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これは珍しい。カセットテープ専門店の話です。ニッチビジネスですが、面白い試みとして参考になります。

アマゾンが進める消費の「日常化」


店主の角田さんは、元アマゾンジャパンの創世記メンバーだったとか。アマゾンに14年勤めて、起業したのがまさに「逆張り」です。

アマゾンは、徹底した消費の「日常化」を目指しています。

われわれが消費行動をとる上で面倒なこと、ややこしいことを一つひとつ潰していって、消費していることを忘れるかのような状態を作り上げようとしています。

ボタンを押すだけで商品が補充できる仕掛けや、話しかけるだけで注文できる仕掛けは、その途上にあるものですね。

さらに進むと、住む家から電気から冷蔵庫の中身から、すべて注文しなくても補充される仕組みになっていくでしょう。

意識しなくても必要なものが補充されて不満を抱かない生活って、なんかディストピアSFみたいにも思えますが、わずらわしいことはすべて自動仕組みに任せて、人間はもっと創造的なことに意識を向けてください。というのが、アマゾンの描く未来像なんでしょうね。

アマゾンの逆をいく弱者の戦略


そんなアマゾンの方向性を熟知している人だから「逆張り」だったのでしょう。

何しろ扱うのは、カセットテープという時代遅れのアナログ商品。仕入れすら困難。マスを追わないニッチ商品です。

お店は東京中目黒の住宅街にあります。金型工場を改装したという店内に5000本のカセットテープと、カセットデッキを並べています。

ネット通販はなし。店に来ないと売りません。

宣伝はなし。口コミだけでじわじわと販売していくスタイルです。

いわゆる弱者の戦略を貫いています。

非日常性、非永続性、体験を売る


そして重要なのが、これがいわゆる体験型の商品であるということです。

もしこのビジネスが、懐古趣味の人を相手にするのなら、ネット通販をすべきですし、アマゾンマーケットプレイスで販売すべきでしょう。

ただそれだと流行ればすぐに真似されて、飽きられるのも早い。

ところが、店主が言うのは、若い世代に向けて新しいカセット文化を売っているということです。

カセットテープとカセットデッキが持つ音質は、CDや配信音楽には出せないものらしい。私はあまりわかりませんが、そういうものなのでしょう。

さらにカセットテープが持つ非永続性、何度も聞いていると摩耗してしまって音が悪くなるという特徴は、非日常的な体験を演出します。

特別な店にいって説明文を吟味して購入する。そして家で数回、特別な時に聴く。

これは体験を売るビジネスなんですね。
「自分は今、実店舗の成功のモデルを示しているつもりだ」

と店主の角田さんがいう通り、ニッチ店舗のヒントがあると思います。

店舗スタイルは10年、20年続くビジネスではないかも知れませんが、この考え方はもっと長く生きていくための参考になります。