わたしは価値を創る

大阪在住の経営コンサルタントのブログです。

稲盛和夫が示した東洋人の経営

稲盛和夫 東洋人の経営


ここ最近、著名人の訃報が相次いでいます。

つい最近は、「燃える闘魂」アントニオ猪木氏。

英国では、エリザベス女王。

こういう人たちの訃報に接すると、時代の区切りが来たのだと感じてしまいます。

もう一人、経営の世界では、稲盛和夫氏が亡くなりました。8月24日です。


稲盛さんは、京セラの創業者であり、KDDIの前身である第二電電の創業者でもあります。

そして誰もが無理だろうと思っていた日本航空(JAL)に単身乗り込み、再建を成功させた立役者でもあります。

先月の「戦略勉強会」では、稲盛さんのことをとりあげたのですが、実績は充分すぎるほど充分なのに、思ったほど、知られていないのに驚きました。


従来の経営手法に当てはまらない


それは、私も以前から感じていたことでした。

以前、メルマガで、稲盛さんについて書いたことがあったのですが、資料の少なさに戸惑った記憶があります。


理由はいくつかあるでしょう。

その著書や言動が、スピリチャルな文脈のみで捉えられがちだったこともあるでしょう。

ご本人が熱心な民主党支持者だったことも、中央から距離を置く要因になったのかもしれません。

しかし、一番の理由は、稲盛氏の経営手法が、従来の経営理論では判定できないものだったからだと思います。

日本中が驚愕した日本航空の再建


日本航空の再建を、当時の政権党だった民主党・前原誠司氏から頼まれた際、多くの人たちが反対したそうです。

例えば、経営コンサルタントの大前研一氏も止めるように説得したと述懐しています。

当時の日本航空は、複数の労働組合がそれぞれの主義主張を言い、利害関係が複雑に絡み合っていたため、どんな優秀な経営者が経営改革を為そうにも、どこをどのように動かすのか、まるで歯が立たなかったといいます。

結局、日本航空はつぶすしかない。さすがの稲盛さんでもダメだったと言い訳するための生贄の役割を背負わされるだけになってしまうと友人知人の多くが心配したのだそうです。

ところが、稲盛さんは、自分自身と数人の腹心を連れただけで日本航空に乗り込み、3年足らずで再建を成し遂げました。

日本中が驚愕した奇跡の事例です。

この事例を分析した経営コンサルタントを悩ませたのが、稲盛さんのやったことが、従来の経営理論に当てはまらないことだったからです。

アメーバ経営とフィロソフィー


稲盛さんの経営手法は、大きく2つに集約されます。

ひとつが「アメーバ経営」といわれる経営管理手法。組織を小さな単位(アメーバ)に分けて、一時間単位で損益分析をし、個々人の成果と責任の所在を明確にするものです。

もう一つが「フィロソフィー」といわれる哲学や理念の重視です。これは、稲盛さんが生まれ育った鹿児島に綿々と伝わる儒教教育がベースになっていると思われ、嘘をつくな、人に迷惑をかけるな、欲張るな、など当たり前の道徳を守ることこそ経営の根本であると規定しています。

こんなことで経営がよくなるのか?と疑問に思う方もおられるでしょうが、現実によくなったのだから仕方ありません。

孔子は、人の上に立つ者が徳を持てば、組織は自ずからよい方向にまとまるという意味のことを言っていますが、稲盛さんの経営とは、まさに孔子が理想とするものだったのかもしれません。

東洋人なりの経営の在り方


「戦略勉強会」でとりあげたのですが、稲盛さんの著作が中国でベストセラーになっているそうです。


いまの中国は規制が厳しく経営者受難の時代ですが、少し前までは、なんでもやり放題の経営者天国だったようです。

そんな経営環境の中、欧米の最新の経営手法を駆使して、激烈な競争を勝ち抜いてきた中国のトップ経営者たちが、稲盛さんの思想に共鳴しているというのが面白い。

「手法」などで経営をしようとしても、どこかで行き詰る、ということをこの事例は示しているように私には思えます。

欧米の経営分析では測れない、東洋人なりの経営の在り方を稲盛さんは体現していたのではないでしょうか。

「倍速消費」は鉄板のビジネスチャンスだ

倍速消費

先月の「戦略勉強会」では「倍速消費」についてとり上げました。


倍速消費とは、過剰な効率化を象徴する言葉です。

例えば、いまYoutubeを倍速で見る人が増えています。若い世代ほど、倍速をするようです。

倍速にすれば、10分の動画を5分で見ることができます。20分の動画なら10分です。

そんなに急いでどうするんだーと言われそうですが、余った時間は、別の動画をみるために使います。要するに、コンテンツをなるべく多く消費したいという欲求が強いということです。

いま、多くの人々は、効率よく、短時間で、という欲求にとりつかれています。

それだけ効率よくしなければ、多すぎる情報を処理しきれないのが現代です。


映画や小説も倍速


Youtubeだけではなく、ネットフリックスも、倍速機能を装着しています。

映画やアニメを倍速で見る人が増えているらしい。

倍速だけならまだしも、10分程度にあらすじをまとめた「ファスト映画」の需要も根強いものがあります。

小説でも、あらすじサイトは乱立しています。

手っ取り早くあらすじだけ知って見た気、読んだ気になるなんておかしいだろと、映画好き、小説好きの人は考えるでしょうが、好きでもない、けど、情報としては知っておきたいという人にとっては有難いサービスなんでしょう。

映画や小説は、じっくり時間をかけて味わうものだという常識は、改めなければならないのかもしれません。


食事を倍速する「完全メシ」


食事だって同じです。食べることこそ人生の楽しみだという人には信じられないでしょうが、世の中には、栄養だけとれればよい、という人は一定数存在します。

そんな人のために、日清食品は「必要な栄養素をすべて取り込んだ」という触れ込みの「完全メシ」シリーズを上梓しています。

これさえ食べれば、栄養についてあれこれ思い悩む必要はない!というのは、楽ちんです。

私もこれを食べてみましたが、確かに、栄養素が足りているのか、満足感があり、変に間食したくなりません。

だからダイエットの時にはいいかもしれませんよ。

ただ、これは私見として一応言っておきますが、成分表示をみるとやたら添加物が多いので、完全に頼り切る気にはなりません。

私は、あくまで、時々食べる栄養補助食品として考えております。


倍速は有史以来の流れ


このように、現代は、時間短縮、効率化への欲求が大きくなっています。

これは何も、今に始まったことではありません。

産業革命以来、いや、有史以来、人間の歴史は、効率化への歴史でした。

新たな技術が生まれれば、それが効率化、時短に利用されるのは当然といえば当然です。

有史以来ということは、不可逆的なものです。戻りません。

ですから、ビジネスをする者は、安心して、効率化、時短に向かってください。

効率化、時短に関わるものは、鉄板のビジネスチャンスであると考えていいでしょう。


倍速の逆張りにもビジネスチャンスあり


何を隠そう私も倍速利用者です。Youtubeは、ほぼ倍速でしかみません。

ビジネス書も必要な部分だけをつまみ読みすることが多いので、一種の倍速です。

ただ私の場合、仕事で必要だから情報をとっているだけで、情報を収集することそのものに快感を得ているわけではありません。

映画や小説は倍速にはしません。

それは情報ではなく、楽しみだからでしょうね。

じっくりと趣味も楽しめないなんて、何の人生だ!と言っておきましょう。

要するに、私の場合、必要な情報の収集はなるべく効率化、時短を果たし、趣味の時間を確保したいと考えています。

実をいうと、現代は、手間をかけた精巧な工芸品、細密画、凝った料理などに対する関心や尊敬心も大きいものがあります。普段、時間がないからこそ、時間をかけたものへの畏敬の念が生まれるのでしょうね。

効率化、時短という大きな流れがあるからこそ、その逆もあり。

SNSを活用できなければビジネスできない日が来る

SNSを活用できなければ


先月の「戦略勉強会」のテーマは、D2C(ダイレクト・ツー・コンシューマ)でした。

マーケティングの4Pにおいて最も重要なものは、PLACE(販売チャネル)であるというのが私の持論ですが、そのPLACEが崩れてきています。

コロナ禍においてネット通販の規模が拡大しているのは周知のとおりですが、その傾向はコロナ前からです。コロナによって加速はしましたが、大きな流れは変わっていません。

百貨店からスーパーへ、スーパーからコンビニへ、と販売の主要PLACEは変遷してきましたが、その流れに沿って、店頭からネットへ移行しつつあるのが現在です。


カリスマインフルエンサーの影響力


アメリカや中国では、さらにネット通販が規模拡大しており、日本の先をいっています。

ネット通販がさらに進むと、アマゾンやバイドゥ、楽天などの仲介業者を経由するのではなく、生産者が直接、顧客に販売するようになります。

アメリカや中国では、特定のインフルエンサーがSNSなどで商品を販促し、直接、一般の人に販売しています。

そのためのツール(ネット上の買い物かごや決済システムなど)も整備されてきており、誰でも、ストレスなく、直接販売することが可能です。

アメリカでは、カリスマ・インフルエンサーが販売する高級化粧品の売上が拡大しており、老舗企業レブロン破綻の一因になったと分析されているほどです。

あの「レブロン」を破綻に追い込んだ3つの変化


SNSを活用できることが成功の条件


つまり、主要PLACE(販売チャネル)は、ネット通販業者を通じた販売から、SNSを活用した直接販売に移行するのが大きな流れです。

これから起業する個人事業者は、この流れを軽視してはなりません

既にPLACE(販売チャネル)を確保している既存事業者ならまだしも、これから事業を始める人は、D2Cに取り組まざるを得ません。

SNSを活用できなければ、D2Cの武器を持たないということになります。つまり、SNSを活用できなければ、事業展開が非常に難しくなるということです。


日本でも、個人が直接販売するためのツールは整備されており、費用も安いですし、簡単に使用することができます。

その気になりさえすれば、誰でも、D2Cに取り組めます。


D2Cの方法論を探る


もちろん、SNSを使用すれば誰でも影響力、発信力を得られるわけではありません。

何十万人、何百万人がSNSを使用していますが、影響力を持つのは、ほんのわずかの人たちです。

SNSをビジネスで活用したいと思えど、フォロワーが増えずに諦め気味という人が殆どです。

そりゃそうです。ほんのわずかの人しか活用できないから影響力になるわけです。

ただし、これも考えようです。巨大なビジネスを展開したい人は、それに相応しい影響力・発信力が必要でしょうが、小さなビジネスでいいならば、そこまでの影響力はいりません。

