戦略がなければ生き残れない

NPOランチェスター関西支部長のブログ

今は好調のアパホテルだが、リスクも高い

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■アパホテルが元気ですね。「書籍問題で世界的に知名度アップ」とは、元谷代表らしい強気な姿勢です。


中国からの観光客の宿泊は減ったが、台湾や香港は増えたのだとか。

いずれにしろ海外からの観光客がアパホテルの業績を支えているようです。

■アパホテルのビジネスモデルは、安く建てて、満室にする。ということに尽きます。

不動産は自社所有ですが、安い場所(変形地など)を買って建てる。部屋は狭く、節水で、ローコスト運営です。

大浴場があるところが多いですが、あれも部屋風呂をあまり使わせないための工夫であることでしょう。

■宿泊料も需要に応じて大胆に変更させています。空きがあるときは安く、満室に近い時は高い。都心のホテルなんて1泊3万円とかすることがある。

価格設定は自動で変動するシステムになっているはずです。

■アパホテルは、耐震偽装問題が発覚した時、物件を処分した経緯があります。

幸運だったのは、高い時に売却したために、その後のリーマンショックの影響を受けずに済んだこと。

しかも、安くなった土地を買って、都心進出を加速させることができました。

■ただ、記事にあるように、自社物件が多いというのは、大きなリスクです。

既存物件を担保に融資を受けて、新しい物件を建てるという手法は、需要が高い時はいいものの、減退すればとたんに回らなくなってきます。

かつてのダイエーが破綻したのと同じ構図ですね。

都心のホテル需要はまだまだ旺盛ですが、永遠に続くわけではないはずです。その時、どう対応するのだろうか。

気を付けてみておきます。

 

ラスト・ワンマイルの表と裏をおさえよ

ラストワンマイル


(2017年3月9日メルマガより)


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■日本の物流が危機に瀕しているようです。


宅配便最大手のヤマト運輸が、27年ぶりに、個人向けの宅急便運賃を上げる意向だということ。

参考:27年ぶりヤマト値上げ。佐川との違いは何だったのか(ニュースイッチ)
http://newswitch.jp/p/8214

適正な運賃体系にする。とありますが、要するにこれまでは、作業員の頑張りに頼るところが大きかったのでしょうね。

残業代をまともに払えば、破綻してしまうのが現状なのでしょう。

■昨年だったか、佐川急便の配達員が、キレて、荷物を放り投げる動画が話題になりました。

マンション横の階段のようなところで、配達員らしき人が宅配の荷物を放り投げ、蹴とばし、あげくは台車を放り投げるという感情のこもった行為に及ぶ動画でした。

見慣れない者からすればショッキングな内容ではありましたが、物流会社に勤める知人は「あんなの皆やってるよ。撮影されるようなところでやらないだけ」とサラリといっていました。

そういう話を聞くと、日本の物流体制は再構築しなければならないところにきていたと思えますねえ。

■ただ、記事には「個人向けの宅急便は、ヤマトの取り扱う荷物の1割程度」だとあります。

「9割はアマゾンジャパン(東京都目黒区)などをはじめとしたネット通販など、BツーB(企業間)の大口顧客になる」

ここにも出てきましたね。

また、アマゾンか!

ヤマト側としては、アマゾンに価格改定要請をするそうですが、一筋縄でいかない相手ですからねー

前途多難であることは間違いありません。

■ヤマト運輸といえば、「宅配という社会インフラを守る」という社会的使命を信条とする会社です。

そのヤマトが「やってられん!」と音を上げる(値を上げる)のですから、余程のことですよ。

対するアマゾンも「すべては顧客の便益のため」というゴリゴリのマーケティング原理主義会社です。

なにしろ「儲けない。儲けるぐらいなら顧客に還元する」という信念を持っているようですからね。

原理主義者との交渉は厄介ですよ。信念が揺るぎませんからね。

■戦略的にいうと、アマゾンの卓越性は、ネット通販を装置産業と捉えたところにあります。

ネット通販は、店舗販売に比して、消費者との距離が近い事業です。

個人消費者は、店舗に出向かなくても、以前はパソコン、今はスマホを通じて、直接購買することができます。

いわゆる購買時の「ラスト・ワンマイル」が近い。

店舗に行かずに購買を行えるのですから、消費者が慣れさえすれば、購入者が増えるのは目に見えていました。

楽天しかり。ネット通販事業が、倍々に成長していくのは自明のことでした。

しかし問題は、購買後、消費者のもとに届けるという裏の「ラスト・ワンマイル」に難があることです。

そこに気付いたアマゾンは、物流体制を整備するために途方もない投資を行いました。

あまりの投資額に「アマゾンはいつ破綻してもおかしくない」と不安視されたものですが、その投資が一巡してしまえば、実に大きな優位性となりました。

今や、他のネット事業者が、アマゾンと張り合うのは現実的ではないレベルにまで投資の蓄積に至っています。

■しかし、物流倉庫は世界中に整備したものの、そこから消費者の自宅に届ける本当の「ラスト・ワンマイル」は、ヤマト運輸などの宅配業者が担っています。

送料無料。即日配送。時間指定配送。などはアマゾンお得意のサービスですが、その遂行をヤマトに押し付けているわけですから、ずるいと言われても仕方ありません。

特に配達員さんにかかる負担は看過できません。

私の心斎橋の事務所にも、アマゾンの荷物が届くことがあります。

たまに、再配達をしてもらうこともあります。もっというと、時間指定を頼んでいたにも関わらず、不在にしてしまって、再配達をお願いすることもあります。

そんな時は本当に申し訳なくて、土下座したい気持ちになりますよ。

■ただ今回の件、一筋縄でいかないと思うのは、アマゾンには「自分で宅配する」というオプションがあることです。

ドローンで配送しようとしたり、一般人に白タクならぬ白宅配をさせようとまで検討するアマゾンのことです。

当然、ヤマトに払う運賃が高くなれば、自社で宅配会社を持った方がいいや。と考えるでしょう。

実際、世界中で、アマゾンが運送業を始める可能性があると噂になっています。

海外の宅配業者は日本ほど高度ではない、という話もありますが、それはそれ、日本で運送業を始められれば、他の業者にとって大いなる脅威です。

ヤマト側が抜本的に運賃体系を再構築する。というのなら、アマゾンももっと抜本的に再構築します。と言い出すでしょうね。

悩ましい話です。

が、その方がいいかも知れません。

配達員が無理をしなければならない事業というのは、やまり間違っています。

■話は変わりますが、表の「ラスト・ワンマイル」についても、流通業界で革新が進んでいます。

参考:コンビニの「マイクロ店舗」続々、狙いはオフィス等の極小商圏(ダイヤモンドオンライン)
http://diamond.jp/articles/-/111969

コンビニといえば、全国どこにでもあり、売れ筋ばかりが並んでいて、顧客の利便性をとことん追求している存在です。

が、そのコンビニがさらに「ラスト・ワンマイル」を詰めようとしています。

それが「マイクロ店舗」なるものです。

■これはオフィス内などに設置されたミニコンビニのこと。

自動販売機スタイルのところもありますし、棚に並べただけの無人販売スタイルのところもあります。

もしかしたら新幹線のワゴン販売スタイルのところがあるかも知れません。

確かにオフィス街のコンビニは昼時にはレジが行列になってげんなりします。オフィス内にミニコンビニがあれば、確かに便利です。

今や、そこまで消費者に近づく競争になっているのですよ。

■全国、津々浦々に張り巡らされたコンビニの店舗網は、いまや社会インフラといえるほど便利なものですが、当のコンビニ側は、それでは飽き足りないわけです。

なにしろ、専門店が量販店に駆逐されたように、量販店がコンビニに追いやられたように、コンビニもアマゾンのようなネット事業者に消されてしまうかも知れません。

メーカー側がコンビニにすり寄るのは、そこが最も成果の出る売り場だからです。アマゾンの方がよければ、そちらに乗り換えるのは当然です。

だから、セブンイレブンはオムニチャンネルとかいってアマゾンの先をいこうとするし、ファミリーマートは、上の記事のようにオフィス内店舗を作ろうとする。

売り場としての魅力を失わないようにしておかなければならない。

■俗にいうマーケティング・ミックス(商品、価格、チャネル、プロモーション)の中で、最も重要なものは、チャネルだと私は考えています。

チャネル。売る場所。販売ルート。

ここをしっかり把握し、押さえていることが、ナンバーワン企業の最大の優位性となります。

トップ企業が競争に強く、なかなか2位に後退しないのは、チャネルに強いからです。

逆にいうと、トップ企業や商品の交代が起こるのは、新たなチャネルが立ち上がった時が最も多い。

キリンラガー(酒販店)→アサヒスーパードライ(量販店)

任天堂(玩具屋)→DeNA、グリー(ガラケー)→ガンホー、MIXI(スマホ)

ヤフオク(パソコン)→メルカリ(スマホ)

例は必ずしもトップ企業の交代とは言えないものもありますが、勢いのある企業が変遷しているということで…

だから、メーカー側は、チャネルの優位性を常に見ておかなければなりません。新たなチャネルに乗り遅れれば、致命的なことになってしまいますからね。

■一方で、チャネルに頼らずに、自ら顧客とのラスト・ワンマイルを詰めようとするメーカーもいます。

ヤクルトは、ヤクルトレディがオフィスを巡回して直接販売していることが非常な強みとなっています。

グリコの「置き菓子」は、年間売上53億円のビジネスになっているそうですよ。

ダスキンも、ドーナツはイマイチですが、直接家庭を巡回する清掃事業は強いですね。(ドーナツも宅配すればどうですか?)

