わたしは価値を創る

大阪在住の経営コンサルタントのブログです。

営業は顧客の課題を解決する仕事だ

営業は顧客の課題を解決する

(2020年2月20日メルマガより)

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先日、営業を受ける機会が2度ありました。

1度は、先方の売り込みです。もう1度は、私からある商品を検討している旨を伝えて先方に来ていただきました。

結果として、いずれも、お断りすることになりました。

全く購入する気になれませんでした。


営業は、顧客の課題を解決するためにある


双方に言えるのは、まるで営業をわかっていないということです。

私は、営業をそれなりに経験した者は、どんな仕事だってできると考えています。

逆にいうと、営業を経験していない人は、できることが限られています。自分の専門分野に集中して、営業は他の人に任せる方がいいと思います。

その方も、売り込まれる方も、時間のムダですから。

特にものづくり一筋という方やクリエイターなどは、営業をしない方がいいですね。

ふだん、真面目にものづくりや作品づくりに取り組んでいる人が、こと営業活動になると、とたんに高く売りつけようとしたり、顧客を無視して価値観を押しつけようとしたり、自分勝手な営業をしてしまうのはなぜなのでしょうか。

その人の営業に対する浅い理解が、営業スタイルに現れてしまっています。

営業は、そんな怪しげなものではありません。


顧客にとって必要とは何か


そもそも顧客が代金を支払って商品やサービスを購入するのは、その商品やサービスが、顧客にとって必要なものだからです。

必要とは何か。詳しく言うと、顧客が抱えている課題を解決するために必要だということです。

具体的には次の3つです。


1.現状の不満を解消するために必要なものである。

人は誰しも、現状に様々な不満や不便を抱えています。

売上が停滞している。コストがこれ以上下がらない。不良率が高い。生産効率が悪い。従業員の定着率が低い。

そんな不満を解消するために有効な商品やサービスであれば、必要となります。


2.目標を達成するために必要なものである。

人の多くは、目標を持っています。

売上を今の倍にしたい。生産性を20%上げたい。競合よりもシェアを伸ばしたい。コストを15%落としたい。

その目標を達成するための商品やサービスであれば、必要となります。


3.将来の不安を払拭するために必要なものである。

人は様々なリスクを抱えています。

市場環境の変化により売上が急激に低下するかも知れない。重大な事故により生産施設が使えなくなるかも知れない。重要な部材の仕入れが滞るかも知れない。有能な従業員が退職するかも知れない。

そんな不安を未然に防ぐことができる商品やサービスであれば、必要となります。


自社の商品やサービスが、何等かの必要に当てはまらなければ、購入されることはありません。

いや、むしろ、購入してもらってはダメです。

営業のテクニックで必要ではない商品を購入させることができる場合もありますが、そんなことをすれば、営業の評価も会社の評判も早晩に失墜してしまいます。

長い関係を志向するなら、お互いが納得のいく取引を心がけなければなりません。


現状と理想を聞き出し、課題を導き出す


だから営業は、顧客がそれを本当に必要かどうか聞き出さなければなりません。

どうすれば、聞き出せるのでしょうか。

必要とは「目標の達成や、不安や不満、不便の解消のために必要だ」ということでした。

現状に不満や不安があったり、目標に届いていない現実があるから、理想の状態になるために、必要なのです。

つまり、必要とは、理想と現状のギャップを埋めるためのものであり、言い換えると、課題のことです。

回りくどい言い方で申し訳ありません。

必要=課題。課題とは、理想と現状のギャップのことです。

だから、現状と理想を理解することで、課題を導き出すことができます。

(1)現状についてヒアリングする。

現在の状況について、不満や不便はないか、不具合はないか、困っていることはないかを聞き出す。

(2)理想についてヒアリングする。

顧客が目標としていること、理想の将来像、どうなりたいかを聞き出す。

(3)課題について確認する。

現状と理想のギャップから課題を導き出し、顧客に確認する。


営業ヒアリングは、課題を導くまで行う


顧客が、自らの課題や要望を正確に理解しているとは限りません。いや、むしろ、意識していないことが殆どでしょう。

漠然とした不安や不満を抱いていて、何をどうすればいいのかわからない場合が多いはずです。

それを紐解いて、わかりやすく提示し、確認するのが営業の役割です。

営業ヒアリングとは、課題を導き出すことです。

よくヒアリングでは、どこまで聞き出せばいいのか、と質問されることがありますが、充分に課題を理解したと思えるまでは、ヒアリングを深めていかなければなりません。

どのように深めていくか、という部分が、営業としてのスキルになりますが、これままた別の機会にお話しいたします。


営業ができないならば、プロに依頼する


繰り返しになります。

現状と理想のギャップが課題です。

現状の不満や不便を解消し、理想の状態にするために、足りないものは何か。目標を達成するために必要なものとは何か。理想の将来像に向かうためにリスクとなっているものは何か。

それが、課題です。

顧客の課題を理解することなしに、工数がどれだけかかったとか、本来の価値はどれぐらいだとか、自分の都合を押し付けていたら、話が進みません。

そういう計算しかできない人は、しかるべき営業に依頼して、適切なマージンを支払って、顧客対応をしてもらってください。

元カルビー 松本氏に聞く「営業の秘訣」

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カルビーの元会長松本晃氏の記事です。短いですが、営業の秘訣が端的に記されています。

松本氏は、京都大学の大学院から伊藤忠に入社されます。

大学院の勉強が嫌で、逃げるように入った会社だというような書き方ですが、ともかく伊藤忠で営業としての能力を開花させます。

天職というぐらいですから、相当なものです。

特に営業ノウハウを書いた記事ではないので、簡潔ですが、それだけにわかりやすいと思います。

顧客の求めるものを売る


売りたいものを売るのではない。ということです。

松本氏は、顧客が欲しがるものは何でも売ったらしい。部署の専門は、マテハン機器ですが、ゴルフ場の機器から、車の自動洗浄機から、おたべを作る機械から、なんでもありです。そういう機械を専門に扱う部署の縄張りを荒らしていることになりますが、それでもお構いなしです。

商社という業種の特性もあるでしょうが、さすがに上司からは睨まれていたようです。

だけど、松本氏の姿勢は100%正しい。

会社がどう言おうと、営業は顧客の味方です。そうでなければ、営業としての存在意義はありません。

会社との軋轢が嫌で、会社の言い分を繰り返すだけの営業もいますが、そういう人は営業として続きません。早くAIに切り替えた方がいいですよ。


顧客のところへよく行く


接触回数を増やすということですね。

前にメルマガで書きました。

営業成績が上がらないという人は、顧客訪問してませんね。

行けばいくほど仲良くなれるし、何を望んでいるかもわかってきます。

営業の真実は現場にしかありませんからね。

机上であれこれ考えていても、推測と仮説しか出てきません。

そこに時間をかけるぐらいなら、顧客訪問した方が、建設的です。


約束を守る


顧客と本当の信頼関係を築くためには、「約束を守る」「ウソをつかない」ということが大切です。

単に、頭いいやつだなあ、知識あるなあ、という程度では、営業としての信頼を得ることはできません。

営業で最も重要な資質は「誠実さ」ですから。

頼りになる、信頼できる、という段階になって初めて、本音を言ってくれます。

営業として成績を継続してあげる秘訣は、信頼関係を作ることに尽きます。

私は、この信頼を得るプロセスを「テスト受注」という言葉を使って説明していますが↓

「テスト受注」は営業の醍醐味だ!


そんなわけで、営業としていちばん大事なことを、簡潔に言ってくれているなあと思ったので、とりあげさせていただきました。

当たり前のことばかりやないか。と言われそうですが、その当たり前のことが大切ですよ。

枝葉のノウハウとかテクニックとか、むしろ不要です。

本質をつかんでいきましょう。







商談の第一声は営業から発する

商談の第一声は

(2020年2月6日メルマガより)

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顧客と商談をする上で大切なことは、営業側がリードするという姿勢です。

受け身になると、相手から要求されるだけになってしまいます。

新人営業の頃、価格だけ聞かれて、端的に答えてしまい、「高い」と言われて商談が終わってしまったというようなミスがあります。

相手のペースに乗せられると、必要なヒアリングさえできなくなるおそれがあります。


商談をコントロールするのは営業


ビジネスの主役は常に顧客ですが、それをうまく仕切るのは営業だという意識は持っておかなければなりません。

だから商談の第一声は営業側が発するべきです。最初の一声で商談のペースが決まると思ってもいいでしょう。

たとえ雑談をするにしても、主導するのはこちらです。

「いい天気になりましたね」でもいいです。

「この前、紹介いただいた本、読ませていただきました」でもいい。

とにかく最初に声を出して、流れを作ってしまいましょう。


アイスブレイクでペースを握る


アイスブレイクとは、緊張した固い場の雰囲気を和らげるための方法です。

といっても難しいものではなりません。普通に雑談すればいいのです。

天気の話でもいいし、今朝のニュースの話でもいい。

って言えば、機械的に天気の話を始める人がいるかも知れませんが、もちろん、そんなことではありません。

慣れない営業がたどたどしく天気の話を始めれば、違和感しかありませんからね。

その場合は、仕事の話で結構です。

「先日、仰っていたことが気になって、調べてみました。実際その通りでした!」

「いつもながら、活気のある職場ですね」

「噂には聞いていましたが、環境のよい場所ですね」

などと前回の商談の振り返りや、相手の会社の話題を振ればいいのです。

相手や、相手の会社を肯定的に捉える内容ならば、なんでも結構です。

アイスブレイクは、内容よりも、雰囲気づくりですから、先方が気持ちよくなるような話題を選んでください。


さて、場が適度に温まれば、仕事の話に入ります。

この瞬間が重要です。

アイスブレイクを主導した勢いで、「今日の商談の目的」「商談の進め方」「商談時間」をこちらで決めてしまいましょう。


今日の商談の目的


目的を決めることは、商談をコントロールする最も重要な要素です。

「今日は、来月の企画のためにいくつか質問をさせていただきます」

「今日は、前回お聞きした内容を整理しましたので、その確認をさせていただきます」

このように明確に宣言すればいいのです。

営業にはプロセスがありますが、目的が曖昧だと、今日がどのプロセスかを見失ってしまうことにもなりかねません。

顧客側が、商談内容を完璧に把握していて、今日がどのプロセスであるかを理解しているとは限りません。むしろ理解していないことがほとんどです。

目的を設定することで、商談の方向性を規定し、散漫になることを防ぎます。

新人営業が、ヒアリングもできていない段階で価格提示だけをしてしまうようなミスは、商談の目的がはっきりしていないから起きるのです。

新人の頃は特に、目的を宣言することを意識してください。


商談の進め方


商談の進め方を決めることも、ペースを握る上では効果的です。

「今日は、まず私から、いくつか質問をさせていただきます。その後、御社の課題を私なりに整理させていただきますので、ご意見をください」

「今日は、私が先に説明をさせていただきます。その後、ご質問をいただきますので、よろしくお願いいたします」

などと言えばいいのです。


商談時間


商談の期限や時間配分を決めることも大切です。

「今日は、午後5時までお時間をいただけるということでよろしいですね」

「今回は大切な企画ですから、30分ほど質問のためのお時間をいただいてよろしいでしょうか」

というように、時間を決めることで、商談時間を確実に確保できます。また顧客の貴重な時間を無用に使うことの抑止にもなり、安心感を与えます。


このように進行を規定することで、商談をスムーズ進めることができます。

商談をうまくコントロールすることは着実な成果につなげる第一歩です。

新人の頃から、その意識を持っていることが重要です。

ソニーは業績向上だが、ショボいとも感じる

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ソニーが復活してきています。

2019年3月期の連結売上高は8.6兆円。営業利益8900憶円。株式時価総額は9.7兆円。堂々たるものです。

パナソニックの時価総額が2.8兆円ですから、その差は歴然としています。

パナはいまだに組織間の軋轢に苦しんでいるといわれています。というか、日本の大企業の殆どが、経営陣同士の確執や部門間の対立といった問題を抱えていると聞きます。

いまの日本企業の問題は、戦略ではないんですね。組織が重すぎて動けないわけです。

が、「One Sony」を打ち出したソニーは、いち早く組織の問題をクリアしたのでしょうかね。少なくとも、組織の問題にはフタをして、戦略方向性を打ち出しつつあるようです。

いまのソニーは、エンタメの会社


もっともその姿は、昔懐かしい「技術のソニー」ではありません。

いまのソニーは、プレイステーション(ゲーム機)やウォークマンを軸にしたエンタメの会社です。

ソニーは映画会社を傘下に抱え、スパイダーマンなどのヒットキャラクターを持っています。

映画ビジネスは当たりはずれが大きいものの、映画をテーマにしたゲームを作成することで、回収できる体制を整えています。

また豊富な楽曲を抱える音楽会社も持っており、ストリーミング配信で稼いでいます。

映画やゲーム、音楽といったコンテンツの販売は、利益率が高いので、一定量を超えると、非常に投資効率の高いビジネスとなります。

2000年頃からソニーを率いた出井伸之、ハワード・ストリンガーといった文系経営陣の戦略方向性が、ここにきて実を結んできたということでしょう。

アップルと比べると…


しかし、かつてのソニーを知る私などは、もの足りないなあと思ってしまいます。

ソニーと似たビジネスを志向したアップルは、売上高29兆円、営業利益7兆円、時価総額148兆円です。

アップルも、iPhoneを軸にして、様々なソフトを付加するビジネスです。(圧倒的にiPhone本体の売上が大きいですが)