まずは市場選択を明確にするというビジネスの基本思想は、ここでも有効であると考えます。

さらにいえば、営業戦略の基本である「尖ったポジショニング」と「圧倒的な接触量」をSNSにおいても応用することです。

抽象的な文言が続くので、何を言っているのかわからないかもしれませんが、ご容赦ください。

敢えて抽象的に言っております。

今後、私自身がD2Cに取り組んでみて、そのプロセスを「戦略勉強会」やこのブログで報告したいと考えております。




格闘技界の勝負どころが変遷しつつある件

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先々月、6月19日の話になりますが、格闘技のビッグイベントが開催されました。

「THE MATCH 2022」と銘打たれた一大イベントで、場所は東京ドーム、最前列300万円の席が一瞬で売り切れたといわれています。

メインとなるカードは「那須川天心vs武尊」

当代の天才キックボクサー那須川天心と、K−1のカリスマファイター武尊によるキックボクシングマッチです。

所属団体が違うという大人の事情で相まみえることのなかった両者だけに、実際に闘えばどちらが強いのだろうと、格闘技ファンの注目を長らく集め続けてきました。

ここ数年、決まりそうだと思えば立ち消えになることを繰り返し、ファンや関係者をやきもきさせた末にようやく決まった試合です。

那須川天心は、ボクシングへの転向を発表しており、キックボクサーとしては最後の試合となります。結果がどうあれ一度きりの勝負です。これを世紀の一戦と言わずして何を言うのか。

果たして、期待に違わぬ名勝負で、長く語り継がれるだろう伝説級の試合となりました。

この試合だけではなく、その他の試合いずれも普段組まれることのない黄金カード揃いで、素晴らしいイベントだったと思います。



AbemaTVに追い風

この試合、直前になって、フジテレビが放映を中止するというトラブルがありました。コンプライアンス上の問題らしいですが、詳しい事情はわかりません。異例のことです。

そこで放送はインターネットTVであるAbemaTVのペイパービュー一択となりました。

その放送チケット5500円〜が、50万以上売れたそうです。単純計算で27億5千万円以上。

AbemaTVにとっては大変な追い風です。

なにしろAbemaTVは、開局以来大赤字が続いており、ヒットコンテンツの開発が急務となっていました。

運営会社サイバーエージェントの2021年9月期の当期純利益は415億円。ネット広告やゲーム事業が絶好調で儲かっています。

その中で、メディア事業の営業損失は、147億円に上ります。

今のところ、AbemaTVの損失を他の事業がカバーできる情勢ですが、いつまで続くかわかりません。

しかし逆にいうと、AbemaTVが黒字化すれば、サイバーエージェントは大変な利益を計上することになり、さらに強い会社になっていきます。

藤田晋社長が、大赤字のAbemaTVに注力するのは、巨大なオウンドメディアを持つことが、広告事業の優位性を担保すること以上に、大きな意味を持つと考えているからに他ならないでしょう。

あと10年も経てば、地上波テレビは軒並み力を失い、AbemaTVがその地位に取って代っているかもしれません。もしかすると、NHKに次ぐ発信力を持つメディアに育っていることだってあり得ます。

いまだ番組内容の試行錯誤を続けているAbemaTVですが、格闘技コンテンツの開発が、突破口になるかもしれないと思わせます。



ペイパービューの可能性


一方、格闘技側も、テレビの勢いがなくなってきている昨今、テレビ放映権料に代わる収入源を探していたところでした。

アメリカでも、スポーツ中継のペイパービュー(試合ごとに支払う)が広がっています。勝ち負けを知ってからでは興味が半減する勝負事の放送は、ライブ価値が高いからです。

地上波放送が強い日本では、ペイパービューは馴染まないと思われていました。が、この度のAbemaTVの成功により、可能性が見直されたのです。

今後、格闘技をはじめ、スポーツ関連業界は、ペイパービューを前提としたビジネスモデル構築に邁進していくことだと考えます。


選手のキャラクターとストーリーづくり


その際、重要になるのが、試合を盛り上げるための背景のストーリーづくりです。

わざわざ数千円払ってでも試合をみたいと思うのは、その試合の重要性を充分に認識しているからです。

あまり重要でない試合は、後日、ユーチューブなどにアップロードされた動画を観れば済む話ですから。

例えば、井上尚弥の試合を観たいと思うのは、井上が現時点で世界最高のボクサーであることを世界のボクシング関係者が認めていることを知っているからです。(今や、軽量級では、井上を除いて最強のボクサーは誰か?が議論となっています)

大谷翔平の試合を観たいと思うのは、大谷が成し遂げつつある二刀流というスタイルが、メジャーリーグの歴史を塗り替えるほどの稀有な例であり、アメリカ中で熱狂されていることを知っているからです。

こうした超一流の選手は、実力そのものがストーリー化しています。それはいい。

だが、そこまでの選手でないならば、キャラクターを立てることが重要になります。それがストーリーです。

これまで、そのストーリー作りを担ってきたのはテレビ制作会社でした。

批判もありましたが、ボクシングの亀田兄弟を売り出したTBSの方法は大いに効果を上げた事例です。

ただ、SNSによる情報発信が容易になった今日、スポーツ団体側や、選手個人が、自らのストーリーを作り上げ、発信していくことが可能となっています。これからは、個人が自らをプロデュースし、キャラクターを浸透させた選手がペイパービューの主役となっていくはずです。


名プロデューサー 朝倉未来


そのあたりが天才的にうまいのが、総合格闘家の朝倉未来選手です。

この方、実力は超一流というわけではありません。専門家からしばしば「まともな技術を習得せよ」と苦言を呈されています。

ただ早くからユーチューブチャンネルを立ち上げ、その抜群の企画力もあり264万人の登録者数を誇ります。

AbemaTVともコラボしており、素人参加の「朝倉未来に勝ったら1000万円」などの番組が話題になりました。

素人相手に喧嘩まがいのことをして格闘家といえるのか!という批判もありますが、本来の格闘家には思いつかないような企画の開発が、業界を盛り上げていることは事実です。

しかもこの方、プロデュース力に優れており、対戦相手の素人を再起用して、キャラクターを掘り起こし、ユーチューバーとして何人も独り立ちさせています。

最近では、町の不良を集めた格闘技イベント「Breaking Down」を立ち上げ、多くのキャラクターを発掘し、話題になっています。

今や、格闘技界も朝倉未来に依存するところも多く、レジェンド級の格闘家たちが、彼とのコラボを望んでいるといいます。

9月には、フロイド・メイウェザーとのエキシビジョンマッチの相手に選ばれたというから、まさに日本の格闘家の顔のような存在になっています。

キャラ立ての専門家が活躍する


そういえば、那須川天心選手も「これからの選手は、実力かキャラかを突出させなければならない」と発言していました。

天心選手はトップ・オブ・ザ・トップですが、その彼にして、そのような発言をするということは、格闘技界全体の問題意識となっているのでしょうね。

実際には、自分でキャラづくりし、SNSで発信できる人ばかりではありませんから、そこを支援するようなコンサルタントや個人プロデューサーのような人が現れるのでしょう。

そらそうですな。競技の実力向上を支援するコーチやトレーナーがいるのですから、キャラ立て部分に専門家がいても不思議ではありません。

むしろ、そういう人をうまく活用した選手が、生き残っていくのでしょう。有名キャラ立てコーチなんて人が活躍することにもなるのでしょう。

時代によって勝負どころが変遷していくのは当然ですからさもありなん。ビジネスの種は尽きませんね。



「戦略勉強会」に参加しませんか?

