私事ですが、独立してから今年で14年、法人化してからは、12年になります。
長かったような、短かったような。。。
しかし起業者の10年生存率が1割程度といわれる今日ですから、それなりにやってきたと言ってもいいのではないですかね。
もちろん運の要素も強いですし、自分の実力だなんておこがましてく言えませんが。
生き残る事業者の4つのタイプ
ただ事業を続けている小さな会社の経営者さんたちとお話ししていて、やはり生き残るには、相応の理由があるのだと思うところはあります。
これはあくまで私が会ってきた経営者の中で…という主観的な話ですが、下記のどれかに当てはまります。
(1)とにかく思いが強い。どんな逆境でもあきらめない。ギリギリでもやり続けるので、実力が蓄積されて、生きる力を持つようになる。
(2)そもそも儲かるビジネスを選んでいる。成長市場だったり、ライバルがいなかったり。偶然そのビジネスを選んだ場合もあるが、相当考えて計画を立てた場合もある。
(3)実行管理が緻密。小さな目標をコツコツ達成していく力がある。いわゆるPDCAを回すのがうまい。
(4)人に恵まれている。実際には、人の動かし方に優れている。
この4つすべてあれば素晴らしいことですが、そうじゃないことも多い。
(1)だけの人もいるし、(2)だけの人もいる。(3)と(4)を持ってる人もいる。
たぶん複数の要素を持っている人の方が、成功確率が高いのでしょうが、そうではない人もいます。
私のみる限り、思いだけ、とか。PDCAだけ、とか。それでも立派にやっておられます。
やはり何か武器となるものがあれば、それで戦っていけるのですよ。
それぞれが独自の武器で戦えばいい
そこで、自分のことをかえりみるに、どうやら(2)と(3)なのかな。と感じるところがあります。
(2)は偶然かも知れません。そもそも私は、会社員時代の成功体験(考えて営業することが、世界トップ企業を作るほどの威力を持つこと)を皆に伝えようと思って起業しました。
だから経営コンサルタントという利益率の高い職業を選んだのは偶然です。
その中で、日々工夫をしながら過ごしてきました。
毎月、毎週、毎日、小さな目標を立ててコツコツ達成していくことがクセになっており、積み重ねが大きな成果につながることを経験してきました。これが(3)です。
起業してそれなりにやっている方は誰でも、こうした毎日の積み重ねをしているのだろうな。と思っていたのですが、いろいろ話を聞いてみるとそうでもないらしい。
一発勝負ばかり考えている人もいますし、従業員の様子ばかり見ている人もいます。
私のようなやり方を知らせると「そんな面倒なことやってるのか!」と驚かれることがあります。
逆に私も「そんなおおざっぱでいいの??」と驚いているんですが^^;
まあ、人それぞれの資質がありますから、独自の武器を磨いて、使うべきだという話です。
ランチェスター戦略を選んだことが幸運だった
偶然がもうひとつあります。
私の成功体験のベースにある「ランチェスター戦略」です。
会社員時代、この戦略を活用して、大きな業績を上げたのは、書籍にもしましたし、このメルマガで何度か書いていることです。
すっかりこの戦略に感心した私は、独立した後、本格的に勉強して、教える立場にもなりました。
「ランチェスター戦略入門セミナー」に至っては、100回以上やっていると思います。
それだけ繰り返せば、無意識レベルでも身につくというものです。
当たり前の話ですが、私自身のビジネスにおける決断や行動もランチェスター戦略の考え方に沿うものになります。
「ランチェスター戦略が絶対だ!すべてうまくいく!」なんて言うつもりはありませんが、ひとつの優れた戦略を一貫して守っていれば、それは間違えることも少なくなるというものですよ。
「強者の戦略」「弱者の戦略」
このたび久しぶりに公開で「ランチェスター戦略入門セミナー」を開催しますが、そのレジュメを確認していて、あらためてよく出来ているなあと感心したのが、「弱者と強者の5大戦略」という部分です。
これを守っていれば、大きく間違うことはありません。本当にそう感じます。
ちなみにランチェスター戦略では、市場シェアが大きい会社を強者、小さい会社を弱者と呼びます。
市場全体でみれば、トップシェアの会社だけが強者。それ以外はすべて弱者となります。
だから、自社を市場全体で捉えるか、2社間競争で捉えるかによって、立場は変わります。まずは、自社が強者なのか、弱者なのかを知らなければなりません。
そのうえで、強者に相応しいやり方と、弱者に相応しいやり方があることを理解してください。
これが「強者の戦略」「弱者の戦略」といわれるものです。
強者の基本戦略は「ミート」
強者と弱者の戦略で何が違うのか?
