わたしは価値を創る

大阪在住の経営コンサルタントのブログです。

専業作家はもはやビジネスとして成立しない

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先日、作家さんが集まる会合的なところにいってきました。一応、私も著作がありますので、作家ということで、参加してきました。

何人かの方とお話ししたのですが、それはもう、会う人会う人ごとに言われたのは「そのままコンサルしときなよ!」ってことでした。

私に才能がない。とか、逆に才能がありすぎて怖い。とかではなく、単純に、専業作家が儲からないから、というお話しのようでした。

だからこの記事は実にリアルです。作家の方とお話しした感じからしても、うなづけるものでした。


専業作家は、もはやビジネスとして成り立たない?


記事には、専業作家の平均年収は150万円程度じゃないかと書かれています。

単行本を書いて生活できる人は一握りです。雑誌の記事、ネットの記事、ゴーストライターなどで食いつないでいる方が殆どだと書かれています。

以前はそれでも、仕事をかき集めればそこそこの収入になったのでしょうが、今はかき集める仕事がなくなってきてきます。

それで平均年収が150万円だなんて、夢を追いかける若者じゃないんですから。これはもう専業作家という仕事はビジネスとして成り立たなくなった。と考えなければなりません。

まさに伝統芸能として、補助金をもらいながら維持していくような仕事になったのかも知れません。

文学界がプロレス化していくのはなぜか?

作家は、特殊能力のある自由業者


作家は従来の稼ぎ方では食っていけないわけです。

作家といっても、文芸誌への投稿や単行本の執筆で食っていける頂点の人たちは一握りです。

その他の方々は「取材ができる」「文章が書ける」「物語を作れる」能力のある自由業です。

その特徴を生かして食っていくことを考えないとだめでしょう。

能力を活かす市場を探す=「勝てる場所で戦う」


文芸誌や単行本が衰退産業ですから、そこでパイを奪い合っても、殆どの人はあぶれてしまいます。

だとすれば成長産業にシフトし、能力の使い方をチューニングしていかなければなりません。

以前のブログにも書きましたが、「物語」に対する需要はなくなりません。ドラマは作られ続けているし、読みやすい短編小説は求められています。

それが、ネット配信メディアに移っていっているだけです。

物語を必要としているネットメディアはいっぱいありますから、そこに食っていくためのヒントがあると思います。


切り口の鋭いテーマを上げられる人は、ネット番組や講演会を企画してもいいでしょう。

そこそこ有名人になれば、有料メルマガや有料記事を出して稼ぐ方法があります。

いまの流行りは、会員制のコミュニティを運営することです。安定収入になりますからね。

このテーマについては、もっと整理して、いずれメルマガに書こうかな、と思います。


ちなみに私がもし専業作家になるなら、こういう方法で稼ごうというアイデアがあります。

でも今は秘密です^^




 

IoTは家電業界の勢力図を塗り替えるのか

IOTは
(2018年11月15日メルマガより)

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IoT(Internet of Things)とは、物のインターネットのこと。様々なモノがインターネットにつながることを示しています。

モノがインターネットにつながると、モノに関わるデータを収集しやすくなりますし、逆にモノに対してデータを送りやすくなります。遠隔操作でモノを動かすことも可能になりますし、モノとモノが相互に連携したり、制御しあったりすることも可能になります。

例えば、商品を購入したユーザーが、それをいつどのように使用しているかという情報をメーカー側が収集できるようになります。そうしたデータは、次の商品の開発や改良に役立てることができます。

同時に、もっと便利になるようなデータやソフトの更新を遠隔で行うことができます。

モノの効率化、適正化が進み、社会的にみて生産性が飛躍的に上がると考えられています。

IoTは、第三次産業革命の主要素のひとつであり、世界中がその変化に対応しようと取り組んでいます。



IoT家電の主役はアマゾン


今年も世界中で開催されている家電見本市において、IoT関連の製品が多く発表されています。

ただ、その主役は、いわゆる従来の家電メーカーではなく、IT系企業です。

ここでも名前が挙がるのがアマゾンです。(またアマゾンか!)

アマゾンは、アメリカで家電販売額2位の小売り店です。そのアマゾンが製造するAIスピーカー「アマゾン・エコー」は、出荷台数1億台を超える勢いで売れており、IoT家電の代表的存在となっています。

ちなみにAIスピーカーとは、声で操作する小さなコンピューターです。内臓されているAI(人工知能)が本人の声を認識し、指示を受けると、音楽を流したり、ニュースを読んだり、天気予報を知らせたり、分からないことを調べてくれたりします。いわば、声で操作するスマホのようなものですな。

アマゾンやグーグルのAIスピーカーは、家の中にある家電ともつなげることが可能で、声掛けすると、電気をつけたり、テレビのチャンネルを変えたり、風呂を沸かしてくれたりもできるようになります。

AIスピーカーに連携可能な家電製品も増えてきており、その利便性が高まっています。


IoT家電になって得をするのはメーカー側


家電がインターネットにつながることによって、利益を得るのは、実はメーカー側の方です。

ユーザーが購入し、所有している製品が、いつどのように使用されているかを把握することは、今後の開発や改良に大いに資するところとなります。

IoTの先駆けともいうべき事例に建築機器大手コマツのコムトラックスというシステムがあります。

もともとこのシステムは、盗まれた建築機器(トラクター)が犯罪に使われることを危惧したコマツが機器にGPSをつけたことが始まりです。

「コマツの建築機器は盗まれてもすぐに見つけてくれる」という評判は、販売施策においても、プラスに働いたことでしょう。

しかし建築機器がつながっていることのメリットはそんな程度ではありません。

ある会社所有のトラクターが、何時頃何台動いているのか、あるいは、ある地域で実際に稼働しているトラクターが何台あるのか、というデータは、販売戦略や生産戦略を立てる上において、極めて重要な要素となります。

さらにいうと、不具合や事故のデータを組み合わせることで、機器の開発や改良のヒントにもなります。

コマツが、今の地位を築いたのは、まさに製品をネットにつなげたことだと言っても過言ではありません。


煮え切らない日本の家電メーカー


では、日本の家電メーカーはどうなのか?

といえば、どうにも歩みが遅いように感じられます。

製品をインターネットにつなぐ技術そのものは既に確立されており、難しいものではりません。

だから各社とも、IoT家電を試験的に製造しているもののあまり広がっていません。

ネットにつなげる機能を付加するとコストアップになりますが、その分を売値に転嫁しにくい。なぜなら消費者にとって、つながることのメリットを感じにくいからです。


言われてみれば、家電がネットにつながったからと言って、何が嬉しいのか?今一つピンときません。

例えば、エアコンがネットにつながるとどんないいことがあるのか?というと、外出先からつけたり消したりを遠隔操作できるぐらいでしょうか。

そんなもんタイマー機能で何とでもなるわ。とユーザーは思うでしょうね。

要するに、つながる家電のメリットはメーカー側にあります。それなら、メーカー側が負担すればいいのに、できないというのは、その費用対効果を測りかねているということです。


アマゾンに主導権を渡してもいいのか


いや、コマツも当初は費用対効果を測りかねていたが、いち早く全品ネット対応したために大きなアドバンテージを得ることができたわけです。

日本の家電各社もうじうじ悩まないでさっさとやればいいやん、と思いますが、そこも少々複雑な問題があります。

そもそも家電製品一つがネットにつながるよりも、すべての家電製品がネットにつながった方が、メリットが大きいわけです。

エアコンとテレビと照明が全部バラバラでは、アプリばかり増えて面倒なことこの上ありません。

それより、全部が一つのコントロールセンターで制御できる方がいい。そのためには、各メーカー同士の協力が必要ですが、だれが主導権をとるのかすんなり決まるわけがありませんよ。

そんな面倒なことをするぐらいなら、日本の家電ぜんぶをアマゾンやグーグルのAI対応にしてしまえばいいのです。

それならすぐにでも、家一軒すべてIoT家電になります。

が、そうはしたくないわけですな。

アマゾンやグーグルは、AIスピーカーで儲けているわけではありません。儲けるのは、AIスピーカーを使用したユーザーが、アマゾンのネット通販を利用したり、クラウドシステムを利用したり、グーグルの広告機能を利用したりした時です。

アマゾンのAIスピーカーにつなげると、アマゾンのビジネスを拡大することにつながりますし、グーグルもしかりです。

安易につなげてしまうと、アマゾンやグーグルに美味しいところは持っていかれて、自分たちはただの箱にされてしまうという危機感があるのです。


しかし将来の方向性として家電製品がネットにつながっていくことは間違いありません。あまりグズグズしていると、また海外のメーカーに遅れをとって厄介なことになってしまいます。

ではどうすればいいのでしょうか。


(1)メーカーが自社でネットシステムを構築しハブとなる


ひとつは、メーカーが覚悟を決めて、アマゾンに対抗できるような自社システムを構築することです。

ハブとは、自転車のホイールの中心部分のこと。ネットワークの中心を担うことを例えた言葉です。

製品ラインナップの多い企業はこれができます。

パナソニックは、アマゾンに対抗して、自社システムで家一軒IoT家電にする構想を持っています。

もちろん自社製品だけでは不便なので、他社にもシステムに参加するように呼び掛けており、20社が参加するというニュースがありました。


なんと、グーグルのAIスピーカーにもつながるようですね。

実にわかりやすい反アマゾン連合であり、参加企業がさらに増えると、面白いことになりそうです。

もしグーグルが本気になり、パナソニックのシステムと共同でグローバル展開することになれば、それこそアマゾンに対抗できる勢力になるかも知れません。

期待大です。


(2)メーカーが自社独自でネットワークシステムを開発し単独で運営する


パナソニックのシステムに入ることを嫌がる企業は、独自システムでいくことになります。

思えば、アップルも単独でネットワークシステムを持っています。

ただしネットワークを使ったサービスはあくまで付加機能の位置づけであり、そこで儲けているわけではありません。儲けているのは本体の販売です。

アイチューンズが莫大な利益を上げているわけではありません。アップルの巨大な利益の殆どはアイフォーンなどの本体機器の販売利益です。

そういう意味では、アップルのビジネスモデルは、家電メーカーと同じですね。

ただアップルほど巨大な企業でなくても、ネットワークシステムの構築は可能です。

家一軒IoT家電なんて大そうなことは考えず、自社だけで運営します。

ネットにつなげるのはデータを取得するためと割り切り、自社でコスト負担します。

あれこれ悩むより、スピードを重視して、単独でつないでしまった方が、早くデータを蓄積できます。

そのデータをヒントに、次世代製品を作っていけばいいのです。

これは各社とも試験的に始めていることです。


(3)アマゾンやグーグルのシステムに乗っかるが、製品の魅力で勝負する


最近、ローテクながらニッチ機能に特化した家電製品を製造販売する中小企業やベンチャーが出現しています。


こうしたメーカーは、ニッチ機能の珍しさで勝負しているので、付加機能であるネット関連サービスは自社オリジナルである必要はありません。アマゾンやグーグルに乗っかればいいのです。

例えば、パン焼き機や炊飯器など、機能特化した電気調理器具が人気を集めています。そこにひと機能付加するとすれば「常に新しい調理方法やメニューが更新されており、クリック一つで調理準備できる」「素材など足りないものをワンクリックで注文してくれる」などですか。

冷蔵庫なら気温に応じて、冷蔵機能を自動調節してくれる機能とか。

まあ、なくてもいいんですが、あれば便利かな。という程度の機能ですね。これらはグーグルやアマゾンの機能を使えばすぐにできるはずです。

元来、こうしたニッチメーカーは、ライバルが真似をしてきて、ありふれた商品になってしまうと、潔く止めてしまいます。

すぐに止めるような商品についていちいち自社システムのネットワークを作っていたら、コスト倒れになってしまいます。

常にマイナー需要を拾っている存在なので、アマゾンにライバル視されて攻撃を受けることもないでしょう。

これがパナソニックやソニーのようなメーカーだと需要規模が大きいので、アマゾンとガチで対決しなければなりませんが、小さな会社は、これで充分ですね。


(4)アマゾンやグーグルのシステムに丸乗りする


多くの人が欲しがる製品は、ライバル企業が多いので、価格勝負になり儲かりません。

アマゾンが得意とするのは、このありふれた製品の市場です。

アマゾンというのは「儲けない」ことを信条としています。いま儲けるよりもシェアをとりたいという考えがあるからです。

例えばAIスピーカーの「アマゾン・エコー」は、原価すれすれで販売していると言われています。

まずはエコーを世の中に広めて、利用者の利便性を高めたいと思うからです。

(エコーを使う人が増えれば、エコーと連携しようというサービス会社が増えてきます。だからユーザー数が増えれば増えるほど、便利になってきます。これをネットワーク外部性といいます)

しかもエコーは本体機器で儲ける商品ではありません。それを使った人がアマゾンのサービスを購入すると儲かる仕組みです。

つまり、エコーは無理をして安売りしているわけではありません。これからも今の価格を維持できる商品です。

こんな商品に対抗するだけ無駄ですよ。

だから乗っかるわけです。

アマゾンの手のひらの上で、アマゾンのルールに則ってビジネス展開すると割り切るのです。

コンテンツメーカーなら、アマゾン・エコーで機能するアプリそのものを作ればいい。

あるいはグーグルのシステムを搭載した簡易タブレットを作ればいい。(実際、グーグルのシステムを使った簡易スマホが途上国を席巻しています)

もちろん低価格にしなければならないので、薄利多売もいいところです。1個あたりの利益はあるかないかわからないほどです。

それでも量は見込めます。生産地を慎重に見極め、生産効率を極限にまで上げるとえらい儲かるビジネスができるかも知れませんよ。


ベータ版を上梓できる商品戦略


AIスピーカーは、機器本体に価値があるわけではありません。それを使用するためのアプリ(ソフトウェア)があってはじめて価値を持ちます。

こういう商品の場合、最初から商品本体の完成度を高めなくてもいいという特徴があります。

電源が入らないとか音が出ないという物理的な不具合は困りますが、普通に動きさえすればOKです。

なぜなら価値はアプリの方にあるので、とりあえずユーザーの評価を先送りできます。

後からおいおいアプリを充実していけばいいわけです。

いわゆるベータ版を販売しても許されます。これは他の家電製品にない特徴です。

つまり今までの家電にないものづくり発想で開発すべき製品です。


購入時よりも徐々に価値が上がる商品


普通の家電製品も、このような発想を採り入れられないものでしょうか。

すなわち、アプリをおいおい充実していくことで、商品の機能を高めていく仕組みです。

冷蔵庫や洗濯機などは、物理的な機能に縛られるので難しいのかな。

しかしテレビなどは、後からチャンネル数が増えたり、ネット番組がつながってきたりすると、面白くなるのではないでしょうか。

普通、家電製品は購入した時の価値がピークです。年数を経るごとに徐々に価値を棄損させていきます。

が、年々、サービスが増えていって、購入時よりも、5年目、6年目の方が価値が上がっているとすれば、素晴らしい。

買い替え時には迷いなく、同じメーカーの製品を買うことでしょう。


小回りが利く小さな会社にとってチャンス


特に中小企業やベンチャー企業はねらい目ですよ。

大企業は、ネットワークシステムを作るにも大掛かりで、充実したものを求められます。コストもそれなりにかかるでしょう。

が、小さな会社はそうではありません。

グーグルやアマゾンのシステムをうまく利用して、とりあえず作ってしまえばいいんですよ。それこそベータ版で。

グーグル翻訳を使った簡易翻訳機。

天気予報を充実させた海上時計。

その日のニュースを読み上げてくれるネットラジオ。

売れるかどうかわかりませんが、売れなければやめればいいんです。売れそうなら、アプリを充実させていけばいい。

小回りのきく中小企業なら、スピードをもって開発できるはずです。

案外、こうした姿勢から思わぬヒットが生まれて、業界の勢力図を塗り替えてしまうのかも知れません。

RIZAPの実態をプロ経営者が暴いた



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これ、むちゃくちゃきな臭い話ですね。。

カルビーを退職し、RIZAPグループに入ったことで、世間をあっと言わせた松本晃氏が、わずか4カ月でCOO職を解かれたとのこと。このまま退職になるのでしょうね。

※追記:松本氏は、「構造改革担当」となり、続けるそうです。

松本氏の辞任が実態を暴いた


RIZAPグループは、M&Aを繰り返すことで膨張するように成長してきた企業グループです。

買収企業の種類は多岐にわたり、シナジー(相乗効果)があるわけでもなく、何が何だかわからない状態です。
 
RIZAP側は、これらを「コスト削減などを徹底することで再建してきた」(瀬戸社長)とのことですが、その真偽を疑いたくなるような事態です。

記事には、

実はそれらの中には業績が悪化し、買収価格が会社の正味資産である純資産(総資産から負債を差し引いたもの)を下回る企業が多数あった。会計上、その差額部分は「負ののれん」として認識され、RIZAPグループが採用する国際会計基準では営業利益に計上される。