アップル創業者のスティーブ・ジョブズは、ソニーに憧れていた時代があり、ソニーのやり方を真似た部分もあります。

ただし、アップルは、スマホという人類全てが手に取る可能性のあるものを生み出しました。据え置き型ゲーム機というニッチなビジネスに止まるソニーとの差がここに出てしまったわけですな。

ソニーの歴史を見てみると、スマホを生み出すための条件は全て揃っていたのに、生み出せなかったもどかしさを感じます。

イメージセンサに伸びしろ


ただ、ソニーは昔から、素晴らしい技術は持っているのに、それを大きなビジネスに活かせない傾向にあります。

おサイフケータイに使われた「フェリカ」とか、やりようによっては、巨大ビジネスになっていたでしょうに、もったいない限りです。

実はいま、監視カメラなどに使われるイメージセンサーは、ソニーが50%のシェアを占めています。

今後、市場が拡大することが確実視されるビジネスです。むしろ、この分野にこそ伸びしろがあります。

「技術のソニー」面目躍如のチャンスです。ここは、うまくビジネス化してほしいと思いますね。

アップルの天下も続かない


ちなみに我が世の春を謳歌するアップルも、iPhoneに頼りすぎるビジネスは、脆弱なんじゃないかと言われ始めています。

スティーブ・ジョブズなら、次の柱を開発していたでしょうが、今の経営陣は、iPhoneの価格を上げたりして、収益を落とさないことに躍起になっています。

今の経営では、伸びしろを感じませんね。

フィンエアーの「弱者の戦略」

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フィンランドの航空会社フィンエアーによる見事な「弱者の戦略」事例です。

世界ランク62位、欧州でも15位という平凡な航空会社が、日本との航空路シェアで1位となっています。

アジアでも規模の大きな中国ではなく、あえて日本を選択した戦略が機能したようです。

「最短距離」という強みにフォーカス


同社の戦略は、日本と欧州を結ぶ最短距離が、シベリア上空を突っ切ることであるところから組み立てられています。

その場合の欧州の窓口は北欧です。

つまりフィンランドを拠点とする同社とすれば、地の利がある戦略です。

日本と欧州路線では、10時間〜12時間かかるのが普通ですが、北欧便なら9時間台で行けるそうです。

わずか数時間ですが、この差が大きいらしい。10時間を超えると、かなりキツイのだとか。私はこんな長い空旅はしないのでピンとはきませんが、記事の作者はそう言っていますね。

地方空港をハブ化して、メジャー化をうかがう


そこで同社は、ヘルシンキ・ヴァンター空港をハブにして、欧州や中東各地に乗り継ぎできるようにしています。

日本から来る、あるいは日本に行く場合は、とりあえずヘルシンキを経由させようという思惑です。

これに加えて、日本の新千歳空港をハブ化する構想も持っていて、欧州の人がアジアに向かう場合も、とりあえず新千歳に寄ってもらおうと図っています。

北欧と日本というマイナー路線から、欧州と東アジアというメジャー路線をうかがう野心を見せているということですな。

「勝ちやすきに勝つ」というのは、弱者の戦略の基本原則ですから、その局面をレバレッジにして、大きな需要をとろうとする典型的ですが見事な弱者の戦略でした。





「テスト受注」は営業の醍醐味だ!

テスト受注
(2020年1月23日メルマガより)

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営業活動には、プロセスがあります。

アプローチ、ヒアリング、プレゼンテーション、クロージングという4段階です。

(もう少し大きくとらえる場合、リストアップとアフターフォローを前後に付け加えます)

この4段階は、どのような業界であっても当てはまります。

営業をする方は、まずはプロセスを意識してください。


営業は4つのプロセスでできている


アプローチとは、顧客に接触し、信頼関係を築く段階です。

ヒアリングとは、顧客から本音としての悩みや要望や課題を引き出す段階です。

プレゼンテーションとは、課題を解決するための的確な提案をする段階です。

クロージングとは、契約を結ぶ段階です。

営業に慣れない人は、この4つの段階がわかっていません。

アプローチの段階なのに、顧客に言われるがまま見積もりを提出してしまったりします。

信頼関係もできていないのに、いきなり見積もりを出せば「高い」と言われるだけですよ。

きちんとプロセスが理解できていれば、このような間違いは起きません。

営業活動する上で、今日はどの段階にあるのかを常に意識してください。


「アプローチ」が最も重要


さて、この4つのプロセスの中で最も重要な部分はどこでしょうか?

全部重要です。

が、敢えて、優劣をつけるとすれば、「アプローチ」が最も重要だといえます。

アプローチは営業の入り口です。アプローチがなければ、営業が始まりません。

契約をするためには、的確な提案が必要です。提案のためには真の課題をつかんでいることが重要です。真の課題を引き出すには、本音を聞き出せる信頼関係が必要です。

つまり、信頼関係を作る段階であるアプローチがダメならば、すべてうまくいかないのです。

アプローチが最も重要である所以です。


前回のメルマガで、そのアプローチの一つの役割である顧客訪問件数について書かせていただきました。

今回は、もう一つの役割である信頼関係をどのようにして構築するかを書きたいと思います。


新規開拓で信頼関係を築く難しさ


顧客訪問を重ねることで、顧客とは馴染みの関係になることはできます。しかし、それだけで、ビジネスにおける信頼関係ができたというわけではありません。

やはり、ビジネスをする上での信頼関係は、仕事内容で築くものでしょう。

新規開拓営業をする場合は、特にそうです。

いくら熱心に通ってくる営業だったとしても、よさそうな人だったとしても、仕事の取引を始めるには、ハードルがあります。

0から1へのハードルは相当です。

新規開拓営業は、既存顧客への営業よりも、何倍も難しいものなのです。


「テスト受注」が信頼関係のカギ


顧客心理として、いくら気に入った営業だったとしても、いきなり大きな取引を任せるのは怖いものです。

できれば、最初の取引の前に、仕事ができる相手かどうか、確かめたいと思うでしょう。

だから、まずは小さな取引を任せてみて、信頼できる相手かどうか見極めたい。

いわば「テスト発注」です。

営業側からすると、この「テスト受注」に合格して初めて取引ができる相手だと認められます。

だから最初の小さな取引はすこぶる重要です。何としても合格しなければなりません。


ただし、気を付けなければいけないのは、テスト受注が、小さな取引というような分かりやすい形で行われるとは限らないことです。

顧客も無意識のうちに、信頼に足る営業かどうかを確認しているのですから、テスト受注は様々な形をとることがあります。

例えば、それまで仕事の話にならなかった顧客なのに、突如「一度、企画書を持ってきてよ」と言われることがあります。これは、テスト受注でしょう。

この時の企画書は完璧を期してください。

内容も充実したものを提供すべきですが、時間も大切です。一週間後にのんびり持っていくようなことはせず、翌日か翌々日、顧客の気持ちが冷めないうちに持っていくべきです。

内容でも、姿勢でも、取引する上で信頼できる営業だと認められなければなりません。

このほか、サンプルを持ってきてほしいと言われることもあります。パンフレットを多めに持ってきてほしいと言われることもあります。展示会の日程を聞かれることもあります。競合他社との比較表を作ってきてほしいと言われることもあります。

要するに、顧客がそれまでとは違う動きを見せたり、要望を伝えてきたりした時は、テスト受注だと思うべきです。

テスト受注に合格すれば、取引に大きく近づきます。不合格ならば、これまでの関係構築への努力が無駄になります。

営業としての正念場の一つだという自覚を持たなければなりません。


「テスト受注」の繰り返しで信頼関係は深まる


既存顧客との取引においても、テスト受注があります。

通常の取引とは違う要望をされた時などが、それです。

たとえば、企画書のパワーポイントのデータがほしいと言われたり、これまでの取引データをまとめてほしいと言われたり、工場を見学させてほしいと言われたり、展示会に上司と一緒に行くと言われたりするようなことです。

明らかにこれまでのルーティンにはなかった要望や依頼を受けた時は、テスト受注ではないかと考えてください。

既存顧客によるテスト受注は、信頼関係を深めるチャンスです。

顧客がそれまでと違うことを要望するには、何等かの理由があるものです。

取引を拡大したいと思っているのかもしれません。大きなプロジェクトの候補に挙がっているのかも知れません。重点取引先に選定されようとしているのかも知れません。(反対に、仕入れ先整理の対象になっているのかも知れませんが…)

その真意を聞き出し、読み取り、完璧な答えを出すことです。

顧客が本当に困って助けを求めているのかも知れません。そういうこともあるでしょう。発注ミスがあって急な追加注文をしてきたり、現場でのサポートが急遽必要だったり。

そんな時に「先方のミスだから知らない」などと言っていては、営業失格です。

ミスは誰にだってあるものです。それをカバーするのが営業です。

営業は常に顧客の味方であるべきです。こんな時こそ、無理をしてでも顧客を助けなければなりません。

場合によっては、自分の会社と喧嘩しなければならないかも知れない。それでも、営業には無茶を通さなければならない時があるのです。

本当に困った時に助けられた人は、あなたのことをどう思うでしょうか?

恩に着せる必要はありませんが、そういうことの積み重ねで、信頼関係は深まっていくのだと覚えておいてください。


「テスト受注」をつかむと、営業人生が充実する


営業をある程度の期間やっていると、深い信頼関係で結びついた得意客が何人かいるものです。

私にだっています。

会社を辞めて15年以上経ちますが、いまでも飲みにいきます。仕事の細かな内容はもう思い出せませんが、信頼関係は残っているのですね。

思い返すと、あの時の営業対応があったから、絆が強まったのだな、と思える場面がいくつかあります。

長い付き合いの中でも、ほんの1度か2度のことです。確かに、あの時、少しは頑張りました。

あのほんの少しの頑張りが、その後の私の営業成績を支え続けてくれたお得意様を作ることになったのだから、営業というのは派手なパフォーマンスではありませんね。小さな、ほんの小さな努力の積み重ねです。

逆に、せっかくのテスト受注に気づかず、スルーしていたらと思うとぞっとしますね。

気づくか、気づかないか、紙一重ではないでしょうか。

私もたまにしかありませんでした。たぶん、気づかないことも多かったのでしょうね。でも、たまに気づいたから、今があると思っています。優秀な人は、もっと多くの機会をつかんでいるのでしょうね。

営業成績が上がらないという人は、顧客訪問してませんね。

顧客訪問

(2020年1月9日メルマガより)

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営業成績が上がらない。。。と悩んでいる営業の方がいらっしゃるなら、やるべきことはひとつです。

もっと顧客訪問をしてください。

私がみたところ、ほとんどの営業組織で、訪問件数と成績は高い相関関係を示しています。営業活動において、訪問することは非常に重要なことなのです。

とにかく成績のいい営業は、よく訪問しています。

相当のベテラン営業でも同じです。普段はあまり動かず、ピンポイント訪問で目標達成を続けているような人はいません。少なくとも私は知りません。

そういう人がいるとすれば、隠しているだけですよ。努力は人に見せない、という価値観を持った人なのでしょう。

いまはそんな価値観は捨ててください。どういう努力をすれば成績が上がるのかは、チームで共有すべきです。


訪問件数が、営業成績に直結する


訪問するからこそ顧客の様子がわかるのです。顧客の本音を読み取ることができます。
現場で実際に起きていることを目の当たりにできます。

営業が訪問したというだけで、注文を受けることがよくあります。ただの偶然だと思うかも知れませんが、それも営業活動です。

新人の頃は、そんなタイミングを拾うような営業活動でもいいじゃないですか。なるべく多くの取引先を訪問してください。

顧客にとっても、顔を合わせて会話をかわした相手の方が信用できます。しばらく見ない相手よりも、最近顔を見た相手に注文を出したくなるのが人情です。

人は会えば会うほど親しみがわくという特性もあります。信頼関係を作る上で、頻繁に顔を合わせることは効果的です。重要だと思う顧客には、さらに訪問件数を増やせばいいのです。

訪問件数を上げることは、営業が成績を上げる最大の秘訣だと言っていいでしょう。


新規開拓営業では、さらに訪問件数が重要


新規開拓営業においては、なおさら訪問件数を増やすことが重要になってきます。

新規開拓営業は、アプローチしないことには始まりません。

確かに、アプローチしたからといって成果に結びつくとは限りませんよ。

実際のところ、接触した見込み客のほとんどは様々な理由で、取引に至らないことでしょう。それでも接触しなければ、成果に結びつくことがないのです。

新規開拓営業は、確率論の世界です。アプローチした中の数パーセントか十数パーセントしか取引にまで至りません。これは相当のベテラン営業でも同じです。誰が取り組んでも、成功確率はさほど変わりません。

ということは、新規開拓営業で成果を出すには、アプローチ数を上げるしかありません。厳然たる事実です。営業テクニックよりも、単純なアプローチ数がものをいうのです。

新規営業の成功の秘訣は、アプローチ数を増やすこと、それだけです。


新人営業は特に、訪問件数に注力せよ


つまり、ルート営業においても、新規開拓営業においても、成功の秘訣は、訪問件数を増やすことなのです。

営業とは、質より量がものをいう世界です。

特に新人営業の頃は、営業テクニックを望んでも仕方ありません。それならば、確実に成果を上げられることに集中しましょう。

新人営業の頃は、顧客訪問そのものに怖気づいてしまうかも知れません。

だけど、自信がないから訪問できない、では始まりませんよ。誰もが通った道です。

営業訪問を繰り返すことで、営業としての経験値が増し、営業としての技術も身につくのです。営業量が、いつしか営業の質を高めることになっていきます。

訪問件数を上げることはメリットばかりです。デメリットはありません。とにかく、営業として生きていくなら、顧客訪問を繰り返してください。


時間が足りないという言い訳が多い


とは言いながら、営業全員が充分な顧客訪問をしているわけではありません。

全員がしっかりと訪問していたら、みな成績はいいはずです。実際は、行かなければいけないと思っていながら、動けていない営業も多いようです。

なぜ、訪問数に差がでるのか。

訪問件数が少ない営業にわけを尋ねてみると、たいていは、時間が足りないと答えます。

ある意味当たり前です。

今は営業が余っている会社などありません。どこも少ない人員でやりくりしています。だから一人が受け持つ取引先の数は多くなっています。

時間が足りないと言ってフリーズしている人は、すべての顧客先に等分に訪問しようとしているのではないですか?

