わたしは価値を創る

大阪在住の経営コンサルタントのブログです。

「サブスク」ビジネスの衝撃

サブスクビジネス

(2019年2月7日メルマガより)



トヨタ自動車が、高級車レクサスの定額利用サービスを始めるそうです。



ユーザーは、トヨタの高級車6車種から好きな車を選択できて、半年で新車に乗り換えることも可能です。

契約は3年間、月額19万4400円。(3年で約700万円)

レクサスのセダン新車が600万円ぐらいから購入できるそうですから、この金額をどう捉えるかは、意見の分かれるところでしょうね。


新車売り切りビジネスの否定


それにしても、トヨタまでもが定額利用サービスを始めるとは、時代も変わったものです。

自動車といえば、新車売り切りビジネスの最たるものです。

レンタカーやカーリースという形態があるとはいえ、ビジネスの中心となるのは、自動車メーカーごとに系列化されたディーラーによる新車販売です。

ところが、トップメーカーであるトヨタが、定額利用サービスを始めたわけです。これまでのビジネスモデルを否定する行為です。

そうですね。トヨタは、このまま新車販売ビジネスに頼っていたら成長できないと判断したのです。

自動運転車が普及すれば、カーシェアが当たり前になり、ユーザーにとって車を所有するメリットが小さくなると考えられます。

したがって自動車の絶対数が減ってしまいます。(社会的には適正数になります)

そんな時、いままでと同じように新車販売に頼るのは誰が見ても戦略ミスです。相当ブラックな販売会社でも売上を維持するのは困難でしょう。

だからトヨタの試みはしごく当然の方向性によるものです。


サブスクリプション(サブスク)とは


自動車だけではありません。いま、あらゆる業界で「所有から使用へ」移る動きが始まっています。

家も、家具も、家電製品も、衣類も、宝飾品も。これまで所有することが当たり前で、所有することこそステイタスだった品々が「必要な時だけ使えばいい」ものと認識されだしました。

ユーザーが負担するのは月々の使用料で、普通は購入するよりも小さな額で済みます。所有することをやめただけで、相当のコスト減になるはずです。

いっぽうのメーカー側は、当初の売上こそ減るものの、継続的に使用してくれるユーザーを確保さえできれば、ビジネスを組み立てやすくなります。新規顧客獲得のためのコスト負担もありませんから収益率は上がります。

こうした継続的なビジネスの形態をサブスクリプション(サブスク)といいます。

サブスクリプションとは、もともとは新聞や雑誌の定期購読や予約購読を示す言葉です。

しかし今は、その概念が拡大しています。


マイクロソフトを復活させたサブスクビジネス


サブスクの有効性を世に知らしめたのは、マイクロソフトの復活でした。

パソコン全盛時代、ウィンドウズというOSを擁していたマイクロソフトは我が世の春を謳歌しました。

ところが、検索システムのグーグルや、スマホ時代を到来させたアップルの登場によって優位性を喪失したマイクロソフトは勢いを失い、過去の企業になってしまった感すらありました。

そのマイクロソフトがいま俄かに復活し、株式時価総額では世界トップに踊り出しています。

その原動力となったのが、3代目サティア・ナデラCEOによるビジネスモデルの転換です。

それまでマイクロソフトのビジネスは、ウィンドウズという無料OSを入り口に、エクセルやワードやパワーポイントといった業務用ソフトを販売するというものでした。

ユーザーが、これらのソフトを購入すれば、永久に使うことができます。が、実際にはソフトは次々最新版が発売されるので、いつの間にか旧式化してしまって、買い替えが必要となります。買い替えには、もちろん新たな費用が発生します。

(パソコンにワードやエクセルが付属していることもありましたが、それはパソコン代金の中に含まれているというだけで無料ではありません)


これに対して、いまのマイクロソフトの主力商品は、月々(あるいは年間)の費用が発生します。

ただし最新版の追加購入はいりません。ソフトの中身はクラウド上(ネットの向こう側)にあり、それを使用する方式ですから、勝手にアップデートしてくれるので、いつも最新版を使うことができます。

エクセルやワード、パワーポイントなどを含むマイクロソフトオフィスには、無料版も用意されていますが、機能制限のない有料版は月1000円程度です。

ユーザーとすれば年間12000円程度で常に最新の業務ソフトが使用できてお得です。

マイクロソフト側としても、一定の継続収益が見込めます。それにクラウドにあるソフトを遠隔で使用してもらう方式なので、顧客が増えてもコストはそれほど増えません。

つまり利益率がいいのです。

顧客数が一定数を超えるまでは我慢が必要ですが、臨界点を超えると、とんでもなく儲かるビジネスであることをマイクロソフトが世に知らしめました。


既存ビジネスと競合してしまうサブスク


そんなにいいものなら、みなサブスクをやればいいやん。と思いますね。

その通り、日本企業もサブスクの可能性に気づいて、続々と参入しています。

しかもマイクロソフトのようなソフトウェア会社だけではなく、物理的な商品を扱うメーカーが参入しています。


トヨタの高級車使用サービスは上に書いた通りです。

パナソニックは、月額7500円で最新のテレビを3年ごとに使用できるサービスを開始しました。

ソニーは、プレステのユーザー向けに定額で追加機能を付加するサービスを行っています。

三菱商事は良品計画と組んで、家具の定額使用サービスを検討しています。


ただ悩ましいのは、売り切りビジネスから定額サービスに切り替える際に、一時的な売上減に見舞われることです。

顧客数が一定以上になるまでは、収益の低下に耐えなければなりません。

メーカーはそれでもいいかも知れませんが、販売会社にとっては、売り切りビジネスが無くなることは死活問題です。

パナソニックのテレビ定額サービスは、販売店の不興を買って、サービスの拡大もままなりません。

家電製品のダイソンが行っている家電品(ヘアドライヤー)の定額使用サービスは、家電小売店からの猛反発を受けて、宣伝できない状態だそうです。

トヨタの定額サービスが高額すぎてイマイチやる気が感じられないのは、既存の販売ディーラーの手前、わざとお得感をなくしたのではないかと思えます。

もともとの既存ビジネスをしっかり行っている企業にとって、サブスクビジネスへの取り組みはけっこうハードルが高いようですな。


ベンチャー企業の方が取り組みやすい


これに比べて、新興企業やベンチャーは、何のしがらみもなく取り組むことが可能です。

例えば、洋服の定額サービスの「エアークローゼット」という会社があります。

6800円で月3点まで交換可、9800円で無制限交換で洋服を使用することができます。

どんな服が送られてくるかは非公開ですが、個人アンケートをみたプロのコーディネーターが、それぞれに合う服を選んでくれます。

対象は、会社勤めの女性で、普段会社に来ていく服がコンセプトです。


あるいは、高級バッグの定額サービス「ラクサス」

こちらは月6800円で、高級バッグを持つことができます。

高級バッグを揃えるのが大変だろうなと思うのですが、実はこれ、ユーザーからの借り物も含んでいます。

高級バッグの持ち主から借り受けて、それを誰かに貸し出せば、元の持ち主にマージンを支払う仕組みとなっています。


ベンチャー企業には既存ビジネスがないので、それを侵食することがありません。だから思いついたらやり放題です。

洋服でいえば、スーツ、ネクタイ、礼服、ドレス、コスプレ用なんてのもアリかも知れません。

持ち物でいえば、高級時計、宝飾品、ビジネスバッグ、眼鏡、帽子など。既にあるかも知れませんが。

月8600円でラーメン食べ放題というサービスまであります。実際にサービスを受けてみると、苦行か!というぐらい食べ続けないと元はとれないそうですが^^;

いまは定額借り放題といえばキャッチーなので、ユーザーが集まりやすいという追い風もあるようです。


ただし参入障壁の低いビジネスですから、競合が多くなる傾向にあります。

だから同種のビジネスを維持させるためには、最初からギリギリの価格設定をしておくこと。および、ユーザーデータの収集蓄積分析に力を入れて、既存顧客の満足度を高めることがキモとなります。

安いんだからこの程度のサービスでいいだろうなんて考えていると、速攻、後発のメーカーに乗り換えられてしまいます。


単なる継続課金ではない


お分りかも知れませんが、サブスクを単なる継続課金ビジネスだと考えると、失敗します。

サブスクの最大の特徴は、顧客との距離が近いということです。

何しろ自社のサービスを継続して利用してくれる方と直接コンタクトが取り放題のビジネスです。

ユーザーの行動データを収集分析し、意見を直接聞くことで、ユーザー個々人にぴったりのサービスを提供できる可能性があります。

動画配信大手のネットフリックスは、顧客の行動データを大量に蓄積し、分析したうえで、オリジナル番組の製作配信に巨額の投資を行っています。誰を主演に、誰を監督にして、どのようなストーリーの番組を作れば、ユーザーが満足するかがわかるので、迷いがありません。

多様なニーズには多様な番組を揃えることで対応し、個々人ごとにおススメ番組を紹介しています。

最近では世界各国スタッフによる番組作りにも力を入れて、ボーダレスなニーズの取り込みにも挑戦しようとしています。

だからネットフリックスは、月定額の値上げを実施しても、ユーザーが増え続ける満足度を実現しているのです。

これはデジタルなビジネスだけに特有の特徴ではありません。物理的な商品のあるリアルなビジネスでも同じです。

IoTの技術を商品に組み込むとより効果的ですが、そうじゃなくても個客データの収集は可能です。

自社のサービスは顧客に合わせて改革改善できるし、顧客ありきのビジネスなので、無駄な在庫も発生しません。

結果としてより安く上質なサービスを提供できるというものです。


サブスクが提供するのは「こだわり」ではない


さらに踏み込むと、それは物理的な商品ですらありません。

サブスクが提供するのは、ユーザーが感じるところの便益や満足感でなければなりません。

家具の定額使用サービスを利用するユーザーは、家具が好きで好きでたまらない人なのでしょうか?

いや、そうではないはずです。

むしろ、自分で家具を選ばなくても不自由なく生活できる便益を求める人でしょう。

服も同じです。

服に強いこだわりを持つ人は、定額サービスを利用せずに、自分で商品を選ぶはずです。

定額サービスを利用するというのは、自分で選ぶ労力を省いても、周りの人たちからセンスがあると思われる程度の服を着ていたいと思う人でしょう。

だからサブスクを成功させるためには、低価格であるとか、品質がいいとか、デザインがいいとか、使い勝手がいいという前に、顧客の本来のニーズを満たし、便益に資するものでなければならないのです。

「1/3インチのドリルを買った顧客は、1/3インチの穴を買ったのである」とは、マーケティングの本質を示す言葉として有名ですが、まさにその本質に真正面から取り組むのが、サブスクというビジネスです。


日本企業の取り組みは中途半端


そう考えると、日本企業の取り組みはまだまだ中途半端だと言わなければなりません。

パナソニックのテレビ定額サービスは、新型テレビが3年ごとに使えるというサービスでしかありません。

本来のサブスクビジネスならば、ユーザーの視聴傾向を自動で分析して(目の動きや表情から関心度を解析して)お勧めの番組を録画するテレビを用意してほしいものです。

ユーザーごとに相応しいテレビも違います。スポーツ番組をよく観る人には迫力のある大画面と音響が必要ですし、ドラマが中心の人には全てのドラマを自動で録画してくれるテレビがいいでしょう。報道番組が中心の人には文字放送による解説が欲しいですし、ネット番組をよく観る人にはリモコンの中央にネットボタンのあるテレビを選び、外出が多い人にはスマホ連動テレビが便利です。

もっと言うと、テレビにこだわる必要もありません。スポーツが好きな人にはスポーツイベントを紹介し、映画が好きな人には最新映画のチケットを購入できるようにしてほしい。

釣りが趣味の人には釣り情報と必要な道具の提供。旅行好きな人には旅行番組とセットで実際のツアーの紹介もしてほしい。

せっかくサブスクビジネスに取り組むのなら、そこまでしないと価値を創ることができませんよ。

いやいや、天下のパナソニックのことですから、今はユーザーとの接点を作ることに注力し、布石を打っている段階です。3年後には、ちゃんと本質的なサブスクビジネスに取り組んでいるはずですよ。

と思いたいものですが。


アマゾンは究極のサブスクビジネスに取り組むのか


そう考えると、サブスクビジネスの最先端にいるのはアマゾンだと私は思います。

アマゾンは、家電品から家具から衣類から生鮮品からネット関連サービスから、あらゆるものを扱っています。

そして個人の膨大なデータを蓄積しています。

もしアマゾンが、家や部屋を扱うようになれば、生活に必要なものは殆どを揃えることができます。

部屋と、家具と、家電品と、水道光熱と、基本的な食糧と、衣服と、ネット環境と、スマホと、丸ごと定額で提供してくれればこの上なく便利です。

例えば最低限生活できる環境を10万円、15万円という定額で提供してくれれば、一般の人は生活を組み立てやすくなります。

もちろん中間層や富裕層にはもっと高いレベルの定額サービスを提供するわけです。

生活する中で、その人の好みが理解されてくれば、アマゾンの豊富なサービスの中から徐々にカスタマイズしていけばいい。

アマゾンプライムの動画や音楽、ゲームなども提供できるので、退屈することがありません。

なんていうと、貧困層を呆けさせて搾取する悪徳ビジネスに近づいていきそうですから、そうならないように注意することは必要ですよ。だから収入すべてを定額サービスに投じることは禁止です。

