■「最終的なカネの出入りに注目すれば、結局ライブドアは単なるマネーゲームの勝者とたいして変わらない」4月19日日経新聞コラム「みんな、企業を考えた」より さすがメジャーな新聞だからおとなしい書き方ですね。実際、ライブドアは「グリーンメーラー」そのものです。不可解な和解のその後の進展のなさを考えると、実態が想像できます。フジテレビはライブドアに脅迫された上、「落とし前」をとられたわけです。もちろんフジテレビに同情の余地はありません。コーポレートガバナンスの不備を放置していた上、金銭で解決した(うちは許してね。このお金で他の企業をどうぞ)わけですから。 よく外資系の投資会社のことをハゲタカ・ファンドといいますが、名前のあがる投資会社の実態は、リップルウッドにしろ、カーライルにしろ極めてまともなPEファンドです。中期的に株式を保有して、企業価値を高めるという正攻法を行っているわけですから。 それに比べれば、今回のライブドアや、クレイフィッシュを食い物にした光通信など、100倍ぐらいえげつないやり口です。企業舎弟も真っ青ですね。

■しかし、この2ヶ月間、みんな、企業のことを考えました。「企業とは何か?」「企業ってだれのもの?」「株主ってえらいの?」そんな企業の本質を問い直す声が、ワイドショーで取り上げられました。 反面教師だったのか、英雄だったのかは分かりませんが、ライブドア:堀江社長の行動は極めてインパクトがあり、社会的な影響が大きかったわけです。 その意味で、堀江社長は最高の「トリックスター」だと私は思います。

【トリックスターとは?】 トリックスターとは、もとは「いたずら者」「詐欺師」「悪漢」と言う意味だが、人類学や神話学において、神話やおとぎ話の中の独特の性質をもった登場人物を指す言葉となった。すなわち、権威や秩序を壊したり、境界や常識を破ったり、要するに既成の約束ごとをことさらに破ってみせるイメージである。 しかもそうした常識破りを、とくにトリックすなわち言葉のすりかえや、ごまかし、詭弁(きべん)、言葉の二重の意味を使った意味の転換、などを使って行うところが、トリックスターの特徴である。(林道義氏のホームページより) 要するに、批判的な行動で、既存の権益を破壊する役割の者です。野党にいる時は有用な存在なのですが、自らリーダーにはなれません。はっきり言うと、文句ばかり言って責任をとらない存在であるともいえます。 だが、破壊者の役割を得た時は、その機知と行動力が大変魅力的です。

 ■トリックスター・ホリエモンのお陰で、多くの企業が、資本主義社会の仕組みを見直し、経営に緊張感を持つようになりました。「企業は経営者のものである」という前時代の考えを持つ人はさすがに一掃されたことでしょう。ホリエモンのお陰で、「会社は株主のものである」という通説が一般に知れ渡ることになりました。1%でも株式を多く保有した陣営が、会社の意思決定者になれる。このゲームのルールを理解しない人はもういないのではないですか?

■ただし、一方で、「企業はステークホルダーのものだ」という議論も起きています。(ステークホルダーとは、株主を含む、従業員、金融機関、取引先、地域住民、社会など利害関係者すべて)株主至上主義は、短期的利益志向に走る可能性が高いですが、企業は本来、永続的に続くことを求められます。それならば、社会利益に反していては、生き残ることができない。たとえ、短期的には、株主価値を下げたとしても、CSR(企業の社会的責任)に資する行動をとったほうが、結局は企業価値を高める。EU諸国ではこちらの考え方が優勢です。私もこちらの意見に賛同しています。

■まだまだ、様々な要素を投げかけてくれた2ヶ月間の騒動でしたね。私は単純に面白かったです(^^)

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