これは割安購入益と呼ばれ、同社の決算説明資料によると、営業利益に占める比率は17年3月期には58%、18年3月期で54%に達するほど。実態としてRIZAPグループは業績悪化企業を割安に買うことで利益を押し上げている状況なのである。

とあります。

つまりRIZAPグループの営業利益の半分以上が「割安購入益」であり、本当に企業業績がいいのか悪いのかが分かりにくい状況です。

これを問題視した松本氏が、もっとまともに精査せよと主張したことで、従来の経営陣と「激しく対立」したのだとか。

記事はさらりと書いていますが、なんともまあ、火種どころか、強烈な爆弾を抱え込んでいることを晒したようなもんではないですか。


RIZAP側は、業績予測をいきなり下方修正


案の定、RIZAPグループの株はストップ安を計上しています。

[東京 14日 ロイター] - RIZAPグループ<2928.SP>は14日、2019年3月期の業績予想を下方修正した。過去1年以内にグループ入りした企業を中心に経営改善が予定より遅れている影響や構造改革費用などを踏まえ、連結当期損益は70億円の赤字(従来は159億円の黒字)を見込んでいる。配当は無配予想に修正した。

今後は構造改革として、短期的に収益改善が困難な事業などは縮小・撤退や売却を検討するほか、新規M&Aを当面は原則凍結するとしている。


松本氏の職を賭けた訴えが実態を暴いたとのことでしょう。

それにしても、バレた途端に業績を159億円の黒字から70億円の赤字に下方修正するとはどういうことか。(その差、229億円!)

今まで隠していたことを問題視すべきなのか。早い修正を正直だと評価すべきなのか。









アマゾン・エフェクトに対抗する手段はあるのか

アマゾン・エフェクト
(2018年11月1日メルマガより)

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ビジネスの情報に接していて、その消息を聞かない日はない、というのが、アマゾンです。

まったくもって呆れたもんです。

ここ数年ではありません。十数年。アマゾンは話題の主役であり続けています。


アマゾン・エフェクトとは


このたびも、米国大手小売りチェーンのシアーズが経営破綻しましたが、その直接の原因が、アマゾンの台頭だと言われています。


いわゆるアマゾン・エフェクトというやつですな。

ちなみにアマゾン・エフェクトとは、アマゾンの革新的なビジネスのパワーにより、あらゆる産業のプレイヤーたちが市場からの退場やビジネスモデルの大幅な変革を余儀なくされることを示した言葉です。

家電量販店のラジオジャックや玩具小売大手トイザらスなど、ここ数年、アマゾン・エフェクトにより破綻に追い込まれる小売店が頻発しています。

あるいは衣料品小売り大手のギャップの店舗が大量閉鎖に追い込まれたこともありました。

そうかと思えば、ビジネスモデルをガラリと変えて生き残る企業も出ています。

いまやアマゾンは、ネット通販大手でもあり、家電品メーカーでもあり、衣料品製造小売りでもあり、出版社でもあり、クラウドシステムの提供企業でもあります。もうすぐ金融機能も持つようになるでしょう。

だからアマゾンの及ぼす営業は地のはてまで及びます。どの業界もアマゾン・エフェクトから逃れることはできません。

アマゾンの脅威恐るべしです。


アマゾン・エフェクトに対抗する方法はあるのか


シアーズというと、経営理論の教科書に載るぐらい成功した小売チェーンでした。

創業当初は、小売り流通網のない農村地帯をターゲットにした通販カタログ事業として発足し、流通網が整備されてくると、組織体制をいち早く整えて、全米に小売店を展開していきました。

常に時代の変化を読み、真っ先に組織を整備して、時代に対応するというのがシアーズでした。

ところが、そのシアーズも、アマゾンの台頭には太刀打ちできなかったようです。

げに恐ろしきはアマゾンです。

しかし、よく調べてみると、シアーズの業績が悪化したのは、必ずしもアマゾンによるものとは言えない部分もあります。

現在のアメリカのナンバーワン小売チェーンであるウォルマートの台頭時から、シアーズは苦戦を強いられていました。

ウォルマートの代名詞である「エブリデイ・ロープライス」に対抗できていなかったのです。

そのウォルマートでさえ、アマゾンの脅威によって、窮地に陥っています。

だから今回、経営破綻したシアーズは、とうの昔に、時代に追い付けなくなっていたといった方がいいのかも知れません。


イナゴの大群のようにすべてを食い尽くし、不毛の地にしてしまうかのようなアマゾンの進撃ですが、実をいうと、したたかに生き残る小売チェーンも存在します。


アメリカのホームセンター、ホーム・デポや家電量販店のベストバイなどです。

どのような小売チェーンが生き残っているというのでしょうか。


アマゾン・エフェクトに対抗する その1.店舗をとことん利用する


まず一つ。アマゾンには店舗がありません。

いや最近は弱点を克服しようと小売店の買収や無人店舗の開発などを進めているようですが、まだ戦力となるには至っていません。

ですから、店舗を中心とした販売戦略には、アマゾンが対抗できない分野があります。


たとえば上記のアメリカの家電量販店ベストバイは「ショールーミング」を推奨する戦略をとっています。

ショールーミングとは、ネットで購入する前に、店舗で商品を確認する作業のことです。

実際にはネットで買われるのだから、店側としてはいい迷惑です。散々、商品を見せて、必要ならば説明し、値段を提示して、それで買ってくれない。得するのはアマゾンだけです。

既存の家電量販店が軒並み業績を悪化させたのは、アマゾンの台頭によりショールーミングが一般的になってしまったことが一因です。

しかし我々一般消費者からすれば、一抹の罪悪感は覚えるものの同じ商品を購入するなら、安くて宅配してくれるアマゾンがいいに決まっています。

憤懣やるかたない店側ですが、さすがに消費者に文句を言うわけにはいきません。そこで開き直ったベストバイは、ショールーミング上等!どんどん見て、どんどんネットで買ってくれ!と言い出しました。

その代わり、購入するのは、自社のネットサイトです。

そうなんですね。ベストバイは多額の投資を行って、アマゾンに負けないような自社ネットショップを作ってしまったのです。

店舗で商品を確かめてもらったら、そのまま自社のネットサイトで購入してもらうように誘導する接客を行いました。

値段はアマゾンに合わせています。だから消費者は、ベストバイで購入しない理由がありません。罪悪感も覚えません。


この方法は、ヤマダ電機も追随しています。ヨドバシカメラはもっと本格的にネット販売に取り組んで、一定の成果を上げています。

アメリカの場合、宅配事情が日本ほど細やかでないという理由もあります。アメリカの宅配業者は、不在の場合、玄関前に商品をそのまま置いていくことが多いそうですから、置き引きが多発しているそうです。

それなら、ネットで購入して、店舗で受け取ることができるベストバイに利便性があるというものですね。

店舗+ネットの合わせ技で対抗するというのが、一つの方法です。


アマゾン・エフェクトに対抗する その2.体験の提供


アマゾンが最も苦手とするのが「体験」の提供です。

これもネット通販の泣き所ですね。


上記のアメリカのホームセンター、ホーム・デポは、自社の店舗を「体験の場」だと位置づけて、日曜大工の講習や相談会を積極的に展開することで、顧客の支持を得ました。

ネットで日曜大工のことをいくら調べても、実際のリアルな講習ほどの臨場感はありません。わからないことがあれば、店員さんに聞けばすぐに答えてくれるはずです。

日曜大工に興味のない消費者でも、店に行けば講習をやっているので、興味を持つこともあるでしょう。

あの店に行けば何か体験できる。というイメージは、店に足を運ぶ大きな動機となります。


日本においては、ドン・キホーテが、エンタメ要素満載の体験型消費を提供しています。

大手小売りチェーンのユニーなど、ドン・キホーテと提携したと思ったら、店舗の多くをドンキ型に改装していく意向を示しました。えらい入れ込みようです。

道頓堀にあるドン・キホーテの屋上には観覧車が回っていますが、それが同社のコンセプトを象徴しています。

わざと探しにくく陳列した店舗は、宝探しのようなワクワク感に満ちています。

品揃えも、バラエティショップよろしく、定番化していないので、行くたびに新しい商品を見つけることができます。

驚安というほど安くない商品も多いのですが、それでも何があるか分からないという楽しさがあります。

これは、検索のしやすさを追求しているアマゾンとは真逆の楽しさです。アマゾンにはない購買体験を提供しているといえます。

アマゾン・エフェクトに対抗する その3.特殊で深いニーズに応える


上記のホーム・デポは、一般消費者ではなく、建築業者などをターゲット顧客とする戦略を推し進めています。


アマゾンは最も大きな市場を狙いますから、専門業者の特殊ニーズに応えるのは、あまり得意としていません。

ですから、専門業者のニーズに応えることができれば、その分野では、アマゾンに勝つことができます。


日本でいえば、ワークマンなどは、特殊性の高い商品展開をしているので、アマゾンの影響を受けにくいといえます。


特殊性が高いということは、リアルに確認してから購入したい顧客が多いということです。

アマゾンも業者向けサイトを開設するなどして、この分野の取り込みを図っていますが、いかんせんすべてを網羅することは難しいと思います。

やはり特殊なニーズに深く応える店は、生き残る可能性が高いといえるでしょう。


アマゾン・エフェクトに対抗する その他の方法


その他、アマゾンに対抗できそうなのは、100円ショップです。

こちらも、いくら衝動買いしても大した金額にならないという安心感から、エンタメ化した購買体験を提供しているといえます。

その上、アマゾンは、送料がかかるために、100円などという価格をつけることを苦手としています。

エンタメ+送料不要というアマゾンの苦手な部分を担うことで100円ショップは、これからも生き残っていくだろうと思います。


あとは、ドラッグストア。

こちらは処方箋医薬品を扱っていますので、アマゾンには手を出せない部分ですね。


さらに進撃するアマゾン

こうしてみると、小売店が生き残るための鍵は、アマゾンの死角や隙間を突くことだといえますね。

言い換えれば、圧倒的な強者であるアマゾンに対して、「弱者の戦略」をとることが生き残るための必要条件です。

アマゾンが弱点としている「店舗の活用」「リアルな体験」「特殊な専門性」。これらに集中し、深く掘り下げることで、勝ち目が見えてきます。

いや、そこを突かないと、勝てる要素がありません。


もっともアマゾンも手をこまねているわけではありません。

小売チェーンの買収や、無人店舗の展開などを通じて、弱点を克服しようとしています。

あるいはビジネス向けのニーズに応えるべく専門のサイトも開設しています。

それがうまく機能しているかどうかはまだ未知数ですが、アマゾンがこまめにミート戦略を実施してきていることは、さらに脅威となりそうです。

(ミート戦略:強者が、弱者の特徴を消すために弱者のマネをする戦略)


アマゾン・エフェクトに対抗する その4.アマゾンの傘下に入る


最近、ベストバイが、アマゾンとの提携を発表し、世間を驚かせました。

アマゾンのサイト内にベストバイの販売コーナーを設置したのです。

これまでベストバイは、店舗で見てネットで購入する顧客を自社サイトに取り込もうと躍起になってきましたが、ここにきてアマゾンに歩み寄ったかっこうです。

ベストバイの経営陣いわく「ネット通販でアマゾンに対抗するのは無理があった」ということですから、実に潔い白旗ではないですか。

もしかすると、この提携は、アマゾンによる資本参加、あるいは買収につながっていくのかも知れません。

アマゾンに飲み込まれることを覚悟した選択であり、究極の「長いものに巻かれよ」ですな。


そうなると、日本において、店舗とネット通販を充実させてアマゾンにまっこう対立する戦略をとるヨドバシカメラの去就が注目されます。

都市型家電量販店のヨドバシカメラは、業界でもひとり気を吐いている好調組ですが、アマゾンが日本攻略にさらに本腰を入れてきた時に、持ちこたえられるのでしょうか。


アマゾン・エフェクトは終わらない


アマゾン・エフェクトに対して、生き残る方策はある。とことさら取り上げること自体、アマゾンの強大な力を示しています。

日本を代表する小売チェーンといえども、アマゾンの死角や隙間を突かないと生き残ることができないほど追い詰められているのです。

しかもアマゾンは、日々、その戦略や技術を進化させています。アマゾン・エフェクトがさらに強大になることはあっても、消えていくことは考えにくいです。

世界中の小売店は、もはやアマゾンの脅威に晒されることを前提に戦略を決めていかなければなりません。

いわば、世界中が「弱者の戦略」を強いられている状態です。

皆さま、覚悟いたしましょう。

シャープをアップルにするという鴻海の思惑

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上は、シャープの現在地がわかる記事です。メモ。

シャープが鴻海傘下に入ったのが2016年です。

度重なる赤字決算で経営危機に直面していたシャープでしたが、その直接の原因は、身の丈を超えた投資の失敗だということですが、裏側には経営陣同士の権力争いがあったと聞こえています。

もともと中小企業的な泥臭さがあってトップダウンが強い。したたかさがあると思っていましたが、意外に脆かった。

そういえば、以前のブログでは、「トップダウンが強いから、社員は冷めているんじゃないか」などと書いていました。

愛社精神ゼロの知人数人をみてそう思っただけなのですが。

シャープをめぐる鴻海の思惑


鴻海からきた経営陣は、徹底したコストカットと、在庫のたたき売りで、短期間に黒字化を成し遂げました。さすがです。

在庫たたき売りのあおりで、安売りメーカーのレッテルを貼られるようになったらしいですが、仕方ありません。これからイメージを回復していかなければなりません。


鴻海側は、日本企業シャープのブランドを復活させて、「企画」のシャープと「製造」の鴻海という両輪でサムスンやアップルに対抗していく腹積もりであると記事にはあります。

もちろん道半ば、というより道が始まったばかりなのですが、鴻海は、関連企業を買収したりして、構想を進めようとしています。

こちらも日本企業にないスケール感の戦略構想ですね。

どこまで行けるのか楽しみです。







アマゾンの発想のスケールとは

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上は、アマゾンの配送センターの状況を示した記事です。

トヨタのカイゼンにちなみ、配送の作業場を「Genba」と呼んでいるそうです。

が、その内容は、日本企業のカイゼンを凌駕しています。

なにしろ、アマゾンの配送センターは、商品を仕分けする人間が棚を回るのではなく、棚の方から人間のもとにやってくる仕組みです。

効率性追求のスケールが違います。

制約条件をどう捉えるのか


アマゾン側は、仕分けをする人間もなくしてしまって、すべてロボットで行う仕組みも考えているとか。

「今はハードウエア面での課題があってできないだけだ」

そうですよ。

制約条件の中で切り詰めて効率性を追求するのが得意な日本に対して、制約条件を資金力と技術で取り払ってしまおうというのがアマゾンです。

その制約条件との付き合い方が、我々には巨大なスケールとなって感じられるわけですな。

いまやアマゾンは、最先端技術ベンチャーの集合体となっていて、制約条件を次々となくしていってしまっています。

このアマゾンの発想によって生み出されたのが、無人小売店の「アマゾンGO」や、超低価格クラウドシステムの「AWS」だということです。

日本企業が太刀打ちできないほどではない


アマゾンの発想のスケールに驚かされることは今更言うまでもありませんね。

しかし、そのスケールの正体を知ってしまえば、決して日本企業には無理だ、と言うほどのことではありません。

そう思いませんか?




