
家電メーカーのバルミューダが、東証マザーズに上場しました。いまいちパッとしない日本の家電業界を変える存在になるのかと期待されています。
海外を放浪、ミュージシャンを目指した創業者
バルミューダは、2003年に、寺尾玄氏が設立した企業です。
寺尾氏は、1973年生まれ。高校を中退して海外を放浪したのち、帰国してミュージシャンとなった経歴を持つ方です。大手レーベルと契約していたということで、ZOZOの前澤友作さんと似ていますね。家電メーカーをはじめたのも、オランダのデザイン誌をみてやってみたいと思ったということですから、クリエイター気質の強い方なんでしょう。
上場したといっても、100人程度の会社ということなので、寺尾氏の個性が色濃い組織なのでしょうね。
人に合わせていたら「本当のクリエイション」は生まれない──バルミューダ・寺尾玄が語る創造力の源
クリエイター色の強いビジネス展開
バルミューダは、工場を持たないファブレス経営です。同社は、設計・開発のみを行い、製造・生産は、協力工場に委託しています。
アップルも任天堂も、ファブレス経営です。この方式は、固定費がかからないので、利益率が高くなります。
ただし、売れなければ、協力工場に相手にされません。また、売れたとしても、商品やビジネスに真似されない特徴がなければ、協力工場に裏切られたり、他社にまねされたりして、陳腐化してしまいます。
アップルも任天堂も、商品の開発力と、圧倒的な販売力と、ビジネスモデルの完成度で、隙がありませんから、製造・開発は委託しても問題ありません。
バルミューダの場合は、クリエイター色の濃い尖ったコンセプトとデザイン力で、勝負しています。
市場調査はせずに、自分が欲しいと思ったもの、作りたいと思ったものを上梓するという方針です。
需要をみずに開発するなんて冒険のように感じますが、それが、世の中にない驚きを与える商品として、ヒットにつながっています。
クリエイター集団としての面目躍如です。
しかし、商品力を恃むビジネスは、やはり冒険的です。当たっているうちはいいものの、外れた時には一気に苦境に陥るはずです。
古い話ですが、開発力、商品力で勝負していた頃のソニーは、尖ったイメージと同時に不安定な弱さを併せ持っていたものです。
家電新興メーカーの雄
寺尾社長は、既存の国内家電業界のことを
「完全にコモディティー(汎用)化して安くなり、誰も何も考えない」と評したことがあるそうです。
全くその通り。規模の大きな総合家電メーカーは需要を捉えた開発をせざるを得ず、商品はどんどん似たもの、驚きのないつまらないものになっていきました。
だから、海外メーカーのダイソンやアイロボットのように、ひとつの分野や技術を深堀りした商品群に、やられてしまっています。
日本にも、独自のデザイン性や設計思想を持つ小さな家電メーカーが台頭してきています。彼らは、大手のように一つの商品にあらゆる機能を詰め込むのではなく、使用場面に則して一つの機能を尖らせて商品化することが多いようです。
先端技術が盛り込まれていなくても、使いたい機能があって、しかもデザイン性に富んでいれば、それなりの値段で買おうと思います。
いわゆる「一芸家電」として、一定の人気を博しています。
ただ新興家電メーカーの多くは、ニッチ市場を主戦場にしています。規模が小さいので、小回りが利きますが、裏を返せば、脆弱な経営基盤です。失敗しても、大きな傷を負わないような規模だから、冒険的なビジネスができているといえます。
だからこそ、上場するバルミューダに注目が集まります。
資金を集めて、どう使おうというのでしょうか。
商品力を恃むビジネスは危うい
アイリスオーヤマも、注目される新興家電メーカーですが、こちらは、売り場を確保することに注力しており、売り場中心の発想で開発をしていると思えます。
アイリスオーヤマの売り場を着実に押さえていこうというやり方は堅実です。ランチェスター戦略の専門家としては、理にかなった成長戦略だと考えています。
これに対して、バルミューダは、あくまで開発力を強化しようという発想のようです。
バルミューダが東証マザーズ上場、寺尾社長「何よりも売上高を最大化」
上にも書きましたが、商品力で勝負するビジネスには危うさがあります。
ランチェスター戦略のセオリーとしては、創業当初は尖った商品力で勝負しても、橋頭保を作ったあとは、ユーザーに密着し、そのユーザーが使いやすい売り場を確保することが不可欠となります。
上場したのですから、安定的な経営を目指すはずですが、その方向性が今のところ見えません。
かつてのソニーのような開発し続ける企業でありたいのか。ダイソンやアイロボットのように、特定分野を深掘りしてグローバル展開を目指すのか。
あるいは、寺尾社長独自の方向性があるのか。
注目していきたいと思います。
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