自らチャネルを作るというのは、大変な労力が必要となりますが、それをやり遂げた企業にとっては、大変な優位性となっています。

■もちろん、アマゾンも表のラスト・ワンマイルについて手を打ってきています。

参考:アマゾンはどこから来てどこへ行くのか
https://www.createvalue.biz/column2/post-412.html

「無人コンビニ」「アマゾンダッシュ」「アマゾンエコー」などと矢継ぎ早に繰り出す新施策は、要するに表のラスト・ワンマイルを詰めるためのものです。

なにしろアマゾンは資金もあるし、発想のリミットがなさそうですからね。なんでもありです。

ここまで革新的だと、アマゾンはどこまで行ってしまうのだろうかと楽しみになりますね

ここは、アマゾンの持つ革新力で、物流業界の最適解も導き出してほしいものです。

周辺の企業とすれば、大変な地殻変動が起きるかも知れませんが、それは仕方ない。

覚悟して、変化に臨んでいくしかありません。

 


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道の駅のポータルサイトを作った人の話

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■「みちグル」というポータルサイトを立ち上げた人の話です。


みちグルとは、道の駅のポータルサイトのこと。全国の道の駅の情報を集めています。

ちなみに道の駅には公式ホームページなるものもありますが、こちらは住所と電話番号ぐらいしか載っていません。

■確かにドライブ時には、お世話になる道の駅です。たいていは偶然立ち寄ったところで、休憩したりお土産を買ったりするわけですが、名物や人気商品などが事前に分かれば目的地の一つになるかも知れません。

道の駅は成長市場であるそうですし、さらなる発展のためには、情報発信を積極的にしていくべきです。

■ありそうでなかった道の駅の情報サイトに目を付けたのは、大阪の方なんですね。

もともと独立心旺盛だったこの方は、証券会社を辞めて、サイトを立ち上げます。

その方法は、ひたすら全国の道の駅に電話をかけて、協力を依頼すること。

やはり最初は人海戦術ですね。

■みちグルのねらいは、ぐるなびのような、口コミサイトを作ることなんでしょうね。

お店が自店の売りをサイトに掲載し、そこにユーザーが評価を書きこんでいく。情報が多くなれば、機能するかも知れませんが、いまはそこまでいっていません。

ビジネスモデルとしては、広告+道の駅が扱う商品のネット通販のようです。

■ただ、道の駅側に温度差があるようです。

というのは道の駅は、民間会社が運営しているところもあるし、自治体がやっているところもあります。

そもそも収益責任がないような運営責任者もいるようで、売上を上げるために立ち上げたばかりのサイトに協力する気が起きないようですな。

■もっとも目の付け所はいいんじゃないでしょうか。

郷土色豊かな道の駅には宝探しのような面白さがあり、興味を掻き立てられます。魅力的な情報があれば、立ち寄ってみたくなるでしょう。

意欲のある道の駅側にとっては、ポータルサイトがあることはありがたいはず。

見る人が多くなってくれば、旅行関連会社や自動車会社からの広告も見込むことができます。

それに、海外旅行者が、地方回りにシフトしているといわれますが、その時に道の駅は拠点の一つになっていくはずです。

中国語や英語のサイトも今後必要になってくるでしょうね。

■もっとも今の情報の出し方では、ついでに立ち寄る際の参考にはなりにくいですね。

先ほど、旅行の目的先になるかも知れないと言いましたが、実際にはドライブをする旅先で情報を探す使い方が主流じゃないかな。

エリアごとに、情報を集約して見せる方が、使い勝手がいいと思うんですけどね。

ここは改善していってほしいと思います。

 
 


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林業ってそうとう遅れた業界なのかな?

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■林業に関する記事です。興味深く読みました。


儲からない林業においてでも、儲けている事業者がいる。その取り組みについて書いています。

■まず一つ。岐阜県で300ヘクタールの森林を持つ事業者。300年近く続く先祖代々の林業です。

普通の業者が「伐ってみないとどんな木材があるかわからない」と言う態度であるのに対して、こちらは、森林にある木の特徴を1本単位でデータベース化していきました。

いわゆる森林を倉庫と見立てて、在庫管理をしたわけです。これにより受注生産が可能となります。

顧客からすれば、納期や本数が確定する上に、1本単位からの注文にも応じてくれるので、ありがたい。付加価値を支払うことができます。

■もう一つ。こちらは和歌山の事業者。

こちらも自社の森林をデータベース化して在庫を把握しています。

さらに木を切って販売するだけではなく、伐採から加工、配送まで自社で手掛けることで、住宅メーカーと直接取引をしているということです。

■事例はこの二つですが、要するに、日本の製造業が当たり前にやっていることを、林業に採り入れたというだけです。

それで頭一つ抜け出せる存在になれるというのは本当でしょうか?

だとすれば林業というのは相当遅れた業界で、努力の足りないといわれても仕方ないでしょう。

記事には書ききれない様々な事業があって簡単ではないのかも知れませんが、この記事通りだとすれば、林業にはまだまだチャンスがありそうですね。

 

ライザップがM&Aを加速

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■ライザップがM&Aを積極的に仕掛けているという記事です。


ライザップといえば、健康食品の販売で基盤を作り、そのあとに始めたフィットネス事業で大成功した会社です。

その強みとなっているのが、いかにも成果があるように顧客に思わせる力。

ライザップ流にいうと、他に類を見ないマーケティングですね。

参考:ライザップはなぜ叩かれるのか?

■M&Aに関するコンセプトも立派です。

「自己投資産業 No.1」をグループビジョンとして掲げ、美容・健康関連事業、アパレル関連事業、住関連ライフスタイル事業、エンターテイメント事業を展開しています。

胡散臭い健康食品ビジネスから脱して、いわゆる事業界のエスタブリッシュメントになろうと望んでいるわけですな。

■記事では、アパレル事業を積極的に買収する姿勢を「利益率が下がる」と危惧していますが、それは織り込み済でしょう。

ただライザップには、素人目線で(多少やんちゃに)ビジネスを作るという良さがあるので、それは失わないようにしていただきたいと思います。

それがなければライザップである意味がないと思いますので。

 

サイコパスに学ぶ集中力の高め方

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■すっかり一般用語になった「サイコパス」です。


その特徴は「見返りがあるときに非常な集中力を発揮する」ことだそうで。

それって普通のことやん。と思う私はサイコパス度が高いのでしょうか?

■だから集中するためには、見返りを設定すればいいわけです。

外部から見返りを約束されなければ動けないというのは普通の人で、優秀な人は自ら見返りを設定するのでしょう。

あるいは、他の人から見えないような見返りを得られる仕組みを作るのでしょう。

確かに、周りを見渡してみて、能力が高い人は自ら仕組みを作ることに長けていますね。

要するに、現在の行動と成果(見返り)を結びつけることが集中するための秘訣だということです。

■もう一つ。サイコパスは、目的を設定すれば、関係のない情報に迷うことがないという特徴もあるようです。

私が思うに、落合博満氏などは、目的設定と遂行の達人だと思います。

あの人もサイコパスなのかな。

参考:なぜ落合博満はブレないのか?

いずれにしろ参考にできるところは参考にいたしましょう。

鳥貴族の成長はこのまま∞に続くのか

鳥貴族の成長は


(2017年2月23日メルマガより)


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■「鳥貴族」の話題を目にする機会が増えてきたような気がします。

鳥貴族といえば、お酒も料理も含めて全品280円(税抜)均一の価格設定で「2000円もあれば本気飲みできる焼き鳥店」として若者を中心に支持を得ている居酒屋チェーンです。

私もたまに行きますが、確かに280円の割には、お得感があるメニューが並んでいます。

いや。正直にいいまして、私は、鳥貴族の主要顧客である"若い人たち"から大きく外れる存在だからか、あまりいい顧客ではありません。

「ごっつ美味い!」「毎日でも行こう!」と感じているわけではありません(^^;

それでも目にする機会が増えてきたというのは、ビジネスとして勢いがあるということですね。

鳥貴族は、あまり広告宣伝をしないお店なのだそうですが、ビジネスとして面白いので、ビジネス系の雑誌やテレビが採りあげます。

会社側もそれをわかっているので、積極的に取材を受けているのではないでしょうか。

そういう意味でも商売上手な企業ですね^^

そんな中、東洋経済オンラインに記事が全4回にわたって集中連載されており、なかなか面白かったので、紹介させていただきます。

著者は、外食ジャーナリストの中村芳平氏です。

参考:「鳥貴族」がワタミをついに追い抜いた理由 全品280円均一の焼き鳥屋は何が強いのか
http://toyokeizai.net/articles/-/157602

記事によれば、鳥貴族は2017年中にも全国600店舗を越え、年商は約450億円規模になる見込みです。

一世を風靡したワタミを、店舗数においても、売上高においても、超えてしまうことになります。

この居酒屋飽和状態といわれる今、なぜ鳥貴族は勢いを持続しているのでしょうか。

■鳥貴族第一号店は、1985年、東大阪市の近鉄俊徳道駅前にオープンしています。(現在は閉店)

創業社長の大倉忠司氏は、ホテルのレストラン勤務を経て、焼き鳥屋で3年近くの修業を経て独立した人です。

ちなみに修業した焼き鳥屋というのは、関西近郊の駅前によくある「やきとり大吉」から独立したお店だったそうです。

一号店は、9坪27席のお店。これを皮切りに全国展開するぞ!と夢は大きかったのですが、そう簡単ではありませんでした。

なぜなら俊徳道駅前という立地は、駅前とはいいながら、居酒屋など成り立ちそうにない寂しい場所でした。

その分、家賃は安い。

安いが、人通りの少ない立地で、いかに店を成立させるかを第一号店で苦闘しながら学んだことが、鳥貴族チェーンの基礎となったわけです。

■大倉氏は当初から大きなビジネスを志向していました。

そのためのコンセプトが、

(1)若い人が安心して入れる店。駅前の赤ちょうちんからの脱却です。

(2)2000円で本気飲みできる店。安さの追求です。

ダイエー創業者・中内功の信奉者であった大倉氏は、居酒屋業界で価格破壊を実行し、全国制覇せんと考えていました。

そのためには、供給側の押し付けではなく、消費者が求める価格設定にしなければならない。

かといって、むやみに安くすれば、利益が出ない。

そのあたりのさじ加減が難しく、当初は食材の原価に応じて、150円、250円、350円の3つの価格帯メニューを用意していました。

しかし、店側の「損をしたくない」という思惑が透けてみえる価格設定は、顧客の支持を得ることはできず、業績は芳しくありませんでした。

■ここで大倉氏は思い切ります。

価格破壊をするならば、徹底しなければならない!と250円に統一したのです。

ビールも酎ハイも焼き鳥も何もかも250円です。

当然、利益が出ないメニューもあるでしょう。

しかし、この決断が、鳥貴族を一号店で終わる危機から救い出すことになりました。

均一価格設定は、近隣顧客のハートを掴み、店は盛り返しました。(消費税を機に280円均一に変更)

利益はどうするんだ?と思うかも知れませんが、そこは100円ショップと同じです。利益が出るメニュー、出ないメニュー、合わせて全体で利益を確保する考えです。

むしろ、280円という縛りの中で、いかに魅力あるメニューを開発できるかが、店側の工夫のしどころであり、開発力の強化につながりました。

■この均一価格設定は、鳥貴族の象徴となり、最大の強みとなりました。

当然ながら「安いなりのメニュー」になってしまったらただの安売り店になってしまいます。顧客の支持を得て、人気店になるためには「安いのに旨い」を実現しなければなりません。