しかし、最低限の生活を保障されるということは人間の尊厳を守る上で大切なことです。

その上で、自分がやりたいこと、こだわりたいことに、計画的に投資して取り組んでいけばいいのです。

そこは定額ではなく、自分で慎重に選んで取り組んでください。

ともあれ、アマゾンは、究極のサブスクビジネスができる位置にある企業です。

とはいいながら、最近なにやらネガティブな話題が多いアマゾンですから、実現できるかどうかはわからなくなってきましたが。


後戻りできない大きなムーブメント


そんなわけで、サブスクがマーケティングの本質を実現するためのビジネスであることをご理解いただけたでしょうか。

いままでは理想としてわかっていても、実際には取り組めなかったことです。

それが近年のIoTおよびAI技術の進歩によって、可能となりつつあります。

本質的なことなので、後戻りはしないと考えます。

多くの企業が注目し、参入しようと考えるだけの大きなムーブメントです。

これからも注目していきましょう。


【参考】







オリオンビールの危機的状況

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沖縄好きの人たちからすると由々しき事態です。

沖縄のビール会社オリオンビールが、アメリカのファンド会社に買収されます。

ファンド側は、近年低迷するオリオンの県内売上シェアを5ポイント伸ばす、としています。その後は、どこかに転売するのでしょう。

どこの国の企業が買収するか知れず、いつまでも「オジー自慢のオリオンビール」と言っていられなくなるかも知れません。

オリオンビールが高収益な理由


オリオンビールは、1957年アメリカの統治下に作られた会社です。沖縄復興のためにと官民揃っての願いが込められていたと聞きます。

1972年の本土復帰の折には、酒税を減免する特別措置がとられました。元は5年の時限法でしたが、今でも続いています。

オリオンビールの利益率が高いのは、そういう事情もあります。それが同社を育てたともいえますし、逆に競争力を弱めているのではないかと思えます。

税優遇をそろそろ終わらせねばならないと政府は考えているようですが、いま終わらせてしまえば、オリオンビールが経営難に陥る懸念があります。

アサヒビールとの提携は正しかったのか


2002年、オリオンビールは、アサヒビールと資本提携します。唐突の感がありましたが、記事を読むと、政府による「オリオンに競争力をつけさせよう」という意図があったようです。

が、政府が思ったようには競争力強化につながっていません。

沖縄県外での販売拡大も進んでいませんし、最近は沖縄県内でのシェアも落ちているようです。記事によると「アサヒが抜けたらオリオンは商品を作れなくなる」からアサヒは資本を引き揚げないんだそうです。

ひどい言い方ですね。誰だこんなこと言ったのは。

上の記事を読めばわかりますが、アサヒ側にまったくやる気が感じられません。もともとやる気がなかったのか、あるいは提携する中でやる気を失っていったのかはわかりませんが、馬鹿にしているのではないかと疑いたくなります。

どうもオリオンは、提携すべき相手を間違えたようですな。

真の意味で競争力を持つことができるのか


もっともアサヒ側をやる気にさせることができなかった(あるいは呆れさせた?)オリオン側にも問題があります。

企業イメージはむちゃくちゃいいのに、中身が伴っていないことを自覚しなければなりません。

本来、狭い範囲で圧倒的なシェアと知名度を誇る企業です。特別措置法がなくても、圧倒的に儲かっていなければおかしいのです。

ポジショニングは完璧なのに、競争力がないとすれば、開発力か営業力か組織の生産性が悪いということです。

オリオンビールの位置づけからすれば絶対に強い会社になることができます。

自社で立て直す力がなければ、ファンドの力を借りるのも仕方ありません。むしろ長年たまった澱を綺麗にするためにはファンドのようなドラスティックな手法で改革するのが相応しいでしょう。

数年後には競争力のある会社になり、また県内企業の星として輝くようになることを願っております。




ミニ保険はベンチャー企業にうってつけのビジネス

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ミニ保険(少額短期保険)は、2006年の保険業改正により生まれた保険です。

保険金額が1000万円以内、1〜2年の期間に限定した保険をいいます。

伝統的な生損保の商品と比べ、補償内容がシンプルで保険料も安いのが特徴だ。死亡時の保障を葬儀費用にあてる数十万〜100万円程度に抑えたものや、家財が壊れたり、ペットが病気になったりするといった特定のトラブルに備える。

ということで、ちょっとした補償を取り扱います。

例えば、運動会一日の怪我の補償とか、家電製品の補償、イベントのキャンセル補償、痴漢冤罪の弁護士保険など。

保険料も少額なので、スマホで契約するのに適しています。というか、スマホがなければ、売ることは難しい商品です。

スマホというチャネルができたからこそのビジネスであるといえます。

ベンチャー企業にうってつけのビジネス


取り扱うのは、専門の少額短期保険会社です。従来の保険会社も別会社を設立する必要があります。

ただ最低資本金が1000万円なので、比較的簡単に設立できます。

ミニ保険は、需要と事故発生率の計算さえできれば、アイデア一つで開発できます。まさにベンチャー企業にうってつけのビジネスです。

参入するなら今ですよ。(競合が増えて似たような保険が増えると、厳しくなりますので)

ミニ保険、「百社」繚乱 少額で日常トラブルに備え

もうひとつ言えば、需要と事故率と保険料の計算をする専門AI扱いビジネスが成立するかも知れません。あとは、いざという時の補償料を肩代わりする会社ですね。





完全自動運転車になると産業構造が変わる

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CES(Consumer Electric Show)とは、アメリカで開催される電子機器の見本市のことです。

毎年、最先端の電子機器が出展されるので、技術進化の状況や発展の方向性を知るのにいい機会となります。


記事では、自動車について書かれています。

自動車は電子機器か?と思うかも知れませんが、疑いなく最先端の電子機器です。

特に電気自動車は、そのものですね。

自動運転車は動く〇〇になる


記事にあるのは、各社が出展した自動運転車の様子です。

自動運転車が実現すると、自動車の自由度が上がります。

運転がいらない完全自動になれば、車は、動くリビングであり、ベッドルームであり、オフィスであり、会議室であり、キッチンになるのかも知れません。

座席は前を向く必要がなく、自由な配列となります。

いや、そもそも前という概念がありません。だからタイヤは360°回転し、動けるようになります。



自動運転システムや安全性は、基本性能です。

車が差別化し、特徴を出すなら、内部の設計や設備のコンセプトによるものとなります。

記事が、「部品メーカーの野望」と書いているのは、車の「売り」を作るのが、自動車メーカーから離れて、多くの部品メーカーになるという意味ですね。

この場合、従来の部品メーカーばかりではなく、家電、家具、キッチン、ソフトウェアなど多くの産業が関わってきます。

記事には、アバターや二次元キャラクターが同乗者になってくれる車が紹介されています。いかにもクールジャパンにかこつけた安易な発想です。実際の市販車は、もっと多様なものになっていくでしょう。

既存自動車メーカーが狙うプラットフォーマーの地位


車の台数が減っていくと予想される中、現状の自動車メーカー各社は、プラットフォーマーになろうと躍起になっていることでしょうね。

つまり携帯電話キャリアのように、自社規格に部品メーカーが合わせるスタイルです。

もしかすると、自動車本体は無料で、月々使用料を自動車メーカーに払うビジネスモデルになるかも知れません。

そうなると、部品メーカー各社は、料金徴収の主体である自動車メーカーの言うことを聞かざるを得なくなり、自動車メーカーの規格に合わせた内部設計をすることになります。

グローバル市場では、SIMフリー車が主流になるのでは?


これに対して、SIMフリーのような自動車も現れるでしょう。つまり自動車メーカーが基本ユニットだけを提供し、そこに部品メーカーが内部を付加したものです。

この方が尖ったコンセプトの変な車が出来上がるかも知れません。

この場合、ユーザーは所有権を買い取るか、あるいは、使用した際にだけ料金を支払うスタイルになります。

こちらの方が、グローバル市場で戦える自動車やビジネスモデルになるかもしれません。


おろらく日本では、力のある既存自動車メーカーが業界規格を作っていくこととなるのでしょうが、ユーザーとしては、より便利で面白いものを提供してほしいと願うのみです。

政府が産業保護政策をとって、ユーザーとしても、グローバル競争からも、つまらないものにならないことを願うのみです。





日本電産の業績下方修正を甘く見てはいけない

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日本電産が、今期の純利益予想を大幅に下方修正しました。

いつも控えめな予想を立てて、それを超える実績を出すのが通例の日本電産だっただけに、株式市場には「日本電産ショック」が広がりました。

要因は、中国経済の不振


ちなみに日本電産の2018年3月期の売上高は1兆4881億円、営業利益は1676億円でした。

当初は増収増益を見込んでいたのですが、今回、売上高1兆4500億円、営業利益1400億円の減収減益予測です。

永守会長は、「尋常ではない変化が起きた。46年経営を行ってきたが、月単位で受注がこんなに落ち込んだのは初めて」とまで発言しています。

その要因として中国の輸出企業の販売不振と在庫過剰感があり、「場合によっては19年4〜6月期まで在庫がはけない可能性がある」と仰っています。



一過性の問題ではないかも知れない


中国の輸出に停滞感があることは、以前から囁かれてきましたが、ここまで突発的に不振に陥るとは、さすがの日本電産でも予測できなかったのでしょう。

きっかけはアメリカのトランプ大統領による対中貿易赤字の理不尽な問題化ですが、それはきっかけに過ぎず、構造的な不振に陥るのではないかとも考えられます。

そもそもアメリカが中国から輸入するのは、コストの安い中国の工場で製造するのが合理的だからです。

しかし、中国も賃金が上がってきていますし、中国企業によるパクリ問題もありますから、考えもなしに中国で製造するのが全面的に良いとは言えなくなってきています。

その上、製造業の自動化技術が進むと、アメリカ国内で製造してもコスト面で合う場合も増えてくるでしょう。

中国が世界の工場だった時代が終わりを迎えているのかも知れません。

安易な楽観ムードは危険


株式市場は、「いちばん慎重な日本電産の予測よりも悪くなることはない」といって、妙に楽観論が広がっているようです。

日本電産、下方修正でも「楽観ムード」のわけ

が、中国の停滞が、構造的なものだとしたら、長引きます。内需拡大を目指すのでしょうが、うまくいっていないという報道もあります。

中国、28年ぶり低成長 貿易戦争が打撃

日本電産なら難局に対応してくるでしょうが、他の電子部品メーカーは日本電産ほど素早く根本的な対応ができるでしょうか。

永守氏の鳴らす警鐘を甘く見ない方がいいと思います。





 

島田紳助や大前研一が提唱する成功理論・成功術

島田紳助や大前研一が提唱する
(2019年1月24日メルマガより)



以前、このメルマガで、島田紳助の成功法則について書いたことがあります。


いまから12年前。2007年のことです。

その後、島田紳助は芸能界を引退しましたが、その成功理論の切れ味は失われてはいません。

ご興味のある方はDVDを購入して聞いてみてください。



島田紳助の成功理論とは


かいつまんでいうと「自分ができること・人に勝てること」と「時代の流れ」をクロスさせる。というものです。

紳助のような芸人を例にすると、全員が本音では売れることを目指しています。

そしてそのために、自分の芸を磨き、世間から受け入れられる態勢を整えているのです。

ところが全員が売れるわけではありません。名人級の芸を持ちながらも、たいして売れることなく終わる人もいるでしょう。

これはどの分野でも同じですね。企業でもそう。どこよりも高い技術力を持ちながら、鳴かず飛ばずの会社もあります。

紳助に言わせると、それは運ではありません。単に成功理論を実践していないだけです。逆にいうと、芸の力だけで売れることの方が、幸運だったといわなければなりません。

だから紳助は、漫才というジャンルの流れを読もうとしました。過去に売れた漫才。いま売れている漫才。これらを徹底的に研究し、そのうえで、将来、どのような漫才が売れるかを見極めようとしました。

これが「時代の流れ」です。

「勝負の場は、寄席ではなく、テレビだ」「その際に必要なのは、じっくり聞かせる話芸ではなく、テンポのいいギャグや等身大のキャラクターだ」と読んだ紳助は「ヤンキー漫才」を作り上げました。それが、紳助竜介として一世を風靡したのは、衆知のとおりです。

自分が持っている武器をよく理解し、時代の流れに合わせる。

というのは、すべてのジャンルに応用できる成功理論ではないでしょうか。


大前研一の成功術とは


いまさら、なぜこんな話をするのかというと、この正月、著名な経営コンサルタントである大前研一氏がCS放送で「大前流成功術」というものを紹介していたのですが、その内容が、紳助の成功理論に似ていたからです。

まさか大前研一氏が紳助の成功理論を見たわけではないでしょうし、紳助が大前研一氏の成功術を意識したわけではありますまい。

だけど、紳助も大前研一氏も、論理的思考の権化といった人たちです。彼らが提唱する成功理論や成功術が似通っているというのももっともなことなのかも知れません。


大前氏の成功術は「5年後の世界を予測して、そこから逆算して成功する方法を考える」というものです。

5年後の世界が見えていれば、どうなるのか。

その世界の中で、どのような立ち位置をとれば成功できるのか(有利であるか)を考えることができます。

また五年後に力を発揮するためには、どのようなスキルや知識を身につけなければならないかを知ることができます。

成功への道筋が見えれば、あとはブレずに、コツコツと努力を積み上げていくのです。

5年後、というのが少し具体的ではあるものの基本的には紳助の成功理論と同じだということがわかっていただけるでしょう。


5年後を予測する


この5年後というのが絶妙です。

10年後だと遠すぎて予測しづらい上に、成果が出るまで時間がかかり過ぎます。

3年後だと近すぎてとるべき立ち位置に必要なスキルが間に合わないかも知れない。予測が外れた時の修正も困難です。

そんなわけで5年後に照準を合わせるのがいい。

常に5年後を意識して、毎年、チューニングしていけばいいのです。

とんでもなく予測が外れたら往生しますが、徐々にずれてくる分には修正が効きます。

予測とは、その都度、直していけばいいことなのです。


そんなもん、半年後どうなるかもわからないのに、5年後の世界なんて予測できるか!

と怒る人がいるかも知れません。

本当にそうでしょうか?

