すぐに修復せよと信長は命じますが、いっこうにその気配がありません。訝しんだ信長が担当奉行に事情を聞いても、言い訳をするばかりで埒があきませんでした。

そこで信長は、担当奉行を更迭し、後任に木下藤吉郎をあてました。後の豊臣秀吉です。


ここに織田信長の人事の特徴があります。彼は、能力主義を貫き、身分の低い若手であっても大胆に抜擢する人事を行っていました。足軽出身の秀吉が、異例のスピードで出世することができたのは、秀吉の能力の高さがあるのはもちろんですが、それを引き上げた信長の慧眼があればこそです。

信長の人事の考え方は適材適所です。能力がある者を力が発揮できるところで働かせる。年功や家柄などは序列としない。今となっては当たり前のこの方針が、信長軍団を驚異の高生産性集団に変えていきました。

ただし信長には、合理的すぎて、人の気持ちを慮ることができない、しようとしない、という側面がありました。

功績のあった古参の家臣であろうと、働きが鈍くなってくると、降格させてしまう。極端なときは、追放してしまうこともありました。

どれだけ身を粉にして頑張っても最後には切り捨てられるのではないかという疑念を家臣に抱かせたことが、最終的には信長の命取りとなってしまうのですが。


天性の人たらし


いっぽうの秀吉は、天性の人たらしとして知られていました。上司であろうと、部下であろうと、関係先であろうと、あるいは敵であろうと、秀吉の人柄に魅了されなかった者はいないと言われています。

合戦の時でさえも、味方ではない陣営に"単身"で乗り込んで交渉を取りまとめてしまうようなウルトラCの離れ技をやってのける人です。その人たらしの能力は、大きな武器として活用されました。


信長に石垣の修復を命ぜられた藤吉郎は、石垣職人たちのもとへ酒を土産に訪れ、そのまま職人たちと酒盛りを始めてしまいました。

これが人たらしとして知られる秀吉のやり方です。仕事が進んでいないところに新しい上司がやってくるとなれば、叱られると思うのが普通でしょう。しかし秀吉は叱るそぶりもなく、明るい調子で酒盛りを始めてしまったのです。面食らった職人たちも次第に心を許し始めました。

酒が入った職人たちは猛然と前の上司への不満を言い始めました。人使いが荒い。横暴だ。叱るばかりでろくな指示がない。職人の腕を評価しないで全部自分の手柄にしようとする。

その不満をじっと聞いていた秀吉は状況を理解しました。要するに、彼らは、目標も手順も示されず、ただ働けと言われただけだった。しかも職人としての誇りも認められない。誰のために、何のために働かされているのか、わからないのに追い立てられていたのです。

情報もろくに与えられず、目の前のノルマだけ示されても、やる気にならないのは仕方ないことです。百歩譲ってそんな頼りない上司でも人柄がいいなら、この人のために頑張ろうと思えるかも知れませんが、それもない。ダメ上司の典型ですな。


ビジョンを共有する


職人の不満や愚痴を一通り聞き終えた秀吉は、雑談のような形で自分の経歴や境遇を語り始めました。

今でこそ織田家の普請奉行に抜擢された自分であるが、ほんの少し前までは貧しい足軽の身分で流浪の身であった。その先々では、サルのような容貌ゆえにひどく軽んじられ、虐められたこともあった。それなのに、織田家は実力主義で、自分のような者でも重用してくれた。誰にだってチャンスがあるのが織田家だ。それは当主である信長様の考え方なのだ。能力のある者が上に立つ織田家の権勢はこれからも揺るぎないだろう。

秀吉は、織田信長の偉大さや織田家の未来の隆盛を語りながら、誰にだって出世のチャンスがあることをそれとなく職人たちに伝えたのです。

「そこでだよ。お前たちの言い分も分かるがな…」今は戦国時代。しかも美濃と争いのさ中です。いつ攻められるかわかない状況で、石垣を崩れたままにしておくのがいかに危険なことか。

石垣修復という仕事が、信長にとって、織田家にとって、さらには織田家に属する自分たちにとっていかに重要なことであるかを語ったのです。

ここで秀吉がやったのは、働く目的を明確にする。という作業です。言い換えれば、皆で納得する目標を立てる。皆が共通のビジョンを持つ。ということです。何のための働くのか、誰のために働くのか、ということが切実であればあるほど、人はやる気になります。