鳥貴族に関する記事の多くが伝えているのが、メニューに対するこだわりの高さです。

象徴として言われているのが、国内生産の地鶏を各店舗で串打ち(手で串に指す)していること。鮮度に敏感な鶏は、食べる直前に調理することが美味しく食べるコツですが、低価格のチェーン店でそれをするのはコストがかかって割に合わないはず。しかし鳥貴族は「鶏屋が鶏を美味しく出さないと意味はない」と意に介しません。まるで個人の焼き鳥屋のような仕込みをしていることになります。

あるいはタレについてもメーカーの提供するものを使わずに自社生産です。メーカーのタレは日持ちするが旨みが落ちやすいからだそうです。鳥貴族秘伝のタレを毎日店に届けています。

だから鳥貴族のメニューは、低価格店のわりにはグレードを感じるわけですね。

■そんなこだわりがあるのに安くするためには、コストを切り詰める必要があります。

人件費にお金をかけられませんので、品質以外のものは、効率化、自動化、システム化をしつこく進め、ローコスト運営を追求しています。

店舗はログハウス風で、内装にお金をかけていません。小型店舗が中心なので、設備投資も低く抑えられます。

立地も、都会の一等地には展開できません。郊外の駅か、都会であればビルの上階や地下の立地になります。バラバラに出店するのは非効率ですから、地域を決めて集中出店することになります。自然と看板を目にする機会が増えますので、認知度が高まります。

もっとも、コスト削減を追求する同社が、タッチパネル導入に慎重だったのは、従業員と顧客の接点を減らしたくなかったからだといいます。

あくまで顧客に接する部分(メニュー、接客)にはコストをかけて、その他の部分を切り詰めようという考えです。

そんな薄利ビジネスですから、一店舗あたりの利益はしれたものです。実際、一号店を始めてから10年ほどは利益を出せずに苦しみ、大倉氏は何度も辞めようと思ったといいます。

チェーンとして、利益が出たのは店舗数が増えてスケールメリットを享受できるようになってからでした。

その苦労した期間、280円という枠の中で、いかにローコストとハイグレードを追求するか。その積み重ねが独自ノウハウとなっていったのでしょう。

そうした目に見えないノウハウは、強固な優位性になっているはずです。

■だから均一価格の模倣店が多く出現しても、鳥貴族はダメージを受けませんでした。むしろ均一価格の認知度が高まり、鳥貴族の知名度が上がったほどです。

参考:鳥貴族だけが激安・均一戦争に大勝した意味 大手居酒屋優位の構造はこうして変わった
http://toyokeizai.net/articles/-/158335

それにしても、外食産業というのは、模倣が多い業界ですな。

もっとも、成熟市場において、強者といわれる企業が新興企業の真似をするのは理にかなった戦略です。

ランチェスター戦略にいうミート戦略の実施です。

その場合、強者企業の武器となるのが、顧客接点を把握する力です。

難しい言い方ですみません。顧客接点とは供給側が顧客と出会う場所のことです。消費財メーカー等においては、販売店が顧客接点ですから、それを把握する力というのは、流通を支配する力のことを指します。外食産業の場合、いい立地に店舗を多く抱えていることが、顧客接点を多く把握しているということにつながります。

店舗を多く抱えているということは、確かに強い武器ではあるものの、それだけの固定費がかかるということですから、客が入らなければお荷物になってしまいます。その時々で客が入る旬な業態を真似しなければならない所以です。

逆にいうと新興企業は弱者ですから店舗立地に優位性は求められません。その場合、差別化して何らかの尖った価値を打ち出さなければなりません。

その尖った価値が、思いつきレベルのものならば、強者企業によってすぐに真似されてしまいます。強者が自ら抱えている一等地の店舗で、その業態をそっくり真似してしまうと、弱者企業の価値は吹き飛んでしまいます。

真似するなんて後出しじゃんけんみたいでずるい。と思われるかも知れませんが、企業競争とはもとよりそのようなものです。お互い生き残るために必死なのに、ずるいも何もない。むしろ真似されてポシャるような価値しか作れなかった弱者企業の方に問題があると考えなければなりません。

しかしその尖った価値が、独自の技術やノウハウの蓄積によるものならば、強者企業といえども簡単に真似することはできません。

鳥貴族の場合、一号店から始まって東京進出を果たすまで20年の期間をかけています。その期間に蓄積したノウハウとシステムが、容易に模倣できない優位性となったのでしょう。

さらにいうと、鳥貴族のビジネスは、三等立地を前提とした薄利多売モデルです。賃料の高い駅前一等地で真似しようとすれば無理があります。しかも薄利多売は規模がなければ機能しませんので、一朝一夕に真似できるようなものではありません。

いわば、居酒屋業界のコメリみたいなビジネスですね。

■そういえば、ワタミも勢いがあった頃は、散々他の大手企業によって真似されてきました。

ワタミは、駅前居酒屋チェーンに対して、二等立地でテーブル席中心の店を展開し「お酒よりも、食事を食べてもらう店」というコンセプトで若い世代やファミリー層の支持を受け、一世を風靡しました。

ワタミの強みは、居酒屋とは思えないようなバラエティ豊かな料理をメニューとしたことでした。その調理オペレーションには、店でバイトする主婦のアナログな調理力が欠かせなかったといいます。

しかし他企業に真似されて競争が激化する中、ワタミのキッチンは効率化していき、家庭の主婦の知恵やノウハウを活かすという面白みは希釈していったように感じます。

さらに長引く不況の中、台頭する鳥貴族などメニューを絞った専門チェーンに価格で対抗できなくなっていったことが、戦略の混乱(価格帯を上げたり下げたりした)を招きました。

ついでに言うとカリスマ創業者が政治家になるために会社を離れたことで、夢を語って従業員を引っ張る経営手法が、形だけみればブラック企業だったという事例が次々に露呈して、悪いイメージがついてしまい苦境に陥っています。

こちらも復活を期しておりますね。

■鳥貴族は、大阪出自の企業ですし、勝手に親近感を持っております。頑張っていただきたい。

何より創業者の大倉社長には、哲学があると感じます。

彼には、儲けたい、会社を大きくしたいというゲーム感覚よりも、価格決定権は消費者にある、そのための店を実現したいという信念を感じます。

いつかは鳥貴族をコンビニのような生活必需業態にしたい。だから鳥貴族のライバルは「宅飲み」(家で飲むこと)だと言っています。

何とも面白い。アマゾンのジェフ・ベゾスが居酒屋を始めたら言いそうな発言ではないですか。このようなポリシーを持つ企業家には、ぜひとも頑張っていただきたいと思っています。

■しばらくは鳥貴族の勢いは続きそうですね。

今でも「安売りの焼き鳥屋なんてどんな食材を使っているか知れたもんじゃない」と考える人は多いでしょう。そんな人たちに鳥貴族の品質に関する取り組みが知られてくれば、さらにターゲットは広がっていくことと思います。

ただ大倉氏の目指す生活必需業態に、鳥貴族がこのままなっていくか。というと疑問を抱いています。

まず、鳥貴族というブランド一本に絞る戦略はリスクが大きい。

我々は、業態を絞ったチェーンが、不測の事態に弱いことを知っています。狂牛病騒ぎの時の吉野家がそうでした。

今後、世界的な鳥インフルエンザの流行が起きて、打撃を受けないという保証はどこにもありません。

もしそのような不測の事態が起きなかったとしても、単一チェーンは顧客に飽きられるという宿命を抱えています。

いくらメニュー改定を続けたとしてもイメージは徐々に陳腐化していきます。その時、新たな専門チェーンが現れて、市場を侵食していくかも知れません。

さらにいえば、顧客単価2000円という市場ではトップを維持できたとしても、景気の動向で「2000円で本気飲みできる店なんてしょぼい」という評価をされる時が来るかも知れません。

逆に、1000円で本気飲みできる店が台頭し、鳥貴族の価格帯を陳腐化してしまうかも知れません。

■ランチェスター戦略にはグー・パー・チョキ理論といわれるものがあります。

旗を立てるまではグーでいく。(業態・地域・顧客などを絞って集中する)

旗が立てばパーでいく。(主業を中心に商品やビジネスを多様化する)

その後、チョキでいく。(いくつかのビジネスをカットし、有望なものを残す)

この繰り返しで企業は成長し、生き残っていくという考え方です。

この論でいくと、鳥貴族は現在「グー」の段階です。

いずれ「パー」になり「チョキ」をする段階が来るでしょう。

その時を見極め、逃さないことが、生き残るための知恵だと私は考えております。

アフリカ市場はチャンスの宝庫だ

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■アフリカで日本の中古車をネットで輸出販売し、日本を代表するアフリカ通になった企業のお話しです。

アフリカのアマゾンを目指すというのですから勢いがあります。

■最初の注文は2006年。ジンバブエから。それを皮切りに、アフリカからの注文を得るようになったといいます。

どちらかというと偶然からアフリカ開拓が始まったようです。

しかし、アフリカは法律も整備されていないようで一筋縄ではいかない市場です。

そもそもアフリカに車を運ぶだけでも大変です。輸送会社の信頼を得ることから始めなければならない。

輸出した車が港からユーザーに届くまでに目立ったパーツを抜き取られていたなんてことがよくあるらしい。

取り締まる側も、賄賂を要求してきますしね。

そんな中、粘り強く対応してきたことが、今日の地位を築くことになったといいます。

我々の会社には、粘り強さは元々あると思うんですよね。日本企業がアフリカビジネスを軌道に乗せるまでになかなか至らないのは、トラブルが起きると、案外簡単に撤退してしまうからではないでしょうか。我々はトラブルが起こったり失敗したり、計画通りにいかなかったりするのは当たり前という前提で、あまり多くを期待していません。そして、どんなトラブルにも粘り強く対応し、一つひとつ改善を積み重ねてきました。その結果、アフリカにおける中古車の物流網や圧倒的な信頼感というブランドを築くことができました。これが大きかったと思います。

■それに、同社のブランディングに関する取り組みも立派です。

信頼関係を築くために一つ一つの取引に真面目に取り組みながら、同社ロゴの入ったステッカーやTシャツを顧客に配布していったといいます。

おそらく安くて信頼できる同社の取引は、アフリカの顧客にとって「クール」だと捉えられたのでしょう。

いいイメージで認知度が上がっていったようです。

■多くの日本企業にとってアフリカ市場はいまだに「暗黒大陸」のイメージなのではないでしょうか。

しかしアフリカは12億人が住み、これから倍増していく市場です。

ちょっと商売っ気のある日本人なら、アフリカに一度行くと儲けるための方法がたくさん転がっていることに気づくと思います。日本には当たり前にあって、あちらにはないもの、持っていけば便利になるようなものが、まだたくさんあるからです。