実際には、今すでに分かっていることも多々あります。

そうした当たり前にわかっていること、既に見えていることを集めていけば、5年後の予測はとんでもなく難しいものではありません。


ちなみに紳助は、過去流行った漫才といま流行っている漫才を紙に書き写し、過去にくらべて今の漫才は文字数が多いことを知りました。

そこから紳助は「話の間がどんどん無くなっている」ことに気づき、将来の漫才はさらに間がなくなるギャグの連打のようなものになると予測したのだそうです。


第3次産業革命の行方


今から5年後といえば、2024年です。

東京オリンピックの4年後であり、大阪万博の前年です。

その頃になると、世界はどのように変化しているでしょうか。


大きなくくりでいうと、第3次産業革命は、ますます進んでいきます。

(第3次産業革命とは、インターネット技術の進化と再生可能エネルギーへの代替を軸にした産業の変化を示す言葉です)

あらゆる産業においてネットワーク化とデジタル化が進み、産業分野の融合が進みます。

例えば、自動車は自動車メーカーだけが作るものではなくなります。

2020年にも自動運転車が市販されると言われていますが、それが普及すると自動車はコンピュータであり、家電製品であり、AIロボットであり、快適なリビングであり、ベッドルームになります。

トヨタとグーグルが自動車ユニットだけを販売し、それを使ってヤマダ電機やニトリが完成車を作って販売するようになるかも知れません。

あるいはアマゾンで組み立てキットを買って、各人が思い思いの自動車を造って使うようになるのかも知れません。

もちろん自動車だけではありません。

農業も、食品も、飲食業も、金融も、あらゆるメーカーも、サービス業も、卸も、ネットワークでつながり、融合していきます。

既にあらゆる分野のIT化が進んでいますが、これからはネットでつながることを前提とした産業の融合が進みます。

農業と製造業、サービス業と金融、飲食業と建設業といった具合に。

それがミスマッチな組み合わせであればあるだけ、新規ビジネスの爆発力が大きくなるかも知れませんね。


ネットワーク化が進むと、情報が適正化されるので無駄がなくなります。工場や問屋に在庫が積みあがるということもなくなり、全体的なコストが下がります。

大規模な工場や設備も一部企業だけのものとなり、投資コストが大幅に小さくなります。

起業に大掛かりな資本は不要となるので、起業アイデアとマネジメント力を持つ者にとって、チャンスの多い社会になっていくはずです。

楽しみにしていましょう。




世界経済の流れはどうなるか


短期的な世界経済の流れでいえば、減速傾向にあることは間違いありません。

世界銀行の見通しによれば、2019年の経済成長率は2.9%、2020年は2.8%で、ゆるやかに減速していきます。

今年は、ロシアやブラジルなどの新興国の減速がはっきりしています。

中国の動向も危ういです。

中国は、アメリカとの貿易摩擦で追い詰められていますが、内需拡大を急いでおり、現状6.2%の成長を継続できそうです。

ただ輸出が制限されたために内需拡大に走ったのは、かつての日本と同じです。日本の場合、それがバブル経済とその崩壊を招いたわけですが、中国はどうなるのか。

日本の失敗を見ているので、中国政府も同じ轍は踏まないと考えているでしょうが、13億人の国のバブルとその崩壊は、想像すらできないほどの破壊力を持つはずです。

だから隣国のわれわれもよほど注意していなければなりません。

その中国に貿易戦争を仕掛けるアメリカも無事では済みません。

2020年には成長率を大幅に下げる予測となっており、こちらの影響も甚大です。

早くまともな大統領に交替してもらいたいものです。




日本の状況は


日本も世界経済の影響を受けますから、決していい傾向とはいえません。

東京オリンピックが終わるまでは景気拡大は続くと楽観的なムードの強い日本ですが、ブラックマンデー並みのショックがアメリカから来ないという保証はありません。

もしオリンピックまでもったとしても、その後に調整局面が来ることは、大方の予想の一致するところです。

不動産の価格もいったん下がるはずです。

特に首都圏は、オリンピック景気で嵩上げしているだけに、落差の大きな谷が来るでしょう。


大阪はどうでしょうか。

2025年に万博が決まったこともありますが、それ以前から、大阪の経済は好調が続いています。

一つは長い年月続いていた大阪府と大阪市の二重行政の無駄が削がれて、一方向へ進むことができていることです。

万博の誘致もその成果ということができるでしょう。

万博の後、会場の夢洲あたりには、カジノを含む統合型リゾート施設ができると期待されています。

カジノの解禁は、アジアからの観光客を誘致するのに大いに資することでしょう。

いま日本には3000万人を超える訪日客が来ていますが、その恩恵を最も受けるのが大阪です。

大阪といえば永らく地盤沈下著しい地域として有名でしたが、ついに底を打ち復活の道を歩み始めたのだとみることができます。


このまま府と市の一体運営が続き、アジアからの訪日客を取り込むことができれば、大阪はさらに伸びていくはずです。

直近の世界的な経済の減速からは逃れることができないでしょうが、その影響は少なく済んで、2025年に向けて回復していく途上にあると予測します。


私のビジネスの範疇でいえば


もっと大きな視点でいえば、先進各国は、少子高齢化に突き進んでいます。その最先端をいくのが日本です。

私の仕事の範囲でいえば、労働人口が不足するので、人手不足が深刻化します。

それを補うためにはどうすればいいのか。

一つは、女性や高齢者の社会参加です。そのために環境を整備することが必要です。

あるいは、外国人労働者の受け入れです。

いずれにしろ、今と違う人たちを職場に迎え入れるわけですから、様々な労働問題が発生します。

その解決や調整を担うのは、われわれ士業やコンサルタントの役目です。


人を受け入れるだけではなく、効率化し、生産性を上げることも必要です。

仕事の中に、ITやAIを取り込むことで、一人が担当できる量を増やすことです。

営業の仕事ひとつとっても、AIを採り入れることで、作業を効率化させることは可能です。

そのための仕組み作りは、営業の専門家が担うべき仕事です。


人手不足となれば、小さな会社は廃業の危機に晒されます。

総務省の調査によれば、2025年に70歳以上となる中小企業・小規模企業の経営者は245万人になります。

そのうち約半数が後継者不在の事態に陥ると予測されています。

いくら中小企業・小規模企業といえども122万社が一気に廃業すれば、日本経済は壊滅的な被害を被ります。

そうなってはえらいことですから、政府は事業承継の促進を重要課題として進めていきます。

特に小規模企業のM&Aは、これから増加してくるはずです。

会社を定年してもまだ体力気力のある人が、退職金で会社を買って経営者になる、という話は半ば夢物語として語られていますが、これは現実になってきます。

あるいは官民ファンドがいったん買い取って、経験豊富な専門家を経営者として派遣し、道筋をつけた後、従業員ややる気のある若者に引き継ぐ、といったスキームを作らなければなりません。

もちろんその際に経営の役割を担うのが、中小企業診断士を中心とする経営の専門家であるべきです。




それぞれのビジネスに落とし込む


このように5年後の社会予測をそれぞれのビジネスに落とし込めば、どこに役割があるのかを類推することができます。

もちろん全部をカバーするわけにはいかないので、そのうち一つか二つに絞ることが大切です。

私も絞っていますが、いまは秘密です^^

絞った上で、その5年後の立ち位置に向けて、自分のスキルや知識を磨いていくことです。

やはり、5年後のことなんかわからない!

と言う方もいるでしょうが、心配しないようにしてください。

真剣に考えると、いろいろ見えてくるものがあります。

情報も集まってきます。(意識して情報を集めるようになります)

流されて受け身に生きる者と、自分から時代にクロスしていこうとする者とどちらが成功に近づくのか。

それは明白です。


さすが島田紳助であり、大前研一ですね。

今回、「戦略勉強会」でこの成功術を試してみたのですが、その有効性を確信しました。

5年後の世界を予測しながら、いま何をすべきかを考え続けることは、非常に有用です。私はこれを続けていこうと思います。

平成が終わっても、人生は終わらない

平成が終わっても
(2019年1月10日メルマガより)



平成も今年の4月で終わってしまうのですね。

なんだかアッと言う間でした。

小渕恵三官房長官(当時)が紙に書いた「平成」という文字を掲げたテレビの画面を昨日のことのように思い出します。

私なぞ、まだ昭和の気分を引きずっている者ですから、こんなに早く平成が終わってしまって、いったいどう考えればいいというのでしょうか。

これから4月にかけて、マスコミではいっせいに「平成の総括」を特集するでしょうが、それに先立ち、私もやってしまいます。

超個人的な平成の総括です。


平成30年で躍進したのはアメリカ企業


テレビの特集番組をみていると、平成元年の株式時価総額ランキングが並べられていて印象的です。

平成元年の世界の株式時価総額ランキングをみると、なんとトップ10のうち、8社が日本企業です。残り2社がアメリカ企業。

1位:NTT、2位:住友銀行、3位:日本興業銀行、以下金融機関が続く。

ところが、平成30年の時価総額ランキングは、トップ10のうち8社がアメリカ企業、残り2社が中国企業です。

1位:マイクロソフト、2位:アップル、3位:アマゾン、4位:アルファベット(グーグル)、5位:バークシャー・ハサウェイ(投資会社)

ちなみに株式時価総額とは、株式市場で取引される株価の総額です。買いたいと思う人が多ければ多いほど株価は上昇します。いわば株価は、その企業に対する期待値であり、将来性を示しているとみることができます。

またアメリカ企業全体の株式時価総額も9倍以上に巨額化しました。この30年でアメリカ企業がいかに成長したかを示しています。

これに対して、日本企業全体の株式時価総額は、半分近くに目減りしています。

アメリカや中国企業の急成長に比べて、日本企業の凋落ぶりを表しています。


アメリカと中国に挟まれた日本


思えば平成元年は、バブル経済まっさかりの時期です。東京23区の土地価格でアメリカ全土が買えるといわれた時代です。それは、株価も高いというものですよ。

しかし、それだけではありません。バブル崩壊のショックから充分に立ち直ったとはいえない日本に比べて、アメリカは、製造業の構造的な衰退、特に自動車産業の弱体化、あるいはリーマンショックのような金融危機に見舞われながらも、着実に経済規模を拡大してきました。

そこには、アメリカという国の底力が現れています。

平成が始まる頃「ジャパン・アズ・ナンバーワン」という著作がベストセラーになるほど日本の台頭に危機感を抱いたアメリカは、アメリカ車をもっと買えとか、カリフォルニア米を買えとか、理不尽な要求を突き付けて、日本を困らせました。

それだけならただのわがまま国家ですが、その裏では、日本企業が得意とする製造業に見切りをつけて、IT、金融、ヘルスケアの分野に投資を集中させるという実に適切な選択と集中をやってのけたのです。

その結果が、時価総額9倍という今につながっています。アメリカの逆襲は見事というほかありません。

いっぽう中国は、13億人という巨大な内需を背景に、急成長をしてきました。普通に考えれば、それだけの人口を擁する国ですから、近いうちに世界一のGDPに到達することでしょう。

またもや危機感を抱いたアメリカは、中国IT企業を同盟国から締め出させたり、難癖をつけて貿易戦争を仕掛けたり、なりふり構わぬ封じ込め策に出ています。

今度、アメリカはどのような戦略をもって中国と対峙するのか、それはそれで見ものです。

が、大切なのは、その巨大国の間に挟まれているわが日本は、どのような方向性を以て生き残っていくのかということです。


バブル崩壊のツケを支払わないままの30年


かつて日本は、官民一体になって、ひとつの方向を目指していました。

資源のない日本では、海外から原材料を輸入し、それを加工して付加価値をつけて海外に売る、というビジネスモデルを志向しました。

当初、日本製といえば猿真似ばかりで粗悪品だと揶揄されていたのですが、ひとつのことにコツコツと取り組み、品質を高め、技術を蓄積するという方法は、日本人の気質に合っていたのかも知れません、いつしか技術力が世界を席巻するようになりました。

昭和の60年間、途中に敗戦経験があったものの、日本は「極東の奇跡」と称賛されるようになり、世界第2位の経済大国にまで上り詰めました。

安くて品質のいい日本製品はアメリカ企業の脅威となりました。業を煮やしたアメリカが「安売りばかりしやがって!」と怒り出し、強引にドル安に誘導していったのは、仕方なのないことでした。

円高になって、輸出がやりにくくなった日本企業は、アメリカなど現地に生産工場を作って、為替問題とアメリカとの経済摩擦問題を解決しようと図りました。

それはそれで効果を上げたのですが、このあたりから、日本得意の官民一体型の経済政策にほころびが出てきたように思います。

輸出ができなくなった日本企業は、1億人の日本国民に売ることに活路を見出し、お金が日本国内で回るようになっていきました。

余ったお金が土地に投資されて地価上昇を招くと、お金を余分に持っている人たち、あるいは山師っけのある人たちはさらなる価格上昇を見越して土地を買い漁りました。

土地ほんらいの価値などそっちのけで、値上がり転売目的の過剰な投機が日本中で行われたのです。

(土地だけではなく、美術品やゴルフ会員権などにも過剰な投資が行われました)

これがバブル経済でした。

あまりにも実体とかけ離れた価値が独り歩きしてしまったので、どこかで調整しなければならなかったのは必然です。

だから、平成のはじめに起きたバブル経済の崩壊は、昭和時代のツケを払ったということで、ある意味、そのツケを払い終わらないまま今に至っています。


極私的な平成ふり返り


実をいうと私は、平成元年(1989年)に社会人となりました。

私自身、昭和の気分を引きづったまま生きてきた人間ですが、考えてみれば、平成のスタートとともに社会人生活を送ってきたのですね。

入った会社はそれなりに大きな化学メーカーでしたが、配属されたのはステンレス魔法瓶を製造販売する傍流の弱小事業部でした。

赤字続きで売却か廃業かを検討されるようなポンコツ事業部だったことに身の不幸を嘆いたものですが、ポンコツ社員なりに集まって知恵を出し合って、生き残る道を探ってきました。

その甲斐あったというべきか、小さな事業部は奇跡的なV字回復を果たして、魔法瓶の世界トップ企業サーモスとなりました。今や、グループ内でも有数の高収益企業です。

そのあたりの経緯は、拙著『「廃業寸前」が世界トップ企業になった奇跡の物語』をお読みください。



平成16年、私は会社を辞めて独立しました。

そのままサーモスにいたらよかったのに、と未だに言われますが、独立したかったのだから仕方ありませんな。

そこから先はサバイバルの世界です。

なにしろ平成の30年は、経済成長なき30年です。まわりと同じことをしていたら、同じように鳴かず飛ばずになってしまいます。ことに私は一家四人を養っていかなければならない立場ですので、鳴かず飛ばずどころか、立ち枯れてしまいます。