そんなことをしていたら、時間が足りなくなるのは当たり前ですよ。


顧客訪問のスタートは、訪問計画を立てること


営業訪問にはメリハリをつけなければなりません。

行くべき重要な顧客には、とことん訪問し、今行かなくていいと決めた顧客には、訪問しなくていいいと割り切ります。

顧客訪問とは、この訪問計画を立てるところから始まります。

訪問件数が少ないという人は、訪問計画を立てていないか、計画が甘いのです。

訪問計画は、努力目標なんかではありません。必達目標です。だから現実的な計画を立ててください。

行動目標がないと、訪問なんてできません。

なにしろ営業の仕事はエンドレスです。情報の整理、営業資料や企画書の作成、報告書の作成、営業会議への参加、クレーム電話への対応、営業所内にいるだけで仕事が湧くように出てきます。

空いている時間などないのですから、計画がなければ、訪問などするはずがありません。つまり行動計画を疎かにする営業は三流で終わります。


では、重要顧客をどのように選ぶのか?と言われそうですが、それはおいおいこのメルマガで説明していきます。(過去のメルマガで書いていますが)

ここではとりあえず、自分で考えて重要顧客を決め、訪問計画を立て、確実に実行することを心がけてください。

もう一度、言いますが、訪問件数は営業成績に直結します。

とっても簡単な地域営業の始め方

地域営業の


(2019年12月12日メルマガより)

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営業活動をする上で、「地域」は切っても切れないものです。

日本の場合、高度成長期の営業活動は、地域戦略とともにあった感があります。

ランチェスター戦略にも「地域戦略編」があるぐらいです。

インターネットが発達した今は、多少状況が変わったのでしょうか。地域という枠から自由になった企業もあるでしょうね。

しかし、依然として大半の企業では、営業活動において、地域戦略は重要な位置を占めています。

だから現場で営業活動に携わる者は、まずは自分自身の営業地域をよく観察し、理解することから始めなければなりません。


オリジナルの地域地図を作る


昔は、地域の白地図が、営業活動の重要ツールの一つでした。

本屋さんなどには、着色のない地域の白地図が販売されていたものです。

そこに、自社の営業拠点や、取引先、見込み客、ライバル会社などを書き込んで、営業計画を練った経験のある方もいらっしゃるでしょう。

訪問した先は色をつけて、取引先には赤いピンを打っていく…みたいな使い方をすると、営業活動の成果が立体的なビジュアルで見えて、臨場感があります。

けっこう盛り上がるものですよ。

いまはインターネットでグーグル地図をモノクロでプリントアウトすればいいですね。便利な時代になったものです。


使い方は昔と同じです。

自社拠点(営業所)をまず書き込みます。

次に取引先。

取引はないが可能性のある見込み客。

それぞれ色を変えて書き込んでいきます。

一般家庭が顧客になっている場合は、一軒一軒書き込むのは大変ですから、地図をさらに細かなエリアに分けて、マンションの多いA地区、古い家が多いB地区…といった感じに、区切っていきます。

次に書き込むのは、ライバル会社の拠点です。

ライバル会社の取引先もできる限り書き込んでいきます。

色によって、自社取引先が多い地域、ライバル会社の取引先が多い地域が一目でわかるようになればいいです。


こうしたエリア地図を作るだけで様々なことが見えてくるはずです。

自社拠点の近くには自社の取引が多いのか?

取引先は各地に散らばっているのか?それとも一か所に集中しているのか?

ライバル会社の拠点の近くにも、自社の取引先はあるのか?

ライバル会社は、自社の近くにも進出してきているのか?

そうしたことを考えながら見てください。何か気づくことがあれば、それだけで意味があります。


まずは地元を固める


地域営業で注意すべきは、拠点からの距離です。取引先が自社拠点から離れているところばかりなら、営業としての効率がいいとは言えません。

営業活動にとって移動時間は避けようがないロスとなります。訪問するだけで2時間もあかかる距離にある取引先はそれだけで半日以上とられてしまいます。

本当にその取引先には訪問すべきなのでしょうか。

実際のところ、取引先への訪問効率を上げるだけでも、営業成績が向上することがほとんどです。

過去からの慣習で、距離が遠い取引先に時間をかけて訪問し、すぐに行くことができる地元の取引先への訪問を疎かにしている場合があります。

非効率は知らず知らずのうちに入り込んできます。

取引先への訪問計画は、定期的に再考すべきものです。


地域営業の基本は、地元を固めるという姿勢です。

地元に近ければ近いほど効率的です。

現在、営業拠点に近いのに取引がない見込み客はいませんか?

通常、拠点に近ければ近いほど、取引しやすくなるはずです。距離的に訪問しやすいというだけではなく、地元意識も有利に働きます。

案外、近すぎて死角になっているところがあるかも知れませんよ。

自社拠点の近くにライバル会社の進出を許すのは危険です。小さな綻びが大きな裂け目となってしまう恐れもありますから。


反対に、ライバル会社の拠点の近くに自社の得意先はないでしょうか。

あればどういう理由でしょうか。

ライバル会社が近くにあるのに、わざわざ自社と取引しているのはどういう理由があるのでしょうか。

そんな通常とは違う部分には、営業のヒントが隠されています。その理由を理解すれば、ライバル会社の弱点や、自社が勝てる方法が見つかるかも知れません。


その意味でも地元を固めることは重要です。

普通、ライバル会社の近くにある顧客を奪おうとは思いません。

どんな会社だって地元を固めようとしています。奪われたら意地になって奪い返しにくるでしょう。

それなのに、地元の顧客をやすやすと奪われてしまったら、ライバル会社はどう思うでしょうか。

営業が弱い、隙のある会社だと思うはずです。そんな会社は狙い撃ちされてしまいます。

いまは手付かずのまっさらな顧客などいません。

新規開拓は常にライバル会社の取引先です。

奪うならば、隙のある弱いライバルからだ、なんて思われたら厄介ですよ。


第二の営業拠点を作る


地域営業のもう一つの基本は、地元以外の場所に拠点となるべき場所を作っていくことです。

地域の地図をみて、地元以外で自社の得意先が集中している場所はないでしょうか。

もしあれば、そこは第二の拠点です。取引先が集まっている拠点ならば、訪問効率もいいし、取引先同士の口コミ効果も期待できます。

取引先が多いというだけで優位性を発揮できるのです。

こういう場所は、守りやすいし、これからも拡大していきやすいと言えます。

過去の営業担当者が努力してつくってくれたものでしょう。大切にしたいものです。


これから新たに拠点を作っていくにはどうすればいいのでしょうか。そこに現担当者のオリジナルな営業余地があります。

やはり地域地図をよくみてください。

県境や幹線道路の外れ、川向こう、行き止まりとなる港など死角となっている場所はありませんか。

自分が行きにくいと思っている場所は、ライバルも行きにくいと思っている場所の可能性があります。

そんな自社にとってもライバルにとっても手薄となっている場所を狙ってみるというのはどうでしょうか。

先ほど、距離的に行きにくい場所は効率が悪いと言ったばかりなのに、矛盾しているように思えるかも知れませんね。しかし、一見、行きにくい場所も、取引先が増えて拠点となれば、一気に効率性が上がります。

つまり戦略的に拠点を作るのです。

過去の営業担当者は、そうやって拠点を作ってきたのです。新しい拠点を作れば、それはあなたがその地域に残した爪痕であり、功績となります。

コンビニ業界 生き残りを賭けた「弱者の戦略」

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「戦略勉強会」でとりあげたネタです。

大手3社で寡占化し、成熟化してしまったコンビニ業界の話です。

小さなコンビニチェーンが、「弱者の戦略」を使って生き残りを図っているらしい。

それぞれの「弱者の戦略」


記事にあげられているのは、3つ。

病院内への出店で存在感を示すポプラ(の生活彩家)

→閉鎖商圏と記事では呼んでいます。路面店が成熟しつつある今、施設内や企業内などのクローズな場所がねらい目となっています。思えば、駅構内も閉鎖商圏ですね。ちゃんとJR系のコンビニがあります。企業規模や施設規模によっては、それなりに大きな市場になるかもしれない、ということで、大手3社も虎視眈々と狙っているようです。


無人店舗の運営およびプロデュースを手掛ける国分グローサリーチェーン。

→無人コンビニはトレンドですね。アマゾンも手掛けています。が、こちらは、もっと簡便な自動販売機の延長のようなものでしょうか。同社の特徴は、自社で運営するだけではなく、システムを提供し、運営の支援をしているところです。上の閉鎖商圏とからめて考えると、需要は大いにありそうです。

店内調理を徹底するGOOZ

→大手コンビニの効率性追求の逆をいく戦略です。店内調理にこだわっています。その分、ATMとか便利なものを省いているそうです。これはもはやコンビニではないのでは?

もっと早く手掛けていれば、それなりの勢力になっていたのでは


いずれも生き残るために、市場の変化に適応しようと頑張っておられます。

こういう努力には頭が下がりますな。

ただ、もっと前に取り組んでいられなかったのだろうか、と思わなくもない。

市場が成長している時は、前に倣えの戦略が儲かるんだ!と言われればその通りですが、成熟化を見越して、早いうちから独自路線をいく企業もあります。

古いですが、靴といえば何でも売れる時代に、あえてバスケットシューズだけを作って市場を占拠した鬼塚商会(アシックス)とか。

農家のコンビニを標ぼうして大量出店を成し遂げ、極小ホームセンターというジャンルを確立したコメリとか。

小さな市場であっても、トップ企業となれば、存在感があります。容易に倒れません。結局、生き残るのは、小さな市場であっても、がっしりとした顧客基盤を作ってしまった企業です。

閉鎖商圏というのは、ニッチトップを生みやすい市場のはずですね。ポプラがもっと早く取り組んでいれば、今頃、第4勢力になっていたんじゃないかなーと思うわけです。








新人営業が自信を持つために最初にすること

新人営業が

(2019年12月12日メルマガより)

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先日、ある企業で、新人営業向けの研修を実施させていただきました。

やはり新人はいいですね。

素直ですれていません^^

こんな素直な時期に、適切な指導を受けれることができれば、幸福です。

余計な回り道をすることなく、正しい方向に努力すれば、大切な会社人生を有意義に過ごすことができるでしょう。

そんな適切な指導役になれるように尽力いたしました。何年か後、あるいは何十年か後「ああ、あの時の研修はよかったなあ。あの研修で、営業という仕事が理解できたんだな」と思い出していただければ講師冥利に尽きます。


顧客先に行く営業は自信を持つことが大切


ただ新人営業あるあるですが、どうしても営業という仕事に意気を感じない人もいらっしゃるのですね。

これは困ったものです。その会社の方も言っていましたが、採用面接の時は軒並み「営業志望です」というものの、入社してしまえば、営業だけは行きたくないと言い出す人がいるのだとか。

営業って嫌なイメージがあるのでしょうかね。

きつい。つらい。しんどい。無理難題を押し付けられる。嫌な客に頼み込んででも買ってもらう。

先輩や上司は体育会系。絶対服従。ちょっとしたミスにもどやされる。

きついノルマがある。毎月ノルマが追いかけてくる。達成できないと落第生のように扱われる。

正直に言って、私も新人の頃はそう思い込んでいました。

しかも、いくつかは当たっていました^^;つらいことも確かにあります。

しかし、決して人間性をすり減らすような仕事ではありません。プライドを捨てなければ務まらないようなものではありません。

むしろ営業は、どんな仕事よりも誇れる仕事だと思っています。

新人営業の方は、ぜひとも、営業という仕事に誇りを持ち、自信をもって取り組んでいただきたいと思います。


営業は顧客に最も近い存在


営業は、あらゆる仕事の中で、最も重要な存在です。重要ではない仕事などないのですが、その中でもいちばん重要なのが営業です。

なにも私が営業畑の人間だからそう言っているわけではありません。いや、それもあるか。

でも、私なりに根拠があります。

考えてみてください。

ビジネスで最も大切な存在は顧客です。すべてのビジネスが、顧客から商品やサービスの代金をいただいて成り立っています。顧客以外に会社に収入をもたらすものはありません。それはわかっていただけるでしょう。

