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これはちょっと驚きましたな。

日本を代表する経営コンサルタントの大前研一氏が、独自CS放送局で毎週放送している「大前研一ライブ」の中の名物コーナーRTOCS(リアルタイム・オンライン・ケーススタディ)の内容が、無料で読めるとは@_@

毎週、有料で必死に観ている私としては、複雑な思いがします(ームー)

が、これは素晴らしい企画ですので、ぜひご覧ください。

RTOCS(リアルタイム・オンライン・ケーススタディ)とは


RTOCSとは、現実の会社や組織をとりあげて、その課題と、今後進むべき方向性を勝手に決めてしまおうという企画です。

もう結果の出た過去の事例ではなく、現在進行形の会社の未来を考えるということですから、臨場感があって面白い。

その前提としての経営環境分析や、解決策を導き出すまでの考え方などもとても参考になります。

もちろん突拍子もない思い付きの解決策を出すわけではなく、しごく論理的で現実的な策が出てくるのでリアルに参考になります。


さて今回のケースは、医療用漢方市場で圧倒的なシェアを持つツムラの事例です。

私が要約することもない、記事を読んでもらうのが一番なのですが、一応、かいつまんで書かせていただきます。

ニッチトップ企業 ツムラ


ツムラは、売上高1104億円、従業員3335名の大企業です。医薬品企業としては中堅どころでしょうか。(トップの武田薬品は1兆7000億円超)

医療用漢方市場で8割以上のシェアを持っていて、完全独占状態。いわゆるニッチトップ企業です。


ツムラは、過去、経営危機に陥ったことがあります。

扱っている漢方薬が副作用で死亡事故を起こしたこと。および、それまでの多角化・放漫経営が原因です。

そこでツムラは、事業を医療用漢方薬に絞り込み、経営資源を集中することで危機を脱しました。現在は、医療用漢方薬の市場拡大にひたすら励む毎日です。

ちなみにバスクリンは、もとはツムラの製品でしたが、今はアース製薬の子会社が販売しています。


国内薬品市場は、7兆円に近い市場規模を持っています。

が、その中で漢方製剤は、わずか1599億円。

その約8割の1346億円が、医療用。

その中の約8割をツムラが独占しています。


漢方製剤というと小さい市場なので、誰も新規参入しようとしません。したがって今さら競争が激しくなることもなく、無風状態の中でビジネスできています。

小さな市場のトップ企業というのはただでさえ儲かります。

そのうえ、医療用は広告宣伝費もあまりかかりません。さらに儲かるわけです。

そんな状態ですから、放漫経営したくなる気持ちもわかりますわ。

ニッチトップ企業ゆえの様々な課題


現在、ツムラがやっていることといえば、まず第一に、漢方医療市場の拡大です。

以前、副作用で死亡事故を起こしたために、一気に市場が縮小した経緯があります。その信用回復のための医療現場への普及活動と啓蒙。これが営業担当者の最大のミッションとなります。

努力の甲斐あって、売上は徐々に回復してきています。ここはまだまだできることがあるでしょう。


次にやることは、原材料の調達安定とコストダウン。中国産の原材料が多いために、人件費の高騰などでコストアップしています。これを適材地に変えるなどで、コストダウンを図っています。


新薬の開発はできないのか?と思いますが、漢方の場合、歴史が長いからか新薬というのは考えにくいらしい。また新薬があったとしても、漢方は調合が複雑なので、その効果の証明にそうとう時間がかかるらしい。

そのあたりの事情は私はよくわかりませんが、新薬は期待できないそうです。


同じ理由で海外進出も難しいらしい。

各国でそれぞれの医薬品規制があり、そこで認められるためには、やはり効果の証明が必要です。時間がかかるし、需要は読めないしで、海外進出するメリットがあまり認められません。

ツムラは、ある薬だけに絞って、アメリカ進出を目指しているようですが、こちらも飛躍的な売上につながる気配はありません。

完全独占状態は必ずしもいいことではない


このような状態の会社が、今後、どのような方向を持てばいいのか。

市場シェア80%というと、ランチェスター戦略では危険水準を超えています。市場独占のしすぎは、市場を劣化させます。(競争による進化がない。顧客が他の選択肢を探そうとする)

さらにいうと、小さいとはいえ安定的に儲かるビジネスを持っている組織は、余計なところにベクトルがいきがちです。既得権益をめぐる内部抗争とか、官僚組織化とか。手続き論をうるさく言う上司が幅をきかせていたら要注意ですな。

多角化でもなんでもして新規事業を始めたくもなりますが、ツムラの場合、苦い過去があるのでそれはやりにくい。

ではどうするか。

ツムラが進むべき方向性


記事で出している答えは、OEM供給の拡大です。(OEMとは、他社の製品を替わりに作ること)

医療用漢方よりもはるかに市場規模が大きい、漢方を利用した一般医薬品(医者の処方がいらない医薬品)や健康食品に進出したいところですが、それはビジネスの仕組みが違うので難しい。その世界は、広告宣伝費がかなりかかる上に、競合を押しのけて販売チャネル開拓が必要となるのでハードルが高いからです。

そこに進出して苦労して利益を減らすよりも、他社製品へ商品供給する方が、現実的だという判断です。

本当をいうと、医療用漢方にも他社に入ってきてほしいところです。競争状況がなければ、市場がダレますからね。でも他社もそこへはわざわざ入ってこないでしょう。

そんなわけで、OEM供給で利益を得ながら、ツムラが現在取り組んでいる市場拡大、海外進出、コスト削減を続けていく。というのが結論でした。

まことに現実的で納得のいくものでした。