その意味では「いかに生き残るか」をテーマとするランチェスター戦略や孫子の兵法を学んできたのは幸運でした。

ランチェスター戦略を知らなければ、サーモスの奇跡的な成長もなかったでしょうし、独立して15年間も生き残ることはなかったでしょう。



というわけで、私にとって平成の30年は、前半の「サーモスが世界トップ企業になるプロセスに伴走した」15年と、後半の「ひとりでビジネスを立ち上げ生き抜いていく」15年でした。

これからもサバイバルは続いていくのでしょうが、これまでと同じく、なんとか生き抜いていかなければなりません。

デジタル化革命がビジネスを普遍化した


アメリカ企業の躍進にみられるように、平成30年は、IT化、デジタル化の時代でもありました。

平成元年にはパソコンが普及しつつありましたが、平成19年には初代iPhoneが発売されて、一人一台ネットにつながる時代が本格化しました。

基本的にはすべての人間が世界中とつながることができますから、その影響は甚大です。その気になれば誰もが知りたい情報にアクセスすることができて、判断するための材料を得ることができます。

もうすぐ言語の壁もなくなるでしょう。自動翻訳機の進化もすさまじいですから。

同時に、デジタル化の進展は、コストの壁も低くしています。誰もが安価で質の良いインフラサービスを受けることができるようになってきました。

つまり、かつては大きな資本を持つ者しかできなかったビジネスの立ち上げを、はるかに小さな初期費用でできるようになってきました。

まさにやる気とアイデアと仕組みと勤勉さによって、誰もがビジネスを成功に導くことができる時代になってきたのです。


グローバル化時代にこそ必要な選択と集中


デジタル化はグローバル化につながります。

情報の壁が取り払われれば、世界は心理的に身近な場所になってきます。

大阪にいながら世界の辺境について知ることができますし、世界の辺境にいて大阪の状況を知ることができます。

情報を得ることができる場所は、気持ち的にはご近所です。私にとってアゼルバイジャンは、三重県の尾鷲よりも近いかも知れない。

ビジネスにおいても、尾鷲の方々を顧客にするよりも、世界の特定の人たちを相手にした方が、いい場合だってでてきます。


だからといって、世界中の人が顧客なんだから無限に売れるぞー。と能天気なことを言う人はあまりいないでしょうね^^;

皆に売る。とは、誰にも売っていないのと同じです。ターゲットを絞らないと、販売などできません。

対象顧客が世界に広がったからといって、自然に売れたりするなど妄想の類です。


先ほども言いましたが、アメリカの今日の繁栄は、的確な選択と集中によってなされたものです。

選択と集中と簡単に言いますが、実際、それをやりきるのは並大抵ではありません。

選択から漏れた産業や業界にも、既得権益を持つ人たちが大勢いるわけですから、それらの抵抗を無視して政策を進めるのは、かなり思い切った覚悟が必要です。

伝統的に欧米の企業は選択と集中(ポジショニング戦略)が得意だと言われますが、国家ぐるみの大掛かりな施策には、さすがに驚きます。


グローバル時代にこそローカル化していく


では、今の日本が、それほどドラスティックな割り切りができるものでしょうか。

できないでしょう。

日本には日本の良さがありますが、戦略的な選択や、それに伴う切り捨てや割り切りは、日本人が苦手とするものです。

歴史があって、1億人以上も国民がいて、既得権益者がこれだけ各業界に存在する日本において、今さら国全体が一つの方向に進むということは考えにくいです。

だとすればどうすればいいのか?

一つの方法は、国という大きな単位ではなく、地方単位で意思決定できるような制度に改めることです。

例えば、大阪府の人口は886万人です。

これは、香港(805万人)やスイス(766万人)やオーストリア(839万人)に近い規模です。

この規模の国は、国内で経済を回すには小さすぎるので、グローバルに展開しなければやっていけません。

だから彼らはそれぞれ特長を磨き、世界で勝てる分野に方向を定めています。

(例に挙げた国は、たまたま金融に特長がありますが)

すなわち、規模が数百万人というグループは、ポジショニング戦略をとらざるを得ない状況なのです。

日本もその規模に分かれて、各グループが独自の戦略で生き残る方法を考えていけばいいのです。

その場合、国にいちいちお伺いを立てていたらスピードが鈍るし、小姑が介入してきて面倒なので、地方だけで政策を決められるようにすればいい。

何より、自分たちで自分の命運を決めることができます。政治にも関心が出てくるでしょうし、選挙にも真剣に取り組むというものですよ。

道州制構想は、この考えのもとに考えられています。

いま日本政府国家に期待するのは、道州制構想のように、地方への権限移譲をしてくれること、その一点です。

そうじゃないと地方だけではなく、日本全体がじり貧になってしまうと思うからです。


国に頼れないなら自分で生き残っていくしかない


いや、それでも日本は割り切れない。という意見もあります。

なにより既得権を持つ中央省庁が、地方に権限を渡すわけがないじゃないか。

そうかも知れませんね。

だとしたら、国や行政に期待するのはやめましょう。

我々個人個人が、自分で生き残るための方向性を見定めて、サバイバルをしていかなければなりません。

そういう覚悟も必要ですよね。


私は、今まで通りサバイバルの日々を続けてまいります。

 

トランプ大統領の時代はこのまま続くのか?

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新年、いきなり株が暴落して往生しております(*_*)

その大きな要因がアメリカ大統領にあるというのだから、まいったもんです。

5つの深刻な危機とは


記事のいう5つの深刻な危機とは

1.トランプ大統領の頭を占拠する政治的危機

2.アメリカの株式市場の先行き不透明感

3.アメリカ国内外の安全保障政策の危機

4.ジェームズ・マティス国防長官の辞任

5.トランプ氏の大統領としての法的地位の危機

ということですが、詳細は記事をお読みください。

アメリカファーストではなく、選挙勝利ファースト


トランプ氏の行動原理は自分の一族の利益を優先することであり、政権運営に真面目に取り組んでいるとは思えません。

気に入らない報道には「フェイクニュースだ」の一言で片づけるので、さすがのマスコミもあっけにとられてどう対処していいかわからない状態です。

閣僚や政府高官は、イエスマンばかり。意見が異なる人物はどんどん辞めさせており、いま2回転目に入っています。

いわば中小企業のワンマン経営者が、アメリカという世界一の国家の運営主体になっているのだから悪夢以外の何物でもありません。

トランプ大統領の拠り所は、熱狂的な支持者である貧困白人層で、彼らが喜ぶようなことを言い続けていると選挙で勝てると踏んでいるらしい。

選挙で勝つことだけを目的に行動しているのだから、民主主義の良識もなにもあったものじゃない。

こういうことは、トランプ氏登場の頃からわかっていたのですが、多くの人は、まさか大統領になってまでそのまま無茶苦茶を貫くとは思っていませんでした。

選挙を乗り切れば、一定の良識を持った振る舞いをすると考えていたものですが、甘かった。

グローバル時代の覇権を自ら放棄


21世紀、グローバリズムを先導してきたのはアメリカです。ITと金融の分野で世界制覇を果たし、自国に利益を還流する仕組みを作ってきました。

トランプ大統領は、それを自ら破壊し、自国主義に回帰しようとしています。どうやらトランプ氏には、アメリカが国外で金を使い過ぎており、使わなくなると得になる、と考えているらしい。というか、国内の支持層が喜ぶと考えたのでしょう。

グローバリズムの恩恵を最も受けているはずの国が、国内ローカル層によって反旗を翻されたわけですから皮肉なものです。

トランプ大統領は、中東をはじめ世界中から軍を撤退させる動きを見せています。目先の軍事費は削減できますが、そのために世界中で絶大だった影響力を失うことになり、結局は国力を弱体化させることにつながります。

ひそかに喜んでいるのは、ロシアやヨーロッパ諸国でしょうね。

中国の頭を叩くことには一定の成果


トランプ大統領に使い道があると目されているのは、中国との関係でしょうね。

今世紀中に世界一になると宣言している中国は、アメリカにとって脅威ですが、そこにトランプ大統領は噛みついています。

良識のある大統領にはとてもできない言いがかりレベルの理由で貿易戦争を仕掛けており、中国の封じ込めに成功しつつあります。

これはトランプ大統領にしかできないことだったでしょう。


しかし、このままマイナス部分が大きくなってくると、本当に取り返しのつかないことになるので、近いうちに大統領の弾劾があることでしょう。

ニクソン大統領に続いて、任期中に辞めざるを得ない大統領になるのかも知れませんね。

いや、それよりも、世界的に調整局面にある経済状況が気になります。

経済の実体と貨幣の流通量があまりにも乖離していると何年も前からいわれており、いつか世界中がバブル崩壊に見舞われると考えらえています。

どうせ恐慌がくるならトランプ大統領の時代に来ればいいやと、アメリカの議会は考えているのかも知れません。

もしこのままトランプ政権が続くならば、我々はいよいよその時に備えていなければならないということですね。





サーモス(THERMOS)V字回復の鍵は「接近戦」にあり

サーモスV字回復


(2018年12月27日メルマガより)



業績が伸びない、売上や利益が落ちてきた、という会社の話を聞いてみると、その原因は、(1)努力が不足しているか、(2)努力はしているが空回りしているか、に集約されます。

たいていはその両方です。

と言えば怒る会社もあるでしょうね。もちろんコンサルタントに相談に来るのだから、自分たちなりに努力していると自負されています。が、努力が足りていないことが多いのが実感です。

ですから(1)については、一人一人が努力できるような環境を整えていきます。簡単にいうと、売るための仕組みを作って、それを回すためのマネジメント体制を整えます。


生き残るためには「勝てる局面」を見つける


(2)については、そもそも努力が成果に結びつくような流れができていないということです。

これは悲惨です。どんなに頑張っても、努力しても、成果に結びつかない。空回りだから徒労感はあるわ、成果が出ないので報酬にも結び付かない。いわゆるブラック企業になってしまいます。

社員を努力させるからには、成果が上がるような態勢を作らなければなりません。それが会社の役割です。

成果が上がるような態勢を作ることこそが、戦略を立てることであり、私の言い方では「勝てる局面で戦う」ことです。


私が入社した頃のサーモスも同じでした。

自分たちなりに努力していると思い込んでいましたが、努力の仕方もまだまだ未熟でしたし、何より努力の方向性が間違っていました。

働けど働けど我が暮らし楽にならざり。

こういう場合、愚痴言ってないでさっさと働き方や内容を見直さなければなりません。

特に、自分たちが「勝てる局面」を捉えているのか、が重要です。

まずは「勝てる局面」を見つけること。そうじゃないと、生き残る道筋さえ見つけることができません。


「弱者の戦略」「差別化」「5大戦略」


ランチェスター戦略には「弱者の戦略」という概念があります。

数が多い側、よく売れている側のことを「強者」といい、逆に数が少ない側、売れていない側のことを「弱者」といいます。

強者と弱者が同じ戦い方をしていたら、もともと数が多い側である強者が、必ず有利です。

だから、弱者は、強者とは違う戦い方を選びます。

これを「弱者の戦略」と呼びます。


弱者の戦略の基本となるのが「差別化」です。

商品、チャネル、価格、プロモーション、営業、すべてにおいて強者とは違うやり方を選び、土俵を変えて戦います。



さらに弱者の戦略には「5大戦略」と呼ばれるものがあります。

こちらも以前、簡単にですが、メルマガに書いたことがありました。



今回は、その中のひとつである「接近戦」をとりあげてみます。


業績低迷時には「接近戦」ができていなかった


「接近戦」とは、対象に接近して戦うことを示したものです。

たとえば敵の顔前に接近して戦えば、1対1の戦いに持ち込むことができて、数的劣勢を無効化できます。

戦いにおいての対象は敵ですが、ビジネスにおいてはおよそ(1)最終顧客、(2)流通業者、(3)ライバル会社で考えることができます。


サーモス時代、ランチェスター戦略に触れた我々が、まず気づいたのが「差別化」と「接近戦」ができていない。ということでした。

商品も売り方もチャネルも、強者であるライバル会社の受け売りばかり。

営業は、代理店(問屋さん)の機嫌取りに走っていました。

あまりにもセオリーに反したやり方だったので、逆に「まともにやれば売れるかも」と光が見えた気がしたぐらいです。


そこで我々が取り組んだのが、徹底した接近戦の展開です。

これが、結果的には「勝てる局面で戦う」ことにつながっていきました。


(1)最終顧客に接近する


強者は売れる商品を持っているので、仲介業者を活用することで販売機会を増やすことができます。

しかし、弱者は知名度もブランド力も販売チャネル支配力にも劣るため、販売機会は作れないし、作ったとしても売り負けてしまいます。そこを突破するためには、最終顧客に直接売るか、なるべく近いところでビジネスする必要があります。

そもそも、最終顧客に近づかなければ、最終顧客の情報が得られません。それでは、商品開発のヒントさえ得ることができません。

サーモスの場合、営業人員が少ないという事情があったので、代理店に頼り切りになっていました。

しかしそれではいつまで経っても、強いライバル企業の支配力に風穴を開けることなできないでしょう。

メーカーは、代理店に任せきりになるのではなく、自分で最終顧客のことを理解しなければならなかったのです。

そこでサーモスは、消費者調査を徹底する施策をとりました。

調査会社を使った消費者アンケート。

賞品つきキャンペーンを利用した利用状況調査。

消費者からのアイデア募集。

商品の箱に消費者あてのハガキを入れて回収。

社員が町に出て使用者にインタビュー(これはどちらかというと社員の士気高揚のため)

当時としては、相当のことをやっていたと思います。

最初は「予算をいっぱい使って有益なことがわかるのか?」と批判もありましたが、そんな調査のおかげで、今まで盲点になっていたあっと驚く事実に気づくことになりました。

(それが何かは、著書をお読みください^^)