そんな大切な顧客にいちばん近い存在が営業なのです。

営業は日々、顧客と接しています。顧客担当者と身近に接して人となりを分かりあい、その顧客の会社の雰囲気や動きをよく知っています。

担当者を通じて、顧客の会社の状況を把握し、時には経営者と挨拶したり、意見を交わしたりしているかも知れません。

つまり、いちばん大切な顧客のことを、いちばん知っているのが営業なのです。

会社のどんな職種や役職の人も、企画も、技術も、生産も、経理も、個別の顧客のことを知りたければ、営業担当者に尋ねるしかありません。

営業担当者が代弁する顧客の声には、社長といえども耳を傾けなければなりません。


営業が強い会社は生き残ることができる


なにしろ、商品の生産計画も、新商品の企画も、設備の投資計画も、顧客の考えや動く方向を無視しては作ることができません。

顧客の動向や変化にあわせて、会社の在り方も変えていかなければ、厳しい競争を生き抜くことはできません。

要するに、顧客の考えを理解できなければ会社は存続できません。

個別顧客のことなどいちいち気にかけていられるか、大げさだなあ。と思う人はいますかね。もしそういう人が上層部にいる会社があれば、賭けてもいいです、その会社は長くありませんよ。

その意味でも、会社はひとりひとりの営業担当者に大きな期待を寄せています。

優秀な会社は営業を大切にします。

そんな会社には優秀な営業が育ちます。

優秀な営業が多く育っている会社は、とても強い競争力を持つことになり、長い間、生き続けることができるはずです。


顧客にとって営業は会社を代表する存在


いっぽう、顧客側にとっては、営業はその会社を代表する存在となります。顧客は常に、営業を通じて会社と接しているからです。

担当する営業が、しっかりしていて好感の持てる人であれば、会社そのものの印象もよくなります。

逆に、営業がだらしなくて軽薄な人間であれば、そのような会社なのだろうと見くびられてしまうでしょう。

だから、新人営業だからといって気を抜いてはいけません。いい意味でも悪い意味でも、営業は会社を代表する人間とみられるのです。

営業は単に指示された商品を売りに行くだけの「売り子」などではありません。

営業とは、会社にとって顧客に最も近い存在であり代弁者です。

顧客にとっては、会社を代表する存在です。

そのように非常に重要な存在であることを忘れないようにしてほしいものです。


新人営業でもできる努力をせよ


そんなこと言っても、自分は新人だし、会社の代表だなんて荷が重いよ。そう言いたくなるかも知れませんね。

それはそうですね。新人にベテラン営業と同じように振舞うことなどできないでしょう。

それは、顧客側も充分にわかっていますよ。

無理に、背伸びするような必要はありません。新人営業だから、丁々発止のやりとりなど不可能です。的確な質問ができないかも知れませんし、顧客の思いを正確にくみ取ることができないかも知れません。

それでも、営業は営業です。

姿勢だけでも前向きに、自信をもって臨んでください。

って、そんな自信が持てたら苦労はしませんか。


でも自信を持つことは大切なことです。自信がなくておどおどしている営業をみれば顧客は不安になります。そんな担当者には、何かを依頼しようなんて思いません。それどころか、この先も期待できないと判定されてしまいます。

もしあなたが新人営業で、これから客先に行かなければならないとしたら、たとえ先輩や上司と同行だとしても、営業としての自信を持ったうえで、客先に行ってください。

新人でも自信を持てる方法があります。

それは、自社商品や技術について、マニアックなぐらい知り尽くすことです。

できれば先輩や上司が知らないようなことまで知識として持っておいてください。折に触れて、先輩が商品の細かなスペックについて尋ねてくるほどの知識を身に着けてください。

それなら、経験が乏しい新人営業でも、努力次第でなれるはずです。

顧客も、経験の浅い営業に、高度な交渉力を求めているわけではありません。

価格決定の裁量権がなくても、驚くに値しません。

でも、自社商品の知識を充分に持っていないのは、ただの勉強不足で怠慢です。これはさすがに呆れられるでしょう。

だから新人営業が顧客に認められるために最初にやるべきことは、自社商品やサービスに関することをとにかく理解することです。

細かなスペック、特徴、メリット・デメリット、アフターサービス、開発の背景、販売施作、売れ行き、市場シェア。できれば類似商品やサービスの理解もほしいですね。

自社商品について隅々まで細々とした部分まで知っているということは、営業として当たり前のことだとはいえ、顧客に重宝される存在になります。

それがあなたの自信になるはずです。

自信のある営業に顧客は信頼感を抱きます。信頼できる営業には、顧客も本音を漏らします。顧客情報を得られる営業になっていきます。

そういう意味で、自信を持つために行う努力が、あなたの営業としてのキャリアの最初の一歩となるはずです。

きっと大きな一歩になるでしょう。

創業以来の危機に陥るアシックスは復活できるのか?

アシックス

(2019年11月28日メルマガより)

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2年前、テレビで「陸王」というドラマが放送されました。「半沢直樹」と同じ池井戸潤原作の熱い企業ドラマです。

倒産寸前の老舗足袋メーカーが、マラソンシューズの開発に活路を見出し、業績を回復させていくという内容でした。

足袋の形状をそのまま使った軽量薄型のシューズが有望選手に採用され、大手メーカーのシューズを履いたライバル選手を打ち負かします。それとともに足袋メーカーも、スポーツシューズメーカーとして復活するという話になっていました。

物語のキーとなるのが、足袋のような形状の薄底シューズです。普通のマラソンシューズに慣れた身からすると何とも新鮮で、ストーリーも面白かったのですが、シューズのインパクトが絶大でした。

確かにマラソンという競技の性質上、シューズは軽量である方が有利なはずです。足袋ならば、最も裸足に近いと思えます。現在放送中のNHK大河ドラマ「いだてん」でも、主人公のマラソンランナーは、足袋を改良したシューズで走っており、なるほど理にかなっているのだろうなと思えました。


「陸王」というドラマの中で、ライバルとなるのが大手シューズメーカーです。有望選手を囲い込み、豊富な資金を投入して、シューズ開発に取り組んでいる様子が描かれます。

しかもその大企業、怪我をした選手は見込がないと切り捨て、怪我が癒えるとまたすり寄ってくるという節操のなさで、選手の気持ちを踏みにじる傲慢な悪役として露骨にイメージづけされていました。

そんな強力な大企業に対して、小さな足袋メーカーが、特殊技術を使って渡り合う姿が痛快だったものです。

が、現実の世界は、様相が違うようですよ。


マラソン界を席巻するナイキ製シューズ


いま世界のマラソン界は、記録ラッシュに沸いています。

特に今年後半から開催されたレースにおいて、男女とも好記録が連続しています。

その極めつけが、今年10月、ケニアのエリウド・キプチョゲ選手が記録したフルマラソン1時間59分40秒という驚異的なタイムです。

もっともこれは、ペースメーカーがレースを引っ張る記録ありきの大会なので非公式記録とされています。

それでも人類史上はじめての2時間切りは、世界を駆け巡りました。

オリンピックを来年にひかえ、世界のマラソン界は、突如として高速レースに舵を切ったようです。


が、ここにきて、好記録ラッシュに懸念を示す声も出てきています。

なぜなら、好記録を出す選手のほとんどが、ナイキの特殊なシューズを履いていたからです。

2018年のメジャー大会(東京、ボストン、ロンドン、ベルリン、シカゴ、ニューヨーク)において、男女優勝者12人のうち、8人がナイキのシューズを履いていました。

3位までに広げると、36人のうち25人がナイキです。


厚底シューズが規制される可能性も


そうなんですね。

近年、マラソン大会での上位入賞者のほとんどがナイキのシューズを履いているのです。これでは、シューズそのものに記録を縮める要素があると思われても仕方ありません。

競技者は、1分1秒を縮めるために身を削る努力をしている人たちです。シューズでタイムが縮まるのなら、これを履かない選択肢はありません。

いまやマラソン界は、ナイキのひとり勝ちです。

トップランナーたちが我先にとナイキのシューズを採用する状態となっています。


ナイキのシューズは、反発力のあるカーボンファイバープレートを靴底に使っていることが特徴です。

これを航空宇宙産業で使う特殊フォームで挟んでいるので、靴底が厚くなったものの軽量のままです。

反発力があるというのは、さながらバネをシューズに仕込んでいるようなものではないですか。

マラソンに必要な反発力(推進力)が得られると同時に、足へのダメージが軽減されるという画期的なシューズです。

これを履いたランナーは有利なはずですよ。

特定のテクノロジーが記録に影響するというのはいかがなものか、と思いますよね。


これで思い出すのは、一時期水泳界を席巻した特殊水着(レーザー・レーザー)の件です。好記録を連発する特殊水着をトップ選手たちがこぞって採用する状況でしたが、国際水連が禁止するに至りました。

いま国際陸連も、厚底シューズの特異性に気づいて「やりすぎなテクノロジーはいかん」と警告するに至っていますから、禁止される日も近いのかもしれません。




唯一の強みを奪われたアシックス


このあおりを一番受けているのが、日本最大のスポーツ用品メーカーであるアシックスではないでしょうか。

アシックスは、総合スポーツ用品メーカーですが、近年、祖業であるシューズにウェイトを置いてきました。

特にマラソンやジョギングです。

かつて、裸足でフルマラソンを走り切り、オリンピックで金メダルを獲得した英雄アベベにシューズを提供し、「アベベにシューズを履かせた男」として話題になったのが、アシックスの創業者鬼塚喜八郎氏でした。

マラソンシューズに掛ける熱情は人一倍で、近年では、高橋尚子や野口みずきら、オリンピック金メダリストに絶大な信頼を得ていました。

2004年のアテネオリンピックで優勝した野口みずきが、ゴールした際に、シューズにキスをした感動的なシーンを覚えている方も多いと思います。

あの時のシューズがアシックス製でした。

トップアスリートが履いているシューズを一般ユーザーも履きたいと思うのは自然なことです。

特にマラソンやジョギングは、誰でもできるスポーツですから裾野が広い。

だからこの当時のアシックスは、マラソンやジョギングシューズの王者として、世界を席巻していたものでした。

それがいまや、ナイキの特殊テクノロジーに完敗している状況です。

たとえ競技時に厚底靴が規制されたとしても、一般ユーザーにとって、足への負担が少ないシューズはありがたい存在です。

今年になってアシックスも厚底シューズを発売しましたが、遅きに失した感は否めません。

マラソン、ジョギングシューズの分野で、ナイキの優位性が揺らぐことはしばらくないと思われます。


「ナイキのマーケティングの負けた」


アシックスは、売上高3800憶円を超える日本最大のスポーツ用品メーカーです。

前進は鬼塚商会。戦地から帰還した鬼塚喜八郎氏が「裸足で過ごす貧しい子供たちにまともな靴を与えたい」という思いをもって創業したと聞きます。

靴の作り方も知らなかった鬼塚氏は、神戸長田の靴工場に修行に出て技術を習得しました。

当初、バスケットシューズ専業メーカーとして出発したのは、ニッチな分野で地位を確立すれば大手企業にもつぶされないという「弱者の戦略」を考慮してのことだったそうです。

バスケットシューズの世界で地位を確立すると、順々に競技分野を増やしていき、のちに靴全般、さらには総合スポーツ用品メーカーとなっていきました。

若い頃のフィル・ナイトが、鬼塚の靴にほれ込んで、卸売りを始めたのが、ナイキ創業のきっかけになったというのは有名な話です。

SHOE DOG(シュードッグ)
フィル・ナイト
東洋経済新報社
2017-10-27



ところがそのナイキが、いまや売上高4兆3000億円を超えるダントツの世界トップ企業です。

世界2位のアディダスが、売上高2兆8000億円超。

アシックスは世界9位で、ナイキとは、11倍以上の差が開いています。

なぜこれほど差が開いたのか?