そういえば、沖縄の若者がアフリカで300億円のビジネスをしているという話題もありましたっけ。

暗黒大陸ならぬ情熱大陸ですね。

■同社は中古車のネット販売を通じて、ブランド力、アフリカからのトラフィック、および輸送ルートを築きあげました。

多くの日本企業に比べて一歩先んじているわけで、これをてこにビジネスを広げていこうとしています。それが「アフリカのアマゾン」というフレーズになっています。

素晴らしいことだと思いますが、まだまだチャンスはありそうです。日本企業は、中国企業などに比べてアフリカ進出が遅れているといいますが、こういう事例をみると、日本企業の持つ信頼性はまだ武器になるのではないかと感じます。

 


「廃業寸前」が世界トップ企業になった奇跡の物語

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1万時間の法則をこう展開するのかーと感心した

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■先日、メルマガに書いた西野亮廣氏が、藤原和博氏と対談した記事です。

1万時間の法則というのは、ビジネス作家のマルコム・グラッドウェルが提唱した説で、誰でも1万時間をかけて修業すればその道のプロになれる、というものです。

科学的根拠はない俗説ですが、コツコツ努力を積み上げることが成功の道だと信じる者に支持されて人気が高い説です。私もコツコツ派ですから、根拠はなくても信じた方が豊かな人生を送ることができると考えて信奉しています。

■藤原和博氏はさらに強引で、1万時間の修業で100人に1人になれる。と言い切っておられます。

だから別のことで1万時間を修業すれば、1万人に1人。さらに別の1万時間をかければ100万人に1人になれる。というものです。

かなり強引なロジックですが、面白い展開をされていると思います。

藤原氏は

私は、他人からの信頼と共感の総量を「クレジット」(信任)と呼んでいますが、A・B・Cの3点を結んだ三角形の面積がその人の「クレジット」になるんです。

と言っており、西野氏は

「おカネを稼ぐ」というと、どうしたらいいか面食らってしまうけど、「クレジットの面積を広げる」と言われると、とてもわかりやすいですよね。

と応えています。

■確かにタレントさんなどは、突出した分野を複数持つことで、仕事の幅が広がります。

ロザンとか、面白い話をしているところを見たことはないですが、独自のポジションをとって、人気芸人となっていますよね。ああいうのは、とても参考になります。

この方法でダウンタウンとか明石家さんまにはなれないでしょうが、もともと才能がない者は、彼らのようにはなれないわけで、そこを目指すのは戦略として無謀です。

凡庸な者としては、勇気づけられる考え方です。

■しかし西野氏はもうすこし目指すものが高いはずですね。

ポジションをうまく調節しながら業界内で生き残る芸人を目指すのではなく、どちらかというと、自分の可能性を広げて、お笑いという枠からはみ出した存在になろうとしているのでしょう。

そういう西野氏らしいイキり方を今後も期待しております。


 


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キングコング西野の絵本「えんとつ町のプペル」はなぜ炎上するほど売れているのか?

キンコン西野の


(2017年2月9日メルマガより)


■お笑いコンビ・キングコングの西野亮廣氏の書いた絵本「えんとつ町のプペル」が、売れに売れているそうですね。

参考:「えんとつ町のプペル」
https://www.amazon.co.jp/o/ASIN/4344030168/lanchesterkan-22/ref=nosim

聞くところによると25万部を超えたのだとか。

1万部、2万部でよく売れたーと言われる絵本の世界で、25万部というのは規格外も規格外。

なんでこんなに売れたのでしょうか。

■ストーリーがいい。絵がきれい。有名人が描いたから。

ありきたりな理由を並べてしまいそうですが、もちろんそれだけで売れるほど安易なものではありません。

舞台裏を西野氏自身がいろんなところで明かしていますが、この作品がここまで大ヒットするためには、周到に練られた戦略・戦術があったようです。

しかも、その販売方法をめぐって、他のクリエイターたちからクレームがついて炎上騒ぎまで起きています。

いったい何があったというのでしょうか。

■そもそも西野亮廣という人は、芸人の中でも独特の考えを持つ人のようです。

その著書「魔法のコンパス」を読むとその個性的な考えがよくわかります。(ちなみにこちらもよく売れています)

参考:「魔法のコンパス 道なき道の歩き方」
https://www.amazon.co.jp/o/ASIN/4391149192/lanchesterkan-22/ref=nosim

芸人・キングコング西野氏は、デビューして間もなくテレビのレギュラーも得て、順風満帆なタレント活動だったはずですが、25歳の頃、突然「テレビのひな壇に出るのやめる」と宣言します。

今やバラエティ番組のひな壇は、芸人さんの特等席であり、晴れ舞台のはず。

それを自ら降りる。というのだから、お前何を考えてるんだ。と先輩たちから批判される羽目になります。

が、本人は「ひな壇なんて嫌だ、MCがやりたい」と生意気なことを言っているわけではなく「自分はひな壇芸が苦手だ。ここでは勝てない」と考えた末の宣言だったようです。

まるで「このままではダウンタウンに勝てない」と言って漫才を辞めてしまった島田紳助のようではないですか。

ひな壇がなくても、西野氏は、独演会や舞台の脚本、プロデュース、その他さまざまな活動を行う才能豊かな人です。

テレビのひな壇で、その他大勢の一人になるよりも、一番になれる土俵で勝負した方がいいと考えるのは、戦略としてしごく真っ当なことです。

■西野氏が取り組むものの一つが絵本を描くことでした。

もっとも最初の2冊ほどは、西野氏の期待ほど売れなかったようです。

そこで、どうすれば売れるのかを考えた西野氏は、その特異な思考能力を発揮して、独特の販売方法を編み出します。

それが「絵本をお土産にする」という方法でした。

参考:キングコング西野が語る、本が売れない理由
http://best-times.jp/articles/-/4200

西野氏はこう考えます。

もともと絵本は(生きていくのに)必要なものではない。では必要ではないのに、売れているものって何だろう。→お土産だ!

旅行先で買う土産物。名所のペナント。映画館や演劇のパンフレット。あれほど不必要なものはないのに多くの人が買っていく。

だったら、絵本をただの「本」ではなく「お土産」にしてしまえばいい。

そこで彼は、全国で「絵本の原画展」を開催し、その入り口で絵本を販売するという作戦に出ます。

ツイッターで「原画展を開きたい人は無料で原画を貸し出しますよー」と募集するという荒業を使って、です。

この販売方法は、今回の「えんとつ町のプペル」でも踏襲されており、大ヒットの原動力の一つとなりました。

■コンサルタントとして解説すると、この販売方法は「体験消費」と「内部相互補助」を組み合わせたものです。

西野氏がいうように、ものが溢れかえっている時代、企業のプロモーションに飽き飽きしている我々は、生活必需品以外を購入する動機を失っています。

(その生活必需品に関しては、アマゾンが定額・低額で提供するビジネスを作っていくでしょう←前回のメルマガの話です)

その中で、我々が「面白い!よかった!感動した!」と思えるのが「体験」です。

古い広告コピーですが「モノよりコト」というやつです。

「旅行」という商品は、体験消費の最たるもの。我々は、旅行という体験の感動・感激の記念にお土産を買うわけです。

西野氏がやろうとしたのは、土産物を売るために「旅行」を無料で提供しようという試みです。

■さらに「内部相互補助」とは、企業やグループが、ある商品やサービスの利益で、他の商品やサービスを無料提供する販売方法のことです。通常は、無料の商品・サービスで、他の商品・サービスの購入を促します。

参考:「フリー〈無料〉からお金を生みだす新戦略」
https://www.amazon.co.jp/o/ASIN/4140814047/lanchesterkan-22/ref=nosim

↑今回、読み返しましたが、新たな気づきがいっぱいありました。名著です。

西野氏はこの本を読んだのでしょうかね。読まなかったとしても、西野氏がこの本に書かれている内容をとりいれ応用し実行していることは確かです。

西野氏は「マネタイズのタイミングを後ろにずらす」という独特の言い回しをしています。先にサービスを提供する。(西野氏は「恩を売る」と言っています)そうすると、恩返ししたい人だけが、何か違う形(お金であったりサービスであったり)で返してくれる。

これを下手にやると、見返りありきの姿勢を見透かされてしまいます。例えば金の権利を売る営業がやたら過剰なサービスをするような。そうなると「どうせ高い商品を売りつけたいだけだろ」と顧客側もただ食いの罪悪感を覚えません。

西野氏が優れているのと思うのは、そんじょそこらの見返りでは無理だろーと思えるようなサービスを最初にやってしまうこと。要するに、見返りなどいらない、という姿勢を持っていることです。(少なくともそう見せています)

だから、彼のことを面白いと思った人たちは、何らかの形でお返しをしたくなるわけです。

西野氏の戦略の一番の特徴は、このフリー戦略を実にうまく使いこなしていることです。

■たとえば、上の「魔法のコンパス」の中には、西野氏が1カ月間仕事を休んでひたすらサービスに務める「実験」を行ったというエピソードが載っています。

ちょうど西野氏の個展が開催されていたので、毎日ギャラリーに通って、お客さんの悩みを聞き、話をして、芸をして、一緒に酒を飲んで、サービスに務めたそうです。

もちろんノーギャラです。

すると、実際に西野氏に接した人たちは、驚きながらも感激し、西野氏に親しみと信頼を抱くようになります。要するに強烈なファンになります。

結果として、西野氏が実施していたクラウドファンディングに支援が集まり、絵本の製作費1000万円を達成しました。

これが西野氏のいう「マネタイズのタイミングを後ろにずらす」という意味です。

■もう一つ。西野氏の特徴として、常に人を巻き込もうとする姿勢があります。

たとえば「えんとつ町のプペル」は、大勢のクリエイターたちが参加して制作されています。映画とかアニメの制作のように、西野氏は監督やプロデューサーの役割でした。

西野氏一人で作るよりもいいものができる。というのがその考えで、作家性を重視する絵本作家からは批判されたようですが、面白いものができればそれでいいやん。と私も思います。

その製作費の一部は、クラウドファンディングで集められました。これはお金を集めようというだけではなく、絵本製作を応援していくれる人を増やそうという試みです。

さらにいえば、度重なる炎上騒ぎも、西野氏にとっては知名度と応援者を増やすことにつながっているそうです。

確かに、西野氏の発言は、誤解されやすい。というかイラっとするような言い方をしています。炎上するのもむべなるかな。

先日は、「えんとつ町のプペル」をインターネットで無償公開したとして、炎上騒ぎになりました。

参考:お金の奴隷解放宣言。(西野氏のブログ)
http://lineblog.me/nishino/archives/9256089.html

批判しているのは、個人のクリエイターたち。「西野君は既に売れたからそれでいいかもしれんが、画を描いて飯を食ってる我々を食えなくしようというのか!」という意見が主だったと思います。

