ゾゾタウンを運営するスタートトゥデイの株価時価総額が1兆円を超えたとして、話題になっています。
1兆円超といえば、今日現在、日本の小売業では5社しかありません。
セブン&アイホールディングス、ファーストリテイリング、ニトリホールディングス、イオンという名だたる企業に次ぐ5位につけています。
(6位は良品計画、7位はユニー・ファミリーマート、8位はローソンです)
10年前に上場したばかりのネット通販企業が、日本を代表する小売業になったというのは恐るべきことですよ。
異色の経営者
スタートトゥデイの創業経営者 前澤友作氏は何かと異色の人みたいです。
参考:一代で1兆円企業を築いたZOZOTOWN社長「異形の履歴書」
前澤氏は、早稲田実業高校を卒業すると、早稲田大学に進出せずに、バンド活動に身を投じます。なぜかというと、
地元の鎌ケ谷から高校のあった早稲田まで1時間30分ほどかけて通学電車に乗っていた時、周囲を眺めると疲れた顔のサラリーマンが揺られていた。早大に進学して就職してもこんな大人にしかなれないのかと思うと、学校に通いたくなくなったようです。
バンド活動ではメジャーデビューを果たすなど一応の成功を収めますが、副業的にはじめた海外CDの通販が売上一億円を超えると、経営が面白くなってきて、スタート・トゥデイを立ち上げます。
その後、前澤氏が好きなファッションブランドを扱うようになり、ネット通販サイトゾゾタウンにつながっていきました。
ただこの会社、経営者が変わり者だけに、運営も変わっています。
勤務時間は9時から15時まで。集中して働いてサッと遊びたいという前澤氏の特性を反映したものだそうです。
基本給、賞与は、全社員同じ額。異なるのは役職手当だけ。
変な社内競争をなくしたいという思いもあるでしょうし、人事考課査定などに時間をかけたくないという合理的な判断のもとでしょう。
とかく競争が嫌いな人らしく「競争心が強い人が多い」東京が嫌いだそうで、地元の千葉から、会社も家も出ようとしません。
そのわりに「宵越しの金は持たない」という江戸っ子みたいな特性があり、手元にあるお金は全部使ってしまいます。このあたり、派手好きな女性の注意を惹くようで、ゴシップも聞こえてきますな。
ネット通販サイトのカテゴリーキラー
そのゾゾタウンですが、えらい勢いで業績を伸ばしています。
5年前と比べても、売上高で2倍、経常利益で3倍に伸ばしています。
事業内容そのものは、いわゆるネットショップ上のカテゴリーキラーです。
※カテゴリーキラーとは、特定の分野(カテゴリー)の商品だけを豊富に品ぞろえして、安く販売する小売業者のこと。
楽天が、ネットショップの総合商店街だとすると、ゾゾタウンはファッションに特化した専門店街です。
一般的に試着が必要なアパレル品はネットショップには向かないと言われていましたが、ゾゾタウンは試着したのちの返品をフリーにして購入のハードルを下げました。
商品写真、サイズなどもメーカーの仕様をそのまま載せるのではなく、ゾゾタウンで新たに撮り、採寸したものを掲載するなどの手間をかけています。
前澤氏は、サイトのインターフェイスなどにはミリ単位でこだわる人のようで、使いやすさを追求し続けており、それが消費者の「便利すぎる」という評価につながっています。
その他にも、つけ払いを認めるなど、斬新なアイデアを実施して、集客力を高め続けています。
2017年3月期には954店がゾゾタウンに出店しており、ブランドが多い→集客できる→さらにブランドが集まる。という好循環に至っています。
百貨店のビジネスモデルをネットに移植
それにしても経常利益率34.6%とは尋常ではありません。(営業利益率は34.4%)
同じネット通販モールの楽天は、営業利益率9.9%
ユニクロを擁するファーストリテイリングが営業利益率7.1%
家具のカテゴリーキラー、ニトリでも営業利益率16.7% です。
いかに同社の利益率が異次元かを示しています。
ゾゾタウンは、メーカーから提供された商品を受託販売する方式をとっています。つまり在庫はすべてメーカーのもの。販売した時点で取引が成立するシステムです。
これは、百貨店のビジネスモデルと同じです。