戦略勉強会


弊社は月1回、「戦略勉強会」なるものを開催しています。

もう18年以上は続いています。なにげに、ロングランですな。

これは、私が選んだ企業事例などをネタにして、ビジネスに関する様々なことについて話しあうという会です。

企業事例を深掘りすることもありますし、話題が逸れて全く別のことを話合う場合もあります。

私がランチェスター戦略に紐づけて事例を解説することもありますし、他の参加された方の知見や経験をお聞きすることもあります。

いずれにしろ、何等かの形で、自分たちのビジネスのヒントを得ようという趣旨で運営しています。

すぐに、自分のビジネスに活用できるような事例に会うこともありますが、そうでない時もあります。

ただ、自分に馴染みのない業界の事例であっても、何等かのヒントになるものです。

いやむしろ、全く知らなかった業界の事例の方が、後々、ヒントになったりするものです。


アナロジー思考


自分に似た業界の成功者の話を鵜呑みにして真似をするのは実は危険です。

勝手知ったる業界だけに、成功した事例の周辺の環境の違いを見落としていることが多く、そのまま活用できると勘違いしてしまう危険があるからです。

それよりも、馴染みのない業界やビジネスの話の方が、成功要因を客観的に見出しやすく、活用するための応用ができます。

一見、全く違った話の中に類似点を見つけ、新しい発想に結びつけることをアナロジー思考といって、成功者に必須の能力だと思います。

業界の成功者の真似をすることはただの後追いで、ランチェスター戦略では、やってはいけないことの一つです。

が、成功の要因をいったん抽出して、自分のビジネスに合うように応用し、実行することは、ただの猿真似ではありません。

「戦略勉強会」では、いわば、自分の武器として使える成功手法を自分の中にストックする作業をしています。

いますぐに使えなくても、自分のビジネスにカチリとはまる時があるはずです。参加される方は、そう信じておられると思います。


リモート参加


コロナ禍で多くのことが失われ、狂ってしまいましたが、ひとつ前向きなことを述べるとすれば、リモートでの交流が盛んになってきたことです。

「戦略勉強会」でもZOOM参加を採り入れています。

だから、大阪以外の方の参加も可能となりました。

リアルな勉強会のあと懇親するのも捨てがたいですが、遠い町からリモートで参加される方の声を聞くのもいいものですよ。

参加される方が多様になればなるほど、事例を捉える視点が広がります。

皆さま、一度、「戦略勉強会」に参加してみませんか。

快挙!! 井上尚弥が、PFP1位に!

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世界のボクシング関係者を驚愕させた6月7日の試合から数日、井上尚弥が、ついに、PFP(パウンド・フォー・パウンド)1位に選出されました。

PFPで1位になること


PFPとは、体重差がないと仮定して最も強いボクサーは誰か?を示すものです。

ボクシングは体重の影響が大きい競技なので、重量級と軽量級が実際に闘うことはありません。闘えば、重量級が必ず勝つでしょう。が、純粋にボクシングの技量で比較すれば、軽量級の選手の方が優れていると思える場合も多いわけで、それを具現化したのが、PFPです。

世界で多くのボクシングメディアが独自にPFPランキングを発表していますが、最も権威あるといわれているのが、老舗ボクシング雑誌である「リング」のPFPランキングです。

このリング誌PFPランキングで、井上尚弥が1位と認定されたのです。


これ、すごいことです。

サッカーでいえばFIFA最優秀選手、野球でいえばメジャーリーグのMVPに選出されるようなものです。

メジャーリーグの方は、大谷翔平がいち早くMVPに選出されましたが、それと同じぐらいの偉業です。

野球に比べるとマイナーな競技のため、知名度では大谷選手に劣るものの、世界のボクシング関係者のなかで、井上尚弥の名前は轟いています。

マイク・タイソンでさえ、井上尚弥を「とんでもない奴だ」と絶賛しています。

圧倒的な試合内容


日本人史上最高傑作と称される井上尚弥のことを日本人でいる私はよく知っているつもりでいましたが、それでも7日の試合は、想像の遥か上をいくものでした。

試合前、井上が負けることはないだろうと予測されていましたが、相手はボクシング殿堂入り確実だといわれるノニト・ドネアです。3年前の初対戦では、井上の右目を破壊し、判定までもつれこませた実績があります。

ドネアは今回も自信満々で「井上に罠をかける」と不気味なことを言っていました。ボクシング関係者の中にはドネア有利を指摘する声もあり、前評判ほど簡単な試合ではないと思わせたものです。

実際、試合でも絶好調時の動きを見せて、この試合にかける並々ならぬ意欲を見せてくれました。

しかし、井上の能力はそれ以上でした。

ドネアのいう「罠」とは、カウンターをとるための撒き餌のことだったと思われます。例えば、3年前の試合では、撒き餌としてボディを執拗に打ち、意識を下に向けさせておいて、顔面に左フックを叩き込みました。今回も、類似の作戦を描いていたはずです。

が、そんな意図は井上も先刻承知だったはず。圧倒的なスピードで相打ちさえも許さず、あげくは、カウンターをとりにきたドネアに逆にカウンターを叩き込んだのです。

1ラウンド終了間際のクロスカウンター(カウンターに対するカウンター)はあまりにも見事でした。日本の現役ボクサーが「漫画でしか見たことがない」と呆れたように言っていたのが印象的です。

この一撃でドネアは記憶を失ったことを後に述べています。「これまで受けた中で最も強いパンチだった」「気がつくとレフェリーがカウントしていた」「それで自分がダウンしたことを知った」

テンプルを打ち抜いたこのパンチの影響は甚大で、ゴングに救われてKOは逃れたものの、実質ここで勝敗は決したといっていいでしょう。


ここからの井上も完璧でした。

ドネアのパンチがまだ生きているとみたのか、無理に攻めようとせず、絶妙な距離からコンパクトなパンチを着実に当てていき、回復させませんでした。

ダメージの残るドネアとすれば、もはやパンチを振り回して一発逆転を狙うしかありません。それを封じるような攻めをされては、打つ手なしです。

2ラウンドは、殆ど残酷ショーのような様相になってしまいましたが、それは井上の攻め方が、あまりにも緻密で無慈悲だったということでしょう。

この完璧な試合運びを見せられては、PFP1位になるのも時間の問題だとボクシング関係者がコメントしていました。

変革期にあるボクシングビジネス


井上が所属するジムの大橋会長は「まさか自分が生きているうちにFPF1位の日本人選手を見るとは思わなかった」と述べています。

井上尚弥の並外れた能力があればこそですが、背景には日本人選手の海外進出が盛んになったことが指摘できます。

日本に経済力があった頃には、日本国内市場だけでボクシングビジネスが成り立ちましたが、今はそうではありません。日本のボクシング業界全体がグローバルなビジネスに取り込まれつつあります。

今回の試合も地上波放送はなし。アマゾンプライムの独占放送でした。

アメリカ主導のビジネスに取り込まれることに複雑な気持ちが無きにしも非ずですが、市場が広がった分、現場のボクサーの収入は増えています。

井上以外にも海外で活躍するボクサーは出てきていますし、海外のプロモーターも日本人に注目するようになっています。

井上に触発されて、才能ある次世代のボクサーが続々出てくることに期待します。これからのボクサーは海外進出ありきなので、井上以上に稼ぐ人が出てくることでしょう。ボクシングファンとすれば楽しみなことです。

ビジネスの形が変革するとき、いちはやくポジションを確保した者が生き残りやすくなります。いまボクシングビジネスはちょうど変革期にあるわけですから、各自がどう動くのかとても重要な局面だと思います。

ボクシング 井上尚弥にあって、山中慎介になかったもの

井上尚弥が導く異次元のボクシングビジネス

井上尚弥がはじめての苦戦から得たもの

井上尚弥はボクシングの未来を拓くか

コロナで停滞するボクシングビジネスにどのような未来があるのか?

井上尚弥が真のスターになるためには何が必要か?


人口減少問題ってむちゃくちゃ重要ですが、日本人の半分は他人事だと思っています

人口減少問題


日本はいずれ存在しなくなる?


先月はじめ、世界有数の起業家であるイーロン・マスクが、ツイッターでつぶやいたことがニュースになりました。


テレビなどでも採り上げられた話題なので、ご存知の方も多いでしょう。

マスク氏は、つぎのようにつぶやきました。

「当たり前のことだけど、出生率が死亡率を上回るような変化がない限り、日本はいずれ存在しなくなるだろう。これは世界にとって大きな損失になる」

ずいぶん極端なつぶやきですが、言いたいことはわかります。

現在、日本は少子高齢化、人口減少が加速しており、このままの数値が続けば、計算上、日本人はいなくなってしまいます。

もちろん、このままの数値が続くわけがありません。いずれ人口バランスが適正化し、人口減少は止まります。

しかし、人口減少の勢いがあまりにも急激なので、問題は多い。マスク氏は、そうした事態を放置する日本をはじめ先進国政府に警鐘を鳴らし続けています。


世界が人口減少期に入る


総務省の推計によると、日本の人口のピークは2004年の1億2784万人です。

そこから人口減少が始まり、2050年には1億人を、2100年には5000万人を割り込むとしています。

明治維新の頃が3330万人といいますから、200年かけて明治時代の人口に戻るという計算です。


これは日本だけの現象ではありません。世界の先進国ではいずれも少子高齢化が進んでおり、人口減少期を迎えています。

それだけではありません。米ワシントン大学の推計によると、アジア、アフリカを含めた世界全体の人口が2064年をピークに減少に向かうというではないですか。

約200年続いた人口爆発期が、急激な人口減少期に移行するというのは、世界共通のトレンドなのです。


人口が少なくなるメリット


人口が減っていいこともあります。

とりあえず危ぶまれていた世界レベルの食料危機は回避されそうです。昆虫を食べる必要もなくなりそうですよ。

人が少なくなれば、環境問題も軽減されます。持続可能な開発という問題は自然に達成されていくかもしれません。

このまま経済格差もなくなり平和な世の中がくればいいなあとお花畑的な夢想をしたくなりますな。

もしかしたら2100年以降、人口バランスが適正になった時代からは、いい世の中になっていくのかもしれませんね。


経済破綻の末、日本が消滅する?