が、上のフリー戦略をみてくれるとわかると思いますが、絵本の無料公開そのものは、市場をつぶすものでも何でもない。むしろ、市場を拡大させるための施策です。絵のデータを公開して消費者との接点を増やして、絵本を拡販せんがためのもので、実際に「えんとつ町のプペル」はさらに売れたということです。

堀江貴文氏(ホリエモン)が、批判に対して「こいつらバカか」とつぶやいたのも当然なわけです。

しかし、この炎上騒ぎの理由はそこではないですよね。実際には「お金の奴隷解放」とか「「お金が無い人には見せませーん」ってナンダ?/糞ダセー。」とかいう西野氏の気障ったらしい言い方にモゾモゾきた人たちが騒いでいるのではないでしょうかね。

確信犯なのかそうでないのかわかりませんが、どうも西野氏は「炎上体質」なのでしょう。

だけど西野氏は「炎上すればその分、知名度が上がり、味方も増える」と仰っています。前向きなのはいいことですね。

■まとめます。

「えんとつ町のプペル」を売るために西野氏がとった戦略の特徴は

(1)顧客も製作者も巻き込み、作品のクオリティを上げつつ協力者を増やした。

(2)西野氏のもともとの知名度も利用してフリー戦略をめいっぱい仕掛けた。

(3)イベントや原画展により絵本販売を体験消費に近づけた。

(4)さらには批判者も巻き込んで、販売そのものをイベント化した。

だと考えます。

■ちなみに、私は、西野氏のことをあまり知らなかったのですが、今回いろいろ調べてみて、実に面白い人だなーと感心しまいた。

西野氏の著作「魔法のコンパス」も、示唆に富んだ内容で面白かったです。
https://www.amazon.co.jp/o/ASIN/4391149192/lanchesterkan-22/ref=nosim

この本の中で、彼は「これからは町を作る」と宣言しています。

なぜ町なのか。ビジネス的にいうと、協力者をいっぱい巻き込み、さらに得意のフリー戦略でお客さんをいっぱい巻き込み、町のどこかでお金を落としてくれたらいい、という考えです。

つまり町とは、相互連携のビジネスグループであり、ひとつの経済圏を指すものです。

なんと西野氏は、アマゾンやグーグルが実現しているビジネスモデルをリアルな形で作り上げようとしているらしいのです。

全くもって面白い人です。

これからも注目していきたいと思いますので、面白いことをどんどん仕掛けていってくださいね。


 


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ネット配信時代の映画製作会社



■ソニー・ピクチャーズ・エンターテイメントが、過去の映像作品の営業権をゼロに切り下げ。そのため、1121億円の減損が発生したという記事です。

その背景には、DVDなどのパッケージが売れないという事態があります。

従来、映画作品は、上映時の入場料収入だけではなく、DVDなどの販売収入も見込んでいましたが、それが見込めないということです。

■この由々しき事態を引き起こしたのは、ネットフリックスやアマゾンプライムビデオなどのネット配信サービスの存在です。

定額払えば見放題の映画作品があるのだから、わざわざDVDを購入する必要はありません。

ネット配信会社は、定額収入を使って、自らオリジナル作品の制作に取り組んでいます。

だから従来の映画会社も、自身のタイトルは見放題にさせないぞと頑張っても、あちらに顧客がつけば折れるしかありません。

そこで、ソニーピクチャーズは、製作費を抑えて、ネット配信を前提とした作品にシフトしつつあるということです。

■まあ、配信方法が変われば、市場規模も発生する費用も変わってくるというのは当然のことです。

それに適合した企業だけが生き残るわけで、ソニーの現実路線は前向きにとらえるべきだという記事の内容はその通りだと思います。

むしろ、隙間を狙おうとしていた中小規模の制作会社が悔しがっているのではないでしょうか。

■今後は、映画館でイベント的に上映されるものと、ネット配信を前提としたものに二分されていくのでしょうね。

どちらも製作費は抑えなければなりませんが。

ハリウッド映画の場合、有名俳優の出演費用がべらぼうに高かったりするので、のりしろがありそうです。

当初は、無名の俳優を使ったりするんでしょうね。脚本が面白ければそれでも問題ありません。そのうち、俳優の出演費用も全体に下がっていくのでしょう。

むしろ視聴された分だけ報酬が割り振られる方式にした方が、健全になるのかも知れないと思います。

   
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パティシエ エス コヤマの人材マネジメント



■兵庫県三田市の有名菓子店パティシエ エス コヤマに関する記事です。

関西にあるので、私も以前行ったことがあります。

参考:パティシエ・エス・コヤマ

とても車でしか行けない辺鄙な田舎に、コヤマ村とでもいいたくなるような店群があります。

エス コヤマには、全国の商業施設から出店要請が絶えない。しかし小山社長は全て断っている。「緑豊かな場所で自然や季節を感じてもらえるお菓子を作り、お客様にもそうした空間に足を運んで楽しんでもらいたい」と考えるからだ。

それができるのも、パティシエ小山氏が、世界的な菓子職人であるという実力があるからでしょうが。

■今回の記事は、小山氏の人材マネジメントについて書かれていて、興味深いです。

記事を読むと、同店が経営者の知名度だけで運営しているような安易な店ではないことがよくわかります。

小山氏がやっていること

(1)社員の日報を毎日読んで返信すること。

日報は自由形式です。考えたこと、行動したこと、目標など。丁寧に読むとその社員の心の内がわかるといいます。

小山氏が日報にこだわるのは、自分自身が修業時代欠かさずつけた日報の効果を信じるから。

これには私も同意します。書く。ということは、自分が経験したことを整理し、役立てることにつながります。面倒くさいし、エネルギーも使うが、それ以上の利点があります。

社員数が多くなれば、物理的に無理になるかも知れませんが、小さな会社や部署であれば、日報でコミュニケーションをとることは可能なはずです。

日報など不要と称するコンサルタントもいますが、私は書くことの威力を信じます。

(2)失敗を共有する

これは後編に書かれています。

「失敗しても、それを皆の前で話してくれたら、それはもう失敗ではない」。小山社長は社員に向けてそう繰り返し伝えてきた。失敗を恐れて縮こまったり、ミスを隠そうとしたりする社員が増えれば、会社の活力は失われる。「失敗は最高の教材」であることを、失敗を恐れがちな若い世代に、身をもって学ばせようとしている。

失敗を共有すれば、それは教材になる。こちらも全くもって同意します。

■この記事を読んでいると、小山氏が社員に対してかなり細やかに真摯に向き合っていることがわかります。

(1)では個別に向き合い、(2)では全員での共有を図ります。

さらに(3)年一回の海外研修の実施も行っています。

会社として社員の成長を期待し、惜しみなく投資する。こうした小山社長の姿勢は「人を育てるのに近道はない。だから腰をすえて取り組む」という覚悟が伝わってくる。

小さな組織を運営するにおいて、同店の取り組みは大いに参考になるのではないでしょうか。

   
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獺祭は成功しすぎて妬まれているのだろうか

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 ■若干、言いがかりのような記事ですな…
獺祭はもともと伝統的な酒造りから脱し、杜氏を置かない製法をとっています。古い蔵ではなく、近代的なビルで酒造りをしたからといって、ポリシーを変えたわけではないはず。

むしろ大量生産しても味が変わらない製法を確立しているかどうかか重要です。このあたり、記事は「味が変わった」「いや、変わらない」という両方の意見を載せており、結論が出ていません。

■味が変わったかどうかはさておき、獺祭の酒蔵である旭酒造の志向するものは理解できます。

昔の酒造りは、熟練した杜氏頼みのところがあり、ありていにいえばムラがあったようです。それを安定させるためには、温度など諸条件と工程ごとの作業のデータをとって、最も美味しい工法を確立する必要があります。

旭酒造に関わらず、ある程度の規模がある酒蔵は、データを蓄積し、それに沿った酒造りをしているはずです。ある意味、酒造りを工業製品のようにしていこうというのが近年の流れです。

杜氏を置かない。という旭酒造のやり方は今のところ特殊ですが、データに基づく科学的な酒造りという意味では、特殊ではありません。

が、地方の小さな酒蔵が、その問題に真向から立ち向かって、販売も含めて、成功したというのは素晴らしいとおもいます。

■もっともいくらマーケティングがうまかったからといって「日本酒代表」と言われるまでに成功するとは思わなかったのかも知れません。

今のところ、データにしきれない部分があることは確かでしょう。なのに、杜氏を置かない酒造りがベストプラクティスだと言われてしまうのは、時期尚早のはず。

何より、日本代表といわれるまで売れているわけではないでしょう。

このあたり、白鶴をはじめ、大手酒造メーカーはもっとしっかりしてほしい。

獺祭に大口叩かれてんじゃねーよ!

■私は、個人的には、フルーティな味わいとか華やかさとか、あまり好きではありません。

だから獺祭がこれほど持て囃される理由が今一つわかりません。

基本的には、甲類焼酎を適度に混ぜた酒を好みます。

そういう意味でも、大手酒造メーカーには、トップグループとしての意地をみせてほしいものだと考えております。

   

顧客ファーストであり続けること

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■セブン&アイ・ホールディングス前会長の鈴木敏文氏の言葉です。


なぜ鈴木氏の判断は早く、ぶれなかったのか?