百貨店は、駅前一等地に巨大店舗を構えている抜群の集客力を背景に、メーカーに販売場所を提供して販売手数料や賃料をとる方式です。
百貨店の店員が販売対応する場合もありますし、メーカー側から販売員を派遣する場合もあります。
それでも、百貨店トップの三越伊勢丹ホールディングスの営業利益率は1.9%
ゾゾタウンの場合、ネット通販なので、店舗にお金をかける必要がありません。その上、販売手数料が30%弱とかなり高い。
これは、商品企画、写真撮影、採寸、配送、すべてをゾゾタウン側が行うからです。
メーカー側とすれば、商品を提供するだけであとは全部ゾゾ側がやってくれて、しかもよく売れるので、30%近い手数料も妥当だと思うことでしょう。
だから当初は「売れ残った商品だけゾゾに渡しとけ」なんて対応をしていたメーカーも、今では、まずゾゾで売り、残ったものを他で何とかする。という販売方針に変わっているといいます。
勝負を分けるのは物流機能
前澤氏は、ネット通販の成功ポイントを「商品」「集客」「サイト」「配送」の4つとして取り組んできました。
その4つめの「配送」が勝負になる。というのは、アマゾンの考え方と同じです。
だから、同社は、千葉や茨城に巨大物流倉庫を建設、フル稼働させています。
アマゾンに比べれば慎重な感はありますが、同社も物流機能に対する投資は惜しんでいません。
もっとも、物流拠点を整備したところで、最終的に消費者のもとへ届けるのは、既存の宅配業者が担うはずです。
アマゾンと同じく、宅配業者との対立が今後、問題になってくる可能性はあります。
メーカーポジションに転身?
意外だったのが、オリジナル商品の製造に乗り出す姿勢を見せていることです。
参考:41歳で「1兆円帝国」を築いた前澤友作の真価 好調ゾゾタウンが繰り出す次の一手
ファッションブランドのネット受託販売というのは優れたビジネスモデルですが、人気メーカーに逃げられたら打撃を受けるというリスクを孕んでいます。
メーカーポジションへの転身は、そのリスクを回避しながら、足りないと思える商品ラインナップの隙間を埋めようという試みでしょう。
全容は発表されていませんが、漏れ聞くところによると、「老若男女が楽しめる」「IoT」を反映した商品だとか。
既存の取引先とかぶるような商品を作れば、商売上マイナスですから、違うジャンルのものになるはずです。
想像するに「ファッションブランドではなく日用衣料」「最新の情報技術を活かした機能性衣料」となるのでしょう。
ということは、ユニクロや無印良品とかぶりそうです。
このまま順風満帆に進むのか
飛ぶ鳥を落とす勢いのスタートトゥデイですが、落とし穴はないものでしょうか。
まず挙げられるのが、ゾゾタウンを陳腐化しようとする新たなネット通販サイトの登場です。
ゾゾタウンがここまで売れてくると、その普遍的なイメージに飽き足りない消費者が現れてきます。
便利だし、ポイントもつくし、安い。だけでは魅力を感じない消費者は、もっと先鋭化したイメージのサイトや高級ブランドだけを集めたサイトに惹かれていきます。
そうなると、ブランドショップ側も、イメージのとんがったネットモールに流れていく可能性があります。
実際に、海外の高級ブランドを集めたサイトが出てきて人気を集めているようです。
あとはやはり、他企業の反攻です。
アマゾンは、アパレル分野でも世界制覇をする姿勢を崩していません。おおざっぱなところはあるものの資金力は豊富で、投資スケールは巨大です。
なにしろアマゾンは、利益も残さない、株主還元もしない、という会社です。現金があるなら全部投資する、と考えているので、そのあたり普通に利益も出すし株主還元するスタートトゥデイからすれば異次元の施策を打ってくる可能性があり気が抜けません。
ファーストリテイリングも黙っていませんよ。
計画しているオリジナル商品がユニクロのものと被る場合は、間違いなくミートしてくるはずです。
これを機にネット通販事業を本格化してくるかも知れませんしね。
※下記を参考にしています。
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