しかし、そこに至るまでが大変です。

なにしろ一度増えた人口が減る時のマイナスのエネルギーは半端ありません。

少子高齢化が進むということは、高齢者に比べて生産年齢人口が減るということです。

当然、GDPも税収も減ります。

高齢者福祉費は増大するのに税収が減り続けるのだから、その他に回すお金がなくなります。

例えば、地方のインフラを整備する余裕はありませんから、地方都市の多くは廃墟のような状態になってしまいます。

がけ崩れの道もそのまま、電気も水道も安定しない、ごみも回収されない、警備も弱い、ネットもつながらない場所で、いまさら生活できるでしょうか。

そうなると、都心部に人口が集中し、今よりもむしろ人口過密状態になります。住宅費は高騰し、地方から来た人たちは行き場がなく、大規模なスラム街が形成されるかもしれません。

防衛費も減らさざるを得なくなります。

今回のロシアの侵攻は、人口減少による国力低下の危機感が引き金になっているとする分析があります。

それを思うと、日本が経済破綻した末に、どこかの国に併合されてしまう悪夢のシナリオだってないとは言えません。そうなると、本当に、日本が存在しなくなってしまいますね。


少子化を食い止めたフランスの社会改革


人口減少は避けようがありませんから、少しでもその痛みを和らげる対策が必要です。

一般に、人口減少を食い止めるには、移民を受け入れるか、出生率を上げるかです。

しかし、世界中の人口が減ると、移民そのものも減っていきます。短期的には移民受け入れは有効ですが、抜本的な解決策にはなりません。やはり出生率を上げて減少のスピードを遅くすることに取り組むことが肝要です。

日本の場合、合計特殊出生率(一人の女性が一生で産む子供の数)は1.4程度です。

これに対して、20年以上この問題に取り組んできたフランスは、出生率を2程度にまで引き上げることに成功しています。

詳しくは述べませんが、フランスの対策は、結婚や就業に関する男女格差を是正し、女性が出産・育児に向き合っても損をしない制度作りに力点を置いています。

例えば、フランスでも、結婚は神聖なもの、妻は夫に従うもの、家事は女性がするもの、という意識があったようで、キャリア志向の女性にとっては結婚も出産も損なことでしかありませんでした。

それを是正し、結婚しなくていいですから好きな時に子供を産んでください、経済負担はできるだけ国が負います、育児休暇はキャリアのマイナスにさせません、婚外子を差別させません、という制度に変えたことが、現在の出生率につながりました。

フランスのやり方を日本も大いに参考にするべきです。

が、生まれてくる子供の6割が婚外子だというフランスの状況を受け入れるためには、日本人に馴染んだ戸籍制度や家制度の概念を根本から改める必要があります。これを嫌がる人たちが日本には大勢いるのですんなりとはいかないでしょうが。


日本人の半数が逃げ切れる


少子高齢化問題に対しては、一部諦めムードが漂っています。

この問題に真剣に取り組む政治家を見たことはありませんし、選挙の争点にもなりません。そんな遠い未来のことよりも、いま、得になることをしてくれよ、という意見が殆どです。

じたばたしても止めようがないし、なるようにしかならない、日本人は優秀だからいざとなれば何とかするよ、というのがマジョリティの考えなのでしょうね。

でも、気を付けてくださいね。いま、生きている人の半分近くは、この問題が深刻化する前に逃げ切る(あの世に逝く)人たちです。

私もそうです。成長期の恩恵を食いつぶして逃げ切る世代の一人です。

そんな私が言うのだから自己矛盾ですが、老人の余裕を信じてはいけません。

これ、放置していたら、どえらいことになりますよ。


小さくても行動することが大切


思えば、この件、ピーター・ドラッカーが20年前に「すでに起こった未来」として論文に書いていたんですよね。

日本人の半数は逃げ切れると言いましたが、実際には、既に社会のあちこちに影響が出ており、企業は自身が生き残るために対応しています。

ビジネスで起きていること、企業の統廃合も、戦略転換も、新事業の立ち上げも、ほぼすべてが、少子高齢化や人口減少が背景にあると言ってもいいでしょう。

企業は、生き残るのも潰れるのも自己責任ですから必死です。

生活者は自己責任ではない部分もありますが、一人一人同じように真剣に行く末を考え、行動することが必要だと思います。

といってもできることは限られています。

まずは、少子高齢化と人口減少がどえらい重大な問題であることを理解すること。

できるだけ世の中の動きや変化を見て、影響がどの程度出ているかを認識こと。

そして、問題の深刻さを自分なりに発信し、投票行動で政治家を動かすこと。

小さくても行動することがとても大切です。

逃げ切り世代の一人として、罪悪感を少しでもやわらげるために行く末を憂うふりをしているだけかもしれませんが、この問題はしつこくとりあげていきたいと思います。



アフターコロナ あいりん地区は次のウラ難波となる

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あいりん(愛隣)地区、昔の名称でいえば釜ヶ崎は、江戸時代からあったスラム街が明治時代の都市計画で移転した地域のようです。

戦後にはドヤ街として拡大し、全国から日雇労働者が集まる街として定着しました。同地には就労斡旋と福祉を目的とする施設が開設され、安い簡易宿泊所が多くあり、無料の炊き出しも頻繁に行われているので、仕事にあぶれてもここに来れば何とかなるという場所となっています。

日雇い労働者を相手にする商売が多く、街全体が低価格のサービスであふれています。それだけならいいですが、昼間から酔いつぶれて寝ている人もいるし、あちこちでもめ事が起きているし、いささか不穏な雰囲気があります。

私が子供の頃は、足を踏みいれてはいけない場所と言われていたものです。

急速に観光地化


ところが、NHKの朝ドラの舞台となったり、小さな遊園地ができたりして、ここ20年で急速に観光地化していきました。若い女性などが二度漬け禁止の串カツの店に並び、通天閣をバックに写真を撮っている姿を見ると隔世の感があります。

その果てが、星野リゾートの開業です。関西空港とカジノリゾートを結ぶ場所として大阪市が誘致したのでしょうが、受け入れた星野さんも思い切った決断をしたものだと大阪人は誰もが思ったはずです。

若者や外国人が集まっている


記事を読むと、星野リゾートの開業を象徴として、様変わりしていく同地域の姿が書かれています。

同地には、家賃や物価の安さを求めて、若者や外国人などが集まってきているそうです。

コロナ前にも、中国人が集まってきて中華カラオケなるものが商業集積化していると話題になっていました。いっそのこと、この地域に中華街を作ろうという構想まで持ち上がっていたものです。

最近はベトナム人が集まってきているとか。ますますカオスな状況となってきているようです。

地域のポテンシャルは高い


これはコロナ禍で早まった都心部への人口流入を示す事例だと考えます。

この地域は、難波と天王寺の間にあり、実は便利な場所です。それなのに物価が低いので人が集まりやすい。大阪人以外には偏見もないでしょう。

思えば、ウラ難波なる場所も、比較的辺鄙で家賃が安い地域に若者が思い思いの店を出すことで自然発生的に生まれた繁華街です。

あいりん地区から新世界までのあたりが、次の繁華街になっていく可能性は充分にあると考えます。

もちろん今でもこの地域には、都市伝説めいた胡散臭い話がまとわりついています。ただ、そうした猥雑さも、繁華街の魅力の一つですよ。変に統制せず、外国人や若者の思うままにしてもらうことがいいと思います。

あとは地権者が、欲気を出して家賃を高くしないことですね。


個人的には、難波〜日本橋〜新世界のルートはポテンシャルが高いと思っています。コロナが収束しインバウンドが戻ってきた暁には、堺筋を夜間通行止めにして、台湾や香港のような夜市を作ってほしいと思います。

強力な観光資源となると思うのですがねー



亀田製菓 インド出身CEOから伝わる成長意欲

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米菓トップの亀田製菓に関する記事です。

売上高1033億円、営業利益56億円。(2021年3月期)

菓子関連企業で売上高1000億円を超えているのは数社です。

カルビー(2667億円)、ロッテ(2065億円)、森永製菓(1918億円)、江崎グリコ(1625億円)、明治HD(1150億円)、ブルボン(1184億円)※ロッテ、森永、グリコ、明治に関しては部門売上高

コロナ禍で市場そのものは拡大してきましたが、亀田製菓に関しては、売上は横ばいです。ただスーパーなどでの安売りを控えたために利益高は上昇しています。

新潟の農民組合が大企業に


亀田製菓は、1946年、新潟県中蒲原郡亀田町の農家の方々が結成した亀田郷農民組合を祖にしています。

当初は水あめを製造していたようですが、その後米菓子に進出、1966年にはピーナッツ入りの柿の種の製造を開始、1976年にハッピーターンを発売しています。

農民組合を出自にした会社が、ここまで大きくなったというのは珍しい。創業メンバーの強いリーダーシップが効いたのだろうと想像しますが、詳しくはわかりません。

ただ、最近の亀田製菓は、変革意欲にあふれており、異業種から積極的に人材を登用したりして、ローカル企業からの脱却を目指しているようです。マスコミへの露出も多くなっています。

海外進出か、新事業創出か


菓子業界全体にいえることですが、少子高齢化により成長は頭打ちです。今まで通りの事業ではじり貧になってしまうことは確実です。海外進出するか、他の事業分野に進出するかが求められます。

