売上高1兆円を超える小売りグループでありながら、あまり実態がわからなかったベイシアグループに関する貴重な記事です。今なら、会員登録すれば全部読めますよ。
ベイシアグループというのは、北関東を中心に展開するスーパーベイシア、ホームセンターのカインズ、ワークマンなどが属する小売りグループです。
創業者が人見知りであまり表に出たがらない性格だったこともあり、総括的な記事がほとんどありませんでした。
目立たないが、堅実な経営を貫く
目立たないのは、創業者の性格もあるのでしょうが、グループ全体が、堅実な経営を行ってきたことです。
ダイエーやイオンのように、成長期に一気に攻勢をかけて、トップシェアを目指す経営もあります。これは派手で目立ちます。また日本トップであるがゆえのメリットも多大です。
ところが、ベイシアグループは、成長期にも慎重で、量を追うよりも質をとれ、という方針を貫いていたようです。成長期の定石であるM&Aも行わず、自力で堅実な経営をしてきました。
だから成長のスピードは遅いが、経営基盤が固く、着実な成長を遂げることができたようです。ゆっくりとした成長でも、1兆円に達した今、成熟期の市場において存在感を発揮するようになりました。
グループ内で多様性が進む
もう一つの特徴は、グループ企業への権限移譲が進んでいることです。
古い話ですが、1970年代に大店法が制定されたときに、同グループは、大規模小売店が規制されるのは困るから、部門ごとの小さな店で展開しよう、という方針をとりました。
そこで、扱う商品分野ごとに分けて分社化したわけですが、その際、それぞれの会社ごとに自力で頑張れ、というやり方をしたようです。
だから、任された部門ごとに、工夫して運営をしようとします。一時期は、グループ会社同士でも、ライバル視することもあったというから、無政府状態ですな。
このやり方のメリットは、グループといえども、会社ごとに違った特徴を持つことができて、グループ内の多様性が進むことです。それが、今になって、ベイシアグループの強みとなっています。
たとえば、カインズの成功事例を、ワークマンがまねるとか、その逆とか、グループ内連携が生まれたときに、多様性がプラスに働いています。
また経営人材の育成にもなります。子会社を任せて、経営者を育成するというのは、よく使われる手法ですが、同グループの場合、子会社というよりも、等価値のグループで経営を任されるわけですから、さらに強烈に育つはずです。
後継者育成に苦慮しているほかの企業グループは、うらやましいのではないでしょうか。
グループ全体のパワーが発揮できない?
ただし、この方法は、グループとしてのパワーを発揮しにくいというデメリットがあります。
とくに成長期、一気に攻勢をかけるべき時に、統制がとれず、バラバラに動いているのは、マイナスです。ベイシアグループが、売上高1兆円達成に時間がかかったのはそのためです。
記事を読むと、いまは、グループ全体の経営を意識しているようですが、歴史的な蓄積は簡単に変わるものではありません。
リーダーシップを発揮すべきような環境下には弱い方法です。
要するに、守りに強いが攻めに弱い、判定勝ちを目指すボクサーのような経営ですな。
とはいっても、経営にKO勝ちが必要かと言われれば、そんなことはありません。判定勝ちでも、引き分けでも、生き残ることが重要です。
ある意味、限られた市場で確実に勝つという「弱者の戦略」の集合体のようで、小さな会社にとって参考になる経営をしているといえます。
面白いグループですよ。続報を期待しております。
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