いろいろ要素はあるでしょうが、その最も大きなものが、ナイキのマーケティング戦略です。

同社が広告宣伝にかける費用は半端ではありません。その一つが、各分野のトップアスリートを抱え込み、ナイキの商品を使用させるというイメージ戦略を徹底させたことです。

その戦略に賭ける意気込みはすさまじく、ゴルフのタイガー・ウッズ選手が出てきた時は、ナイキの利益の4分の1を契約金にあてて専属契約を結んだといいます。

それぐらいマーケティング関連投資には、糸目をつけませんでした。

ナイキほどグローバル販売の時代にマーケティング戦略をうまく使いこなした企業はないといえるでしょう。

いまナイキの広告宣伝支出は年間4163憶円です。アシックスの売上高を遥かに超えています。(アシックスの広告宣伝支出は331憶円)とても追いつける額ではありません。

かつて鬼塚氏が「われわれは、ナイキのマーケティングに負けた」と発言していたのが思い出されます。


創業以来の危機を自覚せよ


それでもアシックスが有望だと思われていたのが、マラソンやジョギングシューズの分野での地位が高かったからです。

2000年頃からは、広がった戦線を縮めるがごとくランニング関連分野に注力していきました。

アシックスは、海外売上比率が高く、グローバル化が進んでいる企業です。それはやはり、ランニング分野における知名度が高いからだと考えられます。

しかし、その虎の子ともいえる分野において、ナイキの攻勢を受けて、よもや占拠されてしまったわけです。

これはまさに、企業としての存在意義そのものを失ってしまうような事態です。

そのため売上利益とも急激に落ち込み、特に利益においては20年ぶりの最終赤字となりました。

これを創業以来の危機だと言わずして何を言おうというのでしょうか。


ランニング分野の奪還が至上命題


なかなかに厳しい状況です。

なにしろランニング分野に特化していたために、カジュアル商品に弱いという特徴があります。

確かにカジュアル分野は市場が大きいですが、ライバルも多く強力です。いまさらどうしようというのでしょうか。


それよりも、やはりアシックスがやるべきは、長年拠り所となっていたランニング分野を取り返すことでしょう。

幸いナイキの技術の進化は急激で、世界の流通を押さえきるところまでいってはいません。いまなら巻き返すことはできると考えます。

国際陸連の規制が入るかどうかはわかりませんが、トップアスリートの意見をよく吸い上げた上で、反発力が高く、負担の小さなシューズの開発を進めるべきです。

特にアスリートの足のダメージを軽減する方向に注力すべきです。それならば一般ユーザーにとっても利益の大きな開発となるからです。

これまで培ったランニング分野の技術の蓄積を総動員して、何としてもアシックスらしいランニングシューズの方向性を作ること。

これなくしては、アシックスの復活はあり得ないでしょう。


東南アジアに勝機を見出す


もうひとつ、アシックスは東南アジアで一定の知名度があります。

残念ながら、最大の消費地である中国で遅れをとっているようですが、東南アジア諸国では、鬼塚タイガーのブランドがある程度知られています。

だから、同社がまず注力すべきは、東南アジアです。

日本人アスリートを支援すると同じか、それ以上に、タイやベトナムやインドネシアのアスリートを支援すべきです。

もちろんランニング分野が第一です。これなくしては、アシックスはあり得ません。

それを前提とした上で、私なら、ナイキやアディダスが手掛けないアジアのマイナー競技に進出します。

できれば駅伝など、ランニング競技が望ましいですが、それに限りません。

かつて鬼塚商会は、バスケットシューズを皮切りに、多くの競技を開拓していきました。いまからナイキとまっこう勝負するのは無謀ですが、ナイキが手掛けない競技なら勝ち目もあります。

この競技だ!といま指摘するわけにはいきませんが、マイナーな中でも競技人口があり成長の見込めるものを見出してほしいと思います。


「弱者の戦略」を駆使した過去を思い出せ


ドラマなら小さな会社の持つ特殊な技術が大手企業の侵攻を食い止める働きを持たらすのですが、現実のビジネスではそうはいかないようですね。

現実のビジネスでは、販売力があり、資金力を得た企業が小さな会社を飲み込んでいくものです。

小さな会社が生き残るためには、弱者の戦略をとらなければなりません。

ランチェスター戦略の最も基本的な教えを思い出してください。

「勝てる局面で戦う」

ビジネスに強い者は、いつも勝ち戦しかしない者です。

そのために、市場を選び、差別化し、集中するのです。

「オニツカ錐もみ商法」といわれた弱者の戦略の使い手だった鬼塚商会のDNAを持つアシックスならば、必ずやこの苦難を乗り切ると信じています。

同じ戦略を志向する者として、復活を大いに期待しております。



井上尚弥がはじめての苦戦から得たもの

井上尚弥が

(2019年11月14日メルマガより)

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2019年11月7日、埼玉スーパーアリーナで開催されたWBSS(ワールド・ボクシング・スーパー・シリーズ)バンタム級決勝戦、井上尚弥vsノニト・ドネア戦は、多くの意味で衝撃でした。

井上の早期KO決着という大方の予想に反した12ラウンドの激闘。しかも井上がKO負け寸前まで追いつめられるという想定外の展開です。

戦前の予想を覆したノニト・ドネアの奮闘も素晴らしかったですし、それでも勝ち切った井上尚弥の底力には驚嘆しました。


世界チャンピオン同士の勝ち抜き戦 WBSS


WBSSとは、ボクシング多団体のチャンピオン級同士がトーナメント形式で闘って、チャンピオンの中のチャンピオンを決めようという壮大なイベントです。

いまボクシングの認定団体が乱立しており、それぞれが独自にチャンピオンを認定しています。

日本が認めている主要認定団体は4つ。WBC、WBA、WBO、IBFです。

体重差による階級も昔と比べて細分化されている(17階級)ので、いま世界チャンピオンといわれる人は、単純計算で68人いることになります。

しかも、認定団体ごとに正規チャンピオン、暫定チャンピオン、スーパーチャンピオン、フランチャイズチャンピオンなど独自制度を設けているので、わけがわからなくなっています。

これでは世界チャンピオンになってもいちばん強いという証明にはなりません。

そんなボクシングファンの混乱と不満を解消しようとして企画されたのが、WBSSです。

各団体のチャンピオン級猛者を集めて勝ち抜き戦をやるのだから、ここで勝った者が、真の世界一だということができます。

(それでも怪我したりして欠場した者が、本当はオレが世界一だ!と吠えていますが)


5階級制覇のレジェンド ノニト・ドネア


このWBSSバンタム級トーナメントにおいて、決勝まで勝ち上がってきたのが、日本人の井上尚弥です。

しかも1回戦では、ファン・カルロス・パヤノ(元WBAバンタム級世界スーパーチャンピオン)に1ラウンドKO勝ち。2回戦では、エマヌエル・ロドリゲス(IBFバンタム級世界チャンピオン)に2ランドKO勝ちという日本人史上最強だという実力を遺憾なく発揮しての決勝進出です。


これに対してもう一人の決勝進出者が、フィリピンの閃光という異名を持つノニト・ドネアです。

ドネアは、フライ級、スーパーフライ級、バンタム級、スーパーバンタム級、フェザー級の5階級で世界チャンピオンになったとんでもない実力者です。

一時期は、同じフィリピンの英雄マニー・パッキャオ(6階級制覇、とびとびで制覇していったので、実質の階級差は10階級)の後継者と目されていたものです。

しかし、さすがのドネアも重い階級では体格差に悩まされ、負けが込むようになりました。

5階級制覇のレジェンドも、いまや36歳。かつてのスピードは失われ、一発のパンチ力に頼る戦い方になっています。

このWBSSでも1回戦は相手の負傷によるTKO勝ち。2回戦は直前で相手が怪我で離脱、リザーブ選手相手に6ラウンドKOでしたが、内容はすっきりしたものではありませんでした。

ここまでの経緯をみると、井上の早期KO決着は確実だろうといわれるのも無理ありませんでした。


英国ブックメーカーの掛け率では、井上1.1倍、ドネア5〜6倍という一方的なオッズがつけられていたといいます。

試合直前には「ドネアは簡単な相手ではない」「井上の苦戦もありうる」という論調の報道が盛んになされましたが、それは試合を盛り上げようという意図が見え見えで、誰も本気にはしていなかったでしょう。

実は私も、3ラウンドまでに井上がドネアを倒すと予想していました。

それぐらい実力差があると思っていたのです。

ところが、そんな予想は見事に覆されました。

ドネア様、ごめんなさい。ですわ。


井上はなぜここまで苦戦したのか?


なぜドネアは、井上をここまで苦しめることができたのか。

これはもう経験値の差が出てしまったと言わねばなりますまい。

ドネアは、いまの能力でできることに集中しました。ノープランで闘えば勝てないでしょうから、勝てる作戦を立てなければなりません。

その作戦が全てうまくいったのがドネアで、そのため井上は実力を殆ど出せませんでした。

具体的にいいます。ドネアの武器は、井上に勝る体格、一発のパンチ力(特に左フック)、パンチのあてカン、パンチに対する耐久力、世界戦を何度も闘ってきた経験です。

この武器で勝てる闘い方を選択し、実行しました。


試合が始まって1ラウンドは、井上の実力が際立っていました。スピードの違いは歴然で、ドネアのパンチが届く前に、井上のパンチが命中するシーンが何度もありました。

1ラウンドを見る限り、早いラウンドでのKO決着は必至だと思えました。

そこに井上の油断があったのかも知れません。2ラウンド、ドネアの仕掛ける接近戦にやすやすと応じてしまいました。

井上とすればよもやパンチを貰うとは思っていなかったのでしょう。しかし、ドネアは身体を沈めてボディを打つと見せかけ、そのまま肩を縦回転させて井上の顔に左フックをぶち込みてました。

井上が唯一警戒していた左フックが2ラウンドで炸裂してしまったのです。

ここがドネアの老獪さです。1ラウンドを捨てて井上を油断させ、2ラウンドの左フックにつなげていったのです。

もし再戦するなら、こうはいきません。井上はジャブをつき、ドネアを接近させないようにするでしょうから。

これが井上の弱点であった経験値だといえるでしょう。

もしこのパンチがこめかみや顎に当たっていたら、そこで試合は終わっていたかも知れません。幸い、それは井上の顔の中心に当たりました。井上が倒れることはありませんでしたが、その代わり、右眼底骨と鼻骨は破壊され、右目瞼に裂傷を負うことになってしまいました。

この1発のパンチにより、井上はまともに闘えなくなってしまいました。

右目は視界に異常をきたし、距離感をうまくつかめなくなってしまいました。また右瞼の裂傷は、これ以上深くなると試合を止められるレベルでした。

これ以降、井上は瞼を庇いながら闘うことを余技されなくなりました。

すなわち右手は防御のために使うので攻撃が疎かになります。

さらには、距離感がつかめないので、遠く離れて闘わなければなりません。


手負いの状態で12ラウンドの死闘


しかし、井上は冷静でした。この時「左ジャブをついて距離をとる。判定狙いに切り替える」ことを決断します。

残り10ラウンドもあるのですよ。

井上といえばアマチュア時代からエリートで、顔に傷を負ったことはおろか、まともにパンチをもらったことがないボクサーです。

そんな若者が、人生で初めて、右目の視界を失うほどの傷を負いながら、これほど冷静な判断をしていたのです。

いったい、この人のメンタルはどういう構造をしているのでしょうか?

しかも、それをやり切ってしまったのです。目論見通り、判定でドネアを退けたのです。


ドネアの作戦は、ガードを固めて距離をつぶし、接近戦に持ち込むことでした。井上が距離を取り始めてからは、カウンター狙いが中心です。

いかんせんスピード勝負では勝ち目はありません。だから接近するか、相手がパンチを打ってきた時にしか、当てることができません。

いつもの井上なら、ガードの上からでも効かせるパンチ力があるのですが、この日は遠近感がつかめませんから、強いパンチが打ちにくくなっています。

しかも、フェザー級でも闘ってきたドネアは、井上より一回り身体が大きく、パンチへの耐久性があります。急所さえ打たれなければ倒れない強さがありました。

ラウンドを重ねるごとにお互いアジャストしていった両者は、中盤から終盤にかけて激しい応酬を繰り広げるようになりました。

井上が右ストレートでドネアをぐらつかせたと思えば、ドネアも右カウンターで井上をダウン寸前にまで追い込みます。

11ラウンドには井上が左ボディでドネアを倒しますが、立ち上がったドネアは左フックを振り回して追撃を阻みます。

最終12ラウンドも手を休めず、最後の瞬間までパンチを振った両者の闘志はすさまじいもので、年間最高試合の声が上がるのも納得の内容でした。


苦戦を経て井上が証明したもの


この試合、確かに井上は苦戦しました。が、それ以上に多くのことを我々に証明しました。

井上について多くの者が抱いていた疑問。。長いラウンドを戦えるスタミナはあるのか?強いパンチを受けた際の耐久性はどうか?突発的なアクシデントに対応できるのか?技術戦やアウトボクシングにも対応できるのか?に満額回答を示しました。

すなわち、井上尚弥が、技術も、スタミナも、耐久性も、とっさのリカバリーもすべて備えたオールラウンダーであることを証明しました。

井上は以前から「苦戦してみたい」「負けてもいい」と発言していました。

普通のボクサーが言えば、とんでもなく思い上がった発言ですが、井上ならば、苦戦したり負けたりすることで何かを掴みたいという気持ちが素直に感じられたものです。

今回はまさに希望通りの苦戦を経験し、得難い経験からさらに強くなるための課題を多く得らえたはずです。

井上尚弥が、この経験を通して、さらに手の付けられないモンスターになることは、間違いないでしょう。


晒された弱点


しかし、世界のボクシングファンはざわついています。

これまで圧倒的な強さで対戦相手を蹴散らしてきた井上が、初めて負けるかも知れない姿をさらしてしまったのです。

強さの底が見えないのがモンスターたる所以でしたが、今や井上も人の子であることが認知されてしまいました。

確かに、手負いの状態で12ラウンド闘い切り、判定勝ちを得た精神力、タフネス、スタミナ、技術力は驚嘆に値います。

が、それ以前に、決して受けてはいけないドネアの左フックをものの見事に当てられてしまったのは事実です。

これがもっと完成されたボクサー、例えば、ワシル・ロマチェンコや、テレンス・クロフォード、サウル・アルバレスなら、よもや早いラウンドで相手のキラーショットを被弾するなどあり得ないと思わせます。

