■キャノン 8年ぶり首位返り咲き(日経新聞2004.12.28)

■2004年度の家庭用インクジェットプリンター市場は、キャノン47%、セイコーエプソン41%となり、キャノンが逆転の予想。

■家庭用インクジェットプリンター市場は、典型的な2大寡占市場です。上位2社を併せて88%。まさに一騎打ちとなっています。傍から見ていて最も面白いのがこのタイプの市場ですね。(^^)

■こういう市場は競争に勝った企業がひたすらシェア拡大に向かい「絶対的寡占型」に移行するといわれています。

■キャノンは96年まで首位にいたのですが、その後、急激にシェアを落として、99年にはシェア20%代にまで落ち込みました。普通ならこのままずるずるといくところです。

■ところが、踏みとどまって、シェア1位を奪い返したところが、キャノンの底力ですね。なかなかできることではありません。感心しました。

■もともとセイコーエプソンがシェアを伸ばしたのは、デジカメの印刷技術で先行したことです。確かに、デジカメの出始めた頃は、プリントアウトに苦労していました。一般プリンターで、そこそこ綺麗に印刷できるエプソンのプリンターは市場に受け入れられました。まさに技術のエプソンですね。

■もちろん、デジカメ本体で大きなシェアを持つキャノンも写真印刷の技術を高め、今ではほとんど差がないと言われています。そこで「両面自動印刷」「黒を基調にしたスタイリッシュなデザイン」という細かな差別化と、「量販店に販売員を大量投入」という営業力で、シェアを奪還したという図式です。

■ただ、この市場はじりじりと縮小しており、成熟市場に特徴的な価格競争の様相を見せています。消費者にはありがたいことなんですが、企業にとってはつらいことでしょうね。

■一方のセイコーエプソンは、コピーなどもできる複合機に注力しており、この分野では、圧倒的な1位を保っています。将来的には、この複合機が市場を引っ張ると予想されています。

■ランチェスター戦略では、全体のシェアよりも、セグメント分けしたシェアを重視します。だから、家庭用インクジェットプリンター市場でシェア2位に落ちたからといって、セイコーエプソンが負けたとは、短絡的に言うことはできません。普通に考えると、将来的には、セイコーエプソンがシェアを奪回すると思われます。

■企業規模を比べた場合、キャノンはセイコーエプソンの約2倍の売上高を持っています。(営業利益では約6倍)キャノンが力を入れたら、技術でもマーケティングでもトップに立ちそうな気がするのですが、事業によってポートフォリオがあるでしょうし、そうは簡単ではないようです。

■推測ですが、セイコーエプソンは技術力を重視して、成長市場に常に参加することを戦略としています。(どちらかというと弱者の戦略)これに対して、キャノンは、マーケティング面での強みを活かして、成熟市場における競争に勝つことを戦略にしています。(どちらかというと強者の戦略)

■市場が拡大すれば、セイコーエプソンが優位に立つでしょうし、成熟市場のままならキャノンの戦略が優位です。

■企業業績全体を考えた場合、セイコーエプソンは、ここで圧倒的な1位を獲得して「ブランド」と「金のなる木」をキープしておきたいところです。シナリオとしては、複合機市場が拡大→資金回収→マーケティング面に資源投入→絶対的寡占市場に移行というところ。

■一方のキャノンは、普及タイプを抑えつつ、市場の行方を伺うといったところでしょうか。ただ、キャノンはもともと技術開発に極めて強い企業なので、市場の発展いかんでは、一気に資源投入という事態があるかも知れません。

■ちなみに世界のプリンター市場は日本の約10倍です。1位:ヒューレッドパッカード40%、2位エプソン26%、3位キャノン17%。ただ、ここでは複合機にエプソンが強みを発揮できているとはいえない状況です。

■デジタル家電業界は、浮き沈みが激しいので、目が離せませんね。

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