一流の営業は「時間」を操る

営業 時間


(2018年10月18日メルマガより)


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今回は営業の話です。

営業は会社にとって使い捨ての存在だ!なんてまことしやかに言われることがあります。

私が就職活動をしているときも、営業志望のくせにそんな自虐めいたことを言い出す人がいたものです。

営業なんて将来性がないので彼氏にしたくないとうそぶくバカ女もいましたね。あいつらどうしてるのかな。

全くもって認識不足です。営業ほど可能性がある仕事はありません。営業ほどつぶしの効く職業はありません。

なぜならそれだけ高い能力が要求される仕事だからです。

営業をそれなりにこなすには、対人関係スキルも、目標達成スキルも、社内調整のスキルも、セルフマネジメントのスキルも必要です。業界知識も、関連分野の技術知識も、マーケティングの知識も必要です。

営業を極めた人は、ほかのどんな職業でも通用すると私は思っています。

自信を持ってください。


能力のある営業は捨てられない


営業が使い捨てにされるとすれば、それはその営業が使えないからです。

元気で動きのいい時は使うが、疲れてきて動きが鈍れば捨てる、ということがもしかしたらあるのかも知れません。(現実には聞いたことがありませんが)

しかし、たいていの場合、営業側も経験を積んで、効率的な行動を心がけるようになります。

物理的な行動量は鈍っても、効率的であれば、生産性を上げることができます。その方法を知っている営業は、捨てられるようなことはありません。

自分だけではなく、部下にその生産性向上の方法を教えることができるようになると、価値は4倍にも5倍にも増します。

使い捨てどころか、会社の財産として扱われるはずです。


優秀な営業は時間の使い方を知っている


生産性向上の鍵は「時間」にあります。

営業に限りませんが、われわれビジネスにかかわる者にとって、最も貴重な資源が時間です。

時間はすべての人に等しく与えられたものであり、制約条件です。

だから時間の使い方の一つで、生産性は2倍にも2分の1にもなりえます。

一流といわれる人は、おしなべて有限の時間を効率的効果的に使う人です。


さて、人々に等しく与えられた時間をうまく使うとはどういうことか。

これは、つまるところ、自分がやることの優先順位を決めることにほかなりません。


「緊急−重要」マトリクスを使いこなす


優先順位とは、端的にいうと、重要なことに時間を割くということです。

これは何も難しいことではありません。

よく使う表ですが、「緊急−重要」マトリクスを用意して、自分の行動を整理してみてください。

緊急重要マトリクス


「緊急−重要」マトリクスは、縦軸に「重要か重要でないか」横軸に「緊急か緊急でないか」をとって、4つの象限に分けて自分の行動を整理していくものです。

例えば「緊急」とは、いますぐに対応しなければならないもののこと。営業でいうと、クレーム処理とか、見積もり対応とか、何らかの呼び出しだとか、そういうことに費やす行動です。

これに対して「重要」とは、購買力のある顧客への訪問や提案、自社戦略に合致した作戦行動、何等かの成果につながる行動などと規定します。


ここでいう4つの象限とは、

(1)重要かつ緊急。いますぐ対応しなければならない重要な行動。

(2)緊急だが重要ではない。いますぐ対応しなければならないが、さして重要ではない行動。

(3)重要だが緊急ではない。重要だが、いますぐに対応しなくてもいい行動。

(4)重要でも緊急でもない。重要でもないし、いましなくてもいい行動。

のことです。


この4つの象限に優先順位をつけるとどうなるか。

(1)が最も優先度が高く、(4)が最も低いことは自明です。わかっていただけると思います。

が、(2)と(3)では、どちらを優先すべきか?

このほんの少しの順位づけが、成果を出すか出さないかの分かれ道となります。

おわかりですかね。

(3)の優先度を高くし、(2)の優先度を低くしてください。

たったこれだけのことが、あなたの将来を助けることになります。


凡庸な営業は「緊急性」に囚われている


私の見る限り、凡庸な営業は、(1)と(2)しかやっていません。つまり緊急性でのみ行動しています。

緊急であるということは、相手側から声がかかっている状態を示しています。だから受け身に仕事をしている人は、緊急性しか見ていません。

仕事というのはいくらでも湧いてきますから、1日受け身でも忙しく過ごせます。ああ、今日はよく働いたなあという印象しか残らないでしょう。


これに対して、いますぐにしなくてもいいが重要な行動を意識できる人は、当然ながら、将来に向けて重要な布石を打っていることになります。

もちろん、いますぐにしなければならないことは、すぐにやらなければダメです。それは当然として、緊急性のある仕事だけで終わらないことが大切なのです。

忙しい時でも、「本当はもっと優先しなければならない仕事がある」と思えるかどうかが頭一つ抜け出す秘訣だと思ってください。


こんなことを言うと、「こちらは緊急対応で手いっぱいだから、将来の重要な仕事なんてできるわけないだろ!」とキレる人がいますが、知ったこっちゃない。

あなたが上司に雑用ばかりやらされていようが、100人分の仕事を抱えている状況であろうが、顧客から呼び出されてばかりであろうが、個別事情はどうでもいい。

忙しくて首が回らないと愚痴る人は、それまでの人だということです。

どんな状況にあろうと、凡庸の群れから頭一つ抜け出す人は、いましなくてもいいが重要なことにほんの少しでも時間を割いているということを知っておいてください。


重要という概念には注意が必要


ただこの「緊急−重要」マトリクスは、使い方に注意が必要です。

重要という概念は、範囲が広いので便利であるともいえるし、抽象的でつかみにくいとも言えます。

だから、重要という概念に勝手な解釈をいれてしまうかも知れません。

たとえば、「歓迎してくれる顧客」とか「おだやかで苦言を言わない顧客」とか「受付嬢がかわいい顧客」とか、個人に都合のいい概念を重要という範疇に入れてしまいがちです。

そうなると、結局は、楽ちんで苦労のないことばかりやるという行動表になってしまって、わざわざ表を作る意味がなくなってしまいます。

だから充分にご注意ください。


純粋に数値で判断する「ランチェスター戦略式ABC分析表」


そこで私がおススメするのが、純粋に数値だけで判断する方法です。

私は、ランチェスター戦略の専門家ですから、いつも使う表があります。

いわゆる「ランチェスター戦略式ABC分析表」です。

ランチェスター式ABC


これもマトリクスですが、縦軸に「購買力」をとり、横軸に「自社の顧客内シェア」をとります。

つまり上から順番に、購買力の大きな顧客を並べていき、左から順番に自社をひいきにしてくれる顧客を並べていきます。(厳密には、もう少しきっかりした計算式があるのですが、省きます)

この表は4つの象限ではなく、3×3=9つの象限に分類します。

まずは縦軸は上からA、B、Cの行に分類します。

次に横軸は、左からa、b、cの列に分類します。

すると、Aa、Ab、Ac、Ba、Bb、Bc、Ca、Cb、Ccの9つに分かれます。


ここで大事なのは、9つの象限のうち、購買力もあり、かつ自社をひいきにしてくれているAaを最重要視するのではなく、むしろ、Abを重要ターゲットとするということです。

なぜなら、Aaの顧客は、上得意先であることは間違いがありませんが、これ以上の上積みはあまり期待できません。

それなら、AbやBbといった購買力はあるが、自社をそれほどひいきにしているわけではない顧客に通った方が、上積みが期待できるというものです。


それぞれの象限に行動方針を振り分けます。

Aaは「守る」ことを主眼にした得意先です。

Ba、Caは「育てる」ことを行動の基準とします。

Ab、Bb、Acは「攻める」得意先です。

残りのBc、Cb、Ccは「様子見」です。

たとえば「守る」「育てる」顧客への訪問は週1回。

「攻める」顧客への訪問は週3回、などと決めておけば、行動スケジュールの設定に迷いがなくなるはずです。


「攻める」ことができるかどうかが将来を分ける


もしこのような表がなければ、その営業は確実に、Aa、Ba、Caのフォローで一日を終わらせてしまうでしょう。

なぜなら、自社をひいきにしてくれる顧客からは様々なアプローチが向こうから来るからです。それを無下にすることはできません。受け身の対応だけで手いっぱいになってしまいます。そうなると現状維持が関の山です。

その状態から脱して、将来的な売上拡大を望むためには、「攻める」得意先を持たなければなりません。

ライバル会社と激しい主導権争いに巻き込まれるのが必至の「攻める」得意先の営業は厳しいものがあるでしょう。

それでも攻めなければ、売上拡大などありません。有無をいわさず取り組む覚悟が必要です。

その意味でも、純粋に数値だけで行動方針を決める「ランチェスター戦略式ABC分析表」には価値があると考えます。

この方針に従うなら、現状維持から脱して、業績を拡大し続けることができます。

人数が少なくても、少しづつでも前進できるのは、こうした確かな行動目標管理があるからなのです。


優秀な営業は、自分の時間の使い方にも長けています。

プロ経営者がスポーツチームを率いたら

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記事は、MBA教育で有名なグロービスの学長が、プロバスケットボールチームの運営を行って一定の成果を得たという話です。


最近、プロの経営者が、スポーツチームの運営をして成果を上げる例をよく聞きます。プロ野球のDeNAしかり、サッカーのVファーレンしかり。

やはり経営の理論や知見は応用が効くようです。むしろスポーツチームは環境変数が限定されるので、結果を出しやすいきらいがあるのかも知れません。

経営の5つの原則とは


記事は、著者なりに簡潔にまとめています。

プロスポーツチームの運営は初めてだった著者ですが、自信があったようです。

これまでのビジネス経験をもとに考え抜いてたどり着いた「5つの原則」に従えば、今回もうまくいくと確信していた

ということです。

その5つの原則とは

1.可能性を信じ、志をたてる

2.人を巻き込み、組織を作る

3.勝ち続ける戦略を構築し、実行する

4.変化に適応し、自ら変革し続ける

5.トップの器を大きくし続ける

だと規定されています。

実践アドバイスを求める方には物足りないかも知れませんが、MBA教育会社の代表らしく、経営の根本部分をまとめています。

これ、私なりの言葉に言い換えると

1.ビジョン

2.組織

3.戦略

4.現場重視

5.トップの力量

ということになり、いいところをついています。私の場合、財務的裏付け、業務プロセスの整備を足して、7つにしたいところですが。

志、ビジョン、目標を重視しない会社には期待できない


ここでさすがMBA会社の学長だなーと思うのが、真っ先に「志」を持ってきているところです。

どんな組織を作るにせよ、戦略を立てるにせよ、会社全体の志、ビジョン、目標といったものを明確にしていないと空中分解してしまいます。あるいは進路が曲がりくねってしまいます。

これはトップの力量に帰結するのかも知れませんが、志、ビジョン、目標といったものを軽視する会社に期待はできません。断言しておきます。

私はこの件に関しては何度も煮え湯をのまされています。どんな素晴らしい戦略も組織も、志という芯がなければ、立ちゆきません。

特にスポーツチームは現場対応が必要とされる組織なので、現場が偉い、現場がすべて、となりがちです。そうなると、チームとしてのパワーを発揮しにくくなるわけです。

いっけん抽象的にみえる志、ビジョン、目標といったものを大切にしてください。


記事を読めば、「組織づくり」と「戦略実施」の両輪で、チームを強化していったことがわかります。

これも、会社の業績を上げるための王道です。

要するに当たり前のことを丁寧にきっちりやることで成果を出したというお話であり、妙な秘策を編み出したということではありませんな。

そういう意味でも、信用できる記事だと思います。









 

トヨタが「強者の戦略」をやめてしまった?

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自動車業界の状況がよくわかる記事です。

なぜ一強時代に!? ホンダと日産がトヨタに敵わなくなった理由。ということですが、答えを言ってしまうと、トヨタも日産もホンダも日本市場を見ていません。今や売上の80%以上が海外であり、日本で消耗する必要はないというのが各社の姿勢のようです。

トヨタが得意とした「強者の戦略」


かつてトヨタは、日本市場におけるトップ企業として、ていねいに「強者の戦略」を実施していました。

すなわち

 2010年までのトヨタは「自社商品よりも好調に売れる他メーカーのライバル車」を許さなかった。

 日産 エルグランドが好調に売れてトヨタがグランビアで太刀打ちできないと、2002年に渾身のアルファードに切り換えてエルグランドを打ち負かした。

 2000年に背の低いワゴン風ミニバンのホンダ ストリームが登場して好調に売れると、2003年にボディサイズがほぼ同じウィッシュを発売して、販売合戦に勝利した。

 2001年に燃料タンクを前席の下に搭載して広い室内を備えたコンパクトミニバンのモビリオが登場すると、2003年に薄型燃料タンクで同様に車内を広げたライバル車のシエンタを投入。この勝負も最終的にシエンタが勝ち、モビリオはフリードに発展した。

 という具合です。

もはや強者ではないトヨタのアイデンティティ


ところが、いまはトヨタも日本のトップだと安穏としていられる立場ではありません。電気自動車や自動運転車の登場により、企業のポジションが大きく変わることが予測されます。

特に自動運転車が中心になってくると、メーカーよりも配車システム会社の方が事業の優先権を握るようになると考えられています。

メーカーの雄であるトヨタも「5年後、10年後は会社がなくなっているかも知れない」と危機感を抱いています。

日産やホンダも同じですね。産業構造の変化とともに、淘汰される恐れもあれば、逆にトップに躍り出る可能性だってあります。

下位企業としては、こういう時こそチャンスだと思わなければなりません。

そこで各下位メーカーは、独自の戦略をもって、地域を選択したり、異業種企業と提携したりしながら逆転の目を虎視眈々と狙っています。

そんなわけで、トヨタも日産もホンダも、これまでのように、日本市場で丹念に攻防戦を繰り広げるという状況ではないということですな。

販売店は生き残らなければならないので必死


メーカーがイマイチやる気の出ない状況の中、販売店はそうはいきません。日本以外に行き場のない販売店からすれば、縮小する市場においても、必死にやらざるを得ません。

衰退市場では、トップ企業の寡占化が進むというのが常識ですから、トヨタの販売店が力をつけて、一人勝ち状況を作っているというのが、現状です。

なんだか、メーカー各社がやる気ないのに、販売店が必死だからトヨタがひとり勝ちしているって、皮肉な話ですね。

日本市場を捨てるのは正しいのか?