カルビー、グリコは海外進出に意欲的です。カルビーの海外売上高比率は20%、グリコは15%。

これに対して亀田製菓は8%。他の菓子メーカーに比べると、それでも意欲がある方です。

しかし、日本独自の米菓が、海外に受け入れられるかどうかは未知数です。

同社の海外進出がハーバードビジネススクールのケーススタディとして採り上げられているという記事がありましたが、そこでも「諦めない姿勢がいいが、普及には時間がかかるだろう」と言われていました。

ハーバードの教材になった「柿の種」が大激論を巻き起こす理由

成長意欲は伝わる


今回、インド出身のラジュ氏がCEOに就任するのも、同社の変革意欲の表れなんでしょう。

記事でラジュ氏は「入社してから驚いたのは、米菓以外の『成長の種』をいくつも持っていたことだ。グルテンフリー商品や代替肉、乳酸菌、低タンパク米など、隠れた財産がたくさんあった」と発言しています。

それはその通りなのでしょうが、ある程度の規模の食品メーカーならどこも同じのはずです。

むしろその後の「ブランドもないし、マーケティングもうまくできていない。いい商材がたくさんあるのにもったいない」というところが問題ですし、伸びしろを感じる部分です。

カルビーは、プロ経営者を招いて社内の意識を変革し、さらに米国ペプシコとの業務提携と出資をまとめ、現在の規模に成長する足掛かりとしました。

亀田製菓がラジュ新CEOに期待するのも、こうした劇的な変革と成長をリードすることでしょう。

ラジュCEOの発言によると、米菓以外の事業を拡大した上で海外進出を目指すようです。いまいち具体的なものは見えませんが、成長意欲は伝わります。

果たして目論見通りに成長するのか。今後の具体的な戦略展開を待ちたいと思います。


沖縄は少子化対策の先進地域になってほしい

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沖縄復帰50年の節目ですから、日経新聞も特集記事を組んでいます。上は、4回シリーズの1回目です。

沖縄は日本で唯一の人口増加県ですが、いずれ人口減少期に入ることが予想されており、問題が先延ばしになっているだけだという指摘です。

フランスの少子化三原則


沖縄県が他県と違って人口減少期に入るのが遅れているのは、なぜなのか。

少子化を止めたといわれるフランスのシラク三原則は、

(1)子供を持つことにより新たな経済的負担が発生しないようにする。

(2)無料の保育所を完備する。

(3)育児休暇から職場復帰するときは、ずっと勤務していたと見做して受け入れる。

というものです。裏を返せば、工業化都市化が進んだ先進国では、出産・育児負担が多大で、子供を見てくれる家族がおらず、出産育児休暇がキャリアに不利になるということ。この不利を解消しようというのがフランスの意図で、一定の効果をあげています。

沖縄では、古い日本が持っていた親戚同士が助け合う大家族文化が残っており、子育てや生活面において、ある程度、負担が軽減される素地があるようです。

しかし、こうした文化は徐々に薄れていくものですから、やはり沖縄も都市化が進み、家族の単位が小さくなっていきます。沖縄でも、少子化対策が必要になってくるだろうという所以です。

少子化対策の先駆けとなれる


沖縄の場合、他県ほど工業化社会に順応していないため、その部分の既得権益者が少なく対策も打ちやすいと考えます。

記事では外国人の受け入れについて書かれていますが、これも他県では対応できていない部分です。

が、それ以上に、フランスのような出生率を上げるための施策をとるべきです。

残念ながら他県では、高齢者対策を優先するためか、少子化対策は先送りになり続けています。私以上の世代は、本当に悲惨な日本の状況を見ることなく逝くという余裕があるからか、切迫感を持っていません。有権者がこうですから政治家も動きませんわね。

ここは沖縄県だけでも少子化対策をばっちり行って、日本全体の先駆けにしてほしいと思います。深刻化していない今だからこそ効果も高いでしょうから。

補助金の内容は適切か


沖縄には基地負担を強いているため、その代わりというのか大きな補助金が費やされています。その補助金の内容が沖縄の成長に本当に役立っているのかを見直すべきです。

沖縄は地理的に大きなポテンシャルを持っているので、成長産業のタネはいっぱいあります。

観光地としての沖縄のポテンシャルはハワイ以上

脱観光業を目指すバリ島 もっとポテンシャルが高いのが沖縄だ

観光業だけではありません。日本が遅れに遅れている産業のデジタル化も、既存産業が小さい沖縄なら、いますぐ取り組むことができます。

いつまでもインフラ整備に費用を使うだけでは成長につながりませんからね。

産業振興に加えて、少子化対策の先進地域になることができれば、日本だけではなく世界中から注目され、人材を集めることができるでしょう。

成長する地域として、衰退する日本の希望の星となってほしいものです。



シン・和菓子を生み出せるか

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最近、和菓子中堅企業の廃業や破産が相次いでおり、その背景について書かれている記事です。

直接の影響はコロナ禍ですが、それ以前に、ここ30年和菓子の消費額は減り続けており、構造的な問題であるといえます。

一番の要因は人口減少ということになるのでしょうが、洋菓子がコロナ禍で持ち直していることを考えれば、和菓子側にも特有の問題があります。

洋菓子に日用食の地位を奪われた


記事が指摘するのは、和菓子が日本人の日常に広がり切れなかった状況です。

当然、戦後すぐの頃は、洋菓子よりも和菓子が日常的だったはずです。希少価値のあった洋菓子は、むしろ非日常な特別なものだったと想像します。

しかし、その後、経済成長とともに洋風な食事が日本人の生活に広がっていきました。洋菓子もコンビニやスーパーの棚で売られる日用食になっていきました。

洋菓子メーカーの努力の賜物ですが、洋菓子という範囲の広い多様性が、開発の創造性にプラスに働いたのだと考えます。

今では日用食としての広がりが、洋菓子職人の差別化意欲を生み、それがさらにコンビニスイーツなどにも還元されるという相乗効果を生んでいます。

市場規模の格差は広がるばかり


ところが和菓子の方は、そうはならなかった。

日本人の生活や文化が急速に西洋化していったという向かい風があったことが大きな要因ですが、和菓子メーカーの創造性や努力の不足もあります。

和菓子は歴史的に日本人の生活に入り込んでいるので、和菓子メーカーは新たな開発をしなくても何とかなったということもありますし、伝統に縛られて開発の創造性が洋菓子ほど働かなかったということもあるでしょう。

そもそも和菓子は砂糖そのものが貴重だった時代の気分を引きずっています。甘さに多様な要素を加味していった現代の洋菓子に対抗するのは無理がありました。

いつしか日用食としての地位を洋菓子に譲り、特別な時に添える伝統食になっていきました。

市場のパイが小さければ、当然、そこに投資できる額も小さくなります。雇える職人の数も差が出てきますし、いきおい意欲のある新規参入者の数も洋菓子側に集中していくことになってしまいます。

これでは洋菓子と和菓子の差は開いていくばかりです。

シン・和菓子を生み出せ


人口減少期に入り、地域の伝統需要をあてにする小さな和菓子店にはますます厳しい状況です。廃業は増えることはあっても減ることはありませんよ。

構造的な問題なので、この流れを止めるのは難しいでしょうね。

意欲のあるメーカーの中には、フルーツ大福をヒットさせたり、洋菓子風の和菓子を開発したりしてパイを広げようとするところもあります。が、洋菓子の多様さに比べるべくもありません。

むしろ洋菓子メーカーの方が、和菓子の素材を採り入れようとしています。和菓子メーカーに必要なのは、この貪欲さではないですか。

市場全体の成長はトップ企業の責任だと思うので、和菓子大手メーカーには頑張っていただきたいものですが、有望な話は聞こえてきませんね。

とまあ、他人任せにしても仕方がありません。イノベーションなんて所詮は、他業種のマネや組み合わせから生まれるものです。タネはどこにでも転がっていますから、各プレーヤーがそれぞれ工夫をすれば、何か有望なものもできるはずです。

それ以上に、皆がイノベーションに取り組むことで、業界全体が活気づきます。

シン・和菓子を業界あげて生み出していただきたいと思います。そうじゃないと、じり貧傾向は止まりません。


Zoomは、アフターコロナの成長戦略を示すことができるのか

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zoom、ネットフリックス、ショピファイ、ペロトンなどコロナ禍で大きく業績を伸ばした企業が成長を鈍化させて、株価がコロナ前の水準にまで戻っているというニュースです。

まさにコロナバブルだったのですな。

ネットフリックスについて→ネットフリックスがリアルイベントに事業を拡大

ペロトンについて→「最強のビジネスモデル」はいまも現役バリバリです

コロナ禍で6倍超の成長


ビデオ会議システムのzoomは、いうまでもなくコロナ禍のリモートワークの必要性を追い風に業績を伸ばしました。

zoomの2022年1月期の売上高は、40億9900万ドル(1ドル125円として5123億7500万円)。最終利益は13億7500万ドル(同1718億7500万円)。利益率も高いですね。

これは私の個人的な感想ですが、2年前頃、ビデオ会議システムの中でzoomの通信品質は突出していたと感じます。

グーグルもマイクロソフトも同様のサービスを提供していますが、当時は仕事でつかえるようなレベルではありませんでした。

有名企業を差し置いて名前が挙がるのには理由があると感じたものです。

ちなみに、3年前、2019年1月期の売上高は、6億2200万ドルですから、実に6.6倍ですよ。バブルの桁が大きすぎます。

コロナ収束が見えてきた今期は成長鈍化が著しいとはいえ、これだけ成長した中、株価が元通りというのは厳しい評価です。

成長戦略が見えない


今回の株価急落が、期待が大きすぎたゆえの調整という側面はあるでしょう。が、それ以上に、バブル期に得た利益や資金を有効に使えていないという評価もあるのだと思います。