鈴木氏は、判断基準を顧客が「買うか、買わないか」の一点に絞っていたからだと言っています。

■そういえば、アマゾンのジェフ・ベゾスも強烈な「顧客ファースト」信者です。

会社内部の意向や得意先、競合、投資家、株主でさえおかまいなし。顧客を利するかどうかだけで判断しようとしています。

参考:アマゾンはどこから来てどこへ行くのか

顧客ファーストは、マーケティングの基本理念なのですが、実際には、その基本を完全に守る企業は多くないのが実態です。

■ただベゾスは創業者で、筆頭株主です。

強烈なリーダーシップを個性として持っている人物ではありますが、創業者だから信条を押し通せるという側面があるはずです。

しかし鈴木敏文氏は創業者ではありません。一介の会社員が、会社内部の凄まじい(だろう)同調圧力にもめげずに、顧客視点で判断できたというのは、驚嘆すべきだと思います。

さすが、日本を牽引した流通王です。

■鈴木氏はこう言っています。

戦後の日本社会は、第一フェーズの「メーカーによる合理化の時代」から始まり、第二フェーズの「流通による合理化の時代」を経て、いまは第三フェーズの「消費者による生活の合理化の時代」に入っています。

マーケティングの基本的な考え方を言い換えたものだと思いますが、要するに、第一フェーズ、第二フェーズの時代は、企業側の都合を優先させることが社会的な利益につながった時代。第三フェーズの現代は、顧客視点で合理化することが社会的な利益につながる時代だというわけです。

原理原則に従って考えれば答えは明白なんですが、それでも多くの企業が第三フェーズにチューニングできないのが、現実なんですよね。

企業に関わる者として自戒をこめて書きました。

 
  

アマゾンはどこから来てどこへ行くのか

アマゾンはどこから


(2017年1月26日メルマガより)


■ここ最近、アマゾンの話題を聞くことが多いような気がしませんか。

アマゾンというのは南米の巨大河川のことではありませんよ。

世界最大のインターネット小売りであり、webサービス会社のAmazon.comのことです。

・自動決済の無人コンビニ「アマゾン・ゴー」をアメリカで開店。

・棚が作業員のもとに移動する自動倉庫「アマゾン・ロボティクス」の稼働。

・ボタン一つで商品を補充できるサービス「アマゾン・ダッシュ」の開始。

・話しかけるだけで商品注文や音楽を流したりできる機器「アマゾン・エコー」の発売。

無人コンビニ「Amazon Go」は日本の流通業界を席巻するか(ダイヤモンドオンライン)
http://diamond.jp/articles/-/114392

アマゾン倉庫、商品を運ぶロボットを国内初導入(日経ビジネスオンライン)
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/16/030800018/121600235/?rt=nocnt

家庭の日用品征服を目指すアマゾンの秘密兵器(日経ビジネスオンライン)
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/15/258308/120500058/

そのほか、ドローンで配達を試みたり、一般個人に手数料を払って配達してもらう仕組みを考えたり、あるいは本の定額読み放題サービスを中途で放り出そうとしたり...よきにつけ悪きにつけ、話題に事欠きません。

なんでもありのようなこの会社、どこへ行こうとしているのでしょうか。

■アマゾン.コムは、1994年、キューバ移民の養父に育てられたジェフ・ベゾスが30歳の時立ち上げたインターネット書店を前身としています。(創業時の名前はカタブラ.コム)

創業時のことを詳しく書いた本を読むと、アマゾンが創業者ジェフ・ベゾスの個人的資質に大きく影響を受けた会社であることがよくわかります。

参考:「ジェフ・ベゾス 果てなき野望」
https://www.amazon.co.jp/o/ASIN/4822249816/lanchesterkan-22/ref=nosim

ベゾスが最初に思いついたのは、インターネットなら物理的な店舗や倉庫に制約されずに、あらゆるものを無限に売れるのではないか、という単純な発想でした。

彼はこれを「エブリシング・ストア」と呼んでいます。

もっとも最初からすべての商品を扱うわけにはいきません。慎重に商品選びをした結果、書籍を扱うことにしました。本はどこで買っても品質に差がなく、品数がやたらに多いからです。

■目論見通り、書籍のインターネット販売は当たります。

インターネットが出始めた頃にいち早く事業化しようとしたベゾスの先見の明は確かに素晴らしいですが、ここまでは多くの人が思いついてもおかしくないことです。彼が非凡なのは、この後からでしょう。

ベゾスは、ここでインターネット販売の重要な概念を見出します。

商品を無数に並べた場合、売れ筋商品というものが出てきます。通常、上位20%の売れ筋商品が、全体売上の80%を占めるようになります。(パレートの法則)

だから店舗などでは、売れ筋商品に品揃えを絞ることで生産性が向上します。コンビニが販売データを解析して、売れ筋商品を把握しようとするのはそのためです。

ところが、残り20%の売上は、売れ筋以外の80%が稼いでいるわけです。

これが「ロングテール」という概念です。

参考:とるに足りない80%(2006年のメルマガです)
http://www.createvalue.biz/column2/post-115.html

しかもアマゾンの場合、たまにしか売れない商品の販売額が全体の30%以上になっていたといいます。

物理的制約のある実店舗なら売れ筋に絞るのは正しいかも知れないが、店舗コストの小さいネット販売なら、残りの30%を捨てるのはもったいない。

むしろ実店舗が捨ててしまっている残り30%に焦点を絞るべきではないか。

ベゾスはそう考えました。

■それまでアマゾンは、商品販売だけを担い、配送はメーカーに任せるという楽天のようなスタイルを志向していました。

売れ筋商品だけを扱っているならばそれでよかったかも知れません

しかし、月に1個、年に1個しか売れないようなロングテールの商品をメーカーに個別配送してもらうのは無理があります。つまり物流機能はアマゾンが持たなければならないのです。

そこでアマゾンは、物流機能に莫大な投資をし始めます。

そのため、何年にもわたり、赤字状態から脱却できないようになったわけですが、ベゾスは意に介しませんでした。

■ジェフ・ベゾスの強烈な信念の中に「顧客ファースト」というものがあります。

何よりも顧客を第一に考える。

マーケティングの基本には違いないのですが、この基本にこれほど忠実な経営者はいないのではないかと思えます

なにしろベゾスおよびアマゾンは、得意先に評判が悪い。値切るし、無茶を言うし、こき使う。

交渉事は、一方的に勝つためにある、というのが彼の信条だそうです。だから得意先を出し抜くのも平気です。ましてやライバル会社をつぶすまで追い込むのは当たり前。

そこまでしてどうするのかと言えば、顧客に還元するのです。

最初に扱った「書籍」でも、販売力が増すにつれて横暴になり、出版社や取次の立場など無視した安値販売を行いました。

とことんまで安値で提供するのが顧客ファーストだと考えているからです。

■もちろんアマゾンが儲けるわけではありません。

赤字は平気な会社です。アナリストや投資家の短期利益志向を軽蔑しているふしがありますし。利益を出すぐらいなら顧客に還元する。

実際、アマゾンは創業から今に至るまで、黒字だった年は数えるほどしかありません。

利益を追求しない会社に、ライバル会社はどうやって戦えばいいというのでしょうか。

■本当のところ、ベゾスが利益を上げたくないわけではないでしょう。

が、短期的な利益はいらないと考えていることは確かです。

彼の競争に関する考え方も独特です。

「利益が高ければ、ライバル会社が参入してくる。だから利益が出ないような商売をする」のだそうです。

きわめて低利益でビジネスを成立させてしまえば、そんな旨みのない市場に、誰も後から参入しようとは思わないでしょう。

まるで焦土作戦のような参入障壁の作り方です。

■ロングテールという概念を知り、物流機能に投資をしたことがアマゾンの強みとなりました。

基本的に、アマゾンのビジネスは、積み上げ式であり装置産業といえるものです。

本から始まった扱い商品は、今や消費財から家電、食品、あらゆるものに及び、それらをストックし、配送する倉庫が全世界に作られています。

当初、1週間もかかっていた配送日数が、今では注文から1時間で届くサービスを開始しています。

顧客ファーストの信条のもと、顧客が買い物に抱くストレスをとことんなくそうという試みです。

そのため宅配便業者にしわ寄せがいっているわけですが、それでも宅配業者はついていくしかありません。

早晩、アマゾン自身が宅配業を始めるだろうからです。そうなった時、競争力を保持するためには、アマゾンの要求に応えられる体制を持っておかなければならないのです。

■さらにアマゾンは「プライム」というサービスを開始しました。年会費を払えば、配送料無料、短期配送、ビデオ見放題、音楽聞き放題というサービスを受けられるようになります。

これなど顧客を囲い込むストックビジネスそのものです。(ジェフ・ベゾスは「コストコ」の創業者からプライムのヒントを得たと言われています)

あるいはアマゾン・ウェブ・サービスという定額制のクラウドコンピューティングの提供も行っています。

低価格で高機能のクラウドコンピューティングを使えるため、小さな会社にとってはなくてはならないサービスとなり、今や世界トップのポジションにあります。

こうしたストックビジネスを意識した事業展開をしているため、アマゾンは販売手数料を0にしても利益が上がる体制を作りつつあると考えられます。

■今や、世界トップ10に入る大富豪になったジェフ・ベゾスとはどういう人物なのでしょうか。

上記の書籍「ジェフ・ベゾス 果てなき野望」によると、ベゾスとは子供のころから、「ずばぬけて頭がよく」「とんでもなく勝気」な人物だったらしい。

目標達成にひたむきで、自分にも他人にも厳しく、徹底することを強います。

行き過ぎるほど創造力があり、突拍子もないアイデアを披露して、しばしば社内を混乱させたりもしているようです。

また非常な倹約家(ありていにいうとケチ)で、社員に贅沢をさせないことも有名です。(本人もスーパーで割引クーポンを利用しているらしい)

頭のいい人物を好み、社員採用には常に優秀な人材を求めます。社員が期待外れだと凄まじい罵詈雑言を浴びせることもあるそうです。

かといって陰気な偏屈男だというわけではなく、けたたましく笑う陽気な人物です。

アマゾンの道のりは一筋ではなく、様々な要素が影響しあって、現在の姿になったといえます。ベゾス自身、後付けで適当なストーリーにされることを嫌がっています。

が、一ついえるのは、ベゾスの信念の強さと類稀なリーダーシップがなければ、今のアマゾンはなかっただろうということです。

■まとめてみます。

私が考えるアマゾンの強みとは

(1)アマゾンのビジネスモデルがストックを重視しており、実際は利益を上げやすいものであること。定額サービスの提供に執念を持っており、そのための投資は惜しみません。

(2)きわめて長期的視野で運営されており、目先の儲けよりも、市場シェアを重視していること。短期的利益を求める投資家を無視して、顧客のための投資を止める気配はありません。

(3)「顧客ファースト」「ストックビジネス」「長期的視野」というジェフ・ベゾスの信条が全くブレないこと。この一貫性はベゾスの中でも最も優れた資質であり、優秀な社員が多いアマゾンをまとめる原動力になっています。

この3つの強みが機能する限り、アマゾンの優位性は続くでしょう。

つまり、ベゾスが生きている限り、アマゾンの進撃は止まりませんよ。

■最初に戻りますが、無人コンビニや注文ボタンは、顧客の購買行動を容易にするためです。

配送センターのロボットは、配送機能を高めるためです。

つまりこれまで取り組んできたアマゾンの事業の延長線上にあるものです。

今後、アマゾンはどうなっていくのか。

これまでの方向性をさらに進めるとすると...家を丸ごと扱うかも知れません。

アマゾンホームとかいって、定額で家、家具、水道、電気、ガスを提供。基本的な食材も提供。あとは個別注文。つまり生活のすべてをアマゾンで賄うのです。低価格で。

あるいはアマゾンカーかも知れません。定額のリースで車を提供。ガソリンや保険、点検、その他備品を提供。低価格で。

アマゾン起業かも知れませんね。資金調達からノウハウ、人材募集、仕入れ、製造、販売、事務所、コンピュータ、すべてをアマゾンで賄う小さなビジネスオーナーです。低価格で。