もっとも記事では、販売店の圧力があるので、トヨタは手を抜けない。とあります。

本当だろうか?

「強者の戦略」を捨てた時点で、トヨタは、日本市場を見捨てたのだと私には思えますがね。

それにしてもトヨタのこの姿勢は、仕方ないと片づけていいのだろうか。

確かに2割しかない市場で、ガラパゴス的な開発投資をするわけにはいかんというのはわかります。

ただそうはいっても2割あるのだから、そこで圧倒的に勝つことは重要です。

これからは圧倒的に強い地域を作って、そこを守るという戦略も試していかなければならないのでは。


一方の販売店とすれば、商品をまともに開発してくれないのではたまりません。

生き残っていくためには、いつまでもトヨタに頼るわけにはいかんでしょう。

トヨタの販売店とはいいますが、資本関係はないところは、他社製品を販売するのも考えていかなければなりませんよ。

もしかすると近い将来、トヨタの販売店が、トヨタ車以外を販売するようになるかも知れませんね。







昭和電工の「ニッチトップ戦略」

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昭和電工社長のインタビューです。後半の記事が有料になっていて読めないのが残念です(><)


営業利益17%の高収益企業


昭和電工は、1939年に設立された老舗化学素材メーカーです。化学品だけではなく、石油、アルミなど多様な事業を行っています。

2018年12月期の業績予想(連結)は売上高9850億円、営業利益1700億円で、売上高は前期比約26%増、営業利益は前期の約2.2倍と大幅に伸びる見込み

というから絶好調です。

それにしても営業利益17%とは尋常ではありません。化学素材メーカーってそんなに儲かるのでしょうか?

と思って調べると

東ソー 15.9%
DIC 7.2%
長瀬産業 3.1%
エア・ウォーター 5.6%
宇部興産 7.2%
大陽日酸 9.3%

(いずれも直近の決算から)

ということで、皆さんいいですね。

しかしそれでも昭和電工の17%というのは突出しています。(昭和電工の前期は、10.0%)

この好業績を導き出したのが、同社社長の考え方にある、というのがこの記事です。

ニッチトップ事業を積み上げる戦略


昭和電工は、「個性派事業」の展開を戦略の中心としています。これは、

営業利益率10%以上、営業利益数十億円以上、市況の影響を受けにくいという3条件を満たさなければならない

とされています。

そんな都合のいい事業はあるのか?と思われそうですが、同社社長の考えは明確です。

 営業利益率10%以上と市況に左右されない事業構造という2つが意味するところは、トップシェアということなんです。裏を返せば、トップシェアをとれないと、その2つの条件を満たせません。
 昔は、企業は競争しながらも、みんな仲良く利益を出せましたが、今はそうはいきません。あらゆる産業で寡占化が起きています。寡占化しないと、もうからないためで、企業はどんどん大きくなろうとしています。トップシェアをとらなければ駄目なんです。

いわゆる「ニッチトップ戦略」というものです。圧倒的に勝てる事業を複数積み上げて、業績を維持するという方法は、好調が伝えられる三菱電機も採用している戦略でしたね。

選択と集中に失敗した三菱電機がとった戦略

これは、成長よりも生き残ることを主眼とした戦略です。老舗の中堅企業らしいしたたかな生き方だといえます。

「勝てる局面で圧倒的に勝つ」ランチェスター戦略の思想


この方法論はランチェスター戦略の基本的な考え方でもあります。

ランチェスター戦略の最も基本的な思想は、「勝てる局面を見つけて、圧倒的に勝つ」というものです。

たとえ小さな市場であっても圧倒的に強い市場は、ライバルからの攻勢にさらされることがありません。(攻撃を受けても撃退しやすい)

そんなトップ市場を複数積み上げると、昭和電工や三菱電機のような事業の形となります。

まさに生き残るために何をすればいいのかを明確に実践している企業だといえますね。


実際のところ、ベンチャー以外で、グローバルな成長産業に軸足を置き、大勝を狙う企業は限られてきています。

だからソフトバンクとか、トヨタとかは貴重な存在ですよ。

多くの企業は、現実的に生き残ることを目指して、戦略展開しています。

ランチェスター戦略の需要がますます高まりそうですね。





ランチェスター戦略が示す3つのマジックナンバー

ランチェスター戦略 マジックナンバー
(2018年10月4日メルマガより)

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拙著「『廃業寸前』が世界トップ企業になった奇跡の物語」を読まれた方から「ランチェスター戦略のことがあまり書かれていませんね」と言われることがあります。

確かに、ストーリー重視の本なので、ランチェスター戦略の理論を改めて解説することはしていません。

しかし、実際には、あの本の中には同戦略のエッセンスが多く詰め込まれています。

もともとサーモスが市場シェアをアップさせていくための方法論には、ランチェスター戦略の考え方が採り入れられていますから、詰め込まれているのは当然ですが。


射程距離理論とは


たとえば、この本の164P〜165P。

射程距離理論

主人公が担当している得意先を、ライバル会社との売上高シェアの差で、色分けする場面があります。

この場面などは、ランチェスター戦略専門講座「流通戦略編」で学ぶ内容なのですが、そこまでいかなくても入門セミナーでお伝えする「射程距離理論」をマスターすれば応用できるものです。

射程距離理論とは、2社間の単純競争においては、3倍の差が開くと、力関係の均衡がとれなくなる。というものです。

前回のメルマガでお伝えした「市場シェア理論」を展開することで得られる考え方です。


(ちょっと前回の復習)市場シェア目標値において、73.9%を上限目標値と呼びます。この目標値を超えると、完全独占状態となり、市場に1社しかいない状態と同じになってしまうのです。

2位の企業がいくら頑張って、残りの26.1%のシェアを得たとしても、トップが完全独占状態であれば、それは無いに等しい実績です。トップはますます強くなり、早晩、消滅させられてしまうでしょう。

ということは、73.9%対26.1%≒3対1とみなして、いくら下位企業が頑張っても、上位に3倍の差をつけられてしまえば、逆転の目はなくなる、と考えることができます。


拙著の中では、主人公の上司が、主人公の受け持つ担当先を、純粋に売上高とシェアの差のみによって、色分けしていきます。

主人公の担当先の中で、サーモスの位置はすべて2位か3位です。どの担当先でも頭の上には、ライバル会社がいる状態です。

が、同じ2位3位でもよく観察すれば、その色合いが違います。

2位に3倍以上引き離されており逆転可能性のない3位もあれば、トップから3倍引き離されていないトップを狙える2位もあります。

当時のサーモスのように限られた営業人員しかいない状況で、上位企業と同じようにすべてまんべんなく回っていたら、薄まった営業活動しかできません。

そこで、どの担当先に力を入れるのか、メリハリをつけるために、3倍の差がついているかいないか、という数値に着目したのです。

この「3」という数字が、今回お伝えしたいマジックナンバーです。


マジックナンバー「3」


3という数字は、本当によく使うので、覚えておいてください。

小さな会社がやみくもに販売攻勢ばかりかけていても、消耗戦になって疲弊してしまうことはお分かりになっていただけると思います。

だから、ランチェスター戦略を知る企業は、地域や顧客を細かく観察し、ライバル企業が手薄なところに着目します。

手薄なところとは何か?ひとつの事例がサーモスにおける逆転可能なシェアの差しかない得意先や地域などです。

その手薄なところを見つけると、一気に勝ちにいかなければなりません。

どうするのかというと、ライバル企業の3倍の戦力を投入するのです。

ここでも「3」です。

ライバル会社が担当者1人体制なら、3人体制にする。毎週1回訪問なら、毎週3回訪問にする。企画書提出の回数を3倍にする。販促費を3倍投入する。などなど。。

ともかく3はマジックナンバーですから、その数字にこだわって、集中してください。必ず勝つことができます。

しかも、一度、その局地なり、顧客なりを3倍のシェア差にしてしまえば、今度は相手にとって逆転困難となっています。

コツは、相手に作戦を悟られないうちに、スピードをもってやってしまうことです。相手が気づいて、同じ戦力をかけてくると、また消耗戦になり厄介ですから。


生き残るためには「自社でも勝てる局面」を探す


小さな企業が売上をあげていくためには、このような工夫が必要になることは言うまでもありません。

確かに、青色LEDのようなノーベル賞級の商品を開発することができれば、小さな企業でも大企業に勝てるかも知れません。

しかし、本当に画期的な商品やサービスを開発できることなど稀です。万に一つといったところでしょう。

間違えないでほしいですが、サーモスは商品がよかったからトップ企業になれたわけではありません。

むしろライバル会社とそれほど変わり映えのない商品を販売しながらトップに立っていったのです。

その裏側には、現場営業が「自社でも勝てる局面」を探して、コツコツと勝ちを積み上げてきた経緯があります。

拙著では、それを描こうとしました。

どんな強大な企業でも、必ず手薄な局面(地域、顧客、時間帯など)はあります。

その局面を探し出し、3倍の戦力を集中させることができれば、勝ち目が見えてきます。

商品やサービスの開発に過剰に期待するよりも、こちらの方が現実的です。

逆にいうと「自社でも勝てる局面」を探すことができなければ、ずるずると負けていくだけです。

この3倍の戦力差を実現することができる局面を見つけられるかどうかが、生き残りの分水嶺になるということです。


強者は二乗の法則が適用される場面で戦う


ランチェスター戦略には、弱者の戦略と強者の戦略があります。

今まで書いたことは、弱者の立場からのお話しでした。

弱者(市場シェアが低い側)は、数的に劣るので、様々な工夫をしなければ生き残ることができません。

局地に狙いを定めるのは、そこだと一騎打ちの状態になって、数的劣勢を跳ね返すことができるからです。

逆に、強者(市場シェアが大きい側)の立場からすると、一騎打ちの状態に持ち込まれたくありません。せっかくの数的優位が使えないともったいない。

そこで強者は、局地ではなく、なるべく広い範囲で市場をみようとします。

ライバル会社がひしめいている状態のことを「確率戦の市場」といいます。1対1ではなく、バトルロイヤルのような戦場です。


確率戦の市場においては、ランチェスターの第二法則が適用されます。別名「二乗の法則」といわれるもので、数的パワーが二乗に増幅される、という数的優位のある企業にとって、この上ない有利な法則です。

これを応用します。

自社がライバル会社に対して、市場シェアで優位に立っている(強者である)場合、どれだけ差をつければ安全圏(逆転困難)となるのか。

先ほどは3倍の差がつくと逆転困難になる。と言いましたが、あれは特定の顧客内や局地という条件のもとでの話でした。

確率戦の市場においては、二乗の法則が適用されるので√3=1.73倍の差をつけるだけで安全圏だとみなされます。

この「1.73」が、もう一つのマジックナンバーです。


マジックナンバー「1.73」


3倍と1.73倍では、大きな差があります。

上位企業からすれば、1.73倍の差をつけるだけで逆転困難になるのだから、ハードルが低いと思えるかも知れません。

上位企業は、下位企業に対して1.73倍の差をつけていることに着目し、逆に下位企業は、1.73倍の差をつけられないように努力します。

それでも1.73倍の差をつけられたら、その時は、撤退を真剣に考えなければなりません。逆転困難なのだから仕方ありません。

実際、企業がその分野からの撤退を発表するとき、その根拠が、1.73倍の差をつけられたからだという例が見られます。


1.73倍は、売上高シェア以外にも応用できます。

たとえば、営業人員を増強する際、ある地域に何名配置すればライバルに勝てるのか、をこの数値を元に勘案します。

答えはもちろん、いちばんのライバルと思える会社に対して、1.73倍の差をつけて配置する、です。

ここで2倍も3倍もする必要はないことに気を付けてください。確率戦の市場においては、1.73倍で勝てるのです。経費を無駄に使うことを避けることができます。

その他、営業所の設置、流通拠点の配置、広告宣伝に関する露出度、チラシの配布枚数など、さまざまに応用できます。

皆さまのビジネスにおいて、どのように応用できるか考えてみてください。


マジックナンバー「41.7」


さてもう一つのマジックナンバーは、前回、既にお伝えしたものです。

前回、「市場シェア目標値」の中で、最も重要な数値は、安定目標値といわれる41.7%だとお伝えしました。

やはりランチェスター戦略を学ぶ上で「41.7」%という数字は忘れないようにしてください。

とはいいながら、忘れそうなら、42%でも構いません。40%でも結構です。誤差の範囲です。

ともかく、この41.7%という数値は、多くの企業にとって最終的な目標となります。すべての企業がゴールとすべき数値です。

この41.7%という数値は、バーナード・クープマンの「ランチェスター戦略モデル式」から導き出されたものですが、この数値の有効性に関しては、様々な研究があるので、探してみてください。

しかし実証を待つまでもなく、多くの企業が「シェア40%を超えるとダントツに強くなる」と言っています。

ダントツに強くなるというのは、販売実績だけの話ではありません。顧客からの知名度、信頼度が絶大となり、ビジネスに有利な状況に変化します。

だから、41.7%を超えたトップ企業は、市場拡大局面においても、市場縮小局面においても、絶対的な力を発揮します。

景気がよくても、悪くても、どちらでも強いので、まさに盤石です。一度トップに立った企業がちょっとやそっとでは落ちないのは、数値的な根拠があることなのです。


ランチェスター戦略には、弱者の戦略と強者の戦略があると申し上げましたが、企業はその局面によって、それぞれを使いわけなければなりません。

上位ライバルに対しては、「3」の戦略を使って、攻略の工夫をします。

下位ライバルに対しては「1.73」の戦略を使って、寄せ付けないようにします。

そして最終的には「41.7」%かつ、下位企業に「1.73」倍の差をつけるダントツのトップ企業になる。

文学界がプロレス化していくのはなぜか?