コロナが収束すれば、事業環境が変化するのは当然で、zoom側も準備していたはずです。

ところが記事によると「解約率の低い企業顧客との結びつきを強くする」というしょぼい施策しか見えてきません。

当面の出血を避けるには当たり前の施策であることは承知していますが、これは成長戦略ではありません。

いまzoomに必要なのは、これだけ拡大した規模を基にしたさらなる飛躍を確実にするための戦略です。

そのためには、zoomの今のポジションでしか生み出せない価値があるはずで、それを明確にすることが必須です。

わくわくするようなビジョンを示してほしい


私もzoomの有料会員ですが、今のzoomには使い勝手の慣れや通信品質以外のメリットを感じません。

グーグルやマイクロソフトの品質が上がってくれば乗り換えることもありえます。

というか大企業を重視するというのですから、私のような泡沫ユーザーは乗り換えざるを得なくなるのでしょうね。

それはともかく、zoomがこれからも生き残るためには、ビデオ会議システムを進化させることで、どのような未来を切り開こうとしているのかを示さなければなりません。

わくわくするようなビジョンを早晩示せるかどうかが、今のzoomに必要なことだと思う次第です。



成長市場で急拡大した日医工が私的整理に至った理由

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後発薬大手の日医工が、私的整理を申請したというニュースです。

後発薬とは、特許の切れた薬のこと。ジェネリック薬です。

2022年3月期の売上高は1790億円。最終赤字は1048億円です。


ちなみに後発薬トップは沢井製薬(サワイグループ)、同じく2022年3月期の売上高は1938億円。最終赤字282億円です。

業界大手2社が揃って赤字決算ということになりました。

ただ、3位の東和薬品は、2022年3月期の売上高1656億円。最終利益159億円で持ちこたえています。

急拡大路線のひずみ


日医工に関しては、昨年発覚した不適切な製造工程による業務停止命令が少なからず影響しています。

同社の戦略は、とにかく薬品数を揃えて品数で勝負するというもの。まるで、ジェネリック薬品のアマゾンです。

扱い薬品数は約1220で、沢井製薬の約780、東和薬品の約770を大きく引き離しています。

現在、政府は医療費削減のため、安価なジェネリック薬の普及を促進しています。業界にとっては、追い風が吹いている状況であり、大手3社はここぞとばかりに拡大策をとっています。

日医工も、他の後発薬企業の買収を繰り返して、売上規模を3倍に伸ばしてきました。

品数を重視するあまり、他社で試験に通らなかった薬を独自の基準で通すという危ない橋を渡ってきたようです。

今回、厚労省にそれが不適切であると指摘され、業務停止および医薬品の大規模な自主回収をするに至りました。

品数を増やすという戦略をとった同社は、採算性の低い商品も扱わざるをえず、もともと利益を出しにくい体質でした。そのため、赤字幅が大きくなったようです。

海外事業の結果が影響


ジェネリック薬に追い風がきているといっても、長期的な成長が続くわけではありません。人口減少していくわけですから早晩、国内市場は成熟、衰退期に移ります。

それが見えているので、日医工も沢井製薬も東和薬品も海外進出を図っています。

実は、日医工も沢井製薬も、海外展開がうまくいっていないので、赤字に転落しました。

これに対して、東和薬品は、海外事業が利益を出したので黒字にとどまったということです。

なんだ、結局は海外事業頼みか、ギャンブルみたいなもんじゃないか、と言われるかも知れませんね。確かに、今回は東和薬品がよかったものの、数年後には違う結果になっている可能性だってあります。

ジェネリックメーカーの米国進出は失敗だったのか―サワイと日医工、減損で最終赤字

「弱者の戦略」を貫けるか


ただ、東和薬品は、扱い商品や進出する分野を絞り、いわゆる「弱者の戦略」で事業展開をしているふしが見えます。

これに対して、沢井製薬はもう少しラフな市場選択に見えますし、日医工に至っては、なんでもありに見えます。

このあたりの戦略への意識が、業績に反映していると、ランチェスター戦略を信奉する私は、考えたくなりますね。

とくに新しい市場に進出するうえでは「弱者」ポジションをとる必要があります。

どの業界でもそうですが、こうした単純な戦略への意識が重要だと思います。

日医工、主力工場で品質おざなり 業務停止で社長減俸





日本でヘルスケア産業が盛り上がらない理由

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アメリカの産業成長を牽引するのはIT・デジタルとともに、ヘルスケア分野だといわれています。

ヘルスケアにもIT・デジタル化が絡んでいて、例によってGAFAMが力を入れています。

突出しているのはアルファベット(グーグル)ですが、その他の企業もこぞって注力しています。

もちろんGAFAMだけではなく、この分野にユニコーン企業(評価額が10億ドルを超える、設立10年以内の未上場のベンチャー企業)は多い。

国別の内訳をみると、アメリカ企業が半分以上、次いで中国、EU、インドなど。日本にはユニコーン企業はなし。この分野で非常に遅れていると言わざるをえません。

日本でも切実な医療費の削減


言うまでもなく、少子高齢化、人口減少が進む日本では、医療費の削減が大きなテーマとなっています。

日本の一般会計支出の3割が社会保障費です。このうち3割強が医療費。諸外国に比べて、優先順位が低いということはありません。

それなのに、この分野に有望な新興企業が少なく、改革も進まない、つまりコストダウンが進まないことは、日本の大きな問題です。

高齢者層へのマーケティングに真剣に取り組む時期がきている

予防、デジタル、個人対応


アメリカの状況をみてみると、ヘルスケア分野の改革は、(1)健康管理・予防の強化、(2)診療やカルテなどのオンライン化、デジタル化、(3)スマホなどによる診療や管理の個人対応、という方向になっています。

大雑把にいうと、スマホで個人ごとに最適な健康管理・予防ができて、必要な時は、やはりスマホでオンライン診療をしてもらえて、データを自分で管理できるというものです。

例えば、健康診断の結果がスマホに送られてくると、医療機関監修の専用アプリやオンライン診療などで内容の分析や治療方法などについてアドバイスを受けます。

必要ならば、治療を受けるなり、ドラッグストアで薬を買うなりを自分で選択し、その後の経過もスマホアプリで観察します。自分で健康管理をするわけで、意識を高めていかなければなりません。

健康管理・予防が強化されれば、病気そのものが減り、国の負担も減ります。その分、医療機関は、必要な患者に集中することができるようになり、充実した治療ができるようになるという算段です。

既得権益層の強い日本


日本でこうした改革が進まないのは、アメリカにはない国民皆保険制度というものが素晴らし過ぎて、付け入る隙がないからだと思われます。

保険制度があるおかげで我々は、安価で医療を受診することができます。

日本の場合、医は仁術という考えがあるのか、診療報酬が細かく点数が決められており、医者の収入を抑える方向になっています。

保険内治療である限り、ブラックジャックのようにすごく腕がいいので報酬も高いというわけにはいかないようです。

我々患者にとっては有難いのですが、お医者さん側とすれば、収入を増やすには、患者数を増やすか、医療行為を増やすかが課題になります。

そんな不埒な医者は少ないと怒られるかも知れませんが、経済合理性とはそういうものです。結果として、患者の診療回数が増えるし、投薬も増えるというものです。

この他、医療従事者、薬剤師、製薬会社、保険会社などガチガチの制度の内に、多くの利害関係者が存在するため、少しの変化でも、割を食う人が出てきます。

要するに既得権益層が多く複雑なので、抵抗が強く、改革が進まないということですな。


改革が必要だと誰もが認めていても、個別の利害調整が難しいので先送りになるというのは、どの組織でもあることですね。

この話、日本の全体に関わることなので重大なのですが、それでも先送りにしようという勢力が強いので仕方ありません。

いよいよ切羽詰まって、どうしようもないところまでいくのだろうなと思う次第です。





高齢者層へのマーケティングに真剣に取り組む時期がきている

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上の記事は、マーケティングの対象から外されがちな高齢者層への考えを変えてはどうかという指摘です。

日本の個人金融資産は2000兆円を超えていると報道されていますが、そのうち1300兆円以上が60歳以上の資産となっています。

この宝のような市場を放置してどうするんだ、というしごくもっともな指摘です。

ちなみに日本では60歳以上の平均貯蓄額は約1300万円です。欧米では、貯金を使い切って死ぬのが幸せな人生だというそうですが、心配性な日本人は、充分すぎる資金を持ってあの世に旅立つのが大方です。

