コモディティとは、ここでは「価格以外で差別化できない商品」のことを指す。
普通、そのような商品は激烈な価格競争に巻き込まれ、儲かるビジネスにはならない。だから、あらゆる企業は脱コモディティ化を図る。ランチェスター戦略も、弱者の戦略として、差別化による脱コモディティ化を勧める。

だが、これに真っ向から挑んでいるのが、cemexというメキシコのセメント会社である。こちらのやり手CEOが、「セメントほど高収益で儲かるビジネスはない」と挑発的な発言をしている。
実際、この会社は世界3位の売上高を誇り、利益率ではダントツの1位である。

セメントなどの原料は、コモディティ商品の典型である。どこからでも買えるし、品質に違いはない。安いところから買おうというのが、経済合理主義である。
それなら、価格競争に巻き込まれない付加価値の高い商品を扱おうというのが、よくある発想であるが、こちらの会社は、徹底した本業絞込みを行っている。つまり、セメント以外では商売しない。

何をしたのかというと、まず原料調達から、顧客への販売・配達までを一気通貫に自社で押えてしまった。バリューチェーンのすべてをコントロールし、コスト減と強み強化を図ったのである。

このあたり、日本のセメント会社は、メーカー、商社、配送会社と分かれているので、特化のよさもあろうが、逆に思うようなコントロールができないだろう。(といっても事情はよく知らないのだが)

cemexは、バリューチェーンを支配することにより、巧妙に、脱コモディティ化を図ったようだ。つまり、デリバリーの正確さ、スピードで差別化するなどである。(納期に30分遅れたらペナルティを払うなど、ピザ屋のようなサービスもやっているらしい)価格勝負といいながら、実は価格以外でもメリットを打ち出している。

さらに、cemexは、徹底した覇権主義を貫いている。圧倒的なナンバーワンをとるまで戦うのである。薄利多売の商品は市場シェアをとるほど、儲かる。そこでさらにコスト削減のための投資を行い、価格勝負をしかけていくというプラスのスパイラルを生み出す。

メキシコでナンバーワンになったcemexは、潤沢なキャッシュをもとに、M&Aという飛び道具を使って、グローバルに事業を展開する。主にスペイン語圏のセメント会社を買収すると、その地域でナンバーワンになるまで戦い、その会社が潤沢なキャッシュを生むようになると、次の地域へ行くという繰り返しを行う。成功するビジネスモデルを着実に広げていっているわけである。

脱コモディティ化と正統コモディティビジネスをうまく融合するという勝ちパターンをしっかり持っているわけで、そうなれば、「こんなに儲かるビジネスはないぜ」という発言にもなろうもんである。

*ちなみにこの項、「BBT757」というCS放送の番組がネタ元となっております。今日のやつも勉強になりました。
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