(2005年1月5日メルマガより)

前回は、成熟市場にあえて参入することで、収益を獲得する企業の話をお届
けしました。

今回も、常識に反することで、成功する企業の話をお届けします。

■日本をはじめ、先進諸国にとって、最も大きな懸念は、少子高齢化の進展
です。
P・ドラッカーは有名な著作『すでに起こった未来』の中で、少子高齢化へ
の対応こそ、21世紀において最も重要な課題であると述べています。

■パワーとは「量×質」で測ることができます。経済力で置き換えた場合、
「付加価値×労働者数」ということができるでしょう。

■少子高齢化の進展する先進諸国は、量で勝負することはできません。
したがって、いかに付加価値の高い商品やサービス、あるいはビジネスモデ
ルを作ることができるかで勝負します。

■先進国の一流メーカーは、その技術力をフルに発揮し、付加価値の高い製
品を開発することで、市場をリードします。
誰でも作ることのできる商品を製造していては、価格競争に巻き込まれ、満
足のいく利益を上げることができません。
大量生産をすることにおいて、中国のメーカーに勝つことができないという
のが常識です。
だから、日本のメーカーは、付加価値の高いオンリーワンの製品にこだわり
ます。

■だが、この常識に真っ向から挑む企業があります。

■船井電機は、あえて普及品市場にこだわることで、収益を上げ続けていま
す。

■船井電機は、付加価値の高い商品の販売を「薄利少売」と位置づけていま
す。
確かに、導入期の製品を持つ企業は、販売量が少なくても、高い価格で販売
することができます。しかし、成長期に至って、競合会社が登場すると、否
応無しに価格競争に巻き込まれます。
それ以上に、開発費用をかけ続けなければならないのが、収益を圧迫します。

■「普及品の価格は低いが安定している。コストさえ下げれば巨額の利益が
でる」というのが、船井電機の考え方です。

■中国メーカーの強みは、圧倒的な人件費の安さです。日本の従業員の十分
の一、二十分の一といわれる低賃金労働力は、日本のメーカーにとって恐ろ
しく脅威です。

■しかし考えてみれば、その他に、日本メーカーが劣っているところがある
でしょうか。商品力、品質、納期...日本メーカーが負けている部分はありま
せん。

■船井電機は、中国に生産拠点を作ることで、人件費コストの問題をクリア
した上で、設計から製造まで自社内でコントロールする体制を作り上げて、
性能・品質を維持しながら、コストを切り詰める生産能力を身につけました。

■船井製品を購入する米国の企業は「船井製は中国製より安く、性能も高い」
と評価しています。

■ランチェスター戦略の重要な考え方の一つに「戦略2、戦術1の法則」が
あります。
これは、ランチェスターモデル式をつくり、ランチェスター戦略を発展させ
たB・O・クープマンによるものです。

■クープマンの理論は、第二次世界大戦において、軍事戦略として米軍が採
用したことで有名です。
個々の戦闘で勝った、負けたは、戦術レベルの話です。
米軍は、個々の戦闘よりも、戦略レベルに2倍の力を注ぎました。
クープマンの方程式は、戦略を「生産力」と位置づけています。

■船井電機は、生産力を高めるための前提を、生産量と位置づけています。
「質より量」への傾倒です。
生産量を確保することで、全体のコストを下げていく方法は、まさに日本企
業が得意とする戦略です。

■競合他社が退場した後の市場において、普及品の多売路線を突っ走るのが、
船井電機の戦略です。
「月100万台が勝ち残りのセオリー」だと言います。それは、月150万
台がやっとのレーザープリンター市場においても姿勢を変えることはありま
せんでした。

■生産量の確保→生産力向上への投資→普及品市場におけるシェア確保→利
益確保という「儲けのパターン」を作り上げているわけです。

■普及品の生産において中国製にはかなわない。先進国は付加価値の高い製
品で戦え。。。そういった常識に、生産力の向上を背景に、挑んだのが船井
電機であるといえます。

■中小企業がニッチで戦わなければならないというきまりはありません。重
要なのは、独自に儲かる仕組みを決められるかどうかです。

(2005.1.4の日経新聞を参考にしました)
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