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上の記事は、文学界の内情を題材にした映画(原作は漫画)をネタに、文学界の現状について書いたものです。

漫画や映画のネタになるのだから、文学界も捨てたものじゃありませんな。と言いたいところですが、今や、世の中のあらゆる事象や業界がネタになっていますね。珍しいことではないか。

売れそうな作家を推したい文芸誌各社


さて文学には、各文芸誌が主催する新人賞というものが存在し、そのゲートを潜り抜けた実力のある人が作家としてデビューする仕組みです。

新人賞の審査員には、実績のある作家がなることが多く、その審査が真っ当なものであることを担保しています。

ところが実際には新人賞を経ずにデビューする人も多くいます。

いわゆる持ち込み企画組や、文芸誌側の招聘組などです。

持ち込み企画組はともかくとして、文芸誌側が招聘するのは、芸能人やタレントなど、すでにファンを持っている有名人です。そのような人が書いた小説は、ある程度売れることが見込まれるからです。

だから、そこそこ文章が書ける有名人が、文芸誌で小説デビューする例が相次いでいます。

しかも有名人が書いた小説が、権威ある文学賞をとれば「売れる」ことを、芥川賞を受賞した又吉直樹の「火花」が実証しました。

いや「売れた」というレベルではありません。年間トップの売れ行きを示したとのことですから、凄まじい。爆売れですよ。

だから各文芸誌は、金鉱脈を掘り当てようと、こぞって有名人を小説家デビューさせようとしており、この流れは、今後も続くものを思われます。

いまのところ芥川賞や直木賞が、文芸誌側の思惑を忖度して、安易に芸能人作家に受賞させる、ということはないようです。それをすれば、文学の権威そのものが失墜してしまいますからね。

ただ、売れそうな作家を推しまくる文芸誌各社の動きは、いくぶん滑稽に思えてきますな。

文学の権威は、市場性とリンクしていない


もっとも、文芸誌各社がプロレス的な動きをしなければならない背景にあるのは、文芸誌や文芸書が売れないという現実です。

芥川賞を受賞した作家でも、受賞作以外はなかなか売れないので、そのうち単行本を出させてもらえなくなり、廃業せざるを得ないという事情がいっぱいあるらしい。

つまり、従来の文学界の権威から認められた作家に市場性はないという事実です。作家を生み出してきた文学賞というゲートが、時代遅れになり、機能不全に陥っているといわれても仕方ありません。

ところが、文学そのものはいまだ権威と認められているのだから厄介です。社会的にみて、芥川賞作家といえば、それなりに認められる存在ですが、残念ながらいまやその権威は、市場性とは乖離しています。

市場から求められていないのに、権威として認められるというのは、どういうことか。誰も知らないのに、なんだか偉い人だと思われてる。って、美術室に置いてあった謎の石膏像みたいなものですよ。

文芸というジャンルは、伝統芸能化していく


文芸誌が低迷しているのは、それが一般の人には面白くないと認識されているからです。芸能人が書いた小説も、珍しいうちはまだいいものの、そのうち飽きられます。

面白い。少なくとも面白くなる可能性を見いだせないと、若い才能が集まってきませんし、売上低迷していれば収入にもなりません。面白くない。収入が伸びない。才能が集まらない。面白くならない。という悪循環ですよ。

これはもう、文芸というジャンルは、伝統芸能への道を進んでいるのだと私には思えます。面白さがわかる一部のコアなファンに支えられながら、実際には補助金がなければ存続できないジャンルになっていくのでしょう。

物語そのものは廃れない


文学界も「本屋大賞」など権威に頼らない賞を作ったり、ネット小説経由の売れる作家を発掘したりして、ジャンルの再興を図っています。

こうした動きは評価できると思いますし、文学界を救う人材が現れるとすれば、こうした従来の権威から離れたところからでしょうね。

「物語」そのものは廃れるものではありません。活字か、音声か、実写か、アニメかはわかりませんが、物語は繰り返し消費されていきます。

だから物語を紡ぐ機能を持つ小説というジャンルも、必要とされるはずです。

混沌の中から、驚くような才能が現れることを願っております。





ランチェスター戦略の中で、いちばん使えるところを教えます。

ランチェスター戦略の中で


(2018年9月20日メルマガより)


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私がはじめてランチェスター戦略に触れたのは、サーモスの営業をやっていた時代ですから、およそ20年以上前です。

思えば長いつきあいになりましたねー

当初は、低迷する売上を何とか回復する方法はないだろうか。と藁をもすがる思いで入門書を読んだものです。

その威力を充分に知ってからは、いかに活用していくかに頭と身体を使いました。

苦しいこともありましたが、それはそれで楽しかったですね。いい思い出です。

(苦しくもあり、楽しかった思い出 ↓ )


その後、独立してコンサルタントになってからは、ランチェスター戦略を本格的に勉強し、専門家になりました。

NPOランチェスター協会認定インストラクター、NPOランチェスター協会理事、NPOランチェスター協会関西支部長になったのは、独立してからすぐの頃です。

それから入門セミナーは、それこそ数限りなくやってきました。

応用セミナーもやってきました。

公開セミナーを自ら主宰することもありますし、企業様に呼ばれて社内セミナー、社内研修という形で実施することも多いです。

これは今でもですね。

ランチェスター戦略は古い?


独立当初の頃ですが、たまに言われたのが「ランチェスター戦略なんて古いんじゃないか?」という批判というか、誹謗です。

なにしろランチェスター戦略の成立じたいが古い。

田岡信夫先生が、この戦略を体系化し発表したのが、1962年です。56年前ですよ。

その後、ランチェスター戦略が日本を席巻したのが、1973年のオイルショック以降です。それから45年経ちます。

私が独立した15年ほど前には、第一次ランチェスター戦略ブームを覚えいる方がおられたわけですな。

そういう方の中には、ランチェスター戦略を「昔、流行った戦略」と捉えられている方もおられました。

ただ、15年経って、そういう方も少なくなりました。

今は逆に新鮮に捉えられることが多いですね。

なにしろ、ソフトバンクの孫正義氏、HISの澤田秀雄氏ら大物経営者が、盛大に「ランチェスター戦略は役に立つ!」と言ってくれていますからね。

(ちなみに日本電産の永守重信氏も、販売に対する考え方は、ランチェスター戦略そのものです)

むしろ新しい事業者、起業家、経営者の方々からは、古くから続く経営の原理原則だと捉えられるようになりました。

われわれにとっても、実に住みよい日本になったものですよ(^^)


ランチェスター戦略は本当に役に立ちます


専門家の私が言うのも手前味噌ですが、ランチェスター戦略は、本当に役に立ちます。

私には、サーモスでの成功体験もありますし、その後のコンサルでの実績もあります。

すべての企業、すべての経営環境で、絶対に役に立つ。とはまでは言いません。どういうケースがあるかわかりませんので。

しかし、経験上、たいていの企業、たいていの経営環境で、有効に活用できる、ということは言えます。

それだけ汎用性が高い。ということです。

が、汎用性が高い、ということは、抽象性が高いということでもあります。

2500年前の兵法書「孫子」がそうであるように、古びない戦略や原則は、高い抽象性を持っているものです。だから使えるわけですが。

その分だけ、実際に活用する際には、工夫が必要になるかも知れません。それこそ、自社の経営環境に鑑みて、どのように応用すればいいのかを考えてもらわなければなりません。

入門書を読んで自分なりに工夫できるセンスのいい方もおられますが、私なぞは入門書を読んだだけではさっぱりわかりませんでした。

何かわからないが凄そうだなあ。という程度の感想しかありませんでした。

藁をもすがるほどの切羽詰まった状況でなければ、そのまま捨て置いたことでしょう。

が、いかんせん、その当時の私(サーモスじたい)は追い詰められていたので、見様見真似で使ってみたわけです。

だから「ランチェスター戦略ってすげー」と思いはじめたのは、2年も3年も経ってからでした。

いかにも遅い(><)まあ、私などそんなもんでした。


いかに活用するかが大切です


だからこそ今の私のような専門家の意義があるというものです。

コンサルの場合、一緒になって会社の経営環境に応じた活用方法を考えることができます。

が、そうでない場合でも、応用できるような工夫を凝らします。

一日研修の場合では、時間をとって、応用のための演習を行います。自社のことに置き換えて考えていただくので直接的に活用方法をイメージしていただきます。

2時間の入門セミナーでは、応用演習を行う時間がとれません。だから、戦略のエッセンスを伝えながら、企業事例をなるべく多く紹介して、応用の方法を考えやすいようにしています。

どうにかして、この戦略をマスターしていただきたい。と常に思いながら、セミナーや研修に取り組んでおりますので、何卒、ご協力をお願いいたします。


「市場シェア目標値」


さて今回は、ランチェスター戦略の中でも、最も使うことが多いところをご紹介したいと思います。

もちろんセミナー内でも説明しますが、セミナーでは流れの中で紹介するので、ともすると、最も使うところだという部分が抜けてしまうかも知れません。

ですから、入門セミナーに来られる予定の方は、ぜひ今からご紹介する部分に着目していただきたいと思います。


私が実際の営業やコンサルティングにおいて最も使うのは、「市場シェア目標値」という概念です。

セミナー内では、一枚の表としてご紹介しますので、注目してください。

※参考「市場シェア目標値」

73.9%…独占的条件シェア(上限目標値)1社独占状態。

41.7%…相対的安定シェア(安定目標値)首位独走の条件。

26.1%…差別的優位シェア(下限目標値)トップ企業の最低条件。これ以下は、トップとは認めない。

19.3%…並列的上位シェア(上位目標値)上位グループに入ることができる。

10.9%…市場的影響シェア(影響目標値)市場に影響を与える。ここから競争状態に。

6.8%…競合的存在シェア(存在目標値)競合から存在を認められる。

2.8%…市場橋頭保シェア(拠点目標値)これ以下は存在しないと同義。橋頭保となりえる。

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市場シェアはしようと思えば測定できます


ランチェスター戦略は「市場シェアの科学」と言われることがあるぐらい市場シェアを重視しています。

市場シェアとは、ある特定の市場内において、どれだけのシェア(占拠率)を持っているかを示したものです。

例えば、100億円規模の市場で10億円の売上高を持っていれば、市場シェアは10%です。

お客様が100人いる場所で、20人が自社のサービスだけを受けてくれているとすれば、市場シェアは20%です。

売上高でみる場合もありますし、顧客数でみる場合もあります。生産量でみる場合もあります。測定できる部分で市場をみてください。

「市場シェアなんてわからないよー」という会社が多いかも知れません。

が、その場合、たいていは、市場シェアを知ろうとする努力をしてこなかっただけです。

市場シェアは調べようとすれば調べることができます。


分からない、という場合でも諦めないでください。日本全体とか、近畿一円とか、大きな範囲でわからなければ、市場を小さく絞ってください。

市とか町とか半径500メートルとか。あるいは、特定の年齢層とか職業とか。あるいは特定のお店とか、工場とか。条件を組み合わせて絞っていくと、必ず見えてきます。

たとえば「心斎橋商店街の中にあるドラッグストア内シェア」などと条件を絞れば、把握できるはずです。

測定できる部分で結構ですから、把握することが、戦略の第一歩となります。


目標値は、営業行動につなげるためにある


何のために市場シェアを把握するのかというと、その後の行動目標につなげるためです。

たとえば、目薬の会社が心斎橋の商店街のドラッグストアを回って、目薬全体における自社のシェアを把握したとします。

自社のシェアが15%だった場合、その会社はどうするのか?

この場合、19.3%を目指します。

なぜなら、15%のシェアを持つということは、10.9%の市場的影響シェアをクリアしており、19.3%の並列的上位シェアに届いていないからです。

この並列的上位シェアとは、弱者の中の強者といわれるシェアで、どんぐりの背比べから脱して頭一つ抜け出すことができるシェアです。

この目薬会社は、目薬を何個並べることができれば19.3%に達するのかを計算できるはずです。

だとすれば営業は、どの店に何個置いてもらう、という行動目標を立てることができます。


サーモス時代の営業方法


私がサーモス時代にやった営業がまさにこれでした。

自分の営業エリアを細かく分けて、エリアごとに市場規模と自社シェアを把握します。正確にわからなければ、類推でも結構です。全く分からないよりもずいぶんマシです。

その上で、どの店にどれだけ商品を導入すればシェア目標値に達するかを計算します。

あとは、その行動目標に従って営業するのみです。

こうした数値的根拠に基づく営業は、全く何もなしで動いている営業に比べて、天地の差がつくことになります。

なにしろこちらは、攻める店、守る店を決めています。攻める店には週何回訪問すると規定した上で動きます。提案にも意図があります。すべては目標シェアに結びつく行動をとっています。

どころが何も考えていないと、すべての店にまんべんなく、という営業になってしまいます。これでは、現状を維持するのが関の山です。

サーモスが急激に市場シェアを上げて、世界トップへの道を突き進んでいったのは、実は、営業が根拠のある行動をとり続けたことが大きいのです。


41.7%は、すべての企業の目標値


市場シェア目標値の中で最も重要な数値は、41.7%(相対的安定シェア)です。

これは、首位独走するための条件シェアだといわれています。実際に、40%以上のシェアを持つ企業は、その業界のダントツトップ企業であることが殆どです。

41.7%のシェアを持つと一安心して結構です。つまり、これがゴールであるということです。

全ての企業は、41.7%のシェアを得るために毎日の営業に努めるのです。

それを知っていれば、どこまで頑張ればよいのか、あるいはどこで次のターゲットに変えるのかを適切にすることができます。

実践的な経営の知恵として、覚えておいていただきたいと思います。


今回は、なにげに重要なことを書いたつもりです。

多くの企業人からランチェスター戦略が認められているのは、「市場目標値」があるからだと言っても過言ではありません。

多くの企業が経験上、市場シェア40%を超えればトップとして盤石になることを実感として知っているからでしょう。

であれば、その根拠となる数値を目指して、段階的な営業目標を立てて行動する企業は、強いはずです。

これからランチェスター戦略を学ぶ方は、ぜひとも「市場目標値」の重要性に着目してください。

アマゾンが起業支援に乗り出す

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アマゾンが、今度は起業支援に乗り出すそうです。

ラストワンマイルの小規模宅配業者を支援


記事によると、アマゾンの配送を担う事業の起業者を支援するとのことです。

アマゾンといえば物流こそがネット通販の勝負どころと考え、莫大な投資をしてきましたが、弱点となっていたのが、最後のところ、物流の中継所から各家庭に届ける最後の数百メートルです。

ここを外部の宅配業者に頼ってきたわけですが、近年、安くこき使われた宅配業者側が待遇の改善を求めて、アマゾンとの取引を見直しする傾向にありました。

かといって自社でローカルな宅配事業を始めるのもコスト的に無理があります。世界中ですから。

その課題を解決する策として見出したのが、宅配を担う事業者を自ら支援して生み出そうという方法のようです。


アマゾン側は起業者に対して、

・一定量の業務
・業務に必要なテクノロジー
・業務に関する研修
・業務に必要となるアマゾンのサービス・資産の利用料の割引
・業務用のリース車両、保険加入

を提供するとしています。

一定の仕事量も確保できるし、仕事のノウハウも教えてくれるし、使用するための設備も安くしてくれるし。と至れり尽くせりの感があります。

特にアメリカでは、退役軍人に仕事を作るという社会的課題の解決も兼ねているようです。

零細事業者を活用するノウハウが事業を加速する


ただアマゾンのことなので、うのみにできない怖さもありますね。

アマゾンからの仕事がなければ成り立たない事業となるので、言いなりになってしまいます。

コンビニのフランチャイジーのように、忙しいだけで全く儲からない、という状態にならないという保証はありません。

あるいは起業者が多くなりすぎて、仕事が足りないという事態になるかも知れません。


しかし、この事業が成功する方が、アマゾンにとってはメリットがあります。

アマゾンの支援を受けた成功者が世の中にあふれるようになると、アマゾンに起業希望者が集まってくるようになります。

そうなると、アマゾンにとって、事業展開のスピードや選択肢が大いに広がることになります。

次にアマゾンが手掛ける事業において、零細事業者の力を活用できるノウハウがあれば、リスク軽減にもなるし、零細事業者を顧客にすることもできるからです。

ということで、今回のアマゾンの試みは、一石二鳥三鳥を狙える施策であると思います。

小さな収入源をてこにした囲い込み政策も


今回の募集事業は利益3000万円MAXだということですが、そこまで大掛かりでなくても、副業程度に、月2〜3万円程度稼ぐアルバイトを作ることができれば、さらに強力です。