消費者をよく理解することで、弱者であるサーモスでも「勝てる局面」を見つけることにつながったのです。


(2)小売店に接近する


それまでサーモスは、仲介業者である代理店にばかり営業をかけていました。

いや、営業とは名ばかりで、単に代理店の機嫌をとっていただけです。

代理店の倉庫を掃除して、ご褒美に魔法瓶を納品させてもらったりしていました。ほんとあほですね。

弱者は、最終顧客に近いところでビジネスしなければなりません。できれば最終顧客に直接販売するのが望ましい。

今ならネット販売も発達しているので、それもアリですね。ただ当時も今も、魔法瓶の販売チャネルの主要売り場は、量販店です。

つまり量販店チャネルを攻略しなければ、大きな販売需要を取り込むことはできないのです。

人数が少ないからとかへったくれだとか言っていられません。

サーモスの営業部は、代理店営業の方針を転換して、小売店への直接営業に切り替えました。

それまで行かなかった店やバイヤーに営業することは、それはそれはハードルが高い作業でした。

しかし、そんなハードルなど何物でもなかったぐらいの恩恵を得ることとなりました。

小売店のバイヤーには厳しい人が多かったですが、いくら叱られようとドヤされようと、企画が決定する場面に自ら立ち会えることは、営業としてやる気の出ることでした。

それ以上に驚いたのが、直接小売店に行くことによって得られる情報の質と量でした。

やはり代理店を通じて、得られる情報は、量も少なく、バイアスがかかっていました。

小売店の意思決定の場に立ち会うことで、営業としての必要な情報が何かということを否応なしに知ることになったのです。


収集した情報を基に、どの小売店なら勝ち目があるのかを見極め、営業力を集中させていきました。

ここでも「勝てる局面」を見つけていったのです。

その時、大いに参考にしたのが、ランチェスター「流通戦略」です。

市場シェアを緻密に、段階的に上げていく方法論は、サーモスの市場シェアを確実に向上させていきました。

理論を学びながら実践に落とし込む作業は大変でしたが、その甲斐あって、サーモスは、営業の方法論を実践的知識として獲得し、会社としての営業スタイルを作り上げていきました。

なお、その頃、実践を繰り返しながら覚えた方法論が、私の今の仕事の基盤にもなっています。


(3)ライバル会社に接近する


ライバル会社がたくさんいる市場では、差別化が効きにくくなります。差別化しても、どこかと被ることが多くなってしまうからです。

それぞれが差別化して何がなんだかわからなくなると、消費者は単純に「いちばん売れているもの」を選ぶようになります。

これを確率戦の市場といって、強者に有利な市場です。

弱者は、そうなっては勝ち目がありません。そこで、どこか一社に絞って接近し、1対1の状況を作ることになります。

1対1なら、差別化が有効に働くからです。


サーモスは、上位2社と同時に戦うことは得策ではないと考えて、一社だけに照準を絞りました。

あえて1位企業とは考えを合わせて、2位企業と対立するようにしました。

1位企業と協同して、2位企業を追い落とす行為です。

汚いやないか、と言われそうですが、それが戦いの世界です。我々はなんとしても「勝てる局面」を見出さなければならなかったのです。

もし1位企業がそのことに気付いていたら、我々と歩調を合わせることはしなかったでしょうが、その当時は有効でした。

こういうところにも、戦略を理解している、していない会社の差が出たのだと思います。


接近戦の徹底が、勝てる局面を見つけ出す


こうしてサーモスは、接近戦を徹底することにより「勝てる局面」を見つけていきました。

どんな強者にも、気づいていない局面、とるに足りないからと見逃している局面があります。

そういう死角や盲点こそが、弱者にとって「勝てる局面」です。

全体を俯瞰していても見えない、そんな隙間を見つけるためには、顧客や流通や競合他社に接近すればいい。

接近することでしか見えない局面は必ずあります。

それを見つけられるかどうかが、まさに会社生き残りの鍵となります。

アパホテルが活用しているランチェスター地域戦略の中身

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アパホテルの元谷代表が、ランチェスター戦略について言及されています。

アパホテルは、ランチェスター戦略を大いに役立てて、成果を上げてきたということです。

「西側拠点説」


記事に書かれているのは、ホテルの立地に関する地域戦略です。

一つは「西側拠点説」

ある地域を攻略するためにまず西側を押さえる、という考え方です。

田岡信夫氏は、この説を「ジンクス」とも称しており、明確な科学的根拠があるわけではないようですが、日本の天候は西から変わることが多いので、開拓するにおいても西側から見ていくのがいい、と一応説明されています。

アパホテルは、この説に従って、立地戦略を組み立てていたとのことです。

「3点攻略法」


もう一つは「3点攻略法」

やはりある地域を攻略したい場合、いきなりその地域に攻めかかるのではなく、A地点、B地点、C地点と、その地域を取り囲む拠点を攻略した後に、真ん中を攻めるという方法です。

こちらは、多くの企業が立地戦略をたてる上で参考にしています。セブンイレブンなどのコンビニや飲食チェーンなどが知られていますが、アパホテルもその一つだったようです。

3点攻略法は、ランチェスター「地域戦略編」のハイライトでもあり、実践的な方法論です。

ここでは省きますが、最初にどの拠点を狙うのか?2番目は?3番目は?真ん中はどのように攻めるのか?と細かく規定されています。


そのほか、一点集中主義や市場シェア目標値などにも言及されており、アパホテルが、この戦略をかなり活用していることがわかります。

さすがリアルの塊のような企業です。使う戦略もリアルです。

日本流マーケティングの正体


私は、ランチェスター戦略の専門家ですし、普段から活用することが多いので、実感していますが、ほんとうに実践的な戦略理論だと思います。

特に、市場シェアを段階的に着実に積み上げていく方法論は、ほかの戦略理論にない緻密さと迫力を持っています。

マーケティング学者のフィリップ・コトラーは、販売領域を絞り込み、どう攻めるかを慎重に判断する販売方法を日本流マーケティングと呼びましたが、その内容はランチェスター戦略を想定していると考えます。

(アンドリュー・キャンベルは、ランチェスター戦略のことを「レーザービーム式マーケティング戦略」と呼んでいます)

販売力の強化を目指す企業は、ランチェスター戦略に取り組むべきです。





「金のなる木」を吸い尽くすソフトバンクの上場政策

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ソフトバンクグループのソフトバンク(ややこしいですが、ソフトバンクの携帯電話を扱う会社です)が先週、株式上場しました。

売り出し総価格が2.6兆円ということで、日本最大の大型上場と騒がれましたが、売り出し後は株価が下がってしまいました。

伸びしろのない携帯電話事業


ただこの上場については、株価が下がるのも無理はないという材料がありました。

先日の大規模な通信障害というのもタイミングが悪かったですが、それは主要因ではありません。

そもそも先進国の携帯電話需要は頭打ちで、飽和状態です。他社から大幅に顧客を奪わないと、これ以上の成長は望めません。

しかも日本の場合、政府から「携帯電話料金はもっと下がるはずだ」と目の敵にされており、さらなる値下げ圧力がくるのは明白です。

売上規模の拡大は望みにくい状況です。

高い配当金はグループに還流


いうなれば、配当性向を上げなければ、売れる要素がないという株式だったのです。

ちなみに、配当性向とは、企業の税引き後利益のうち配当金にまわす割合を示したものです。

株主にとって、得られる配当金が大きくなるので、配当性向が大きければ得した感が増します。

85%というのは異例の大盤振る舞いです。

が、株式の6割以上を親会社のソフトバンクグループが保有しているので、何のことはない、グループ内に還流されることになります。


それなら株式上場なんてしないで、携帯電話で得られた現金をグループで使えばいいやん。とも思います。

なぜわざわざ上場したのか?

ソフトバンク側は、携帯電話事業にはこれ以上の伸びしろはないとみて、人員の4割をAIなどの新事業に振り分けるといっています。

その新事業を育てる資金も必要でしょうに、85%を配当金に回すというのですよ。

「金のなる木」を一部解放しても現金が必要だったのか?


ソフトバンクグループは、18兆円の有利子負債があり、年間2620億円の利息を支払っています。

その利払いは、今後、携帯電話事業からの配当金でまかなうとして、今現在、上場して得た資金も、財務基盤の強化に使うとみられています。

要するに、それだけ切羽詰まった状況があるということです。

これ以上伸びしろのない携帯電話事業は、まさに「金のなる木」として、吸い尽くそうという施策ですな。

今回、新規上場株を購入された方には申し訳ないですが、配当性向の高い安定株と考えるには、売り出し価格が高すぎたように思います。

もっと株価が下がってきたら、買い時が来るでしょうが。





大塚家具のギリギリの逆転策は、身売りにつながるのか?

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大塚家具が、中国家具販売大手と業務提携するとのことです。

カウントダウンは始まっていた


壮絶な親子喧嘩から3年経ち、大塚家具は危険な局面を迎えていました。

最終局面に入った大塚家具

最大8割引きの在庫一掃セールなんて自分の足を食べるような施策をやるものですから、いよいよカウントダウンが始まったと誰もが思ったことでしょう。

恐らく今回の施策が最後の頼みとなるのではないでしょうか。

今まででいちばん筋のいい施策


ただこの業務提携ですが、大塚家具がいままで手掛けた施策のなかで最も筋がいいものだと思います。

中国の富裕層に向けて、日本の高級家具を販売するということですから、現実味があります。

このニュースを受けて株式がストップ高となったとのこと、市場も一定の評価をしています。


ただギリギリの局面での業務提携ですから、恐らく将来的な経営権の譲り渡しも含めた資本参加交渉を詰めていくことになるのでしょう。

行きはよいよい帰りは怖い。みたいな

やはり取り組みが遅かったと言わざるを得ません。





主力事業が消費期限切れで苦境に陥るカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)

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TUTAYAを運営するカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)が苦しんでいるようです。

TUTAYAは既に賞味期限切れ


レンタルDVDチェーンのTUTAYAは、既に賞味期限が切れて、勢いをなくしています。

ネットフリックスやアマゾンプライムなどの動画配信システムや、同じくアマゾンプライムなどの音楽配信システムに押されてしまっているからです。

私が利用する駅の前にあったTUTAYAも撤退しました。なくなれば寂しい気もしますが、あったとしてもそれほど利用していたわけではありません。

面白い映画がないか探しに行って、実際にはアマゾンやネトフリで観てしまいます。

TUTAYAでさえもショールーミングの影響を受けているわけですな。

ショッピングセンターの再生に力を発揮?


こうなることはもう何年も前からわかっていたはずです。

同じくレンタルDVDチェーンとして名をはせたDMMは、若い起業家をあつめて、無軌道だと思えるほどの多角化展開をしています。

こちらは非上場企業ですから、ライザップと違って株価を釣り上げる意図はありません。堅実にやっているのでしょうね。

それに対してCCCは、お洒落な本屋の運営や図書館の運営で存在感を示しています。

創業者の増田氏による店舗運営の能力を最大限に発揮しているのでしょう。

増田氏のもとには、再生を頼みたいショッピングセンターや自治体からの問い合わせがひっきりなしに来ているそうですよ。

なぜネットフリックスになれなかったのか?


ネットフリックスの台頭をみてみると、なぜTUTAYAがこれをできなかったのか?と歯がゆい思いになります。

ネットフリックスの前身は、DVDの宅配レンタル業者です。

その会社がこれほどの大躍進を遂げたのだから、TUTAYAにもチャンスがあったはずです。いや、もっと可能性が大きかったでしょう。

TUTAYAのフランチャイズ店に遠慮して、店売上が下がるような動画配信ビジネスを手掛けられなかったと増田氏が発言しているのを聞きましたが、そんな安直な言い訳をしてどうする?と呆れていました。

しかし事情を聞いてみると、増田氏は、その前にCS放送運営に失敗しており、新たに動画配信ビジネスに取り組むような状態には(精神的にも経済的にも)なかったようです。

動き出すタイミングが早すぎたのですね。もったいないことです。

スマホ決済の時代にTポイントは生き残れるのか?


残ったCCCの命綱が、Tポイントだったわけですが、それも最近は苦しくなってきています。

楽天ポイントやdポイントの台頭。

さらには、スマホ決済の登場により、リアル店舗とネット通販双方の情報を一元管理できる方法が確立されてしまいました。

だから楽天もドコモも、いち早くスマホ決済に進出しました。

これに比べて、リアル店舗での情報しか得られないTポイントに、高い手数料を支払う必要はないと多くの小売店が考えるはずです。

このままでは、スマホ決済が世の中に普及する前に、Tポイントの消費期限が切れてしまいます。


まさに四面楚歌。

増田氏は中国人の訪日客に向けたビジネスを構想しているようですが、縮小していく事業のポテンシャルに比べて見劣りしてしまうと思うのは、私だけでしょうか。





小僧寿しって、ひどい状況だったのですね

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小僧寿しの興廃を書いた記事です。

実をいうと、この記事を読むまで小僧寿しのことはあまり意識してなかったのですが、けっこうひどい状況だったのですね。。。

17年12月期の連結決算は、売上高が54億2000万円(前年同期比0.8%減)、営業損失は3億2500万円となった。今期も非常に厳しい状況が続いており、18年第3四半期決算では、売上高が39憶800万円(同0.1%減)、営業損失は4億1100万円となっている。

業績の低迷は慢性化しており、出口が見えません。

寿司の低価格化を一気に進めて成功


小僧寿しといえば、かつて外食産業のトップに立ったこともある一大チェーンです。

創業は1920年。大阪堺です。

持ち帰り専門店にしたのが1964年。

高級化してしまった寿司を、庶民に取り戻すというコンセプトで、低価格路線を走りました。

これが当たって一世を風靡したわけです。

高級化されたジャンルを一気に低価格化することにより、大きな需要を掴むというのは、多くの分野で見られる成功事例です。

(思えばマクドナルドも、牛ステーキの低価格提供を実現し、成功したチェーン店でした。)

寿司においては、小僧寿しがその嚆矢だったということで、記事にあるように、小僧寿しの成功がなければ、回転寿司に代表される低価格寿司店はなかったのかも知れません。

回転寿司などの台頭により低迷


しかし栄華は長く続きませんでした。

要因は、回転寿司に代表される低価格寿司店が増えたこと。

低価格に加え、エンタメ要素も持っている回転寿司チェーンはファミリー層の外食需要をとらえました。

また持ち帰り店としては、出店戦略を誤りました。住宅街立地にこだわるあまり、駅前やショッピングセンターへの出店をしなかったということです。

これは、コンセプト主導になってしまって、現実の売上をみていなかったのか?と思えてしまうような失敗ですな。

再建策を実行できるような組織なのか?