消費意欲の高い時に資金がない、資金がある時には消費意欲がないという状況では、経済が回りません。

そういう意味でも、企業には高齢層へのマーケティングを頑張っていただきたいと思います。


消費意欲の低い高齢者層にいかに訴求するか


マーケティングの対象から外されるのは、そのノウハウがないからでしょう。

これまで企業は消費意欲旺盛な40代までの層をターゲットにしてきました。それ以上になると50代以上とまとめられてしまっていました。

消費意欲が減退する高齢者層をターゲットにしても効率的ではないのでアメリカのような人口が増加している社会においては合理的です。

が、いまや少子高齢化に向かって爆速している日本においては、必ずしも合理的だとはいえなくなってきてきます。

消費意欲の薄い人たちにどのような訴求をするのかは、これから試しつつノウハウを蓄積していかなければなりません。

予防ヘルスケアと資産運用

端的にいいますが、高齢者に対するビジネスの一丁目一番地は、ヘルスケアと資産運用です。

すなわち、

(1)記事でも指摘していますが、高齢者層で最も強い「元気で過ごしたい」という需要。

身体さえ元気ならば、今まで通りの食事もできますし、レジャーもできます。もちろん仕事も続けられます。

つまり身体のケアが基本です。

かといってじじくさい健康茶とか変な体操とかはごめんです。気持ちは40歳代の60歳以上に向けたヘルスケアがまず求められます。

そこが確立したうえで、グルメやレジャー関連の需要が増すというものです。


もうひとつ、

(2)持っている資金を減らさない、できれば増やしたいという需要。

高齢者が資産を持っているといっても、なくなってしまうのは不安です。

心配性は日本人の特性ですな。

ですから、高齢者を富裕層だと考えればうまくいきません。資金の殆どは保険に持っておく必要があるので、使える資金は何割程度かです。

ということは、低価格設定にしなければ、需要を刺激しません。

さらに持っている資金をいかに運用し、減らさないようにするかも重要ですから、資金運用、投資、個人事業に関するサポートサービスも必要となってきます。


要するに、高齢者向けのビジネスとして、まず必要なのが、予防に関するヘルスケアと、資産運用サポートです。

それぞれサービス展開している企業は多いものの、個別展開なので全体像がわかりにくい。

そんななか、和田氏のような識者の提供する情報は貴重だと思います。

これから増えてくるでしょうが、高齢者向けの総合的なノウハウ本に期待したいと思います。




いまどきの部活が優秀すぎる件

いまどきの部活

先月の「戦略勉強会」で、「いまどきの部活」という話をとり上げました。

私には、それがけっこう衝撃でした。


日経新聞のシリーズ記事の第1回です。

記事にあるのは東大サッカー部の事例です。

東大の運動部というと、弱いイメージがあります。確かに弱いのでしょうが、彼らが部活動から得ているのは、目の前の勝敗だけではありません。

彼らは、試合内容をデータにとり、分析し、自軍の弱点をつかみ、修正する作業を繰り返しています。

部に所属するデータアナリストは20人。Jリーグのチームよりも多い。さすが東大です。

それだけならまだわかりますが、彼らは、その能力を使って、海外プロチームの分析を受託しているというから驚きです。

そうした活動も含めて、東大サッカー部は、年間予算の2割強を自前で稼ぐそうです。

これって東大だけが特別なのでしょうか。

記事によると、他の大学でも、こうした部活動の動きは広がっているといいます。

プレーだけではなく、組織運営全体を経験する


スポーツにおいて、データを活用し、科学的に強化する方法論が浸透してきています。

今やトッププロだけではなく、アマチュアや中高生にも、科学的なトレーニングの必要性が認識され、とりいれられています。

その際、圧倒的に足りないのが、データアナリストです。優秀なアナリストは引く手あまたの状態です。

東大に関わらず、部活動で身に着けたアナリストとしての手腕は、必ず役に立つものとなるはずです。

かつて部活動の経験は、集団的規律への適正や精神的な強さを担保するものだといわれ、就職活動で有利になるとされたものですが、今は、その程度ではありません。現実的なノウハウや経験を持つ者として評価されるべきです。

データ分析を例として挙げましたが、それだけではありません。東大サッカー部では、プレーだけではなく、様々な役割があるようです。

「試合運営、強化、選手獲得、広報……。同部には19のユニットがある。部員は希望のユニットに加入し、部の運営を担う。(中略)中には地域連携や国際貢献を行うものまである。幅の広さはプロサッカークラブに近い」

つまり、彼らは、部活動を通じて、スポーツ全般、あるいは組織運営全体の経験を積んでいるのです。

授業では学べない実践経験


以前、経営コンサルタントの大前研一氏が「日本は、学校で教えない分野は世界で通用する」と皮肉な発言をしていたことがあります。

確かに日本人が世界で活躍している分野は、ゲーム、アニメ、スポーツ、音楽、料理など。一般の学校では教えない分野です。

好きなことだとしても、自律的に考え、創意工夫し、試す、この繰り返しの経験は、どんなことをするにせよ社会でそのまま役に立ちます。

学校教育から得られる知識や教養は重要ですし必要なものですが、それとは別の実践経験を部活動で得るというのは、理想的な学校教育の姿ではないですか。

こういう話を聞くと、日本の若者も捨てたものではないなと思いますね。

いや、自分もまだまだ好きなことをして、もう一花咲かせてやろうかとモチベーションを高めました。

ネットフリックスがリアルイベントに事業を拡大

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ネットフリックス続報です。会員獲得に悩む同社が、リアルなイベント開催に乗り出しているというニュースです。

コロナ禍に、リアルからバーチャルへの移行が一般の会社のテーマでしたが、ネトフリの場合は、コロナが収束した後に、バーチャルからリアルへの移行がテーマとなっています。

映画やドラマの定額オンデマンド配信というサービスが珍しかったからか会員獲得に困らなかった時期が過ぎてしまったのですから、自ら仕掛けて顧客創造しなければならないのは必然です。

前ブログでもいいましたが、ネットフリックスはそろそろ収益の複合化を意識しなければならない時期です。これは、映画からテレビ、イベント、テーマパークへと事業を拡大していったディズニーも辿った道です。

ネットフリックスは「弱者」ポジションを変える時期に来ているのか

バーチャルのコンテンツをリアルに展開する


バーチャルのコンテンツをリアルに拡大するというのは、これまでも行われてきました。多くは、テレビなどでキャラクターにストーリー性を持たせておき、リアルなキャラクターグッズの販売や、あるいはイベントを開催することで、身近に感じたい、あるいは同化したいという欲求を満たすものです。

テレビや映画のキャラクターグッズを販売することや、キャラクターショーはよく行われていることですし、少し凝ったものだと、芸能人のオーディションや育成の様子をテレビで放送し、デビュー後のライブなどに顧客を呼び込む方法などがあります。

記事によるとネットフリックスは、コメディに力を入れているのでコメディイベントを開催しているようですね。

日本でもお笑いは強力なコンテンツなので、吉本興業などと提携して、育成リアリティショーなどを放送すれば面白いと思います。

が、お笑い関連については、アマゾンプライムもABEMAも狙っています。芸人自身のユーチューブチャンネルもあります。競争は激しいですよ。

スポーツイベントにストーリーを付加する


リアルとバーチャルの融合ということに関しては、スポーツ関連が最も適していると思います。

残念ながら、ネットフリックスの事業領域ではありませんが、アマゾンプライムやABEMAはここに力を注いでいます。

ただスポーツイベントの動画配信だけでは道半ばです。イベントに至るまでのストーリーをコンテンツにしなければなりません。

アメリカではユーチューバーのボクシングの試合が、正規の世界タイトルマッチよりも大きなイベントとして開催されているようですが、それこそスポーツイベントにストーリー性が重要であることを示しており、スポーツ関係者は学ばなければなりません。

いまのところ、アマゾンプライムもABEMAも、ビッグイベントの放映権獲得に手いっぱいの感があり、背景のストーリーをみせることには神経がいっていないようです。

いや、ABEMAは、格闘技系のコンテンツに、意欲的なものがありますから、いつかそれが育つのかもしれません。期待して見ております。

サイバーエージェント 業績好調ですが、あの部門は赤字脱却が見えません


ネットフリックスはスポーツ関連の番組は弱いようですが、それ以外にもリアルにつなげる方策はいくらでもあります。

いったいどの業界と提携して事業展開していくのかと考えると、むしろ今までよりも楽しみです。

大いに興味をもって見ております。






リモートワーカーのためのセカンドハウスビジネスは成立するのか

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暮らす場所はサブスクで…と聞いて、それ普通の賃貸のことやないかと思いましたが、そうではありません。毎月定額で、いろんな場所の家に住めるサービスを指すようです。

家には、家具や家電が備え付けられており、電気やガスも込みとなっています。ウィークリーマンションを転々とするように、住処を変えることができます。

気の向くままに、いろんな地域で過ごせるというのは、寅さんになったようで気分いいでしょうな。羨ましいと思う人も多いのではないでしょうか。

リモートワークでいいと皆が気づいた


背景には、コロナ禍でリモートワークが進んだことがあります。つい3年ほど前までは、会社員が、会社に出ないで勤務するなんてありえないと思われていましたが、リモートワークにしてみれば、案外いけるやんということがわかってしまいました。

むしろ、通勤時間や移動時間のロスがないので効率がいい。朝の満員電車に乗らなくていいのでストレスが軽減されます。

毎日のように、アホな上司や生意気な部下と会わなくていいので、そのストレスからの解放は、半端ない。しょうもない会議にも出なくて済みます。アホな上司と飲みに行く機会も激減します。