いま世界的に実力が認められたボクサーの特徴は、防御力の高さにあります。パンチを打たれないし、打たれてもダメージを負わない技術を持っています。

井上の防御技術に疑問を抱く世界のボクシング関係者はこれまでもいました。個人的には、井上の防御技術が低いとは思いませんが、上に挙げた著名ボクサーに比べると、見劣りするのかも知れません。なにより今回の試合で、結果として相当打たれる姿を見せてしまったのです。

これからの対戦相手に付け入る隙を与えてしまいました。


井上にとって不可欠なライバルがやってくる


だが、それだからこそ、井上には大きなチャンスが開けたとも言えます。

今回の試合を経て、井上は、米国大手プロモーターのトップランク社と契約しました。

いま世界で最も有名なプロモート会社であり、スター選手を育てることにかけては実績とノウハウを充分に持っています。

おそらく井上は、トップランク社にとっても看板スター選手に育てたい存在のはずです。

まずはラスベガスで実績を積んでスター選手にして、その後、アジアマーケットを開拓するための目玉にしていこうという意図があるでしょう。

トップランク社のスター選手といえば、ファイトマネーも桁違いです。対戦相手もその恩恵を受けることができます。ビッグマネーを稼ぐのは、世界のボクサーにとって最大のモチベーションです。これまで強すぎるといって対戦相手が見つからなかった井上ですが、もうそこに悩むことはないでしょう。

しかも今回、弱点を晒してしまった井上には、これまで鳴りを潜めていたライバルボクサーたちがいっせいに対戦要求を突き付ける事態となりました。

攻略方法が見えたといって自信をつけた対戦相手と、今回の苦戦を経てさらに強くなった井上の試合が面白くないはずがありません。

これまでも、井上尚弥がスターになるために一番足りないのが、強いライバルの存在だと言われていました。

思えばマニー・パッキャオも、マルコ・アントニオ・バレラ、エリック・モラレス、ファン・マヌエル・マルケスといったメキシコの強豪ボクサーとの熾烈なつぶしあいを経て、世界的スターとなっていきました。

決していつも圧倒的に勝っていたわけではありません。僅差の勝敗を積み重ねながら、実力を蓄えていったものです。

井上にとってもスターになっていく上でライバルの存在は不可欠だと思います。そのライバルが、向こうから名乗りを上げて続々とやってくる状態です。

来年から井上は、アメリカで2試合、日本で1試合を行う予定だといいます。

アメリカの試合は地上波テレビでは見れないでしょうが、それでもかまいません。きっとWOWOWかDAZNが放送してくれるでしょう。

そして日本の試合は、年末恒例となっていくはず。

これからの井上のスター街道を楽しみに見ていこうではないですか。


《参考》




ニッチな商品の仕入れルートを力業で構築したベンチャー企業

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ユーザーから中古品を買い取って、それを販売する、というのがリユース業です。

古くは、ガレージのような店舗で運営しているリサイクルショップが典型です。が、今はネットがあるので、買い取りも販売もネットを活用することで、ビジネスが広がります。


ビジネスのポイントは仕入れルートの構築


記事にあるマーケットエンタープライズは、マザーズに上場する新興企業です。成長産業なので、多くの新規参入業者がある中、同社の特徴は「他社が扱わないようなものも扱うこと」だとか。買い取った中古品は、ヤフオク!で販売しているようです。

ネットを活用すれば販売には困らないらしい。ということは、ビジネスのポイントは、いかに仕入れルートを確保するか、です。

かつて中古車販売のガリバーもそうでしたね。中古車の在庫さえあれば、オークションに出品できますので、販売には困りません。ガリバーが頭一つ抜け出したのは、一般ユーザーからの買い取りを集める仕組みを作ったことでした。

これを同社は、専用の仕入れサイトを作ることで、対応しています。

リユース品の買い取りサイト「高く売れるドットコム」を中心に、鉄道模型からオーディオ、エアガン、医療機器、楽器、教材など30の買い取りサイトを展開している。買い取り依頼件数は月間約4万件にのぼる。

ということで、買い取りサイトをいち早く作り、ネットを活用した仕入れの仕組みを作り上げたことが、同社の強みとなっているようです。

ニッチ商品の仕入れの仕組みを力業で作り上げる


ただ専門サイトを機能させるのは、簡単ではありません。当然、特殊な商品を買うのは、その道のプロやマニアですから、彼らのニーズを捉えなければなりません。買い取り価格の決定も、販売予想価格を正確に知っておかなければなりません。

もとからその業界にいた人ならわかるでしょうが、同社のように専門サイトを30も立ち上げるというのは、言うは易し。実行するのは難しいでしょう。

この部分を、同社はベンチャー企業らしい力業で乗り切ろうとしています。

記事にあるのは、中古トラクターの買い取りサイトの事例です。このサイトは、現担当者がやりたいと言って始めたものだそうです。言い出しっぺがそのまま担当しているというのは、いかにもベンチャーですな。

担当の方は若い女性です。任せられてやる気になったのでしょう。トラクターのことを自分で勉強し、メーカーのマニュアルを読み漁って、知識を蓄えていきました。

トラクターのユーザーというのは、ネットに精通しているとは限りませんから、ネットだけで完結というわけにはいかないでしょう。担当者が現地に足を運んで、地域の農機具販売店に手伝ってもらう必要もあります。そんな仕組みをこの担当者が構築していったということですから大したものです。

このバイタリティは、見習わなければなりません。本当に感心しました。

同社は、まだまだニッチな商品の仕入れを拡充しようとしているようで、同じ方式で展開していくのでしょうね。

こういう会社には頑張っていただきたいものです。





日本の家電メーカーはなぜ凋落したのか?

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日本の「失われた30年」を検証する記事のひとつです。こういう検証はどんどんやった方がいいです。

この記事は家電メーカーに焦点をあてています。

90年代あれほど隆盛を誇った日本の家電メーカーが軒並みサムスンに敗れたのはなぜなのか?

興味深い考察ですな。

日本の家電メーカーが負けた理由


まずは記事を読んでいただきたいですが、簡単にいうと

(1)世界展開のための戦略がなかった。

90年代の日本企業にとって、国内市場が最優先です。国内だけで食っていける市場規模があるのでそうなりますね。その次が北米。その他の地域はプラスアルファの扱いです。対してサムスンは国内市場が小さいので世界展開がマストなのでそのための戦略が不可欠でした。2000年代になりグローバル化の時代になると、日本企業の姿勢は不利に働きました。

(2)機能強化中心で販売のための戦略がなかった。

こちらも日本メーカーの特徴でした。機能や品質が最優先され、販売のためのデザイン戦略などは重視されていませんでした。

(3)戦略を変える柔軟性がなかった。

負けたのは仕方ないとして、勝ち目のある土俵を探す工夫はなかったのか?シャープもパナソニックも敗色濃厚となってから国内に大規模な生産設備投資を行いました。負け戦に追い金ですよ。これが結局、新しいことをする体力を奪ってしまったかたちです。

「勝てる場面で戦う」ことができなかった


ランチェスター戦略の最大の教えは「勝てる場面で戦う」です。

勝てない戦いをするのは愚かです。スポーツと違って、ビジネスは勝たなければならないのですからね。少なくとも引き分けに持ち込んで、生き残らなければなりません。

この柔軟性のなさは、社内の人間関係によるものだと記事にあります。日本の大企業が経営者同士の確執や力関係で適切な戦略がとれなくなっているというのは、さんざん聞かされてきたことなので今さら驚きませんが、それでも情けない話ですな。

日本を代表する企業がなんたることか。と思いますが、俯瞰してみれば案外単純なものなんでしょう。

やはり戦略がなければ生き残れません。





ユニクロ会長が怒る「失われた30年」状態から抜け出すことはできるのか?

ユニクロ会長が怒る

(2019年10月31日メルマガより)

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先日、経営コンサルタントの大前研一氏が「この30年、世界で最も大きな変化とは何か?」と問われて、こう答えていました。

「スマホの普及と、政治のトップにバカが増えたことだ」

大前氏らしい独特の発言ですね。


スマホが世界を近づけた


スマホの普及はわかります。いまや世界中の人々がスマホを手にしています。何はなくともまずスマホ。です。

スマホがあるから世界中の情報を手に入れることができます。情報統制している国もありますが、それは置いておいて。言葉の壁がなければ基本的に世界の情報に触れることができます。その言葉の壁も翻訳機能の向上によりもうすぐなくなるでしょう。

だから情報の格差というのは、怠慢に帰するものとなってしまいました。知らなかったは言い訳になりません。「12年勤務して手取り14万円、日本終わってますよね」と嘆く人に、ホリエモンが「お前が終わってんだよ」と言い放つ所以です。(いくらでも稼ぐ手段があるのに、知らないお前が怠慢なだけという意味らしい)

↑この人とホリエモンの格差が映画「ジョーカー」が共感を呼ぶ理由となっているのですが、それも置いときましょう。

さらにスマホというのは規格が世界共通です。だから、スマホを基盤に作成したアプリは世界どこでも使用することができます。

これまで商品にしろサービスにしろ、国ごとに仕様を合わせなければならず、それがグローバル化を困難にしてきたものですが、スマホアプリを前提としたビジネスは、はるかに容易く世界の壁を越えてしまいます。

いうなれば、世界中の誰にもグローバルビジネスを作り上げるチャンスが開かれているということです。

情報は世界を超える。同時にビジネスも世界を超えるのです。


グローバル化の反動としての狭量さ


ただ世界のフラット化が進むと、それについていけない人たちも多く現れます。チャンスは誰にも公平に開かれているとはいいながら、それに乗れない人たちです。

それまで地域という物理的な枠内に止まりながら社会を形成してきた人たちが、いきなりグローバル化なんて言われても戸惑います。

なまじ情報が入ってくるので厄介です。世界にはもっと悲惨な人たちもいれば、想像もつかないような恵まれた人たちもいることに気づきます。

それが遠い国の知らない人たちの話ならまだしも、自分の国に後からやってきた移民のために多額の税金が投入されたり治安が悪化したり、逆に移民の人たちがグローバル化のシステムにうまく順応してエリートになっていたりすると、複雑な気持ちになろうというものです。

アメリカは特にそうです。何世代前かの祖先が死ぬような思いで開拓して我が物とした土地に、あとから来た英語も話せないような移民たちが大きな顔で権利を主張しているわけです。ITやフィンテックといった新しいビジネスで稼ぐ人たちにはそんな移民層が多いと言われています。やりきれない思いがあるでしょう。

トランプ大統領の人気は、そんなやりきれない思いを抱くプアホワイト(貧しい白人層)たちに支えられていると言われます。その他の国も、グローバル化の反動で沸き起こったナショナリズムが、国粋主義の指導者を生む要因になっています。

かつて国家元首といえばその国の中でも最高の知性と教養を身に着けた人がなるはずでした。しかし今は、むしろパフォーマンスが派手で、国民を煽る才能がある人が選ばれているかのようです。

だからグローバル化の時代なのに、世界の利益を損なっても自国に利益誘導することが当たり前になっています。国益を守りながらも世界が良くなるように配慮できる良識派がマイナーになったらしい。これが大前氏の言うバカの政治リーダーが増えたということです。


「失われた30年」に怒りをにじませる柳井氏


30年で変わったのが、スマホと政治家だとすれば、逆に変わらないのが日本の経済状況です。

日本のGDPは30年間、見事に横ばいです。アメリカや中国がエンジンがかかったように経済規模を拡大させてきたことと対照的です。

アメリカや中国だけではありません。東南アジアやインドなども成長を続けています。世界が進んだ分だけ日本は遅れているわけで、このままでは先進国どころか中位の国に堕ちてしまうかも知れません。

そんな日本の状況に怒りを隠さないのが、ファーストリテイリングの柳井正会長です。日経ビジネスに応じたインタビュー記事が話題となっています。


有料会員限定です。すみません。でも、とても興味深い記事です。ぜひ読んでいただきたいものです。

柳井氏は、停滞する日本の状況に怒りをこめて警鐘を鳴らしています。柳井氏の指摘は全くその通りです。このまま人口が減れば、先進国レベルではなくなるでしょう。

人口減少に向かう日本においては、生産性の向上が喫緊の課題であることは、このメルマガでも何度か描かせていただいた通りです。

生産性を上げる最も手っ取り早い方法は、成長分野で事業を行うことです。IoT、AI、ロボティクス。誰もが知っている分野ですが、日本企業はなぜか及び腰です。海外の便利なサービスが出来上がるのを待っているのでしょうか。

柳井氏は「サラリーマンがたらい回しで経営者を務める会社が多い。こんな状況で成長するわけがない」と断じています。

かといって創業者が頑張っているかというと、日本の開業率は低いままです。創業したとしても、上場するとそれで満足してしまう。「日本の起業家は引退興行」なんだとか。

世界の状況を知らないので、既に日本の技術が2周遅れであることに気づいていません。

それなのに、テレビでは「実は日本はスゴイ」なんて企画の番組が溢れているし、スポーツ競技でも3位、4位の日本選手を賞賛している。

これをゆでガエル現象と言わずに何と言うのか。

柳井氏はこの状況を鑑み、国の歳出を半分にする、公務員を半数に減らす、議会を一院制にする、日米地位協定を改定する、年功序列と終身雇用を見直す、と提言しています。詳しいことは省きますが、要するに、人口減時代に適した社会システムに変えていかなければならないと言っているわけです。