小僧寿しの場合、業容の拡大に対して社内組織の体制づくりが追い付いていなかったのではないかと疑われるふしがあります。

混迷「小僧寿し」、これだけある再生への難題

業績が低迷してからの再建策も、素人考えのものばかりに見えてしまいます。

小僧寿しって、これまで人材育成に力を入れてきたのでしょうか?

現場主義は大切ですが、経験主義者ばかりの組織だと、いくらプロ経営者を連れてきてもうまくいきません。

再建する方法はかならずあるでしょうが、組織そのものに地力がなければ、難しいだろうなあと思う次第です。




カルロス・ゴーン事件が教える組織の腐り方

カルロス・ゴーン事件

(2018年12月13日メルマガより)


まさに平成最後にして、最大の経済事件が起きたといってもいいでしょう。

世界第2位の生産台数を誇るルノー・日産・三菱自動車グループのトップであるカルロス・ゴーン(敬称略)が、日本の東京地検特捜部によって逮捕されました。

逮捕されたのは、2018年11月19日。容疑は、金融商品取引法違反です。

もう少し詳しくいうと、日産自動車の有価証券報告書に、ゴーン会長の報酬を実際より少なく記載していたという疑いです。

有価証券報告書とは、企業が主に年1回、決算の内容などを外部に向けて報告するための書類です。

日産自動車は株式上場していますので、株を購入しようと考える人に向けて、正しい情報を開示する責任があります。

それが間違っていたとすると、購入する人が判断を誤ることにつながります。

だから株式を公開している企業は、正しい情報を提供しなければなりません。いくら自社の内容に関することでも、意図して隠蔽したり、ウソを記載することは罪に問われてしまいます。


業務上横領や特別背任が本丸?


ところが、この事件、けっこう複雑な事情を抱えているようです。

まず、有価証券報告書に正しい報酬額を記載しなかったという件。違反は違反だが、いきなりトップを逮捕するほどの重大な罪だろうか?という声があります。

しかも、有価証券報告書は、ゴーン会長が一人で書くものではありません。当然、日産の複数の取締役や各部署が関わって作成し、それを取締役会が承認しているはずです。

それなのに、外国人トップとその腹心2名だけが逮捕されました。どうやら、その他の関係者は司法取引によって罪を免れたと言われています。

※司法取引とは、罪に問われるべき者が、司法に協力することによって、罪の軽減を得る取引のことです。

その経緯からみて、余罪を本丸とした別件逮捕ではないのか?というのが当然の疑問です。

ゴーン会長は、日産の財産を私的流用していたといわれており、それが本当だとすると、より重罪である業務上横領や特別背任で逮捕される可能性もあるようです。


もともとお金にクリーンな人ではなかった


え?ゴーンってそんなに悪いやつだったの?日産を破綻の危機から救った救世主だったんじゃないの?

って多くの人は驚いたでしょう。呆れたり、落胆したり、裏切られたと怒ったりした人もいたのではないでしょうか。

しかし、そう単純でもなさそうです。

そもそも、カルロス・ゴーンという人が、決してお金にきれいな人ではないことは、かなり前から噂として聞こえていました。

私の耳に入るぐらいだから、日産関係の人には衆知の事実だったのではないでしょうか?

少なくとも叩けばホコリが出るイメージのある人でした。だけど、それでも大きな功績がある人なので、大目に見られていたのだったと思います。

それが、今になって逮捕、というのは穏やかではありません。なぜこの時期なのか?というところが様々な憶測を呼んでいます。


「コストカッター」の異名


カルロス・ゴーンは、1954年、ブラジルで生まれました。父はレバノンからの移民でした。

成績優秀だったゴーンは、フランスの大学を出て、大手タイヤメーカーのミシュランに就職します。

ミシュランで実力を発揮し、各地域の責任者を歴任したゴーンは、フランス最大の自動車メーカールノーにヘッドハンティングされます。

1999年、経営破綻寸前だった日産自動車に、ルノーが資本参加することになりました。

その際、再建役として日産に送り込まれたのが、カルロス・ゴーンでした。

ゴーンは、ミシュランで、いくつもの工場や事業部を立て直した実績を持っています。容赦ない事業再構築の姿勢は「コストカッター」の異名を与えられるほどでした。

その実力が、日産のV字回復において、いかんなく発揮されることになりました。


日産にはびこるセクショナリズム


当時、日産は、1兆3千億円以上の借金を抱える会社でしたが、利益は出たりでなかったり。とても借金を返していけるような状況ではありませんでした。資産を精査すれば、既に破綻している、となっていたかも知れません。それぐらい追い詰められた状況でした。

なぜ、日産ほどの会社がそのようなていたらくとなったのか?当時は、バブル経済崩壊後で、日本全体が厳しかったこともあります。

が、指摘されているのは、日産という組織にはびこるセクショナリズムです。

組織というものは多かれ少なかれ、各セクションがお互いの利益を優先するあまり、全体の利益を損なうようになっていくものです。

営業部と生産部が対立することもありますし、開発部と経理部がいがみあうこともあります。

東京と地方が対立することもあれば、管理職と組合員が激しくやりあうこともあります。

あるいは、社長派と専務派が足を引っ張りあうこともあれば、出身学校で派閥を作っていることもあります。

日産は、どうもそれがひどかったらしい。

大企業といえども人間の集まりですから、それぞれが自分の既得権益を守ろうとし、いつまでも居心地のいい状態を保とうとします。

自分や自分の仲間が楽しく健やかに過ごせるならば、他のセクションや派閥の連中が少々苦しもうと関係ない、と思うものです。

各セクションは、自分だけが使える人員や設備を抱え込もうとするので、全体でみれば無駄が積みあがってしまいます。日産に販売実力以上の工場や生産ラインがあったのは、そういう事情があったからなのでしょう。

しかも、日産の場合、会社のOBが、下請けや関係会社などに出向したり、転職(天下り)したりしていたらしい。

経営陣も、先輩が社長をしている部品供給会社や販売会社に、厳しくは言いにくいものですから、どうしてもなあなあの関係になってしまいます。

日産が昔の官僚機構なみに膨れ上がった内部の非効率を抱え続けたのは、そこで甘い汁を吸っていた大勢の人たちがいたというわけです。


日産をV字回復させた鮮やかな手腕


当時の日産の経営陣も「無駄な資産や関係を断捨離して、利益の出る体質にしなければならない」とわかっていたのですが、しがらみが強すぎて思い切ったことができませんでした。

そこにやってきたのが、ブラジル生まれのレバノン系フランス人という複雑なルーツを持つカルロス・ゴーンでした。

日産の最大の問題が、たこつぼのようになったセクショナリズムだと気づいた彼は、比較的しがらみの薄い若手社員を組織横断的に集めて、自分直轄の「クロスファンクショナルチーム」を結成します。

戦略、マーケティング、購買、財務など、経営の課題ごとに、10人前後のチームを作り、彼らにその問題点と解決策を考えさせました。

これは実に理にかなったやり方です。日産のことは日産の社員にやらせる。しかもしがらみのない若手を抜擢する。自分で立てた解決策だから、自分でやるように促す。

それを短期間で運営し「日産リバイバルプラン」にまとめあげたゴーンのリーダーシップはさすがだというほかありません。

プランを立てただけではなく、もちろんそれを猛烈に実行しました。日産リバイバルプランに示された無駄な資産の整理に取り組み、1年でほぼ完了していまいます。

資産整理のために発生した損失は1999年度にすべて計上してしまったため、ゴーン1年目は、6844億円の盛大な赤字となりました。

しかし、会社に溜まった膿をほとんど吐き出してしまったため、次年度から利益が出るしかない状況が出来上がったのです。

この手法は実に鮮やかです。

当時、会計の専門家が「理論的には可能だと知っていたが、実際にやったということに脱帽した」と言っているのを聞いたことがあります。

専門家でさえ驚く鮮やかな手法は、日本の経済界に驚嘆と称賛を以て迎えられました。その後、ゴーンの示したV字回復の手法が、日本の企業再生のスタンダードになっていくのです。


切り捨てられた者の恨み


もっとも膿とされた方からは怨嗟の声が上がっています。

国内に7つあった工場のうち3つを閉鎖するというどえらいリストラ策に踏み切りました。

下請けの部品工場の系列はズタズタに解体し、安いところから調達するということを徹底しました。

おまけに販売会社も整理してしまい、販売リベートも大幅に削減しました。

いずれも日産OBたちが所属する子会社や系列会社、下請け会社を何の忖度もなしに切り捨ててしまったのだから、それは恨みの声も上がるというものです。

おかげで、それまで脈々と受け継がれてきた下請け系列の技術的な強みや販売力が著しく損なわれてしまったという話も聞こえてきます。

それなのに、当のカルロス・ゴーンは、日産の金で好き放題やっているのだから、ふざけんな!と憤慨する気持ちはわからないでもない。

もっとも、切り捨てられた方の中にも、それまで散々甘い汁を吸ってきた者がいるのでしょうから、100%同情はできないとも言っておきます。


コストカットだけではない再建手法


膿を出し切った後の回復策も鮮やかでした。

ゴーン以前、日産は、売れない大量の車種を開発製造していました。これも、それぞれの派閥が自分たちの車や製造ラインを手放さなかったからだといわれています。

それをゴーンCEOは、少数の売れる車に厳選し、販売力を集中させました。

地域戦略も明確です。トヨタが強い北米に対しては、高級車のみに絞り込み、日産は、中国や南米などに販売拡大していきました。

ランチェスター戦略にてらしても、実に理にかなった方向性を持っていると評価できます。

問題は日本国内市場です。国内を見限り、グローバル展開に舵を切りました。

おかげで以前は日本で2位だった日産がいまや5位です。販売系列会社を整理してしまったのは、日本は重要拠点ではないというサインだったようです。

日本の会社なのに日本国内を見限るというのは心情的には寂しいと思いますが、グローバル市場の状況をみれば、理にかなった選択だといえます。

その他、トヨタが強いハイブリッド車には手を出さず、電気自動車の開発に舵を切りました。

あるいは自動運転車の開発についてはイスラエルの会社と提携しています。

日本軽視という批判はあるものの、グローバルにおいては、さすがゴーンCEOといえるような展開力です。

果たして、日産は2000年より売上利益ともV字回復をみせ、2001年には、有利子負債を4350億円に圧縮するという奇跡のような成果を上げました。

これは、日産リバイバルプランに示された期限を1年前倒しての達成でした。


日産という巨大企業を立て直したカルロス・ゴーンはその手腕を認められ、2005年には、ルノー本体のCEOに就任。

2016年には、三菱自動車の会長も兼任するようになり、ルノー・日産・三菱連合は、実質的にゴーンが統治するものとなりました。

いまやルノー・日産・三菱連合の自動車販売台数は1000万台を超え、トヨタを抜いて世界2位です。(1位はフォルクスワーゲン)

カルロス・ゴーンは、まさに世界の主要産業といえる自動車産業のトップに立つ人物の一人になったのです。


ルノーによる支配を阻止するため?


ところがその大物が、日本で逮捕されたのはなぜなのか?

この件については、様々な憶測や陰謀論が流れてきています。

直接の原因は、日産の資産を私的に流用しているなどとする内部告発があり、社内調査したらその通りだったということだと説明されています。

しかし、先ほども書いたように、ゴーン氏の公私混同癖は、今に始まったことではありません。当然、日産の幹部も知っていたことでしょう。

それなのになぜ今か?ということが注目されています。

有力な一つの説が、ルノーによる日産の完全子会社化を阻止するためだというものがあります。

もともとルノーの大株主である仏政府は、日産の完全支配を望んでいるといわれていました。

自動車産業は、下請け部品会社も含めるとかなり巨大な産業です。それを国内に持っていると、相当の雇用を生み出すことができます。

ルノーがイマイチな仏政府としては、業績好調な巨大企業である日産の工場を仏国内に持ってきたいところです。

ところが、それは得策ではないといって反対していたのが、グループを統率するカルロス・ゴーンでした。

面白くない仏政府は、ゴーンに対して、ルノーのCEOを辞めさせるぞ、と圧力をかけていたといわれます。

さすがのゴーンも圧力に折れてしまって、日産の完全子会社化を約束したのではないかと囁かれていました。


日産は、今でも配当という形でルノーに資金を払い続けています。実にルノーの最終利益の半分が、日産からの配当金だというではないですか。

ルノーは、日産がなければ立ち行かなくなる会社です。資金的な面だけではなく、技術的にも日産に頼り切った状態だといわれています。

ダメダメでも利益が出る状況が続くから、ルノーは立ち直らないのではないかと勘繰りたくなるほどです。

今でも日産におんぶにだっこ。この上、完全子会社なんかにされたら、日産のこれまでの努力や蓄積がいいように扱われてしまうと、日産側が反発するのも無理ないことです。

そこでゴーンCEOが、動き出す前に、逮捕という荒業を使って、阻止したのだというのが、一つの有力な説です。


東京地検特捜部の思惑


いっぽう東京地検特捜部が、大物事件を狙っていたという説があります。

東京地検特捜部は、8年ほど前、証拠を改ざんするというあり得ない失態を犯してしまい権威が地に堕ちてしまいました。

ここで再度権威を復活させるためには、大物事件が必要だったというのです。

そこに持ち込まれたカルロス・ゴーンに関する告発は、これ以上のない大物で、渡りに船です。

誰もが信じたカリスマ経営者の裏の顔を暴き、罪に問うことができれば、東京地検特捜部ここにあり!という存在感を示すことができます。

もっともここにきて「本当に罪に問えるのか?」「勇み足ではないのか?」という疑問の声も出てきていますが、たとえ微罪でも威信にかけて有罪にしようとするでしょうな。

げに恐ろしきは検察です。

その恐ろしい検察権力に乗っかったのが、日産の経営陣だとするとしたたかです。

検察や日産側がリークするゴーン会長の行状は、とても褒められたものではありません。あまりに強欲でセコいイメージの流布は、たとえ無罪になったとしても、復活は難しいのではないかと思えるほどのダメージを与えたことでしょう。