要するになんでもありです。

■懸念されるのは、ベゾスが死んだ後です。アマゾンが独占的な地位を利用して利益確保に走り出すと、それは害悪以外の何物でもありません。

そんな事態を招かないためにも、楽天やヨドバシカメラには頑張っていただきたい。ヤマト運輸や出版社や今後も含めてアマゾンにかかわるすべての企業にはアマゾンに対抗できるスキルと体力を維持しておかなければなりません。

なぜならアマゾンは、自社でやった方が生産性が高いと思えば、必ずやってくる会社だからです。アマゾンに対抗できる会社でないと対等のパートナーになれません

いやそんなギスギスしたことを考えていても仕方がないですね。

それよりもむしろ、アマゾンを自らの成長のために利用していきましょう。

アマゾンのサービスを活用して、自社の経営を効率化・高度化していくのもよし。

あるいは、アマゾンとつきあうことで(あるいは競合することで)、自社をバージョンアップさせていくのもよし。

アマゾンはある意味、マーケティングの理念を究極まで突き詰めた企業ですから、それに触れて自らを進化させることができるモノリスのようなものと考えたらいいのではないでしょうか。 

 
  

小國以戴の弱者の戦略

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■昨年末に多く行われたボクシングの試合の中で、いちばん番狂わせだったのがIBF世界スーパーバンタム級タイトルマッチ ジョナタン・グスマン(ドミニカ共和国)対 小國以戴戦でした。

なにしろグスマンは、23戦22勝22KO(1無効試合)というパーフェクトレコードを持つ王者でした。昨年7月には、日本人の和氣慎吾を4度も倒して王座を獲得した経緯があります。

試合後、まさかの勝利でチャンピオンとなった小國は、人生の絶頂はここしかないという勢いではしゃぎまくっていました^^

舞い上がるのも仕方ないですね。

■しかし、上のインタビューを読むと、意外に意外。小國は冷静に自分を見ていることがわかりました。頭がいい人なんですね。

グスマンは、パンチ力もスピードもあり、明らかに実力に勝る王者でした。下馬評は8−2でグスマン有利。小國自身は9−1だと思っていたそうです。

ただしグスマンには強すぎるゆえの隙があると小國は見ていました。勝って当たり前の試合なので、必ずKO狙いで来るだろう。

だから小國は「立ってさえいればカウンターを当てるチャンスがある」と見ていたそうです。

これが実力伯仲した王者なら「12ラウンドのうち6ラウンド分ポイントをとればいい」と考えてきます。そうなれば、小國には勝ち目はありません。むしろ、強い王者でよかったという見立てです。

■実際、試合ではカウンター狙い。ボクシングにおける弱者の戦法です。

1ラウンド。お互い様子見。

2ラウンド。グスマンが小國の実力を見切って出始める。

3ラウンド。グスマンが攻勢に。。。小國はここを狙っていました。カウンターのボディがヒットして、グスマンがまさかのダウン。

ただし、ここでも小國は冷静です。相手が弱っている時に一気に攻めるのが定石なのですが「このラウンド、2ポイントとれたからいいや」と考えたらしい。

不用意にいって、逆にカウンターをもらったら元も子もないからです。

■ポイントをとられたグスマンは、さらに出てくるしかなくなります。

粗いボクシングは、小國の思うつぼです。

以降、無理せずにカウンターを何度か当てた小國が、勝利をつかみました。

終わってみれば小國のプラン通りに進んだ試合だった。といっていいでしょう。
 
逆にグスマンは、小國を舐めすぎたわけですな。

■次戦は、 日本人の岩佐亮佑になりそうです。

小國は既に「岩佐の方が強い」と言っていますね。以前、負けているそうですし。

もしかしたら小國は岩佐に負けるかも知れません。チャンピオンになったというだけで終わるのかも知れません。

しかし、今回、見事に自分の試合を分析した頭の良さをみると、岩佐戦でもやってくれるんじゃないかと期待してしまいます。

小國がどのような作戦で防衛戦を行うのか。楽しみになりました。

  

関西ペイントの海外展開はうまくいっているのだろうか

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■関西ペイントの海外戦略について書かれた記事です。自らを「遅参者」と規定し、そのための戦略を考えています。興味深い。

日本における総合塗料メーカー大手の関西ペイントですが、競合の日本ペイントに海外展開で後れをとり、2位の地位に甘んじています。

日本ペイント(2016.12予測)
売上:4670億円、営業利益:700億円

関西ペイント(2017.3予測)
売上:3400億円、営業利益:365億円 

利益率も見劣りしますね。

そこで、関西ペイントの経営者は、自らを「遅参者」と規定したわけです。

■記事によると、関西ペイントの海外展開戦略は

(1)アフリカ・中東に照準を合わせる。

(2)現地法人、人材に任せる

(3)技術的優位性と対話でマネジメント

ということのようです。

■(1)は、他の大手企業が手掛けていないか遅れている地域にあえて進出するという戦略で、理にかなっています。

しかもその地域でなるべく早くシェアを得たいので、(2)のようなスピード重視となります。

もっとも(3)はかなり難しいかじ取りをしなければなりません。マネジメント力が弱ければ、現地法人が好き勝手やりだすのは目に見えています。

一人二人日本人を役員として送り込むだけでは、追い付かないでしょう。

技術的優位性を持ち続け、現地に適合する企画提案をコンスタントにしていくことで、統制力を強めていこうという考えのようですが、実際のところどうなんでしょうか。

記事からはわかりません。

■会社四季報によると、関西ペイントの海外展開は拡大していっていますが、記事にあるようなアフリカ、中東市場の開拓が進んでいるわけではなく、インドや欧州での売上が堅調のようです。

どこでも売上があがればええやんというわけではありませんね。後追いの地域で売上をあげても地位は安定しません。やはりトップシェアの地域を作っておかなければ、長期的な成長と安定は望めませんから。

その意味では、まだ成果は半ばということなのでしょうか。

続報を待ちたいと思います。

 

カゴメの戦略方向性

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■日経新聞の有料会員限定記事です。すみませんm(_ _)m

カゴメについて書かれています。

トマト加工食品の大手で売上高は2000億円。営業利益は92億円。(営業利益率4.6%は、低いですね…)

■創業時のエピソードが興味をそそります。

日露戦争から帰った創業者が実家の農家で珍しい野菜の生産販売を始めたのがきっかけです。

キャベツやパセリなどは高値で売れるが、トマトは生食に向かないとか言われて売れない。

意地になったのか、トマトを加工して売ることを決意。アメリカのトマトソースを研究し、独自のソースを開発し、トマト加工会社となっていきます。

■そのままキャベツやパセリを販売していれば苦労しなかったのに…と思ったりしますが、そこが非凡なところです。

簡単に儲かる事業分野は、簡単に新規参入を招くので危険です。それよりも苦労しないと売れない分野では競争も少なく、ナンバーワンの地位を作ることができます。

この発想は、創業時のアシックスと同じです。(物資不足で靴ならなんでも売れた時代に、あえて技術的に難しいバスケットシューズに特化して、シェアトップを狙った)

狭い分野、誰も手を出そうとしない分野に地位を作って、シェアを占めるのは、ランチェスター戦略の基本です。

■創業から100年を超え、カゴメはトマト加工品のトップ企業となっています。

飲料:760億円。加工品:240億円。農作物:120億円。海外440億円。(会社四季報より)

※筆頭株主はアサヒHD 

今後の方向性を、トマト以外の野菜と海外進出としています。

 ランチェスター戦略には「グー・パー・チョキ戦略」があります。簡単にいうと、まず柱となる事業を一点集中して作り上げ(グー)、それを中心に手を広げ(パー)、そののち取捨選択する(チョキ)という成長のプロセスを示した戦略なのですが、カゴメの動きはそれに応ずるものだと感じます。

つまりこれからパーに入ろうというわけです。

■ただ苦言をいうと、戦略展開が遅いですね。

ケチャップなどの事業が軌道に乗ってきた1957年、蟹江はトマト産業を視察するため米国を訪れ、まだまだ技術に差があると痛感させられた。それから60年、磨き上げてきたトマトのノウハウを武器に、国内外で新たな勝負に挑もうとしている。 

 とありますがトマトのノウハウを磨き上げるのに60年もかかったのでしょうかね。

その当時は戦略方向性を描けなかったということなんでしょう。その当時から戦略が明確であれば、もっと世界的企業になっていたのではないかと思います。


東宝の戦い方は鉄板のようだ

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■東宝が業績絶好調です。それはそうでしょうね。「君の名は。」「シン・ゴジラ」と大ヒット映画を抱えていますからね。

東宝の今期売上予測は、2340億円。営業利益は470億円。

2位の東映の売上予測が1180億円。営業利益145億円。ですから2倍近い差が開いていることになります。

もはや日本の映画興行は東宝の一人勝ちです。

■映画が斜陽産業だといわれた頃、東宝は基本的に制作をやめるという決断をしました。

その代り、映画館(シネコン)グループを買収して、日本最大の映画館網を作り上げました。

さらに宣伝部隊を整備・拡張し、”売る”体制を充実させました。

映画館を多く抱えている上に、宣伝力がある東宝ですから、制作会社からの企画が集まってきます。

東宝側とすれば、ヒットしそうな作品を優先的に選択することができます。

逆にいうと制作側は、東宝にとりあげられないと大ヒットは見込めないということになります。

■ こういう状況は、クリエイターの批判対象になります。東宝の顔色をうかがわないと映画も作れないのかというわけです。

しかし東宝のビジネスモデルとして考えた時にはきわめて優れたものだといえます。

まるで高度成長期の松下電機のようですね。

■記事には、東宝側が製作費を厳密に管理して、大コケしても傷が深くならないようにしているとあります。

このあたりが、クリエイター側の神経を逆なでするところなんでしょうね。

しかし、東宝はかつて黒澤明という途方もない天才とつきあってえらい目にあった過去がありますので、クリエイターの扱いには慣れたものなんでしょう。

どんな才能であろうと、黒澤明ほどではないでしょうし。

■もっとも東宝のガードを固めてローキックばかり蹴る戦い方(例がわかりにくい?)は、盤石ですが面白みがない。

今回、「シン・ゴジラ」で自社単独制作に踏み切り、成功したのは、挑戦しようという意欲の表れのはず。

さらには「君の名は。」が海外でも大ヒットしているということです。

ここはスケールを世界に広げる好機ではないでしょうか。 

日本国内で手堅いヒットを狙う内弁慶スタイルだけではなく、 海外市場開拓のビジネスモデルを真剣に作ってほしいと思います。

■もう一つ。やはり映画産業のトップ企業なんだから、裾野となるクリエイター育成にも責任があるはずです。

こちらは文化事業として取り組んでほしいと思います。

 