感情的な反応は国益を損なう


このインタビュー記事、けっこう勇気のいるものだったと思います。

この30年が無駄だったというのは、現政権の批判にもなるからです。

実際、柳井氏は記事の中で「みんなが安倍政権の経済政策「アベノミクス」は成功したと思っていますが、成功したというのは株価だけでしょう。株価というのは、国の金を費やせばどうにでもなるんですよ」と言っています。

実際、その通りだと私も思います。

また韓国や中国に対する反応についても、もっと冷静になるべきだと言います。「今から成長するのは東南アジアやインドなんですよ。ここは中国抜きでは絶対に成長できない。何でできないかといったら、東南アジアの経済では華僑が不可欠だからです」

だから韓国や中国の反日的姿勢にそのまま反応しては国益を見失うのだと。

このあたり炎上を招く発言かも知れません。特にユニクロは、中国や韓国に多くの店舗を持っており、ことに韓国では不買運動も受けているので、この発言は、自社利益のことを考えているだけではないかと受け取られかねません。

それを押して、日本の政治が間違っていると断ずるのですから、思い切ったものです。

いま、経済界で政治批判を行う人があまり見かけないので、余計に目立ちます。


グローバルブランドとしてのユニクロ


柳井氏がここまで真摯に提言するのは、世界を知っている経営者の一人だからでしょう。

ファーストリテイリングの売上高は、2兆2905億円(2019年8月期)アパレル企業としては桁外れです。

国内では成長が止まっているものの世界進出に意欲的です。

ユニクロのコンセプトである「ライフウェア」(アパレルをファッションと捉えるのではなく、機能性の高いカジュアルウェアと捉える)が世界に受け入れられているようです。

海外からの収益が急増しており、2019年8月期の決算では、国内の利益を抜く見込みだといいます。



自動車や精密機械など海外比率が高い業種に比べて、日本のアパレルはドメスティックな業界です。そんな業界においてグローバル化を成し遂げつつある企業のリーダーであるからこそ日本のゆでガエル状況が歯がゆくて仕方ないのでしょう。

もちろんユニクロがこのまま順風満帆に進む保証などどこにもありません。

国内ではワークマンプラスのようにさらに高機能低価格のアパレルを売りにする企業が台頭してきています。

海外では何でも飲み込んでしまうアマゾンという怪物が待ち構えています。アマゾンが急成長分野を放置しておくはずはありませんから、必ず狙い撃ちしてきますよ。

ぐっすり眠る気にはなれないでしょう。

狭い範囲でぼちぼち儲けるならそんな苦労はありません。が、柳井氏は強い意欲で世界一のアパレル企業を作ろうとしています。各方面から狙われる道を選びました。

そういう得難いポジションにいる人の話は、心して聞きましょう。

急激なグローバル化には反動がつきものだとはいえ、グローバル化の可能性や恩恵を捨ててまでも狭量になるのは得策ではありません。

柳井氏の言う通り、冷静に情勢を捉えなければなりません。


小さな会社こそグローバル化の恩恵を受けよう


国内の状況が悪い時、国外に敵を作り、ナショナリズムを煽るのは、ダメ政治家の常套手段です。

日本の近隣にそういうことを平気でする政治リーダーがいますよね。

ただそれに腹を立てて表層的感情的に反応するのは、自らを同じレベルに貶める行為です。かつて日本はそんな社会ではなかった。だからこそ尊敬を集めてきたのでしょう。

貧すれば鈍す。日本経済が停滞し、社会問題の解決策が見えなくなっていることが、狭量な挑発に反応してしまっているのだとすれば、矛先を変えた方が建設的です。

すなわち、我々は、グローバル化の恩恵を得て、成長していく道を選ぶべきだと思います。


いや、何も全員が、ユニクロのようなグローバル企業を目指せと言っているわけではありませんよ。

ローカルな環境でしたたかに生き残っていくのも立派な戦略です。むしろ私は、そんなローカル企業を支援する立場です。

ただローカルだからといって、今まで通りのやり方しか知らん、新しいことはわからん、と言っていては、変化していく世界の中で生き残れません。

スマホにしろ、IoTにしろ、AIにしろ、新しいテクノロジーを活用せずに恩恵も受けられずに過ごすのは勿体ない。実際、それを活用するのはそれほど難しいものではありません。それこそ、やり方を知らないだけです。

小さな事業は小さいなりに、新しいものを取り入れることで、生きる道が広がります。

小さな会社でも、ちょっと学べば、最新テクノロジーをとりいれて生産性を高めることはできます。


零細企業でも生産性向上に取り組むことはできる


先般、中小零細企業は生産性が低いので、中小零細企業そのものをなくしてしまおう。と主張する内容の本を紹介しました。


決して暴論ではなく、納得できる論旨だったことも紹介した通りです。

が、中小零細企業の支援を生業にしている者からすればあまりにも身も蓋もない提言ですから、どうにかできる道はないのかと考えざるを得ませんでした。

道はあります。

小さな会社ひとつひとつが生産性を上げていけば生き残ることができます。

が、知識もない、学ばない、設備資金もない、意欲もない中小零細企業が、自ら変革して生産性を上げることなどできるわけないだろーというのが、上の本の主張です。

そう言われると返す言葉がありません。その通りだからです。中小零細企業の中でも危機感を持って頑張っている企業じしんが「中小企業仲間の8割は残らんよ」と言っているぐらいです。

この問題を考えると、さすがに暗たんとなります。

俺だけ儲けるし、後は知らん、と言ってしまえば楽でしょうね。私もそのうちそう言って、別の仕事をしているかも知れませんw

しかしまだ手はあると思っています。

少し学べば理解できるはずです。生産性を上げるための設備資金がないっていいますが、資金をかけなくてもできる生産性向上策はあります。

いまのテクノロジーの進化はそれほどすさまじいものです。電気街で部品を買ってきて、無料のアプリと組み合わせるだけで、相当の効率化設備ができあがります。

皆、知らないだけなんですよ。

いや、すみません。私だって、最近、知ったばかりだから偉そうに言う謂れはありませんね。が、世界中の事業家がテクノロジーの普遍化に取り組んでいて、私たちの身近にも、IoTやAIなど無料や安価で取り組める方法が揃ってきていることは確かです。アイデア次第では、いろいろ面白いことができそうです。

具体的に何ができるのか、どのように活用すれば効果的なのか、自分なりに考えて今後のメルマガで書いていきたいと思います。

キーエンス型営業の有効さ

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謎の高収益製造業キーエンスに関する記事です。

「謎」と言いましたが、キーエンスはあまり自社の情報を表に出さない企業です。何かわからないが、やたら高収益な企業なので、いったいどういう秘密があるのだろうと興味をそそります。

キーエンスの情報は、同社をやめた社員などから聞き取るしないないのですが、そうした情報が少しずつですが、伝わってくるようになりました。

上の記事もその一つです。貴重ですので、ぜひ読んでください。


驚異の高収益企業キーエンスの理由


強力な営業組織が特徴


キーエンスの特徴は、営業力がやたら高いということです。

ただし特殊なことをやっているわけではありません。

今回の記事を読んでも、伝わってくるのは、いわゆる一般的な「プロセス営業」を徹底している様子です。

プロセス営業というのは、営業の要素を段階別に切り取って、それぞれを高度化してつなげていく手法です。

一般に営業には、顧客と接触して、ニーズを聞いて、提案して、契約する、という一連の流れがあります。それぞれの段階ごとに、効果が上がるやり方があるはずです。

そのやり方を洗練させていこうというのがプロセス営業です。

決まった通りに行動することが求められる


ただしやり方というのは企業ごとに違います。扱う商品も業界も違うのだからやり方が違うのは当然です。

だからキーエンスの営業方法を真似ても必ずしもうまくいくとは限りません。

だけどキーエンスがやり方を洗練させていく手法は大いに役にたつはずです。

キーエンスは、各営業がやった営業方法を丹念に記録し、蓄積し、分析することで、最も効果が上がるやり方を求め続けています。

そのうえで、最もうまくいく営業手法を各営業に忠実に再現させるようにしています。

その様子はまるで役者に勝手を許さない黒沢映画のようです。

完璧なシナリオがあり、イメージ通りの演技を強いる監督がいて、役者はその通りに動かなければなりません。

力のある役者は、思い通りの演技をしたいとストレスがたまるかも知れませんが、それは許されない。結果としてすばらしい映画が出来上がるのだから、文句は言えません。

営業の「忠実さ」への報酬


キーエンスの営業は年収2000万円が一般的だそうですが、その収入は成果に与えられるのではなく、決め事通りに行動した忠実さに与えらえているといってもいいのかも知れません。

一般的なプロセス営業だといっても、それを徹底することは並大抵ではありません。やり方が決まっているだけに、躊躇することができません。立ち止まって考えることなど不要です。決まった通りに寸時の遅れもなく、行動することを強いられます。

そんなロボットみたいな仕事をして2000万円ももらえるなんて羨ましい!と思う向きがあるかも知れませんし、逆に、そんなロボットみたいな営業なんてしたくない!と嫌う人がいるかも知れませんね。

どちらの意見もわかりますが、価値を上げているところに報酬があるのは当たり前のことです。重要なのは、会社として成果を上げているかどうかです。

(実際は決まり事があっても創意工夫の余地はいっぱいありますからロボットみたいな営業にはならないのですけどね)

会社の無策が低賃金につながる


昔は、会社側もやり方がわからなかったので「やり方は問わない。成果を上げた者には高収入を約束する」なんて無策がまかり通っていました。

そんなことをしたら、自分だけ成果を上げようとする利己的な営業がはびこるのは目に見えてます。成果主義が会社全体の成果につながらないのは、もはや常識です。

会社全体の収益が上がらなければ、従業員の報酬も上がりません。当たり前です。頑張っているのに給料が安いと嘆く人は、会社の無策を疑うべきですね。

中小零細企業の生産性向上がいま大きなテーマになっていますが、その一つが、営業力の向上です。

キーエンス型の会社全体の収益を上げるための営業戦略導入が、不可欠だと私は考えています。

ただし、自由度が高い営業組織にいきなりプロセス営業を導入しても消化不良になることが多いんですね。なんとかストレスを感じないように、うまく導入することが私の仕事です。

頑張ります。



電気自動車の技術はまだまだ発展途上のようです

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電気自動車の開発状況がよくわかる記事です。


2年前より電気自動車開発を表明していた家電メーカーのダイソンが、撤退を発表しました。

電気自動車は、家電製品になるのか


一般には、電気自動車は部品点数も少なくユニット組み立てで足りるので製造が簡単になると言われてしましたから、家電メーカーの参入もさもありなんと思っていました。ダイソンが成功すればさらに多くの家電メーカーが参入するんじゃないかと。

が、そんな簡単なもんじゃないよ、と記事は言っています。

バッテリー効率が悪く、ガソリン車には大きく見劣りする


まず前提として、電気自動車はバッテリーの効率が悪く、ガソリン車と比べると、見劣りするということです。

技術は日進月歩だといっても、まだまだ時間がかかるらしい。

商品として適正なバランスに達するには、まだあと100倍くらい進歩が必要だ。今の10倍ではまだ厳しい。EVは必須の技術であり、今後も継続的に開発投資が進むだろうが、2年や3年でどうにかなるレベルにはない。早くとも2030年くらいまではかかるのではないか。

そんな状況ですから、ガソリン車と同じような性能を求めることはできません。

テスラの高級路線を各社が狙い撃ち


しかし電気自動車シフトは世界共通なので、各社とも知恵を絞っています。

まず電気自動車最先端のテスラは、値段なんて気にしない客をターゲットにした高級車路線に入りました。

効率の悪いバッテリーですから、大量に必要です。値段が高くなります。それなら最初から高級車としてプレミア価格つきで売り出してやれ、という発想です。

とりあえず環境に配慮した車に乗るのはカッコいいと思えるお金持ちに受けて、これはヒットしました。生産能力がダメで苦労はしていますが、これはひとまず成功です。

が、高級車なら売れると知った既存自動車メーカーは、いっせいにこの層を狙ってきています。

すでにポルシェはタイカンを、ジャガーはI-PACEをデビューさせているし、フェラーリもアストンマーチンもロータスも、軒並み超高性能EVをリリースする。ランボルギーニはBEVは作らないそうだが、フォルクスワーゲングループの一員なのでポルシェ・タイカンのコンポーネンツはいつでも使える。PHVの計画はすでに発表済みだ。もちろんすでに先行しているベンツ、BMW、アウディもラインナップを増やしてくるだろう。

という状況らしい。これではテスラの寿命も長くないんじゃないかと思えますな。

日産、トヨタの試み


日産も比較的安い価格帯の電気自動車リーフを出していますが、これは先行投資的な意味合いの車で、採算度外視だそうです。

今後、バッテリーの効率が上がって採算の目途がついた時点でシェアをとっておきたいという思惑みたいです。これは相当の体力がなければできません。

いっぽうトヨタは、ビジネスユースに特化した「ちょい乗り車」で事業化を目指しています。ちょい乗りとは、連続走行距離をそれほど求められないこと、ですからバッテリーの効率が悪くても何とかなります。

