電気自動車と自動運転車の時代になると、自動車がコモディティ化するのではないかと言われています。
もはや自動車は特定の自動車メーカーだけが作れるものではなく、一般工場で簡単に組み立てられるものになるのかも知れません。
そうなると、パソコンの時と同じで、ビジネスの主役は最終製品の製造業ではなく、マイクロソフトやグーグルのようなオペレーティングシステムや検索エンジンなどを操るプラットフォーマーに移ってしまいます。
当のグーグルやマイクロソフトも、自動車産業への参入を全力で行っていますが、いまのところ主要プラットフォーマーになりそうだと考えられるのが、ウーバーに代表される「配車システム」を提供する事業者です。
呼べばすぐにやってくる自動運転タクシーが一般的になれば、ユーザーが必ず必要とするのは「配車システム」ですから、そこを制する者が自動車産業の主役になるという算段です。
ソフトバンクの総取り戦略
その「配車システム」の黒幕になろうとしているのが、ソフトバンクです。
ソフトバンクは世界のライドシェア企業に出資している。米ウーバー・テクノロジーズには累計で約8000億円を投資し、筆頭株主として15パーセントの議決権を持つ。滴滴出行には2017年1月以降約1兆円を投じ、シンガポールのグラブ、インドのオラ(OLA)にも出資する。4社の乗降回数を合わせると世界で1日4500万回。「(4社の筆頭株主になることは)世界最大の交通機関を持つことに匹敵する」(孫社長)
相変わらずやることが壮大です。
配車システムを押さえることで、ユーザーの動きを知ることができ、新たなサービスの開発にも最も有利な位置にいることになります。
この分野に関しては盤石ですな。
参考:ソフトバンクは、なぜ傷だらけのウーバーに出資するのか
日本企業も、配車サービスへの取り組みを開始
その他の日本企業も、配車サービス関連への取り組みを試行しているところが多いようです。トヨタ自動車、日産自動車は、それぞれ「配車サービス」そのものを始めると言っています。
自動者産業の主役の座を奪われたら大変なので、当然の動きでしょう。
ここに、ソニーやDeNAも参入しようとしています。
タクシー会社の日本交通は、自社仕様の配車サービスアプリを開発し、普及させることを狙っています。(トヨタが出資)
これに対して、競合の第一交通は、日本交通の配車サービスを使うのを良しとせず、中国の滴滴出行と提携しました。
もともと配車サービスは、一般ユーザーと一般ドライバーを結びつけるものとして普及してきました。東京に行きたい時、東京に向かうドライバーがいれば乗せていってもらえばいいわけです。
が、こうしたサービスは、日本では白タク行為として法的に禁止されています。
(海外でも禁止されている国が多いのですが、タクシーがそこまで普及していない国が多いため、ユーザーの利便性の観点から、グレービジネスとして黙認されている傾向があるようです)
日本は、タクシーが普及し、タクシー会社の力も強いので、白タク行為を容認する余地はありません。
そこで滴滴出行は、第一交通関連のタクシーを呼ぶための配車サービスとして日本進出を果たしました。
第一交通としても、配車サービスに慣れた海外の顧客を取り込むためには、滴滴出行の力を借りるのがいいと判断したのでしょう。
参考:中国「配車アプリ」と組む日本のタクシー会社は、この先、どうやって生き残っていくのだろうか?
ただソフトバンクの「黒幕」戦略の前では、各社の取り組みは、スケールの小さいものに思えてしまうのは、仕方ありませんな。
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