基本は、強者がミートを主とし、弱者が差別化を主とする。というものです。
強者は市場シェアが高いので、顧客からの認知度や流通支配力に優れています。生産力や営業数、営業拠点数も優れていることが多い。
だから強者は、より多くの顧客の期待に応える必要があります。流行っているもの、旬なもの、世の中の動きにアンテナを張り巡らし、ヒット商品があれば真似をします。
この真似することをミートと呼んでいます。
強者が真似すると、販売力があるので結果的に一番売れることになります。
アマゾンなど自社で販売している売れ筋商品をそのままパクッて自社商品として販売したりしています。
アマゾンほどの販売力のある会社にそれをやられたら、元のメーカーは泣き寝入りするしかありません。
ビジネス倫理しとしてずるい汚いと言いたくなりますが、アマゾン側からすれば「お客さまが欲しいものをもっと安く大量に販売することは、お客さまの利益になる。善だ!」という理屈です。
アマゾンだけではなく、これまでも、多くの強者企業は、世の中の弱者企業のビジネスを模倣し、つぶしてきました。競争とはそういうものですね。
弱者の基本戦略は「差別化」
これに対して、弱者企業は常に強者の隙を狙わなければなりません。弱者の生きる道とは、強者が手掛けないことをやることです。
これを差別化といいます。
差別化しても真似されてしまうので、弱者はつらい立場です。
だからなるべく真似されないこと、真似しようとしても難しいこと、真似しようとも思わないことを、探してビジネス化していきます。
強者企業が「ビジネスにも品格がある」とか「われわれは王道をいく」とか立派なことを言い出したらねらい目ですよ。
弱者は、あえて強者が眉をひそめるような品格のない邪道を進めば真似されませんから。
弱者と強者の5大戦略
さてランチェスター戦略は、さらに弱者の戦略と強者の戦略の原則を5つに分けています。
弱者の5大戦略。
1.局地戦
2.一騎打ち
3.接近戦
4.一点集中
5.陽動作戦
強者の5大戦略。
1.広域戦
2.確率戦
3.遠隔戦
4.総合戦
5.誘導作戦
これだけ読んでも、抽象的でわけがわかりませんよね。
ただ原理原則とはそういうものです。リッツ・カールトン・ホテルが大切にする「クレド」と同じで、この5つの原則を日々現実のビジネスに置き換えてみる作業を各自がすることで、考え方、行動規範、判断基準が身についてきます。それが蓄積です。
人間の思考というものは、容易に真似することができません。従業員が戦略的思考を身に着けているというのは、それだけで大きな差別化となりますので、人材教育に力をいれることをお勧めいたします。
弱者の5大戦略で戦ってきた
それはともかく、私の場合です。
私の場合、昔も今もこれからもたぶん永遠に弱者ですから、弱者の戦略をとらなければなりません。
「人と違うことをする」という差別化は基本です。できれば、人が「それはあかんやろー」「そんなのやめとけよー」というようなことがねらい目です。
逆に「それいいね」ということには警戒しなければなりません。
単なるへそ曲がりに見えるでしょうが、意に介しません。
その上で「弱者の5大戦略」は大いに参考になります。
簡単に説明すると
(1)局地戦
地域にしろ、顧客層にしろ、時間帯にしろ、全体ではなく一部をターゲットにする。という意味です。
強者が強いのは、数が多いから。数とは、生産数、販売数、売り場面積、営業拠点数、営業担当者数などです。
目に見える数というパワーの前には、精神論でも持ち出さないと、勝ち目を見出すことが難しいものです。
ところが、どんな強者といえども、市場全体をびっしりと押さえているわけではありません。必ずムラがあります。
その手薄なところに進出して、局地において数的優位を作ってしまうのが、局地戦の意義です。
いわば「勝ちやすきに勝て」の実践です。
強者がわらわら居るところに進出する愚は犯してはなりません。勝てる場面が見つかるまで身を潜めて、その時を待ちます。
勝てる場面で戦うというのが、戦略そものもです。
戦略がなければ生き残れない。というのは、まさに勝てる場面で戦わないと生き残れないよ。という意味です。
だから、常に局地戦をこころがけることは、私の基本方針です。
私がどういう顧客、どういう地域で仕事をしているかを知れば、その意味がわかっていただけると思います。
(2)一騎打ち