地域の宅配車とか、介護用とか、路線バスとか、それほどの走行距離がなくても困らないニーズはあるはずです。その細かな需要を救い上げるのに、自慢の営業力を発揮しているのでしょう。

そんなわけで各社とも、欠陥だらけの電気自動車技術を使って、いかにしてビジネス化していくかに工夫を重ねています。

要するに、電気自動車の技術はまだまだ発展途上だということです。

そこにいま参入するのは、得策ではないな、とダイソンが判断したということで、早い決断はよかったのだと思います。

状況がよくわかり、勉強になりました。





ソフトバンクの手痛い勇み足 ウィーワーク危機

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ソフトバンクの投資戦略がなにやら怪しい雲行きになってきたようです。

大型ユニコーン企業(上場前の価値ある企業)として有名だったウィーワークに、ソフトバンクグループは、91億ドル以上の資金を投資しています。

株式上場するとそれ以上の値がつくと踏んでの投資でしたが、ウィーワーク創業者のよからぬ行状もあり、経営危機も言われる状況です。上場前に大幅に価値を下げてしまいました。

あまりにも強気の投資戦略


ソフトバンクの投資戦略は、伸びしろのある分野で高いシェアを確保できる企業を中心としています。まず市場シェア。利益回収は後で。というわけです。

その戦略そのものはベンチャー投資としては普通ですから、問題があるわけではありません。

ただ、ソフトバンクの場合、あまりにもイケイケドンドンで、高い投資をしてしまう傾向にあります。少々高掴みしても、伸びしろがあるから回収できるわい、という考えでしょう。

が、最近のベンチャー投資の過熱ぶりが行き過ぎているんじゃないか…つまり、伸びしろに投資するのはいいが、上場した後、ポシャるベンチャーも多く、もうちょっと慎重になった方がいいんじゃね?という懸念も広がっていました。

信用を損なう危機


そこにウィーワークの急ブレーキです。なにせ、ウィーワークの創業者が「上場して金さえつかめば勝ち。アホな投資家にババを引かせて逃げよう」なんて思想の持ち主だという噂もあり、ベンチャー全体がうさんくさいものだと見られかねない事態です。

そこに多額の投資をしているソフトバンクも同じ穴のムジナなんじゃないか、いやソフトバンクの高値投資そのものがベンチャー投資バブルの元凶じゃないか、と疑念の目を向けられてもおかしくないでしょう。

確かにソフトバンクグループの投資先をみていると、これから伸びそうな分野に片っ端から金をつっこむような荒っぽい所業に見えてきます。

普通の不動産会社を過大評価?


ベンチャー投資はそんなもんだ、という声もありますが、今回のウィーワークに関しては、慎重さが足りなかったような気がします。

まずは創業者の性質を見抜けなかったこと。およびビジネスモデルの新規性を過大評価したことです。

ウィーワークは、オフィスビル1棟や1フロアを借り上げてリフォームし、転貸するビジネスを展開しています。それなりに快適なオフィスができるようですし、ブランド力もあるので人が集まりやすいのかも知れませんが、いうなれば普通の不動産会社です。

競合を抑える特殊な価値があるわけでもなし、ユニコーン企業としてもてはやされる要素がどこにあるのでしょうか??

よくわかりません。

巨大ユニコーン、米ウィーワークの錬金術と危うさ

結局、ソフトバンクグループは、1兆円以上の追加投資をして、事業の立て直しを余技なくされました。その資金の多くが創業者に流れるので、ソフトバンクじしんが「アホな投資家」になってしまった格好ですな。

ただ、ここは意地でも再建しないと、まともな投資家としての姿勢を疑われてしまいます。

この会社をどのように建て直すのか。見ものです。






好調のワークマンが独自施策を連発

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ワークマンについては以前、メルマガに書かせていただきました。

ワークマンは第二のユニクロになれるのか?


その後も業績好調のようです。

2018年度は、売上高にあたる営業総収入が669億円(前期比19.4%増)、当期純利益が98億円(同25.1%増)と8期連続で過去最高益を更新。今期の既存店売上高も2019年4〜9月までの累計で前年同期比26.7%増と、高い伸びを見せる。

メルマガを書いた時点では、本格的なカジュアルウェア進出前夜だったと思います。いまは、作業着の店とは別業態の店舗を作って、大いに話題になっています。

もともと商品の機能性や品質には定評がありますから、カジュアルウェアとしてのイメージさえ訴求することができれば、売れるはずでした。

インフルエンサー・マーケティングへの取り組み


この新業態店を訴求するにあたって取り組んでいるのが、SNSの積極活用、いわゆるインフルエンサーマーケティングです。

ブロガー向け商品発表会を積極的に開催。芸能人や有名ブロガーなどがワークマンの服を買ったことをSNS上でつぶやくと、その画面をそのまま活用して、店頭でPOPとして掲げることもある。

作業着のカジュアル化というのは面白い試みですが、一般には浸透していません。作業着を普段着るなんて、ガテン系だけじゃん、と嫌がる人もいるでしょう。

つまり、作業着の普段着化という価値そのものを訴求しなければなりません。

マス広告で認知度を上げる前に、価値訴求に適した宣伝方法をとらなければならなかったというわけです。


ECについても、アマゾンのような宅配ではなく、店舗に取りに来てもらう方式に統一するとのこと。

独自性のある施策を連発しており、やはり面白い企業だなあと思います。





サマンサタバサはなぜ紳士服のコナカに買われたのか?

サマンサタバサはなぜ


(2019年10月14日メルマガより)

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ギャル御用達のバッグブランドで急成長したサマンサタバサが、紳士服チェーンのコナカに買収されるというニュースが先月ありました。

もともと社長同士が仲がいいということで個人的な救済策だったものが、急転直下、コナカによる買収に変更されたとのこと。その経緯に若干疑問は残りますが、鮮やかな買収劇であることは確かです。

ただこの買収、多くの識者を困惑させているようです。

なぜ紳士服チェーンが、ギャルのブランドを買うのか?相乗効果が見込みにくく、意味がわからない。という意見が多いのです。

本当にそうです。何なのでしょうか。


ギャルブランドの急激な失速


サマンサタバサといえば、10代から20代の女性にターゲットを絞り、個性的なデザインのバッグで急成長した会社です。

個性的といいましたが、私からすれば、色彩といいデコデコした形といい突き抜けすぎたデザインに思えます。

売り方も型破りです。ミランダ・カーやヒルトン姉妹ら本物の海外セレブを広告宣伝に起用してブランドイメージを確立しました。ただし海外で売るのではなく、日本における人気を高めて販売するためです。

日本の若い女性の、海外セレブに対する憧れをうまくくみ取った広告戦略であり、まさにブランドの一点突破手法ここにあり!という売り方です。

この販売手法が功を奏して、2007年には東証マザーズに上場。2015年には、売上高400憶円に成長します。

しかし、ここから急速に売上を落としてしまい、2017年には最終赤字に転落、その後、黒字化していません。

いったい何があったというのでしょう。


ニッチブランドを一気に拡大しようとした


低迷の原因は、無理な多角化とターゲットの拡大でブランドがぶれてしまったことにあるようです。

企業は株主から成長することを求められます。上場していればなおさらです。そのプレッシャーにあった経営者は、成長策を講ぜざるを得ません。

そこで同社がとったのが、バッグだけではなく、アパレル全般にブランドを拡大しようということ。(商品開発戦略)

およびバッグそのものも、年齢層の高い女性をターゲットにした拡大を行ったこと。(市場開拓戦略)でした。

これが見事に外れてしまいます。

経営学者のマイケル・ポーターによると、商品開発戦略の成功確率は45%、市場開拓戦略の成功確率は35%だということです。

もともと成長戦略の成功確率はこれほど低いわけです。かといって、何もしないと徐々に売上は落ちていきます。

だから、成長戦略を実施したことは悪いことではありません。勝負に出て失敗したという結果だけで非難することはできません。

ただ敢えて言えば、成長を焦り過ぎたのかもしれません。これだけ成功確率が低い戦略を同時並行して行えば、失敗もするというものです。

株主からのプレッシャーがなければ、もう少し慎重に取り組めたかも知れないと思います。後の祭りだとは承知の上で。

そう考えると、果たして企業が成長を目指す行為は必ずしも正しいと言えないのではないだろうか、日本という人口減少に向かう市場で、サマンサタバサのようなニッチブランドの成功者は、無理に成長など考えずに、むしろニッチとしての地盤固めに注力すべきではなかっただろうか、と思ってしまいます。

衰退市場で生き残りを図るコナカ


いっぽう紳士服のコナカも決して順風満帆な企業ではありません。

同社の売上高は651億円(2018年9月期)紳士服チェーンとしては第3位の規模です。

ただし、

1位の青山は、2503憶円(2019年3月期)

2位のアオキは、1939憶円(2019年3月期)ですからだいぶ離されていることになります。

3社とも、ここ数年の売り上げは現状維持か、微減、微増程度ですが、営業利益は下がり続けています。

はっきり言って、紳士服はもうだめでしょう。スーツを着ない人も多いし、人口が減っています。今さら紳士服を成長軌道に乗せるのは、無理筋というものです。

海外展開はどうなのか。ここは状況がわかりませんが、ユニクロのように海外展開で成果を上げているという話は聞きません。

だから青山は100円ショップのダイソーのフランチャイズを手掛けたり金融事業に進出したり、アオキは結婚式場やカラオケを運営したり、コナカは飲食店を運営していたりして、紳士服の落ち込みをカバーしようとしています。

いわゆる多角化ですね。

ちなみに先述のマイケル・ポーターによると、多角化戦略の成功確率は25%。さらに低くなります。が、本業がダメなのでやらざるを得ないわけです。

幸いなことに、3社ともキャッシュフローは潤沢です。お金がありますから、現状を打破するための投資資金には今のところ困りません。

なにしろ紳士服チェーン各社は、日本の人口が拡大していた時期に地盤を固めた企業ですから、その頃に蓄積した資産があります。

ここが、今のような人口減時代に創めざるを得ない企業との違いであり、幸運だったところです。

もっとも多角化にも温度差があります。

青山の販売実績のうち20%が、非ファッション事業です。

アオキに至っては41%が、非ファッション事業です。

これが、コナカの場合、非ファッション事業の割合は、2〜3%程度です。

つまり上位2社が、難しい多角化に取り組んで成果を上げつつあるのに比べて、コナカは、うまくいっていないか、そもそも取り組んでいないか、あるいはファッション分野でまだ粘ろうとしているか、という状態です。


足し算以上の意味はないが、それでもいいと割り切り


さてコナカがサマンサタバサを買収する意味とは何か?

サマンサタバサ側は背中に火がついているので背に腹は変えられません。助けてくれてありがとうございます。というところでしょう。

が、コナカ側としては、バッグの売上利益を足し算する以上の相乗効果が見えにくい。でも、この際だから収益の上がる事業は何でもほしいという気持ちでしょうな。

むしろ、足し算でいいんだ。という割り切りに覚悟が見えます。

なにしろコナカには永い冬の時代を過ごしてきた知恵があります。衰退市場において低空飛行ながらも利益を出し続けてきたしぶとい企業です。だから、ニッチブランドを無理に拡大しようなどといった愚は犯さないはずです。

サマンサタバサのコアである若い女性向けのバッグに商品を絞り、その他の余計な商品群は切り捨てて、再度尖ったブランドとして生き残りを図るはずです。

相乗効果が見えないと言いましたが、むしろ相乗効果などない方がいい。変にコナカのアパレルブランドと絡めない方が、サマンサタバサのブランド価値が混乱しません。

サマンサタバサの元気な時は、売上高400億円、営業利益30億円をあげていました。その半分でも毎年上げてくれれば御の字だというところでしょうか。


この買収によって、コナカの業績が劇的に上がるわけではありません。低空飛行は続くでしょうし、墜落の危険性も引き続き念頭に置いておかなければなりません。

あくまでコナカの生き残りのための一施策といったところでしょうか。

それでも、コナカはしぶとく生き残っていくのでしょう。それが成長期、バブル期、バブル崩壊期を生き抜いてきた中堅企業の凄みです。

皆さん。コナカの生き残りの様子をこれからも注視していこうではないですか。


《参考》








プロフィール
komai 小

営業関連のコンサルティングをしています。
製造業や卸売業などの営業組織を強化する仕事を得意としております。

株式会社クリエート・バリュー代表取締役
NPOランチェスター協会理事
NPOランチェスター協会関西支部
NPOランチェスター協会認定インストラクター
中小企業診断士   販売士1級

コンサルタントになる前は、日本酸素株式会社魔法瓶事業部(現在のサーモス株式会社)で14年、営業担当をしておりました。
その時、廃業寸前の赤字だった事業部がわずかの期間で世界トップ企業になった経緯を体験したことが、経営コンサルタントになったきっかけとなりました。
当時、経験したことや見聞したことを物語風にアレンジしたのが、拙著『「廃業寸前」が世界トップ企業になった奇跡の物語』です。
面白い本なので、ぜひ読んでください(^^)

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