まさに人間心理のツボを捉えた秀吉のやり方です。


絶妙な組織デザインとマネジメント


さらに秀吉は、職人を10個の小グループに分けることを指示しました。訝しがる職人たちに秀吉はこう言いました。

「気の合う者とグループを組め。気持ちよく仕事をすればいいぞ」

大集団で作業する場合、どうしても派閥ができやすくなります。あるいは集団にまぎれて楽をする者が現れます。そうした小さな積み重ねが全体の生産性を損ねていきます。しかし、気の合う仲間同士の小グループならば、それも起きにくい。責任の所在も明確です。今でいうアメーバ経営のようなことを提案したわけです。


秀吉は事前に石垣の状態を見て回り、作業場を修復の度合いが均等になるように10個の現場に分けていました。そのうえで、各グループにくじをひかせて、割り当てました。

「さあ、どの現場も作業量は同じだ。明日から、各グループで競争すればよい。トップのグループには、信長様から特別に褒美が出るぞ」

職人たちのプライドと功名心をくすぐるなんとも絶妙な仕掛けです。人心を知り尽くした秀吉の面目躍如といったところですか。

実をいうと、信長の褒美というのは秀吉の独断でした。しかし秀吉には勝算がありました。信長は、こういう新しい仕掛けを面白がる人なので、こころよく褒美にも応じてくれるだろう。

秀吉はその足で信長のもとを訪れました。果たして、秀吉の話を聞いた信長はその機知に大いに感心し、褒美など安いものだと了承しました。

やる気に火がついた職人たちの中には、その夜のうちから作業に入る者もいたほどです。かくして、遅々として進まなかった石垣修復は、わずかな期間に成し遂げられたということです。


叱るよりも効果的な態度


華やかで才気あふれる豊臣秀吉のエピソードに比べて、徳川家康はいくぶん地味な気がします。

三河の小大名として辛酸をなめた家康は、ことのほか家臣を大切にしました。というよりも、頼りにせざるを得なかった。一癖も二癖もある家臣たちを粘り強く味方にしていく様は涙ぐましいと思えるほどです。

当時の武士といえば、まだ農家の一形態です。自分の土地を守るために武装している人たちですから、何よりも我が土地が第一です。だから主人筋が頼りないなら、敵方に寝返ることも辞さずというものでした。

そんな我の強い家臣たちの信頼を勝ち得るためには、地道に粘り強くかかわっていかなければなりません。


家康がまだ若い頃、夜、ねぎらってやろうと酒と肴をもって宿直室を訪れました。ところが、本来3人いるはずの宿直がひとりしかいません。

ちなみに徳川家では、秀吉の小集団活動を参考にしたのか、すべての役職を複数人が務めるんが通例でした。だから宿直も3人です。3人いればとっさの時にも対応がしやすいでしょう。

そんな家康の考えを知らずか、宿直など1人いれば充分だと示し合わせて、あとの2人は遊びに行ってしまったのです。

さぞかし呆れたことでしょうが、頭ごなしに叱ることはしないのが家康です。それどころか、残った1人に対して「おまえも遊びに行け」とけしかけたのです。

「武士は戦場でも仲間同士助け合わねばならない。仲間割れがいちばんダメだ。だからサボって遊びに行くなら皆で行け」言っていることはむちゃくちゃですが、殿様が行けというのだから、行かなくてはなりません。