アマゾンの決済システムを利用することを義務づけてアルバイト契約をすれば、収入、支出ともにアマゾンを通すことになります。

これは強力は囲い込みです。

いまいちネット通販に馴染まない人も、収入になると思えば、取り組むかも。

日本のスマホ決済普及の鍵は、案外、こういうところにあるのかも知れません。






なぜ薩摩藩に有能な人材が輩出されたのか

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メモ。上の記事は、薩摩藩が討幕を果たせた理由を、人材の量、質、および産業の分野から考察したものです。「西郷どん」にちなんでの記事でしょうが、参考になります。

その中で、着目したのは、人材の質の部分です。


討幕の主役になったのだから、維新前、維新後、活躍が目立った人材も多かったでしょう。(逆にいうと旧幕府側は、活躍の場を与えられず、埋もれた人材も多かったでしょうね)

だから薩摩にばかり人材が豊富だったという意見にはうなづけない部分もあります。

が、それでも、記事にある薩摩藩独特の人材育成システムについては、興味があります。

郷中教育というシステム


記事によると、薩摩には郷中(ごじゅう)教育というシステムがあったそうです。

鹿児島城下における家臣の居住地域は家格によって区分され、それぞれの町で「郷中」と呼ばれる少年たちのグループがつくられた。「稚児(ちご)」と呼ばれる6〜15歳ぐらいまでの少年たちが集まり、「二才(にせ)」という15〜24歳の年長武士が教える。郷中教育には“教師”が存在せず、先輩が後輩を教育しているのだ。

どんなことを教えるか、誰から学ぶかは子供たちの自由で、決まった学び場もない。子供たちは早朝に好きな先生の家を訪ね、儒学や書道などを学んでいる。さらに川遊びや相撲、武芸などにも励み、身体を鍛える。学んだ後は子供たちだけで集まり、車座(くるまざ)になって、その日学んだことをひとりずつ口頭で発表する。これによって知識が共有され、話す本人も口頭で伝えることで復習になる。

藩校ではテキスト重視の教育が行われるが、郷中教育では会話が重視される。ときには熱い議論になることもあるが、こうした口伝えの教育が実践的な力につながり、テキストだけでは身につかない決断力や実行力、判断力が身につくのだ。

郷中で一緒に過ごす時間が長いので、同じ郷中で育った者の絆は深くなっていく。その一方で、年長者に従う意識も強くなる。その結果、目上の者の命令には異議を唱えることなく黙って従うという独特の気風も生まれた。

つまり、(1)年長者が、年少者を教える。(2)テキストはない。自由。口伝え。(3)その日学んだことを発表させる。という方式です。

現場における教育の理想的な形


まさに現場における教育の理想的な形ではないですか。

現場の人間が教えるので、時と場所を選びません。教師役を探してくることもありません。内容は、現場に近いことが題材になるはずです。少なくとも身の丈に応じた教育内容になるでしょう。

口伝えなので、どの言葉を選べば正確に理解できるのかを考えなければならず、当然ながら、教える内容についてより深く理解できるようになります。相手の反応や表情を読んで、言葉を選びなおすこともあるでしょう。それも含めて対応力や判断力が身につきます。

フィードバックが組み込まれているので、仲間同士で学びが共有しやすいという点も優れています。

さらにいうと、教える側、教えられる側の絆が深まります。

先輩が教えられないような高度な内容は、別途、教授しなければなりませんが、この教育システムがあると、一定の水準までは高めることができます。


思い起こせば、サーモスにいた時代も、これに近いような感じで営業のことを学んでいきました。

小さな組織だったので、教えたり、教えられたりが活発でした。気づいたことを披露しあったり、勉強したことを皆に伝えたり、そういうことが自由にできた雰囲気がありました。

できない者、失敗した者に対して「おまえレベルの営業が発言するな」とか「こいつバカだから情報を渡すな」とか言いだす腐ったミカンみたいな先輩がいなかったのも幸運でした。

現場の風通しのよさが、現場全体のレベルを上げていたことを今さらながら思い出しました。

ちなみに、私の研修でも…


手前味噌ですが、私の研修でも、これに似たシステムを採り入れています。

一日研修などの場合、ずっと講義だけ聞いていたら、消化不良になって、何も残りません。

だから、区切りのいところで、グループに分かれて、内容をどう理解したのかを、お互いが披露しあう時間を作っています。

疑問なども、グループ内で話し合って解消いただきます。それでもわからないことは、私に戻していただいて、共有します。

理解を深め、内容を身に着けていただくための工夫ですが、このやり方を採り入れてから、満足度が非常に上がりました。

薩摩藩の郷中教育を意識してこの方式を採り入れたわけではありませんがメモしておきます。






収益構造をアップデートしなければじり貧になる

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メモ。日経新聞の調査です。

この10年で、収益構造を変えた企業(稼ぎ頭となる事業の交代があった企業)が、100社のうち21社。

 稼ぎ頭が交代した企業と、していない企業を比較すると、収益の伸びに明確な差があった。交代した21社の17年度の営業利益の合計は07年度に比べ38%増だった。交代していない79社の21%増を大きく上回る。

ということです。

10年経てば、顧客も変化するのは当然だが…


10年も経てば、社会情勢が変わるのだから、顧客も入れ替わります。だから主力事業も変わるのが当然じゃないか。と簡単に言うことはできません。

10年というと長いようですが、実際には1年1年の積み重ねです。ゆっくりと変化は起きてきます。

現在の主力事業に熱心に取り組むことが王道ですから、なかなか新規事業開発、新規顧客開拓に力を割くことができないまま時間は経ちます。

10年でこれだけの差が出るとしたら、20年、30年では、どうなるのでしょうか。

動きが鈍い大企業でも2割が収益構造を変えているのですから中小企業はさらに動かなければなりません。

しかし実際には、10年、20年経っても、顧客リストの更新さえしない企業が多いのですが。







ワークマンがカジュアル店をオープン

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作業着大手のワークマンがついにカジュアル店を出すようです。(東京・立川)

その仕掛け人という土屋常務のインタビュー記事が上です。


ワークマンがユニクロに挑む


ワークマンといえば、作業着専門店の中で、ダントツのガリバー企業です。

作業着業界の中で鍛えられた機能性の実現と、ローコスト店舗運営ノウハウを武器に、ユニクロに競争を挑もうとしています。

アパレル業界の中では、ユニクロに対抗できる企業は見当たりませんが、境界近くからやってくる競争相手は、手強いことが多い。

出自が違うので、異なるDNAを持っています。

ワークマンの場合、職人が現場で使う商品なので、品質・機能性が高い。ユニクロを凌駕するといってもいいでしょう。品質・機能に特化することで、多くのアパレル店を置き去りにしたユニクロの一番の武器を無力化してしまう可能性を持っています。

こうした競争は、消費者としては大歓迎ですね。

ワークマンについては以前、メルマガに書かせていただきました。

ワークマンは第二のユニクロになれるのか?

その際、現在の店舗でカジュアル衣料を展開するのは無理があるので、実験店を出すべきと書きましたが、ワークマン側は既に準備していたのですね。

業界内強者ゆえの後追い戦略


このインタビュー記事が何かと味わい深い。

ワークマンが、カジュアルウェアのPB(プライベートブランド)を始めたのが、2017年3月期です。

作業着を普段着として着る。というスタイルが一部の人たちによって行われていることを知ってのことでしょう。

その流れをワークマンが主導したのかと言えば、そうではないようです。

いや、うちは常に後追いだ(笑)。業界ではワークマンは地味なデザインばかりと言われていた。寅壱さんなんかが、けっこう派手なデザインを業界に仕掛けて、この流れをリードしてきた。

つまり価格で対抗できない小さな作業着専門店が、派手なデザイン作業着を作って差別化を図ってきた歴史があるわけです。

弱者は差別化をしなければ生きていけませんが、業界トップの強者企業は後追いすることが生きる道です。

圧倒的な販売力を誇るワークマンが、業界の潮流を捉えて、ミートする(真似する)ことは、戦略として理にかなった方法です。

しかも今回の場合、縮小する業界でつぶし合いするのではなく、他業界に進出していこうという流れですから、業界全体として大いに期待することでしょう。


カジュアルウェアにしてはダサい


ワークマンの強みが、作業着業界で鍛えられた機能と品質の高さだとすれば、弱みはデザインのダサさです。作業着なんだから仕方ない。

PBスタート前に社員にワークマンの製品を(1)かっこいい作業服(2)許せる作業服(3)ダサい作業服の3つに分類させたところ、かっこいい作業服に分類できるものがほとんどないことに愕然とした(笑)。

「今は2割がかっこいいに分類される」なんて言っていますが、本当だろうか。主観ですが、かっこいいと思える商品は一つもありませんよ。

しかし、それは実験店での経験を経て改善していこうという腹積もりでしょう。

ユニクロは、どうミートするか?


ただユニクロが黙っているとは思えません。

扱っている商品が違うので、すみ分けられると思う。

と言っていますが、ユニクロはそうは思わないでしょう。ここを危機に思わないと企業姿勢を疑われます。いや、既に買収提案などしているかも知れませんね。

「作業着×カジュアルウェア」というコンセプトは魅力的です。世界で戦える可能性があります。

その意味でも、ユニクロ側とすれば、ワークマンの高い機能性や品質を、自社に取り込みたいところです。

ワークマンが無理だとしても、その他の作業着SPA(製造小売店)を買収し、ノウハウを吸収することはできるでしょう。

この業界、これから動きがあるかもしれませんね。





ボクシング 井上尚弥にあって、山中慎介になかったもの

ボクシング


 
(2018年9月6日メルマガより)

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2018年7月28日。伊藤雅雪というボクサーが、日本人として37年ぶりの快挙を成し遂げました。

ディズニーランドに近いアメリカフロリダ州の会場において開催されたWBOスーパーフェザー級王座決定戦で、同級1位のクリストファー・ディアス(プエルトリコ)を圧倒し、判定勝ちを収めました。

日本人がアメリカで世界タイトルを獲得するのは、三原正(スーパーウェルター級)以来37年ぶりだということです。



伊藤は、天性の運動能力に恵まれた上、高いボクシング技術を身に着けた正統派のボクサーです。

この試合の前はWBOランキング2位。

内山高志や三浦隆司が活躍した日本人にとってなじみ深いスーパーフェザー級において、後に続く存在として期待されていました。

ボクシングビジネスの本場アメリカにおいて、タイトルマッチに挑戦できるというだけで大変なことなのに、1回のチャンスをものにするとは、見事というほかありません。


もっとも、今回の伊藤が、アンダードッグ(咬ませ犬:主役に自信をつけさせるための負け役)だったことは、本人も自覚している通りです。

ビジネスにシビアなアメリカで、無名の日本人選手が主役を張れるわけはありません。

主役はあくまで相手側です。プエルトルコ系住民の人気をあてこんだマッチメイクだったはずです。

伊藤が選ばれたのは、ランキング2位だったということだけではなく「そこそこ強いが、ディアスが負けるほどの相手ではない」と思われていたからでしょう。

防御テクニックに優れた伊藤ですが、攻撃に思い切りがないともいわれており、どちらかというと与しやすい相手だったはずです。

ところが今回の伊藤、人が変わったように好戦的なスタイルを貫き、面食らった相手側は調子の出ないまま試合が終わってしまった感があります。

が、どういう事情があろうと、一世一代の大舞台で実力以上のものを出せた伊藤の快挙が薄れるものではありません。

伊藤選手の今後いっそうの活躍を願っております。

海外で活躍する日本人ボクサーが増えている


それにしても最近、世界で活躍する日本人ボクサーが増えてきました。

以前、このメルマガで、ボクシングの話題をとりあげさせていただきましたが、その中で、日本人ボクサーの課題は世界で戦えていないことだとお伝えしました。



ところが、いまは事情がすっかり変わりました。

2017年8月には、亀海喜寛がWBOスーパーウェルター級王座を賭けてアメリカカリフォルニア州で元4階級制覇のミゲール・コットと戦いました。(判定負け)

2017年12月には、本場ラスベガスにおいて、IBFスーパーフェザー級王座決定戦が開かれ、尾川堅一が判定勝ちを収めました。(一時は36年ぶりの快挙だと騒がれたのですが、尾川に禁止薬物反応が出たために無効試合になりました)

今年になり、村田諒太、井上尚弥など実力派チャンピオンの海外進出が話題になっています。

元3階級王者の井岡一翔も、今月9日、海外でのビッグイベントで復帰戦が計画されています。(比嘉大吾も減量失敗さえなければ、同じイベントでアメリカ進出を果たしていたでしょうに…)

また最近になって、海外大手プロモート会社のトップランク社が、スーパーライト級の岡田博喜と3年契約を結んだことがニュースになりました。

内山高志や山中慎介といった強いチャンピオンが、海外でのビッグマッチを望んでも叶えられなかった頃とは隔世の感があります。

いったいどうなってしまったのでしょうか。


世界チャンピオンというだけでは認められない


日本に世界チャンピオンが大勢いるのに、思うようにビッグマッチが組めない。というのは、粗製濫造でチャンピオンの地位が下がったことに遠因があります。

かつて各階級に一人だった世界チャンピオンは、認定団体が4つに増えた現在、単純に4倍に増えてしまいました。

さらに言えば、暫定王者、正規王者、スーパー王者と、同じ認定団体でも各階級チャンピオンが3人も存在する異常事態が発生し、インフレが止まりません。

タイトルマッチを冠してイベントに箔をつけたいテレビ局やプロモーター側の意向によるものとはいえ、それによってチャンピオンの地位が下がってしまったのだから、情けない限りです。

かつては世界チャンピオンといえば、世界で最も強い者だと誰もが認めていましたが、今はそう思われていません。

世界チャンピオンが4人もいるのだから、比較的弱い人もいます。

時に、強いチャンピオンが階級変更などでベルトを返上した穴をねらって、王座決定戦でチャンピオンになる人もいます。

中には、強いチャンピオンにお金を渡して無理に階級変更させたんじゃないかと勘繰りたくなるような例もありますからね。

そんなだから、観客も、チャンピオンが必ずしも1番ではないことを知っています。

1番じゃないチャンピオンの試合を観るぐらいなら、無冠でも1番強いボクサーの試合を観たいものですよ。


ボクシングは一人勝ちビジネス


ボクシングは個人競技ですから、特定の個人にビジネスの恩恵が集中しがちです。

強いボクサー、キャラの立ったボクサー、誰もが試合を観たいと思うボクサーに人気が集まります。

逆に、チャンピオンだけど大した特徴のないボクサー、あるいは実力はあるけれども安全運転ばかりで試合が面白くないボクサーには人気が集まりません。

特にいまはPPV(ペイ・パー・ビュー:テレビ中継で試合ごとにお金を払う仕組み)があるのでボクサーの人気が一目でわかります。

端的にいうと人気のあるボクサーは青天井に稼げるし、人気のないボクサーにはチャンスも与えられません。

1試合で数百億円も稼ぐ無冠のボクサーがいるかと思えば、バイトをやめられないローカルチャンピオンがいるのはそのためです。

ボクシングは危険な競技ですから、そう何試合もできるわけではありません。できれば短期間で稼いで引退したいのが人情です。

だからボクサーは誰と試合をするか、というキャリアマネジメントに敏感です。

人気のない相手と試合をして生命を削るよりは、人気者とビッグマッチをして効率的に稼ぎたいと多くのボクサーは考えているはずです。

文字通り命を賭けて戦う競技ですから、その姿勢に文句をいうことはできません。

実力はあるが、世界的には無名だった内山高志や山中慎介にチャンスが与えられなかったのは、そういう背景があったのです。


有力選手を海外に出したくないテレビ局


日本の場合は、PPVという形式はまだ一般的ではありません。

地上波の各テレビ局は看板チャンピオンを抱えており、熱心に売り出します。年末のボクシング中継は定番コンテンツですし、ある程度の視聴率は稼げるからです。

そんな時、看板選手に海外進出でもされようものなら、テレビ放映権さえもらえない事態もあり得ます。(何しろ海外は権利関係がシビアですから)しかも負けてしまって王座陥落なんてことになれば、今まで熱心に売り出した費用が大損になります。