弱者は、ライバル会社が少ないところを狙わなければなりません。できれば一社しかいないところを狙います。
ライバル会社が多数ひしめいていると、弱者の武器である差別化が効きにくくなりますが、一社だけだとダイレクトに差別化をとることができます。
しかし多くの会社は、ライバル会社が多くいる市場を目指してしまいます。その方が、大きい市場であることが多いので、余裕があるように思えるからですね。
でも長い目でみると、差別化の効かない市場で頑張っても、そのうち駆逐されてしまいます。
たとえその一社が強大な企業だとしても、一騎打ちができる市場を狙うべきです。
(3)接近戦
局地戦をこころがければ、自然と一騎打ち(ライバルが1社しかいない状態で戦う)や接近戦(顧客に接近する)をすることになります。
特に接近戦は、営業出身の私には得意分野です。
営業というのは、一人一人の顧客に会い、その方の感情や思考の動きを読み取りながら、何が必要なのかを見極めていきます。
やはり直接会うことが基本です。できるだけ人と会うようにします。
が、見込み顧客といわれる人たち全員と物理的に会うことは不可能です。としたら、それに代わる方法を考えなければなりません。
ではどうするのか…というところが考え所ですね。
ちなみに私が書いているこのメルマガやブログなどは、接近戦とはいえません。むしろ遠隔戦です。
どうすれば他の人がやっているよりもより顧客に近づけるのか?
私の答えは言わないでおきます。手の内を晒すのも嫌ですし、事業をされる方にはご自身で考えていただきたいですからね。
もったいぶってすみません。
ただ言えるのは、私のビジネスなどお客様一人一人と真摯に向き合わなければ、半年後には何もなくなってしまうでしょうね。
(4)一点集中
局地戦をするにせよ、一騎打ち、接近戦をするにせよ、資源のない弱者企業は、集中しなければなりません。
せっかく決めたことはやりきること。そのために、戦力を集中するのです。そうじゃないと局地であっても数的優位を作ることができません。
集中するのが怖い(他を捨てるのが怖い)のは、成功できない企業の特徴です。
強者は全方位に手当てしておくことが必要ですが、弱者がそんなことをしていたら、すべて中途半端に終わってしまいます。
集中して取り組まないと、勝てる市場かどうかも見極められませんし、ましてや勝てる市場だと見極めた後はやりきるために一点集中することが絶対条件です。
(5)陽動作戦
情報戦の一つで、自社の手の内を読まれないように相手をかく乱するための方法です。
弱者企業が自社の戦略を読まれると、簡単にミートされてしまいます。そうなると、数的に勝ち目がありません。
相手に悟られないように情報を隠し、時には意図しない動きを見せて(フェイントして)強者を混乱させ出し抜く工夫が必要です。
情報を重視する姿勢は「孫子」で顕著ですが、ランチェスター戦略でも同様です。
戦略は活用しなければ意味がない
上記は簡単な説明ですが、これを知識として持っているだけでは、もったいない。
これらの原理原則を、自分に置き換えて、自分だけの戦略を練り、実行することが重要です。
ランチェスター戦略が気になる、と思ったら、この戦略を活用する方法を集中して考えてみてください。
そうすることなく、中途半端に知識だけで留めておくと、せっかく学んだことが身に着きません。
この戦略を活用している私としては、心からそう思います。
とまあ、偉そうに言っている私ですが、20年以上この戦略とつきあっているわけですし、専門家の立場ですし、他の方とは思い入れも活用度も違うのは当たり前ですね。
それなのに時折、忘れてしまうことがあります。
少し事業の調子がいいと「もっと大きい市場でやれる」「強者とタメで戦える」なんて軽薄なことを考えてしまう時があるんですな。
そういう時はたいていダメになりますから、頭を打って、反省して、また弱者の原理原則に戻る。という繰り返しです。
私もまだまだ学ばなければなりません。
芯の通った戦略に20年間とりくんできた幸運
私にとってランチェスター戦略との出会いは偶然だったかも知れません。
が、教える立場になるまで、この芯の通った体系を持つ戦略にひたすら取り組んできたことは、我ながら賢明な行動だったと思いますし、その立場にいれたことは非常な幸運でした。
もちろんまだこれからです。
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