1人残った宿直は大慌てで遊郭に行って、残りの2人に事情を説明しました。みな、泡を食って戻ってきたのは言うまでもありません。

3人が帰ってくると、家康は宿直室でひとり酒を飲んでいました。平服する3人を見て家康はニヤリと笑い「では後は頼むぞ」と言って出ていきました。

厳罰を覚悟していた3人には何の咎めもありませんでした。彼らは、家康の懐の深さに大いに感じ入り、忠誠心を強くしたということです。


さすが「鳴かぬなら鳴くまで待とう時鳥」とうたわれた徳川家康です。一時の感情で短気を起こしたりしないものです。

もっとも家康は晩年、豊臣家の殲滅を急いでなりふり構わぬ理不尽な所業に出て、後世の評判を致命的に落としてしまいました。

おかげで徳川幕府は300年も続いたのですが、やはりこれは焦った家康のミスだったと思います。

1人宿直室で飲んでいた頃の家康の我慢は、人生の最後には発揮されなかったようです。全く残念なことですな。



※上記2つのエピソードは、童門冬二の「『人望力』の条件」を参考にしました。少し脚色していますが、よしなにお願いいたします。

餃子の王将の課題は日本の飲食チェーン全体の課題

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王将の記事は久しぶりですね。

王将といえば、2013年に現役社長が本社の前で射殺されるという前代未聞の事件に襲われ、そのショックからかしばらく業績が低迷しておりました。

昨年あたりから徐々に回復してきており、久々の明るい記事です。

王将の業績回復の理由


記事によると、業績回復の理由は主に3つ。

(1)主要原材料を国産に変えた。

(2)餃子の皮つつみをセントラルキッチンでするようにした。

(3)「王将調理道場」を開設した。

国産原材料の使用


原材料を国産に変えたというのは、安心安全を重視するファミリー層にアピールするものです。

王将じたい学生や労働者をメインターゲットにして成長してきた企業ですが、少子高齢化の時代に適していません。女性やファミリー層を開拓する必要があり、その施策の一環です。

このほかにも、ニンニク抜き餃子をメニュー化したり、女性向けの別業態店を作ったりと工夫をしています。

餃子の皮包みをセントラルキッチンに移管


餃子の皮を店で包まない、というのは、人材対策です。王将はこれまで各店舗で調理することにこだわっており、餃子も皮つつみもその一つです。

ところが店内作業が増えると、従業員の負担が増します。従業員に負担をかけると店の雰囲気は悪くなるし、辞める人も多くなります。労働力不足の現代には厳しい事態です。

王将調理道場


王将調理道場というのは、従業員に料理のコツを教える研修場です。

王将は、良くも悪くも、ラフな運営をしてきており、調理についても現場で覚えろという姿勢を持っていました。だから店によって味がバラバラということもありました。

その分、店側に裁量があり、メニュー開発も自由で、活気を生んでいるという側面もありました。

さすがに、味のバラつきがひどすぎるということで、研修センターを強化したのでしょう。いい部分を残しながら、基本メニューの味は統一しようというわけですね。

日本の飲食チェーン全体に通じる課題


と、こうしてみてみると、王将の課題は、日本の多くの飲食チェーンの課題であることがわかります。

記事には、王将創業者の言葉として

『オレは庶民に、お腹いっぱい食べてもらいたい。そんな店をつくるんや』

と書かれています。しごくシンプルでわかりやすい理念です。実際、学生や労働者が多くいたので、その理念は多くの人の心を捉えたのでしょう。

が、今は違います。人口減少時代であり、労働力不足の時代です。顧客ターゲットも変えなければなりませんし、労働環境や教育制度も変えていかなければなりません。

典型的な問題だけに、その解決方法も、お手本のようですな。

創業以来のこだわりが聖域化しているが…


餃子の皮を店で包む、というのは、創業以来のこだわりだったのでしょうね。しかし、そのこだわりは、どこまで顧客に伝わっているのでしょうか。

これを考えるに、鳥貴族の串うち(鶏肉を串に刺す作業)や、丸亀製麺の店内製麺も、考え直した方がいいのではないか?

鳥貴族の串うちは労働コストを押し上げているし、丸亀製麺の店内製麺は場所の制約となっています。

なんとなく、手作業でする方が美味しい、店内製麺は美味しいと思わされているが、本当にそうなのだろうか。

こういう聖域にメスを入れることも必要なのではないかと思う次第です。









プロフィール
komai 小

営業関連のコンサルティングをしています。
製造業や卸売業などの営業組織を強化する仕事を得意としております。

株式会社クリエート・バリュー代表取締役
NPOランチェスター協会理事
NPOランチェスター協会関西支部
NPOランチェスター協会認定インストラクター
中小企業診断士   販売士1級

コンサルタントになる前は、日本酸素株式会社魔法瓶事業部(現在のサーモス株式会社)で14年、営業担当をしておりました。
その時、廃業寸前の赤字だった事業部がわずかの期間で世界トップ企業になった経緯を体験したことが、経営コンサルタントになったきっかけとなりました。
当時、経験したことや見聞したことを物語風にアレンジしたのが、拙著『「廃業寸前」が世界トップ企業になった奇跡の物語』です。
面白い本なので、ぜひ読んでください(^^)

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