そのほか、西川社長の個人的な保身説や、トランプ米大統領黒幕説、あげくはカルロス・ゴーン自演説まであります。

まるで陰謀論大喜利の状態です。

いちいち論評していられませんが、それだけ皆が驚き、興味を持っている事件だということでしょう。


日産だけを狙った行状


それにしても酷いなぁと思うのが、ゴーンの私的流用疑惑が日産に限られていることです。

報酬を低く見積もったことに関しても「他の自動車会社の経営者はもっと高額報酬をもらっているのだから、自分ももらう」と堂々といえばよかったのに、それができなかったのはなぜか。

日産で理解を得られないことを恐れたというよりも、ルノーを恐れたと言った方がいいように思えます。

実は、仏政府からも「ゴーンCEOの報酬は高すぎる」という批判を浴びていました。

仏政府を怒らせば、ルノーCEOを下ろされるかも知れず、それはやはり怖かったのでしょう。

しかもルノーは、規律に厳しい会社です。ごまかすなんてできなかったようです。

そこで、ゆるゆるな日産だけで好き勝手をやったわけです。日産も舐められたものですよ。

翻せば、日本の企業や社会が舐められていたのではないかとも思えてきます。


成熟した民主主義の国による組織運営


いささか飛躍した意見を言いますが、私はここに、民主主義の成熟度をみてしまいます。

民主主義がただの合議制になってしまうと、危機が迫っている時の判断が間に合いません。

そこでひとりの強力なリーダーに全権委任した方がいい時があります。

独裁も時には必要なのです。

民主主義先進国である欧米の組織や社会には、強いリーダーに潔く任せて、皆で従う、というコンセンサスがあるのだろうと思います。

ところが、独裁者が権力を笠に着て好き放題しだしたら困るので、ブレーキをかける装置も必要になってきます。

ルノーにはその制御装置があらかじめ組み込まれていました。だから全権委任を受けたゴーンといえども、勝手なことはできなかったのです。

対して日産は、セクショナリズムの強い組織でした。たこつぼのようなセクションごとにミニリーダーが現れて、それぞれが権益を主張しあってきました。

そんな戦国時代のような状態では、グルーバル社会を生き抜くための方向性など持ちようがありません。

そこで、カルロス・ゴーンのような理不尽でも有無をいわさぬ外圧が必要になったのです。

しかし日産には独裁者を制御する装置は組み込まれていませんので、好き放題を許してしまいました。

まるで村を救った大魔神がそのまま暴走して村を破壊しているようなものですな。

それで検察の手を借りて、逮捕、などという荒療治が必要になってしまったのです。

聞くところによると、日産には、ミニ権力者が現れては、それが追い落とされることを繰り返してきた歴史があるといいます。

社内で皆が権力争いばかりやっていたら、それは会社も傾くというものです。

それに比べると、強いリーダーに全権委任し、しかも暴走を許さない機能を持つルノーは組織運営として優れています。

そこに、私は、民主主義の先進国である欧州の成熟ぶりをみるわけです。


■どの組織運営が優れているのかは一概には言えない

どの組織運営が優れているのかは一概には言えない


しかし、日産のようなセクショナリズムが強い組織にも利点があります。

各セクションは、自分たちの論理に従って動きますから、技術部はより技術を磨こうとし、生産部はより大量に生産しようとし、開発部はさらに新しい機能を開発しようとし、営業部は顧客との関係を強化しようとします。

それぞれが自セクションの論理や目的を追求するあまり、全体として非効率になっていくきらいはあるものの、各セクションには、知恵やノウハウが蓄積されていきます。

そんな様々なセクションにおいて蓄積されてきた技術や生産、販売などに関する知恵やノウハウが、いま、日産の強みとなっています。

組織運営に優れたルノーが、運営に失敗して破綻しかかった日産の技術力や生産力、販売力がなければ会社を維持できない状態になっている。という実に皮肉な図式です。


だから、これはどちらの組織や運営方法が優れいていると単純には語れないものだと考えます。

日産は、強力なリーダーを受け入れ、かつ制御する体制を持った方がいいと思いますし、ルノーは一見非効率さを組織に抱え、知恵やノウハウの蓄積を普段からしておくべきです。

理想をいえば、平時には日産のような合議制で望み、戦時下では軍事政権を抱く、切り替えができればいい。

が、組織は生き物ですから、そんな簡単に切り替えができるとは思えません。

いまは課題は課題として認識することに努め、自社組織の強み弱みを理解しておくことが最低限必要だと考えます。

組織というのは、時間が経つといずれ硬直化したり腐ったり暴走したりするものだと認識しておかなければなりません。

それが、今回の騒動をみて思ったことです。

参考

「日産・ルノー経営統合説」浮上で問われる重大疑問

日産リバイバルプランがもたらしたもの ゴーン問題の補助線(2)

日産には"カリスマ暴走"を許す土壌がある

ルノー有報、「報酬の決め方」だけで28ページ





「0円タクシー」は、大競争幕開けの号砲

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ついに「0円タクシー」が登場したようです。東京23区内で既に走っているらしい。

タクシーそのものを広告媒体にして、東京中に走らせることで、広告費で運賃を賄う計画ですね。

記事に掲載されている写真をみると、日清食品の「どん兵衛」タクシーが走っているようです。

結構派手な外観ですな。音声も流したいところですが、住宅街も走るので、それはできないでしょう。

DeNAのプロモーション色が強い


0円タクシーについては、他のタクシー会社も構想していました。

ただ予想よりも早かったと思います。

実現したのがDeNAというのも意外でした。

タクシー会社は、法律通り正規運賃を受け取るので、食いっぱぐれがありません。

が、実質広告費だけで賄えるのだろうか?

DeNAが、運賃の一部を負担するともあるので、今回の試みは、DeNA側のプロモーションの意味合いが強いのだろうと思います。

この仕組みで、ビジネスとして成立するのかどうかは、まだ未知数ですね。

配車システム供給会社の勢力争い


背景には、配車システム供給会社の勢力争いと、タクシー業界の危機感があります。

参考:中国「配車アプリ」と組む日本のタクシー会社は、この先、どうやって生き残っていくのだろうか?

実質、配車アプリが普及すれば、タクシー業界そのものが不要になります。自動運転の時代になればなおさらです。

(大人の事情で、タクシー免許を残して延命することになるのでしょうが)

ですからタクシー業界の危機感はすさまじく、どのように配車システムを活用していけば生き残れるのか、どの配車システムに乗っかればいいのかというかじ取りを迫られています。

ここの決断が、タクシー業界生き残りの分水嶺になると言っても大げさではないでしょう。

来年はタクシー業界にとって派手な1年になりそうです


配車システムを供給する側も、DeNA、ソニー、日本交通などの日本勢に加え、滴滴、ウーバーなどの世界の大手が、日本市場を狙っています。

一応、先行しているのは、日本交通系のシステムですが、まだ始まったばかりなので、趨勢は決まっていません。

ここで派手に打ちあげて、存在感を示したいDeNAの思惑が見えてきます。

が、他の会社も黙っていないでしょう。

多少むり目のサービスでも提供していかなければなりません。

来年に向けて、タクシー関連の派手なサービスが、市場をにぎわせそうです。






小さな会社のM&Aが増えるのは確実だが、困難も増える

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中小企業向けのM&Aは、確実に需要がある、という以上に、日本の社会問題だといってもいい。

「事業承継」は今や日本経済最大の問題だ。経済産業省の推計によると、今後10年のうちに中小企業の経営者の約245万人が70歳を超え、そのうち127万人は後継者が決まっていないという。その結果、2025年までに約650万人の雇用と、GDP(国内総生産)約22兆円が失われるおそれがあると警告している。

一方で、後継者の決まっていない127万人の中小企業経営者が存在しており、一方で、事業を始めたいと考えている多くの人たちがいます。

定年後を意識しなければならない会社員の方々でも、定年延長で会社に残るよりも小さな会社を始めたいと考える方の話を聞くようになりました。

私が主催する「戦略勉強会」にも、そんな将来を見据えて勉強されている方がおられます。

自分で起業するよりも簡単?


ただ0から1を立ち上げるのは、相当なハードルがあります。

まずは事業を存続させるために必要な資金を得るための需要がある市場を見つけなければなりません。

そこに向けて、確実に利益を得るためのビジネスモデルを作らなければなりません。

当然、商品・サービスの開発も必要ですし、人材も集めなければなりません。組織が機能するための会社の仕組みも整備する必要があります。

若くて元気な時ならまだしも、引退を間近にした人には、エネルギーが続かないかも知れませんよ。


それなら、既にある会社を買えばいいと考えるのは自然です。

127万人も後継者不在に悩む経営者がいるわけですから、売ってもいいと考える経営者もいるでしょう。いや、確実にいます。

自分が引退した後も、いまいる従業員の雇用を守ってくれて、得意先に迷惑をかけないように事業を継続してくれるならば、いくらかの退職金がわりの資金と引き換えに、所有権を譲ってもいいと考える人はいるはずです。

いま稼働している会社ですから、既に、組織、人材、ビジネスモデル、需要があるわけです。多少、古くなっているかもしれませんが、それはオーバーホールすればいいわけです。

カルロス・ゴーンほどではないでしょうが、会社員の方は、ビジネスの知識が豊富のはずです。マネジメントの経験もあるでしょう。経営戦略も営業も財務も、見直せばもっといい会社になるかもしれません。

まさに需要と供給が一致する話です。

マッチング機能が足りない


私のようなコンサルとすれば、経営指導の提供機会が増えそうなことなので、大いに期待するところなのですが、そう簡単にはいかないので困っております。

まずマッチングする機会が少ない。

いまはM&Aブームだといわれていますが、大型案件が中心です。M&A仲介会社の人たちは、手数料の小さい案件に手間をかけるのをいやがりますから、なかなか相手にしてくれません。

このあたり、地元の信用金庫や公的機関のマッチング機能充実を望みたいところです。

もっとも需要のあるところなので、中小企業のM&Aを主業とする仲介会社は増えてくると思われます。


買いたい、という人は名乗りを上げやすいでしょうが、売りたい側はなかなか手を挙げられないという問題もあります。

日本では会社を売るというとネガティブにとらえられがちです。

会社を売ることが漏れると、従業員や得意先に少なからぬ動揺を与えます。それをきっかけに従業員が辞めたり、得意先からの注文が少なくなったりするかも知れません。そうなると、会社を売るどころか、存続も難しくなってしまうかも知れません。

だから、あちこちに「売りたいから誰か買ってくれ」なんて声をかけるわけにはいきません。ある程度秘密裡にことを進めなければならず、その意味でも仲介機能の充実が待たれます。

オーナーになったからといって、うまくいくわけではない


マッチングがなって売買成立した後も、困難が絶えません。

いくら新しいオーナーになったからといって、既存の従業員が承服するとは限りません。むしろ、相当の反発があるはずです。

人間組織ですから、感情のもつれは必ずあります。下手をすると致命傷になる恐れもあります。

私はコンサルですからよく知っていますが、人は正しいことを言われたからといって従うとは限りません。

特に、ともに苦労して築き上げた仲間ではない者に、あっさり方針を変更なんてされようものなら、何が何でも潰してやろうと思うことでしょう。

面と向かって反発するのはまだましで、多くは面従腹背を決め込みますから、実にわかりにくい。誰が敵で誰が味方かもわからなくなります。

それこそお金を出してオーナーになって、従業員の雇用を律儀に守って給与も払っているのに、理不尽にいじめられて、何をやっているのかわからない状態になります。

こんな事業承継オーナーが増えてくると、それこそ社会問題化します。


しかし、中小零細企業のM&Aは、社会的にも必要ですし、増えてくることは確実です。

定年後も元気で能力のある人が、オーナーとなって、経営能力を発揮することができれば、それは日本の産業全体の活性化にもなります。ぜひとも増えてほしいと思います。

だから、M&Aの仲介機能を充実させる。

およびM&A前後の経営指導をしっかりと行う。(むしろM&A前、準備段階に指導することが必要)

その上で、成功案件、失敗案件が増えてくれば、買う側も売る側も、状況を受け入れる素地が出てくるでしょう。

ある程度の混乱はあるでしょうが、社会の方向性としては、確実に向かっていくと思います。


私も手をこまねいているわけにはいきませんので、お役に立てることに取り組んでいきたいと思っています。

小さな会社のM&Aが日本を救う?