「孫子」を5つのポイントで整理した

(2017年1月12日メルマガより)


■この正月、時間があったので、「孫子」を読み返しておりました。

私は「孫子」が好きでして、それに関するセミナーも何度もしております。

それでもたまに読みたくなります。そのたびに新しい発見があるので、さすが孫子です。

確か昨年の第一回目のメルマガも孫子に関するものだったはずですね。

参考:「孫子の兵法」を企業経営に活かす方法
http://www.createvalue.biz/column2/post-379.html

恒例、というわけではないですが、今年も最初の話題は「孫子」をとりあげたいと思います。

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■今年の正月、思うところがあって「孫子」を読んでいました。

参考:孫子 (講談社学術文庫)
https://www.amazon.co.jp/o/ASIN/4061592831/lanchesterkan-22/ref=nosim

ちなみに「孫子」とはいまから2500年前に書かれた中国の兵法書です。

古今東西の兵法書の中でもとりわけ有名なもので、いまだに世界中の軍事専門家、政治家、各界のリーダーなどに読まれています。

ビジネスの世界でも「孫子」に書かれている知見は、非常に参考になるものです。

私は、仕事がら必要性を感じて読み始めたのですが、はじめて読んだ時は、その内容に衝撃を受けました。

なにが...というと、とにかく合理的なその姿勢です。

身も蓋もないぐらい合理的。

そりゃあ、初めて読んだ人は驚くはずですよ。

■一般に「兵法」というと戦争の方法や勝ち方を書いた本と思われるかも知れません

が、「孫子」はむしろ、戦争を回避すべし、と主張しています。

その戦争忌避の姿勢は最初から最後まで徹底しています。

ただしその理由が合理的です。

戦争になれば損をするから。ありていに言うと、お金がかかるからです。

じゃあ、儲かるなら戦争していいのか?というと、していい。と書かれています。

もっとも、儲かるような戦争なんてそうそうありませんから、なるべく回避しようとします。

どのように回避するのかというと、謀略で敵を内部崩壊させて、戦争にならないようにしよう。といって、スパイの使い方などを説くわけです。

■要するに「孫子」には、「論語」にあるような、「人間はこうあるべし」「社会はこうあるべし」という理想論が一切ありません。

徹頭徹尾、現実的であり、合理的な判断を説いています。

ともすると「敵は攻めてこないだろう」「礼を尽くせばわかってくれるだろう」といった都合のいい考えに陥りがちな我々に冷や水をかぶせるような内容となっています。

だから、私は、ビジネスを語る際、理想論や精神論を混ぜることに違和感を覚えてしまいます。

ビジネスで生き残るには、そんなもの必要ない、どこまでも現実的で客観的でなければならない。「孫子」がそう語っているからです。

■戦国武将の武田信玄は、孫子を読み込んでいたと言われています。(旗印の風林火山は、孫子からとった言葉です)

だからその家臣であった真田昌幸やその子息である真田幸村も孫子を参考にしていたことでしょう。

彼らだけではなく、戦国時代の武将の戦い方には、「孫子」の影響が見られます。

あるいは、現実として生き残るために行動するならば「孫子」に似てこざるを得ないということかも知れません。

彼らは、軽々しく戦うことはせず、常に慎重に、調略や謀略を駆使して、自らは損をせずに生き抜くことに腐心しています。

それが戦乱の時代の現実的な姿なのです。

■その「孫子」の中で最も有名な文といえば「彼れを知りて己を知らば、百戦して殆(あや)うからず」(謀攻篇)ではないでしょうか。

「孫子」といえば誰もが思い浮かべる文章ですよね。

ちなみにその文章の前後を加えると、こうなります。

「故に兵は、彼れを知りて己を知らば、百戦して殆(あや)うからず。彼れを知らずして己を知らば、一勝一負す。彼れを知らず己を知らざれば、戦う毎に必ず殆うし」

(したがって軍事においては、相手の実情を知って自己の実情も知っていれば、百たび戦っても危険な状態にはならない。相手の実情を知らずに自己の実情だけを知っていれば、勝ったり負けたりする。相手の実情も知らず自己の実情も知らなければ、戦うたびに必ず危険に陥る)←上記の「孫子」(講談社学術文庫) を参考にしています。

■ビジネスにおいては、この文を読んで、情報を収集し現状分析をする大切さを再確認する経営者や管理者が多いと思います。

しかしどのような情報を収集し、どのように分析すればいいのか、まで「孫子」には書かれていることを知らない人も多いのではないでしょうか。

この文章の前は、こうなっています。

「故に勝を知るに五あり。而て戦うべきと戦うべからざるとを知るは勝つ。衆寡の用を知るは勝つ。上下の欲を同じうするは勝つ。虞を以て不虞を待つは勝つ。将の能にして君の御せざるは勝つ。この五者は勝を知るの道なり。」(謀攻篇)

(そこで勝利を予知するのに5つの要点がある。

(1)戦ってよい場合と戦ってならない場合を分別しているのは勝ち、

(2)大兵力と小兵力それぞれの運用法に精通しているのは勝ち、

(3)上下の意思統一を成功しているのは勝ち、

(4)計略を仕組んでそれに気づかずにやってくる敵を待つのは勝ち、

(5)将軍が有能で君主が余計な干渉をしないのは勝つ。

これら5つの要点こそ、勝利を予知する方法である。)

この5つについて、自社と他社のいずれが優れているか、劣っているのかを情報収集し、分析することが、「彼を知り己を知る」という意味なのです。

■この部分は極めて重要だと私は考えています。なぜなら、この5つによって、孫子の全文を整理することができる。それほど核心をついた5つのポイントだからです。

まず(1)戦ってよい場合と戦ってならない場合を分別しているというのは、情報収集と現状分析の重要性を示すものです。

「孫子」には、べつの箇所(計篇)に、現状分析の方法として五事七計なるものが提示されています。

詳しくは説明しませんが「道天地将法」が五事、「君主、将、天地、法令、民衆、士卒、賞罰」が七計となります。

これらの分析に必要な情報を間諜(スパイ)などを使って収集します。

その上で、勝てる敵か、勝てる場所か、勝てる時期かを判断することが大切だと「孫子」は言っています。

※ソフトバンクの孫正義氏などは、この「道天地将法」に20文字を足して、独自の戦略方針を作っていますので、ご参考に。

参考:孫の二乗の法則 孫正義の成功哲学 (PHP文庫)
https://www.amazon.co.jp/o/ASIN/4569676219/lanchesterkan-22/ref=nosim

■(2)大兵力と小兵力それぞれの運用法とは、用兵の法。いわゆる戦略です。

大人数の軍隊と少人数の軍隊では、勝つために戦う方法が違ってきます。

ランチェスター戦略でいうと「強者の戦略」と「弱者の戦略」を適切に使い分けなければなりません。

「孫子」には、戦略的な考え方や用兵の方法について、詳しく書かれています。

ただし、あくまで「孫子」は、派手で無理な戦略行動をとることを戒めています。

「善く戦う者は、勝ち易きに勝つ者なり」(形篇)

(戦巧者とは、容易に勝てるときに勝つ者である)

ここでいう「とき」とは、時期であり、場所であり、敵の状況のことを指しています。

一か八かの勝負をして勝ったとしても、それは戦巧者とは認められません。

絶対に勝てるという算段があるときにだけ戦う。それ以外は、守りを固めて、外交交渉や謀略で相手が攻めてこないような状況を作ることが、「孫子」の姿勢です。

■(3)上下の意思統一とは、組織が一体化している状態を指しているものと考えます。

つまり組織マネジメントの充実度を示しています。

「孫子」が明確に言っているのは、末端の兵士の能力を頼みにしないということです。

「善く戦う者は、これを勢に求めて人に責めず、故に善く人を択(えら)びて勢に任ぜしむ」(勢篇)

(巧みに戦う者は、個人の働きには頼らずに「勢」で戦う。したがって、適材を適所に配置し、「勢」に従わせるようにする)

「勢」とは、勢い、流れといったものを指すものだと思われます。

軍隊にも組織体制があるように、企業組織にも形態があります。企業の場合、ターゲット顧客、業界、ビジネスモデルによって形態は様々ですが、それぞれ相応しい組織の形を持っているはずです。

ところが形というものは時間を経るごとに硬直化していきます。最初は市場に適合していたはずなのに、組織を守る(ありていに言えば、組織内の既得権益を守る)ためにパワーを使うようになります。

そんな時、末端の社員に、顧客対応、競合対応の責任を押し付けるのは、上層部に能がないということにほかなりません。

そこで「孫子」は「勢」という概念を提示します。

組織に何らかの勢いを起こすためには、一方向へ向かう流れを作ることが肝要です。

つまり、組織が掲げた目標を全体で共有し、それに向かうためにコミュニケーションを密にすることが、組織が一体になって大きなパワーを持つことにつながります。

■(4)計略を仕組んでそれに気づかずにやってくる敵を待つ。とは、現場の戦闘における作戦行動を指していると考えます。

「兵とは詭道なり」(計篇)

(戦争とは相手を騙す行為である)

現場の戦闘行為においても、「孫子」はまともに正面からぶつかるよりも、相手を欺き、油断させ、混乱させ、隙を突くような戦いを推奨します。

なぜならその方が、損害が少なく、合理的だからです。

この現場でどう戦うかという部分に最も多くの文を費やしており、行軍の方法や様々な地形での対処、いろんな状況に陥った時の戦い方などが言及されています。

■(5)将軍が有能で君主が余計な干渉をしない。

将軍とは現場を預かるリーダー。君主とはオーナーや経営責任者のことになるでしょうか。

現場のことは現場に任せよ。というのが「孫子」の考えです。

君主の命令に背いてでも、現場の状況に従って行動すべし。と説いており、そのような将軍は国の宝だとまで言っています。

つまり経営トップは方針を示して組織の一体化を図り、現場での実際の動きは現場を知る者に任せるという現実的に組織を動かす方法論です。

■このように「孫子」は極めて現実的観点から書かれたものです。

この本が2500年もの期間、古びずに生き残ってきたのは、そこに腐りやすい生もの(時代の倫理観や正義感)を一切含んでいないからでしょう。

実は私はこの正月、「孫子」の全文を、上記5つのポイントで整理する作業をしておりました。

すると、全文がきれいにおさまることを確認しました。

つまり「孫子」は、現実的かつ優れて体系的に書かれた書物でした。

いずれその成果を披露したいと思っております。



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