テレビ局側は内心、海外進出なんてしてほしくないと思っているのです。

チャンピオン側としても、1試合数千万円、年間1億円ほど稼げるようになると、これで充分か、と思ってしまうかも知れません。

チャンピオン本人はボクサーの本能として強い相手と戦いたいと思っても、まわりにいる人たちは、確実に稼げる方法をとろうとします。

井岡一翔が、不可解な引退の後、すぐに海外で復帰したのは、トレーナーである父親の「テレビ局の意向に沿って安全に稼いでいこう」という方針に嫌気がさしたからだと噂されていますが、これは井岡一翔の父親が特殊なわけではなく、多くのボクシング関係者がそう考えていたといった方がいいと思います。

だから、海外のボクシング関係者が、わざわざ日本人を連れてこなくてもいいやん。と思うと同時に、日本側もわざわざ海外に行かなくてもいいやという風潮があったということです。


海外で活躍する日本人ボクサーが増えた理由


ところがここ数年、急に風向きが変わってきました。

海外のボクシング関係者が、にわかに日本人選手に注目しはじめたのです。

その理由の1つは、やはり海外で活躍した日本人選手の評判が高いことがあげられます。

西岡利晃(元WBC世界スーパーバンタム級王者)、高山勝成(元WBC、WBA、IBF、WBO世界ミニマム級王者)、石田順裕(元WBA世界スーパーウェルター級暫定王者)、三浦隆司(元WBC世界スーパーフェザー級王者)、亀田和毅(元WBO世界バンタム級王者)といった日本人ボクサーたちは総じてまじめで勤勉、体重管理もしっかりこなした後、試合に臨みます。

そんなのボクサーとして当たり前やろ。体重管理は最低限の約束事やないか。と思われるでしょうが、海外の選手はわりといい加減で、特に近年は意図的な減量失敗が相次いでいます。

上にも書きましたが、ボクシングというビジネスは人気商売です。まじめでも負けたら人気は落ちてしまう。それなら、体重超過してでも勝ってやろうと考える輩が頻出しているのです。

たとえば、現代最高のボクサーの一人だといわれるワシル・ロマチェンコという人がいます。(ウクライナ出身。元WBOフェザー級王者、元WBOスーパーフェザー級王者、現WBA世界ライト級スーパー王者)オリンピックで2大会連続金メダルという偉業を成し遂げたのち、鳴り物入りでプロ転向。わずか2戦目で、世界タイトルマッチに挑戦しました。

その時のチャンピオンがメキシコのオルランド・サリドです。まともにやっては勝てないと思ったのか、サリドはこの時、王座剥奪を覚悟のうえで、意図的に体重超過をして試合に臨みました。

体格的なアドバンテージを得たサリドは、頭突き、ローブロー、腕がらみ、組みつきといった実にいやらしいダーティなテクニックを駆使して、ロマチェンコを煙に巻きました。

サリド自身も王座を失ったのですが、これで彼の価値が下がったのかといえばそうではありません。むしろダーティな技術を使ってでもロマチェンコを退けた男として、名をあげました。

逆に、勝ち目がないと思ったら、あっさりギブアップしてしまうのも、海外の選手に多くみられます。

上のロマチェンコはその後、技術をさらに磨き、異次元と思えるほどの強さを発揮するようになりました。

だからロマチェンコと試合をする多くのボクサーが、途中でやる気をなくして、棄権してしまいます。これを俗にロマチェンコ勝ちというそうです。

勝てるとなれば汚い手を使ってでも勝ちにいく。勝ち目がないと思えば、余分なダメージを負う前に試合放棄してしまう。

確かに、ボクシングを個人のビジネスとして考えるなら、合理的な行動です。

しかし、これでは、観ている方は、面白くない。やるなら正々堂々と最後までスリリングな試合を展開してほしい。

その点、日本人選手は、国民性なのか、ズルして勝つことを良しとせず、最後まで諦めない精神をもっています。

海外の選手がちゃっかりすればするほど、日本人選手の価値が上がるというものです。


アメリカ側がボクシング選手を買い漁っている


理由の2つ目は、海外のメディアがボクシング放送を増やす傾向にあり、選手不足にあるという事情です。

これまでアメリカのボクシング中継といえばケーブルテレビ局が担っていました。

ところが今は、ネット配信の時代です。スポーツ中継の世界にもネット配信業者が参入してきており、競争が激化しています。

そうなると人気スポーツは放送権料が高騰してしまいます。

アメリカで人気のアメフト、バスケットボール、メジャーリーグベースボール、サッカー、ゴルフ、テニスなどは、そうたやすく放映できる値段ではなくなってしまいました。

特にアメフトは、自分たちでネット配信してやろうと思っているふしがあるので強気です。相当の金額を積まないと放送もできません。

そこで、放送権料が比較的安価なボクシングに脚光が当たってきたのです。

何しろ、ボクシングは、一般的にはまだそこまで人気のスポーツではないものの、一部の熱狂的なファンが存在します。

このボクシングというコンテンツを盛り上げて、人気番組にしていけば、テレビ局もボクシング業界も潤います。

そこで今までボクシングに興味のなかったスポーツ放送局や、ネット配信メディアなどが、次々とボクシング中継に乗り出してきたのです。

テレビ局は人気選手を抱え込もうとしますから、勢い、選手が足りなくなります。

そこで、真面目で勤勉、どのような時でも試合を投げ出したりしない日本人選手にも、海外メディアが触手を伸ばし始めたというわけです。

海外大手プロモート会社のトップランク社が、世界チャンピオンでもない岡田博喜と3年契約を結んだのは、海外勢による日本人の青田買いが始まったことを示しています。


僻地のボクサーでも見つけられてしまう時代


理由の3つ目は、ネットによる情報の拡散です。

以前は、日本のローカル王者の試合が、海外ファンに知られることはまずありませんでした。

しかし今は、ユーチューブがあります。

たとえ地球の果ての試合でも簡単に観ることができる環境になっています。

そんな中、海外メディアから大きな期待を寄せられているのが、日本ボクシング史上の最高傑作とまで言われる井上尚弥です。(WBA世界バンタム級正規王者)

高校生の時、スパーリングで日本ランカーを滅多打ちにしたモンスターぶりは一部のボクシング関係者にこそ知られていましたが、一般的ではありませんでした。

ところが、井上がプロ入りし、勝ち進むようになると、海外の選手が対戦を拒否するようになりました。

試合動画を観た海外の選手が「こんなやつと戦ったら潰される」と思うようになったのです。

井上がプロ入りする時の条件として挙げたのが「アンダードッグとは試合しない」というものでした。とにかく強いやつと試合させてほしい。と望んだのです。

ところが意に反して、井上陣営は対戦相手選びに苦慮するようになります。

そりゃそうですよ。こんなモンスターと試合して選手生命を潰されたら、一生の大損です。

海外の名のあるチャンピオンも、井上と戦う際には、無茶苦茶なファイトマネーを要求するそうです。

井上側はそれをすべて飲んだ上で対戦要求するのですが、それでもドタキャンされる例が相次いでいるといいます。

モンスターという称号のわりに、有名選手との試合が少ないのは、知名度に比べて実力があり過ぎるからなのです。

今のところ世界で認められた対戦相手は、アルゼンチンのオマール・ナルバエスと、イギリスのジェームズ・マクドネルだけです。

ナルバエスは当時スーパーフライ級11度防衛中の絶対王者でした。だからライトフライ級から2階級もあげてきた井上を軽く見たのかも知れません。果たして、2ラウンドで4度のダウンを奪われてKOされるという惨劇を味わうことになりました。

マクドネルは、亀田和毅を2度も破った実力者です。井上側に法外なファイトマネーをふっかけ、それを丸のみされて試合をすることになりました。減量の失敗も伝えられていましたが、計量時、失礼な態度をとったことが井上の怒りを買い、試合が始まると、滅多打ちされて、わずか112秒でKOされる羽目となりました。

こんな試合をしていたら、それは対戦相手がいなくなりますよ。

ところがユーチューブも悪いばかりではありません。井上の圧倒的な試合ぶりを観た海外ファンが騒ぎ始めまたのです。

「日本には恐ろしく強いモンスターがいるらしい」

評判を聞きつけた海外メディアがこれを放っておくことはありません。

折しも、ファイトマネーの安い軽量級の試合を多く放送したいという海外メディアの意向もあり、井上に対する期待が非常に大きなものになってきたのです。


WBSS(ワールド・ボクシング・スーパー・シリーズ)


そしてこのたびWBSS(ワールド・ボクシング・スーパー・シリーズ)がバンタム級で開催されることになりました。

WBSSとは、各階級のチャンピオンクラスを一同に会して、トーナメント形式で最も強いボクサーを決めようという壮大なシリーズです。

人気選手を囲い込んで離さないアメリカのテレビ局や大手プロモーターのビジネス手法に対抗し、欧州系のプロモーターやネットメディアが中心になって、主にスター選手がいない階級での開催を目論んでいます。

第一期は、クルーザー級とスーパーミドル級で、賞金総額55億円というビッグイベントとして開催されました。

そして第二期は、スーパーライト級とバンタム級で開催されます。

バンタム級の優勝賞金は約4億円といわれています。もともとファイトマネーに恵まれない軽量級のボクサーにとっては、夢のような報酬です。

だからなのか、バンタム級のトーナメントには、各団体の王者が4人も参加するという豪華な陣容となりました。

もちろん、そこには井上も参加しています。いや、このイベントそのものが、井上の出場を前提に企画されたものだと言っても過言ではないでしょう。当然ながら優勝候補筆頭と目されています。


井上尚弥の強すぎるゆえの悩み


WBSSの開催を受けて最も安堵しているのは井上陣営の大橋ジム会長でしょうね。

何せ、井上が試合するとなれば、強いやつから順番にオファーして交渉するということを繰り返してきました。

それでも決まらない。のらりくらりかわされて、挙句の果てにドタキャンです。だってみんな井上とはやりたくないのだから仕方ありません。

結果として試合を受けてくれるのは、普通ならタイトルマッチに挑戦できないような実力のない相手です。

強い相手と戦いたいという井上の要望を充分に知りながら、叶えてやれないのはもどかしい思いだったことでしょう。

が、トーナメントで対戦順が決まっていれば、さすがに逃げることはできません。

しかも、ここで圧倒的な実力差をみせて優勝すれば、名実ともに世界のモンスターと認知されます。

そうなると、世界のボクサーから最終的な目標にされる存在となります。

最後の稼ぎ時を避けるボクサーはさすがにいません。

初めて対戦相手に困らなくなることでしょう。

大橋会長の苦悩の日々も終わります。


最終目標まであと一歩の村田諒太

いっぽうミドル級のWBAチャンピオン村田諒太は、10月にラスベガスで防衛戦を行う予定です。

村田の場合、最終目標はミドル級の帝王ゲンナジー・ゴロフキン(カザフスタン)とのビッグマッチです。

幸いゴロフキン側も、村田との対戦に前向きであると伝えられています。

だから、村田側は、ゴロフキンと戦うまでは何がなんでも生き残りたいと考えていることでしょう。

対戦相手には慎重にならざるを得ません。あまり強い相手だと負けてしまう恐れがあるし、むっちゃ弱い相手だとヘタレ王者の烙印を押されてしまいます。

井上尚弥ほどの実力があれば余計な気を遣うことはないのでしょうが、村田の実力はそこまでではありませんからね。

次戦、ラスベガスのお披露目戦でいい試合をして、次のゴロフキン戦(東京ドームでの開催が噂されています)につなげてほしいと思います。


井上尚弥は持っていた


内山高志や山中慎介が望んでやまなかった海外のビッグネームとの試合。

それをいともあっさりと叶えてしまいそうな井上尚弥です。

それは、井上の実力が、先達に比べて並外れているというわけではなく、世界のボクシングビジネス全体が変化する流れに乗った結果だったとうことがわかっていただけたでしょうか。

いうなれば、井上尚弥は「運」も持っていたということです。


これからも日本人ボクサーの海外進出という流れは加速していくことと思います。

川淵三郎はなぜ他のスポーツ団体関係者のようにダークサイドに堕ちないのか?

川淵三郎


 
(2018年8月23日メルマガより)

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この夏の好ましくないトピックといえば、「アマスポーツ界における様々な不祥事」が記憶に新しいですね。

日大アメフト部による悪質タックル事件に始まる監督とコーチの強圧的な支配構造の露見は、世間に衝撃を与え、また多くの耳目を集めました。

さらには、日大そのものが、理事長による強圧的な支配により健全なガバナンスが行われているとは言い難いのではないかという報道もあり、この事件は尾を引いています。

しかし、その後に勃発した日本ボクシング連盟における不祥事の告発騒ぎは、日大アメフト部の事件を吹き飛ばしてしまった感があります。

なにしろ、当事者である日本ボクシング連盟の山根会長のキャラクターが強烈です。明石家さんまが「オモロさで負けた」と発言したぐらいですから。

確かに、あのキャラクターは、4、5年に一度、現れるか現れないかというぐらい特異なものでした。


ジャイアンとスネ夫の構図


なにしろ「わたしは、歴史に生きた、歴史の男です」と堂々と発言する人物です。

常識的な規範や客観的な自己認識から逸脱した存在であることがわかるというものです。

仲間には厚いのでしょうが、仲間ではないと思える相手には、躊躇なく攻撃する。威嚇し、怒鳴りつけ、無理を通そうとする。

もともとそういう性質を持っていたのでしょうが、この場合、加齢による要素も加わっています。

自分の言動がどのように波紋を広げ、人々に受け取られるのかを想像できなくなっているので、わがまま放題になっているようです。

ドラえもんでいうとジャイアンですな。歳とったジャイアンです。


だとすると、取り巻きの幹部連中は、スネ夫ですな。

一人のジャイアンと、複数のスネ夫がグループを作っている状態です。

この場合、ジャイアンは腹黒くありません。わがままで厄介な存在ではありますが、自分が悪いなんて微塵も思っていないでしょう。

腹黒いのはスネ夫です。たまに理不尽なことを言うジャイアンですが、機嫌さえとっておけば、嫌われ役をやってくれるので便利な存在だと思っていることでしょう。

炊きつければ、敵を躊躇なく踏みつぶしてくれます。

「やれやれ。ジャイアンには逆らえませんね」とでも言っておけば、自分に火の粉がかかることを避けられます。


問題があるのはボクシングだけではない


私はプロボクシングのファンですから、プロとアマボクシングの関係がうまくいっていないことは何となくは聞いていましたが、まさかアマ組織がこれほどひどいガバナンス(統治プロセス)だったとは、呆れるばかりです。

何やってんだ。と言いたくなりますが、その後の報道をみていると、どうやらひどいのはボクシングだけではないらしい。



いや、アマチュアだけではありません。

プロボクシングにおいても、日本ボクシングコミッションが、預かった健保金を不正に使用していた問題があったばかりです。


いったい日本のスポーツ組織はどうなってしまったのでしょうか。


再建請負人


そんな折、思い出すのが、川淵三郎という人です。

サッカーのプロリーグであるJリーグをチェアマンとして成功させた立役者であり、その後、バスケットボール協会の立て直しをやり遂げ、今や日本トップリーグ連携機構代表理事会長を務める人物です。

ちなみに日本トップリーグ連携機構とは、日本の団体球技リーグの運営強化を図る団体です。

アイスホッケー、アメフト、サッカー、ソフトボール、バスケットボール、バレーボール、ハンドボール、フィールドホッケー、フットサル、ラグビーユニオンが参加している日本の主要球技団体を束ねる機構です。

そこでも、川淵会長は、各団体のガバナンスの監視および立て直しに精力的に取り組んでいます。

なんだか物凄い偉い人になっていますよ。


御年81歳 川淵三郎という人


川淵三郎という人を見ていると、昭和の頑固おやじを思い起こさせます。

人となりとして、聞こえてくるのは、強引、剛腕、強権的、高圧的、独裁的。といったイメージです。

だから決していい評判ばかりではありません。

テレビで話しているのを聞いたことがありますが、その際も、キャスターからの意にそわない質問にいら立って、眉間に皺を寄せ、声を荒げておりました。

川淵氏自身は「自分が嫌われることで注目が集まる。だからわざとマスコミと対立する」なんて意味のことを仰っていますが、嘘だと思います。

あれは、本気で癇癪を爆発させているように見えました。

思った通りに事を進めようとし、うまくいかないと苛立って声を荒げる。。

という姿勢は、ボクシング連盟の山根会長と一緒じゃないか。と思ってしまいます。


ただ川淵三郎氏には、ゆるぎない実績がありますし、今も、スポーツ団体のガバナンス整備に力を発揮しておられると聞きます。

川淵三郎と山根会長。。この昭和のおやじ二人の間にはどのような違いがあるというのでしょうか?