RIZAPリバイバルプランは結果にコミットするか

rizap
(2018年11月29日メルマガより)



飛ぶ鳥を落とす勢いで成長を加速させていたRIZAPグループに激震が走っています。

元カルビーの社長松本晃氏をCOO(最高執行責任者)として迎え入れたと思ったら、COOの職を解き、構造改革担当に異動。

同時に、今期159億円の黒字予想を、70億円の赤字に下方修正しました。

159億円からマイナス70億円とは、壮大な転落です。

いったい何があったというのでしょうか。



フィットネスジムは好調


RIZAPグループは、フィットネスジムのライザップを中核とする企業グループです。

「結果にコミットする」をうたい言葉に、理想の身体づくりを約束し、短期間で確実に成果を上げることを売りにしたジムが大ヒットしています。

広告宣伝がうまく、インパクトの強いテレビCMを大量に流して、知名度を高めてきました。

いま、ライザップのフィットネスジムは、営業利益100億円を上げる好調事業です。


もっともそこに一抹のうさんくささも感じます。

そんな短期間で痩せてもリバウンド必至だというのが常識だからです。

結果にコミットするといっても、一日でも達成したら後は知らん顔、リバウンドまで責任を持たないと言うんじゃないの?と疑ってしまいます。



無軌道な企業買収で非効率な会社に


しかし、ライザップの勢いは止まりません。2017年から2018年にかけて、企業買収を加速させ、85社の連結子会社を持つ一大グループに成長しました。

売上高は1000億円に届こうとしていました。

ただ、企業買収の無軌道ぶりがたびたび批判を浴びていました。

普通、企業買収は、自社の強みの強化や、シナジー(相乗効果)を効かせるために行うものです。

すなわち、ライザップというフィットネスジムの特徴を強化し、さらに成長させる分野の企業を選択しなければなりません。

ところが、RIZAPグループが買収する中には、本業に関連がないといわざるを得ない企業が含まれていることが指摘されてきました。

いくら儲かるからとはいえ、本業に関係のない企業を次々グループ化していったら、戦略立案や管理の方法がバラバラで、非効率極まりないことになってしまいます。

グループ経営とは足し算ではありません。シナジーが効く掛け算であるべきです。


ボロ会社を集めてどうするのか


もちろん瀬戸社長は「買収に一貫性はある」と言い続けてきました。それが客観的に理解できないだけでした。

だがそれ以上に懸念されてきたのは、RIZAPグループの買収する会社が、どうにも可能性の感じられない業績ボロボロの会社が多かったことです。

こちらも瀬戸社長は「RIZAPグループにはプロ経営者がたくさんいるので、赤字企業でもV字回復できる」と自信満々に語っていたものです。

本当にそれができたら凄いことです。日本中の赤字企業がライザップに助けを求めに来ます。まさに日本経済の救世主ですよ。

ところがそううまくいくわけもありません。誰が手をかけてもどうしようもないボロ会社はあるものです。


実体のない利益をあてにしたビジネスモデル


それよりも、批判されるべきは、割安購入益をあてにしたRIZAPグループの経営手法です。

IFRS(国際財務報告基準)では、帳簿上の価格よりも安く会社を購入できた場合、差額を割安購入益として、利益計上できるルールになっています。

帳簿上は10億円の会社を3億円で購入できれば、差額の7億円が利益計上できます。

ただこれは、帳簿上の利益というだけで、現金収入があるわけではなりません。あくまで、その会社の資産を10億円で売却すれば、7億円の差額がでるよね、という想定の利益です。

RIZAPの場合、近年は、利益の6割以上が割安購入益でした。

利益が出ているぞーと言っても、その6割は実体がない利益です。

しかも帳簿上の算定価格というのも怪しいもので、在庫や資産を厳密に精査すれば、算定価格が下がる可能性が大です。

事実、今回、RIZAPグループは、グループ会社の在庫資産が実際には市場価値がないものと認めて、大幅な修正を行いました。

これが赤字転落の中身です。いわば、一大グループの中身がスカスカであることが白日のもとに晒されたわけです。


株価の釣り上げが目的?


なぜこんな危うい利益計上を続けていたのか?

うがった見方をすれば、実体のない利益計上を続けて、株価を釣り上げてきたのではないかと思えます。

ボロ会社を買うのは、そのためです。ボロすぎて売値がつかないほどの会社なら買いたたけます。

帳簿上は、高めに算定しておけば、その差額で利益計上できます。

株価を釣り上げるだけ釣り上げて、経営陣は自己保有株を市場で売却して多額の現金を手中にし、後は野となれ山となれ、ということではないのか?

そうだとすると、相当あくどいやり方です。

RIZAPの経営陣の中に、そのような邪な考えを持つ人がいなかったのか、もう一度ガバナンスを見直していただきたいものです。


経済界にもファンが多い瀬戸社長


もっともRIZAPグループの代表である瀬戸健社長の悪評は意外なほど聞こえてきません。

このたび瀬戸社長が「連結利益230億円を超えるまで役員報酬を返上する」と発表したことで潔さと覚悟が評価されているほどです。


瀬戸社長は、24歳の時にライザップの前身である健康コーポレーションを創業しました。

当初の主業はおからクッキーの販売です。これが当たって、札幌証券取引所に株式上場を果たすほどになります。

ところが競争激化により売上が激減、倒産の危機に陥ります。美顔製品の販売で持ち直したものの、この経験が、瀬戸社長に「主業一つでは危ない」という危機意識を抱かせることとなりました。

ライザップのアイデアは自身が個人指導型のフィットネスジムに通って、計画的に痩せることができたことから発想されたらしい。

ここが、既存事業のパクリじゃないかという批判を浴びる部分です。

しかし、フィットネスジムを「自己実現ビジネス」だと再定義し、一大産業として構成した手腕は称賛されてしかるべきです。


瀬戸社長は、人柄のよさでも知られており、経済界に多くのファンを持っています。

カルビーをV字回復させ成長軌道に乗せたことで日本を代表するプロ経営者だと目されている松本晃氏も、瀬戸社長を絶賛するひとりです。

功成り名遂げた松本氏が、なんで好き好んでRIZAPグループに入るのか?とずいぶん話題になりましたが、本人は「瀬戸社長がいるから入ることを決めた」「瀬戸社長を一流の経営者にすることが私の役割」と言っていました。まるで、橋下徹を絶賛する石原慎太郎のようです。


プロ経営者が暴いた実態


その松本氏は、入社してすぐにRIZAPグループのビジネスの危うさを見抜きました。

無軌道な企業買収のおかげで、グループの財務状況はガタガタになっていました。

松本氏が主張したのは、今後の企業買収の凍結と主業であるフィットネスジムを中心とした事業の再構築(リストラ)です。

プロ経営者としては、当然の提言です。


ここに古参の経営陣との対立があったと言われています。

従来の経営陣は、いい会社ならこれまで通り買収してもいいじゃないかと考えたのでしょう。

しかし、企業買収を続けるということは、割安購入益をあてにしたビジネスを続けるということです。このまま破滅するまで、風船を膨らまし続けようという主張に聞こえます。

なにより85社もあるのに、その面倒をみる人材が、足りているというのでしょうか。

常識的に考えて、上場して12年ほどの会社に、それだけの人材が集まっているとは思えません。


ギリギリのところで方針転換


このたびの赤字転落は、瀬戸社長が、松本氏の提言を受け入れ、事業の健全化に本格的に取り組むことを決意した結果だといえます。

客観的にみれば、ギリギリのところで、RIZAPグループは健全化への舵を切り、破滅への道を逃れたわけです。

フィットネスジムが100億円の営業利益をあげているうちに、何としても財務の健全化を成し遂げなければなりません。

その意味でも、松本氏がRIZAPグループに入ったことは、非常に大きな意味があったことだと考えられます。



松本氏の構造改革は機能するのか?


しかし気になるのが、松本氏がCOOの職を解かれて「構造改革担当」になったことです。

瀬戸社長「構造改革に専念してもらうから」

松本氏「肩書はどうでもいい」

と言っていますが額面通り受け止めていいのでしょうか。

COOは、形式的にもナンバー2の立場でした。

ところが、構造改革担当という役職には、実質的な権限があるのでしょうか?

報道によれば、松本氏がRIZAP以外の任務を抱えており、毎日出社できるわけではないとも聞こえてきます。

そのあたりでも、既存の経営幹部との軋轢があったのかも知れません。

もし対立や軋轢が解消されず、構造改革が骨抜きにされたのだとすると、RIZAPの健全化にも暗雲が立ち込めます。


思えば日産自動車をV字回復させたカルロス・ゴーン氏も、派閥やしがらみでがんじがらめになった組織を動かすために、若手社員を組織横断的に集めて、事業再構築のためのチームを作りました。

今回の松本氏は、そこまでの権限を与えらえているのでしょうか。

どうも人のいい瀬戸社長だけに、事業再構築への厳しい道のりを完遂できるのか、まだわからないと思えます。
 




日本の家電業界の勢力図が変わるかも

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いまの日本の家電メーカーがなぜダメなのかを指摘したいい記事です。

既存の家電メーカーがダメな理由


かいつまんでいうと、家電製品そのものがコモディティ化してしまって、高く売れる製品ではなくなってしまった。

それなのに、多大な固定費を抱えた既存家電メーカーは、これまで通り高く売ろうとしており、無理な販売施策を続けざるを得ない。

それに消費者は白けてしまっている。。というものです。

アイリスオーヤマに吹く追い風


ここに中小メーカーやベンチャーのつけいる隙があります。

前のメルマガで、中小やベンチャーこそチャンスがあると書きましたが、アイリスオーヤマはその最右翼にいると思います。

参考:IoTは家電業界の勢力図を塗り替えるのか

アイリスオーヤマはプラスチック製品の製造販売で実績を上げた会社ですが、最近はシャープの技術者を大量に採用しているという話が聞こえてきました。

情勢をみるのに敏な会社ですから、既存業界の矛盾や弱点を突くことで大いにチャンスはあると踏んだことでしょう。

家電量販店の力が弱まっていることも、新規参入メーカーとしてはプラスに働きます。

アイリスオーヤマは、ネット販売も積極的に採り入れながら、家電製品進出を果たしましたが、これからは家電量販店への展開を本格的に進めていくはずです。

既存企業の抵抗は強いでしょうが、販売低迷にあえぐ家電量販店側は、こうした新興メーカーと積極的に組んでいかなければならない時です。むしろ、その方が、盛り上がるでしょう。

オリジナルなアイデアを持つ中小メーカーに期待


アイリスオーヤマに続く中小メーカーやベンチャーも現れてくるはずです。

必要な機能だけに絞り込む。←どの機能に絞り込むかが、その企業のオリジナリティとなります。

低価格。←家電業界の常識に囚われず、自らの固定費とビジネスモデルに応じた価格設定を。

デザイン面で特徴を出す。←ここ重要です。クールジャパンここにありというデザインにしてほしい。

それにIoTは必須です。アイリスオーヤマのように上位機種だけwifiと人感センサー搭載といわずに、全機種標準装備すべきです。使用データを蓄積して、製品を進化させていかなければなりませんから。

こうした新興メーカーがオリジナルなアイデアとデザインで市場を席巻すれば、日本の家電業界も再び世界に伍していけるようになるかも知れませんね。




 

アマゾンは成長が止まると死に体となるのか?

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無敵の進撃を続けるアマゾンの不安要素について書いた記事です。ジェフ・べゾズ自身が「いつか潰れる」と発言したことにかこつけての記事ですね。

ただベゾス氏の発言は「企業の寿命は30年」「小売業はいつか潰れる」といった程度のもので、慢心を諫める意図でなされたと思えます。


アマゾン最大の弱点は成長の維持


ただ記事は、アマゾンの弱点を突いています。

アマゾンは、市場シェアを上げることのみに注力し、収益性をあえて無視した企業です。アマゾンの価値は、その拡大が続くことにこそあります。

ただ拡大が永遠に続くことなどありません。いつかは飽和します。その時、アマゾンは収益性を上げることに舵を切るのでしょうか?

(世の中にアマゾンした選択肢がなくなった世界で、アマゾンが突如、値上げをしてくるのか?悪夢そのものですが、そんな社会を敵に回すようなことにはならないでしょうが)

実際のところ、ベゾス氏にも、行きつくところまで行った後のシナリオはないのではないか。だからこその「いつか潰れる」発言だったのではないかと感じます。

株価が上がらないと従業員インセンティブが効かない


もう一つ。アマゾンは、優秀な従業員を集める手段として、自社株の購入をインセンティブにしています。成長企業の常とう手段ですが、これが足かせになると記事は言っています。

つまり、アマゾンの拡大スピードが落ちると株価下落に直結します。そうなると、自社株の購入がインセンティブになりません。

もともと基本的な給与は低いといわれるアマゾンですから、株が上がらないとすれば、優秀な従業員を集める手段がなくなります。いまいる従業員も逃げていくかも知れません。

最先端の技術を開発し惜しげもなく製品サービスにつぎ込むことが特徴だったアマゾンにとって、これはシリアスな事態です。

ポスト資本主義社会も主導?


もっとも私は、アマゾンにとって、拡大余地はまだまだあると考えています。自然発生的に成長分野を見出し、拡大し続けてきたアマゾンですから、これからも成長分野を見つけ続けるでしょう。

アマゾンは、今後、衣食住を一括で展開していくと考えています。定額料金で、基本的な生活インフラ全体をアマゾンが面倒みてくれるとすれば、我々は助かりますよ。いや我々以上に、各国の政府が助かります。

最低限の料金さえ支払っておけば、とりあえず生活が保障されるわけです。あるいは、最低限の料金を支払うための方法をもアマゾンが開発してくれるかも知れません。そうなると、世界の人々の生存権や基本的人権を担保する存在となりますよ。えらいスケールの大きな話ですが、アマゾンにはそれぐらいやってほしいと願っております。


だからといって成長が永遠に続くわけではありません。成長が止まると死に体になる企業って、かつてのダイエーのようですね。

今のアマゾンの最大の課題は、株価成長ノルマから逃れる方法を見出すことです。いわゆる資本主義の弱点を補う存在になることです。

なんてさらにスケールが巨大になってしまった。

それにしても代表者が「いつか潰れる」と発言しただけで記事になるアマゾンって、やはり存在感ありますな。








 
プロフィール
komai 小

営業関連のコンサルティングをしています。
製造業や卸売業などの営業組織を強化する仕事を得意としております。

株式会社クリエート・バリュー代表取締役
NPOランチェスター協会理事
NPOランチェスター協会関西支部
NPOランチェスター協会認定インストラクター
中小企業診断士   販売士1級

コンサルタントになる前は、日本酸素株式会社魔法瓶事業部(現在のサーモス株式会社)で14年、営業担当をしておりました。
その時、廃業寸前の赤字だった事業部がわずかの期間で世界トップ企業になった経緯を体験したことが、経営コンサルタントになったきっかけとなりました。
当時、経験したことや見聞したことを物語風にアレンジしたのが、拙著『「廃業寸前」が世界トップ企業になった奇跡の物語』です。
面白い本なので、ぜひ読んでください(^^)

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