もちろん、皆が一同に会することによるメリットはあるのでしょうが、それ以上のデメリットがあったと皆気づいてしまったらしい。

リモートワークならば、会社の通勤圏に居る必要もないわけです。事情が許す人は、あちこち旅しながら働けばいいのですよ。

リモートワーカーのためのビジネス


記事によると、セカンドハウスの定額貸出をするサービスが活況で、既に2000人待ちの状況だとか。

これは、ビジネスになるかもしれません。

各地域では空き家が増えて社会問題となっていますが、それを活用し、リモートワーカーを吸引することができれば、町おこしになります。

もちろん空き家そのままというわけにはいきません。短期居住者が住めるように改装し、家具や家電、WIFIなどの設備も必要になります。

眺望のいいリゾートマンションとか、高台の戸建てとか、訴求ポイントのある物件が空いていそうじゃないですか。

採算がとれる範囲の投資で済むならば、地元の起業家や自治体が協力して、やってみるのもいいでしょうね。

ビジネスにできるほどの市場か


ただ、投資する側とすれば、この流れが一過性のブームではないと確信が持てるまでは、動きにくいものです。

そもそも、居住地を転々とできるのは、子供の学校や親の介護という事情がない時期です。若い時期、あるいは、引退後の期間です。

引退した後は、どちらかというと一か所に落ち着きたくなるのではないかな。だとすれば若い一時期です。

日本人全員が寅さんになるわけじゃありません。普通は旅行することで、漂白の思いを発散させているものです。

海外旅行が制限されている今だからこそのブームだと考えることもできますね。

そのうち、コロナが収まれば、居住地を転々としたい気持ちは収まるのかもしれませんよ。

リモートワークは普及するのか


あるいは、リモートワークそのものがこのまま普及するかどうかもわかりません。

アフターコロナも、リモートワークを続けると決めた会社もあるようですが、多くは、元通りになるのでしょう。

が、記事にあるように、今の学生は、オンライン勤務を日常だと捉えているといいます。「多様な居住スタイルを許容できない会社は優秀な人材を採れない時代がくる」というのが本当であれば、それは一過性のブームではありません。

リモートワークに対応するためには、企業側は、仕事をタスク化し、評価指標をつくり直して、それを前提とした人事制度を設計しなければなりません。

人事制度設計ができる専門家やコンサル会社の動向を注視していきましょう。


時代がもう少し進んで、自動運転車が普及すれば、家という概念そのものが変わります。そうなれば、リモートワークはもっと普及するはずです。

コネクティッドハウスが普及しつつあるというが、すぐに次のものに移る

それまであと10年か15年はかかるのかな。

徐々に変化していくのか、あるいは一気に進むのか。

見極めが難しいところですが、ビジネスをする者は準備しておかなければなりません。

アンテナを張っておきましょうか。




ネットフリックスは「弱者」ポジションを変える時期に来ているのか

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動画配信サービスのネットフリックスの株価が急落しています。一週間で約7兆円が吹き飛んだというから凄まじい。4年前の水準に戻ってしまったかっこうです。

きっかけは、2022年度第一四半期決算が悪かったことです。利益も会員数も大幅に落ちたため、成長が鈍化した、あるいは壁に当たったとみられました。

ネットフリックスといえば、コロナ禍の巣ごもり需要の恩恵を受けた企業のひとつです。大幅に成長したため、コロナの期間中、ずっと株価が上昇し続けていました。が、コロナが収束気味になった途端に、株価急落とはわかりやすい銘柄ですな。

もっとも、ネットフリックス株が評価され過ぎだという指摘は以前からありました。動画視聴者の会費収入だけという収益モデルは潔くていいですが、会員の増加が止まれば、すぐに成長も止まります。

会員数を増加させるためには、動画コンテンツの魅力を高めるための投資をしなければなりません。だから現金が会社に残りません。利益を投資に回し続ける様は「ハムスターの回し車にいるようなものだ」とまで言われていました。

いつか成長も止まります。が、今回の株価急落をみれば、市場は「ネトフリはまだ伸びる」と考えていたのでしょうね。それだけにショック売りとなってしまいました。

ネットフリックスは、本気のディズニーに勝てるのか?

弱者の戦略から切り替える時期か


ネットフリックスのビジネスは、動画配信のみです。収入は会費のみ。だからやるべきことは単純で、ひたすら動画コンテンツの魅力を高めることです。

やるべきことがシンプルだということは、新興企業にとっての武器となります。あれこれブレることがなく、組織が一丸となって取り組みやすい。弱者の戦略である一点集中です。

成長期にはメリットが大きい戦略ですが、成長が止まると、脆弱さが露呈します。弱者の戦略は、守りに弱い。

今回、アマゾンもディズニーも巣ごもり需要の恩恵がなくなったのは同じですが、彼らは収益モデルが複数ありますから、動画配信ビジネスの落ち込み分を他でカバーする道があります。

大企業は攻めには一歩二歩遅れるが、守りには強い。そのことをネットフリックスは思い知ったでしょう。

今回、同社CEOは、ゲームに進出するとか、広告モデルをとりいれるとか錯乱気味に発言していますが、そりゃ、CEOとしては何か言わなければならなかったのでしょうな。

ただ、ここは複数の収益モデルを組み込む時期に来ていると考えてもいいでしょう。ランチェスター戦略にいう「グー・パー・チョキ戦略」よろしく、成長が一段落した頃には手を広げ(パー)ることが定石です。ダメなものは後から切れ(チョキ)ばいいのですから、複数の収益の線を持つべきです。

ただ、複線化することで、単純明快なネットフリックスの良さがなくなってしまうのは、避けられません。ここは、次の段階に進むという信念をもって取り組まなければなりません。経営者の手腕が試されるところです。

世界的な動画配信メディアとして存続してほしい


ネットフリックスは、動画配信ビジネスのパイオニアとして、いち早く世界展開しています。それが同社の強みとなっています。

ネトフリは、世界各国の制作会社と提携し、地方色豊かなコンテンツの制作を行っています。動画には各国の字幕がつくので、ヒットすれば世界で視聴されます。

世界に通用するコンテンツ作りノウハウを持っている韓国ドラマは、まさに世界的ヒットを連発しています。

日本の制作会社も、遅ればせながら、世界を意識したコンテンツ作りに取り組んでいますが、これはネトフリのような世界的メディアがなければ叶わなかったことです。

日本のテレビ局、狙うは海外 Netflix・Amazonと連携

こういう役割は無くしてほしくないですね。世界からヒット作が生まれるようになれば、ユーザーは喜ぶし、ネットフリックスも潤うし、世界のコンテンツ制作者も恩恵を受けます。

グローバルな動画配信メディアとして、これからも存続し続けてほしいと思います。




コネクティッドハウスが普及しつつあるというが、すぐに次のものに移る

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コネクティッドハウスがそろそろ普及し始めているようです。

コネクティッドハウスというのは、家のあらゆる部分がネットでつながっていて、スマホで簡単に管理できる仕組みです。

家の施錠、家電の管理、防災機能。

もう少し技術が進めば、家族の健康状態も一元管理できるようになります。

記事によると、積水ハウスの新築戸建ての4割が導入しているそうです。

積水ハウスだけではなく、大和ハウスもサービスを始めていますし、ヤマダデンキが狙うのもこの分野でしょう。成長市場だと考えられるので、参入する業者は多いはず。グーグルも既に参入済ですし、個人的にはアマゾンが狙ってくるのではないかと考えています。

トヨタは町全体を再構想


コネクティッドハウスのコンセプト自体は、古くからあるものです。パナソニックなど20年以上前から盛んに提唱していたものです。

が、当のパナソニックは、パナホームをトヨタホームと合併して、このコンセプトからは一歩引いた印象です。

トヨタとパナソニック、住宅事業を統合

トヨタは、自動運転車やEVとともに、町全体を設計しなおそうと構想しており、家の設計はその一部となります。

今のパナソニックには、新産業を引っ張っていく力はないのでしょうね。トヨタの構想に追随する姿勢です。

家そのものが巨大な車となり、スマホになる


情報端末といえばスマホが代表ですが、近い将来には、家や車が、さらに巨大な情報端末になると考えられています。

完全自動運転になれば、部屋と車を分ける必要もなくなります。自分の部屋でくつろいでいるうちに目的地に着くようになります。

つまり、将来の家は、車と部屋が混然一体となったものになりそうです。

トレーナーハウスやキャンピングカーのように家全体が移動するかもしれませんし、あるいはリビングダイニングバスルームだけは固定しておいて、個人の各部屋が分離して移動する形になるかもしれません。

何年先になるかわかりませんが、今ある住宅に無理やりネットをつなげるという形ではなくなります。つながることや移動することを前提とした形となるでしょう。

コネクティッドハウス自身、すぐに次の段階に進むわけで、技術も機能も全然別のものが求められるようになります。おそらくプレーヤーの顔ぶれががらりと変わるでしょう。

成長市場といえども、進化著しい分野ですから、各企業とも生き残るために相当の投資が必要になります。各企業の舵取りが重要な局面が続くでしょうね。



プロフィール
komai 小

営業関連のコンサルティングをしています。
製造業や卸売業などの営業組織を強化する仕事を得意としております。

株式会社クリエート・バリュー代表取締役
NPOランチェスター協会理事
NPOランチェスター協会関西支部
NPOランチェスター協会認定インストラクター
中小企業診断士   販売士1級

コンサルタントになる前は、日本酸素株式会社魔法瓶事業部(現在のサーモス株式会社)で14年、営業担当をしておりました。
その時、廃業寸前の赤字だった事業部がわずかの期間で世界トップ企業になった経緯を体験したことが、経営コンサルタントになったきっかけとなりました。
当時、経験したことや見聞したことを物語風にアレンジしたのが、拙著『「廃業寸前」が世界トップ企業になった奇跡の物語』です。
面白い本なので、ぜひ読んでください(^^)

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