川淵氏の華麗なる経歴


興味を持ったので、少し調べてみました。

川淵三郎氏は、1936年(昭和11年)生まれ。大阪府高石市出身です。(当時は泉北郡高石町)

高校でサッカーを始めて、早稲田大学に進学。大学リーグで活躍します。

卒業後は古河電機工業に入社。同社のサッカー部に所属します。

1964年の東京オリンピックに選手として出場。

その後、引退。

古川電気工業では、名古屋支店金属営業部長まで務めたということですから、会社員としての役割もきちんとやられていたようです。

1991年に退社すると、1993年のJリーグ開幕に向けて初代チェアマンとして尽力します。

その後の活躍はよく知られるところです。

日本サッカー協会会長(キャプテン)を務めた後、東京都教育委員、首都大学東京理事長を歴任。

2015年には、バスケットボール協会改革に立ち上がり、見事、プロリーグの一本化を成し遂げ、その後の興隆の礎を築きます。

そして今や、日本トップリーグ連携機構会長として、各スポーツ団体のガバナンス健全化に睨みを効かせています。

こうした実績をみれば、ボクシング協会も、川淵氏に立て直しを依頼すればいいやんと思えてきます。


大企業で営業部長を経験


川淵氏の経歴で着目すべきは、古河電気工業で営業部長まで務めたことです。

この経歴こそが、まずは、スポーツ団体にありがちな「そのスポーツしかやってこなかった人が経営陣」という事態から一線を画すものです。

営業マネージャーは、営業テクニックを持っているだけで務まる仕事ではありません。

営業メンバーの掌握と、営業プロセス全体をマネジメントすることが不可欠です。

そのためにはマネジメントに関する深い知見と統率力、メンバーを引っ張るリーダーシップが必要です。

私は「営業を究めた者は何でもできる」と考えていますが、川淵氏の活躍はその好例であると考えます。


理念を確立する


川淵氏の著作やインタビューをみてみると、団体を再建するためにまず最初にやることは「理念を確立すること」だと明言しています。

これは、経営層に近いところでビジネスに取り組んだ者特有の発言です。

ここでいう理念を別の言葉で言い換えると「社会における存在価値」すなわち、なぜその団体がこの世の中に必要なのか?を言い表したものです。

この意味での理念なくしては、組織や団体は健全な形で維持できません。

個人でも同じです。ビジネスする者が「儲けたらええやん」と思っているとダークサイドに堕ちるしかなくなってしまいます。

例えば、この20年から30年、名だたる大企業が、派閥争いのあげくに、企業価値を著しく棄損させてきた事例をいくつもみてきました。

シャープしかり、東芝しかり、パナソニックやソニーでさえそうです。日本の家電企業が世界で通用しなくなった裏には、顧客価値を創ることを忘れて、自分たちの権益を守ろうとした経営陣の原始人のような争いがあったということですから、なんとも情けない。

理念を軽視し、忘れてしまった企業の末路は実にみじめなものです。


理念がなければ組織は維持できない


スケールは小さくなりますが、各スポーツ団体における不祥事の根本は、トップ層が自身の保身や権益を守ることを優先させて、団体の存在意義を忘れていたことにあると言えます。

そうならないために、川淵氏が理念の確立を最優先させることは、げに合理的なやり方であると思います。

例えば、日本バスケットボール協会(JBA)の場合

理念は「バスケットボールの普及・振興と強化を図り、もって人々の心身の健全なる発展に寄与する」

ビジョンは「バスケットボールを愛する誰もが、バスケットボールを楽しめる環境を作る
全ての人々に感動と希望を与え、皆が誇れる日本代表チームを作る」

となっています。

このシンプルな言葉をお題目と捉える団体に未来はありません。これがあるから、取り組むべきことの優先順位を決めることができますし、発生する諸問題に対して、どのように接すればいいのかが分かります。少なくとも、優先順位を決める際の議論の前提とすることができます。

もしこの理念がなければ、優先順位を決めるのは、トップの腹一つとなってしまって、議論の余地がなくなります。

いくら理不尽な決定といえども、判断基準がないのですから仕方ない。トップの顔色をうかがうのみです。

それが、ガバナンス不全に陥った団体の姿です。


トップダウンの改革


理念が決まった後、どうするのか。

川淵氏のやり方は、トップダウンで強引に改革を進めるというものです。

判断基準があるのだから間違うことはないという理屈ですが、実際には、あまりの強引さに不平不満が頻発します。

バスケットボール改革においても、不満を持つグループからのリークらしき川淵批判記事が週刊誌に掲載されたりしました。

それでも改革に多少の不平不満はつきものです。

ここを民主的にやろうとすれば「総論賛成、各論反対」状態になってしまって、全く進まないでしょう。

多くのアマチュアスポーツ団体の問題点がここにあります。

実はアマチュアスポーツ団体の理事の多くは、報酬を得ていない善意の人が多いようです。

無報酬でやっている善意の人なのだから、改革が必要だと感じていても、自分が矢面に立って嫌われ役をやろうと思う人は極めて少ないでしょう。

それよりは、なるべく喧嘩にならないように、穏便に、合議制で進めていく方が、ストレスが少ない。

民主的ではあるものの、課題解決されないままに時間を過ごすことになってしまいます。

それに比べて、川淵氏のやりようは性急で、不満を抱く者を顧みることがありません。目的にむかって一直線です。

バスケットボールの場合、内紛のあげく意見の違うプロリーグが二つ存在する事態になっていました。世界のバスケット連盟から、これを統合させなければ、オリンピック出場を認めないと宣言されるに至りました。

内紛の末に生み出された利害団体双方の言い分を全部くみ取ることなど不可能です。

そこで、川淵氏は自分で落とし所を決めて、それを推し進めました。

双方不満はあったでしょうが、結果としてリーグ統一を果たし、オリンピック出場資格を得たのだから、バスケットボール界全体では利益を得ることができました。

川淵氏自身は「私欲のない独裁だ」と言っていますが、まさに川淵氏の強制力がなければ、達成できなかった課題であったと言えます。


理論武装する


もう一つ、川淵氏は、強引に物事を進めるからには、正当性がなければならない。だから根拠となる理論を完璧にしておく。と発言しています。

これもビジネスマンの感覚です。

特に川淵氏は、「最後の独裁者」を公言する読売グループの総帥・渡辺恒雄氏と論争を繰り広げました。

これはJリーグ発足当時、地域密着球団の理念を推し進めようとした川淵氏のことを渡辺氏が「空疎な理念」と批判したことに端を発しています。

プロ野球球団を持つ渡辺氏からすれば、企業の支援を重視していないように映るJリーグの在り方に憤懣やるかたない思いがあったようです。

さすがの川淵氏にとっても、相手は超大物です。しかも渡辺氏、ああ見えて、幅広い教養の持ち主ですから、論争にも強い。

それでも川淵氏は怯みませんでした。ヨーロッパにあるような地域コミュニティを中心としたサッカーチームを作り、ひいては地域にサッカー文化を根付かせたいという理念に自信を持っていたからです。

相手の教養に負けないように猛勉強をしながら論争を挑んだ川淵氏は、結果的に渡辺氏の主張を退けます。

世間的にも、渡辺氏の意見の方に批判が集まるようになりました。

このことが、川淵氏の知見や教養をいっそう高めることになり、さらにいうと、世間的な格を上げることになったのです。


外部人材の登用


さらにいうと、バスケットボール団体の改革が、これほど早く進んだのは、外部からの人材を多くとりいれたことが大きいと思います。

現在、日本バスケットボール連盟会長は、バレーボール出身者の三屋裕子氏です。

副会長の大河正明氏は、サッカーJリーグ関係者でした。

またリーグ統一に向けて細かなことまで実際に決めていったのは、弁護士の境田正樹氏だったようです。

いずれも川淵氏のネットワークから連れてきた人材です。

バスケットボール関係者からすれば、外部人材に乗っ取られたような気になって心穏やかではいられなかったようですが、それも仕方ありません。

なぜなら、内部人材だけでは、利害関係が入り組んでいるので、ジャイアンとスネ夫のグループが復活するかも知れません。そうなるとまた内紛が起きてしまいます。

落下傘で降りてきたような人材配置は、組織を落ち着かせるのに役立ったようです。


川淵三郎がダークサイドに堕ちない理由


こうしてみると、川淵三郎氏と、不祥事を起こすスポーツ団体のトップの違いは明らかです。

(1)まず川淵氏には、営業マネージャーとしての経験があり、そのため、組織を動かすためには「理念」が最も重要であることを知っていた。

(2)理念に基づく「正当性」を自らの行動規範とした。だから独裁的な強制力を発揮するに躊躇がなかった。

(3)難敵に対するため正当性の根拠を「理論」で固めた。そのため社会的、客観的な支持を得た。

(4)利害関係やしがらみのない「外部人材」を登用し、組織を統治させた。


いかがでしょうか。

不祥事を起こす組織には「理念」「正当性」「理論」「外部人材」がないはずです。

ともすればただの独裁者になってしまいそうな川淵氏が、「私欲ない人」と認められ、実績を上げることができるのは、この4つを押さえたからだと考えます。

逆にいえば、規範や制度で自らを縛り、ダークサイドに堕ちないようにするのが、営業マネージャーを経験した人の知恵なのかも知れません。


もう一つ。川淵氏をみていて思うのは、権威や権益に対する未練を感じないことです。

一度、独裁者になれば降りることができない。と昔からいわれています。権力にしがみつくトップが多い中、川淵氏は、仕事さえ終わればすぐに辞めてしまいます。

ですからここも重要です。

(5)課題解決と同時にトップの座を降り「短期政権」で終わらせた。

誰もが相応しいと思っていた日本バスケットボール協会会長就任も固辞したようです。

その潔さもまた、川淵氏の信頼感、安心感につながっていると思います。


≪参考≫

独裁力 (幻冬舎新書)
川淵 三郎
幻冬舎
2016-09-30

黙ってられるか (新潮新書)
川淵 三郎
新潮社
2018-08-08


マクドナルドは、5000億円の限界売上高を超えるのか?

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日本マクドナルドの業績が絶好調だということです。

2014年に異物混入騒ぎを起こして信頼失墜し、2015年には約350億円の最終赤字を計上した同社ですが、その後順調に回復し、2017年期には約240億円の黒字になりました。

そして2018年期の中間決算でも大幅な増収増益が見込まれています。

店舗の再編により業績回復


マクドナルドといえば、商品のネーミングを募集したり、「マクドかマックか?」なんて東西対決をあおったり、あまりお金をかけないキャンペーンを打って、うまく集客してきた感があります。

が、あくまで本線となったのは、不採算店舗の閉鎖やリニューアルなどによる店舗収益の向上だとみています。

2015年期には2956店だったが、2017年期には2898店に縮小。それなのに、売上高は1895億円から2536億円に向上しています。

いかに生産性を向上させたかというものです。

原田泳幸前CEO時代にもたどった道


思えば原田泳幸前CEOの時代にも、就任してからしばらくは、店舗のリニューアルなどで収益性を向上させて、V字回復を演出させた時期がありました。

その勢いをかって、店舗数拡大にまい進しましたが、全店売上高5500億円あたりをピークに急速に収益力を衰えさせてしまいました。

原田泳幸前CEOは、6000億円を目標としていたようですが、どうもそのために結果を急ぎ過ぎてしまったのかも知れません。

あとをうけたカサノバCEOは、まずは肥大した店舗数のスリム化を図っていましたから、異物混入事件がなくても、一時的な業績の悪化とその後の校回復を見込んでいたはずです。その意味では、計画通りの結果になったということでしょう。

(フランチャイズ店を含めた2016年期の全店売上高は4580億円)

限界値を超えるための戦略はあるのか


日本マクドナルドは、2020年に全店売上高5000億円という目標を掲げていますが、果たして今度は収益性を伴ったまま売上拡大を果たすことができるのでしょうか。

市場の流れにあわせて店舗の再編をしていくことはこれからも必要でしょうが、それだけでは5000億円という限界値を超えることは難しいと思います。

思うにマクドナルドに対する日本人の意識を変えるような大きな戦略が必要です。

朝、昼、夜、と時間帯別に集客力向上を図る意図は素晴らしいと思いますが、それでどれだけのかさ上げが図れるというのでしょうか。

今後、マクドナルドがどのような手を打ってくるのか、注目しております。







プロフィール
komai 小

営業関連のコンサルティングをしています。
製造業や卸売業などの営業組織を強化する仕事を得意としております。

株式会社クリエート・バリュー代表取締役
NPOランチェスター協会理事
NPOランチェスター協会関西支部
NPOランチェスター協会認定インストラクター
中小企業診断士   販売士1級

コンサルタントになる前は、日本酸素株式会社魔法瓶事業部(現在のサーモス株式会社)で14年、営業担当をしておりました。
その時、廃業寸前の赤字だった事業部がわずかの期間で世界トップ企業になった経緯を体験したことが、経営コンサルタントになったきっかけとなりました。
当時、経験したことや見聞したことを物語風にアレンジしたのが、拙著『「廃業寸前」が世界トップ企業になった奇跡の物語』です。
面白い本なので、ぜひ読んでください(^^)

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