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オタフクソースの記事です。

マーケティング関連の有名な言葉に「ドリルを売りたければ、穴を売れ」があります。

ドリルの売上を上げたい事業者が、無理にドリルを売りつけようとしても限界があります。世の中には、ドリルそのものが欲しい人なんてそれほどいないでしょうからね。それよりも、ドリルが必要となる状態を作れ、例えば日曜大工をブームにするなどして、穴を開ける必要を作れば自然に売れるようになる、という教えです。

この教えを見事に体現しているのが、オタフクソースです。

ソースを売らずに広島風お好み焼きを広める


同社は、ソースメーカーとしては後発だったために、弱者の戦略として市場を絞る必要がありました。すなわち広島の企業であることから、広島風お好み焼きの専用ソースに商品分野を絞りました。

とはいいながら、ご当地グルメに特化しても、市場規模がごく小さい。業績の伸びしろがありません。そこで、オタフクソースがとったのが、他分野に商品を広げることではなく、広島風お好み焼きを全国に広げていくことでした。

まさに、ドリルにおける穴を売る、という施策です。

同社は、広島風お好み焼き屋への支援、開店しようとする人への支援、広島風お好み焼き教室を全国で開催、スーパーの店先で広島風お好み焼きを実演販売など、地道で涙ぐましい努力を重ねていきます。

私が若い頃、広島風お好み焼きは珍しいご当地グルメの扱いでしたが、今では全国区になり、どこでも食べることができます。家庭でも作る人が増えています。

当然、同社が支援するお店には、オタフクソースが全面採用されていますし、料理教室でも店頭販売でもオタフクソースが使われています。我々の中には、広島風お好み焼きとオタフクソースの味とロゴはセットになって刷り込まれています。(実際は、広島に行くと、様々なソースがあります)

同社の目論見は実を結んだわけですが、これって簡単なことではありません。結果だけ見ると、理に適った施策だと思いますが、これほど地道で時間のかかることをコツコツ続けたという事実は驚異です。普通の経営者なら、どこかで目先の利益を獲りにいってしまうはず。同社の経営者の胆力は相当なものです。

その後、オタフクソースは、商品分野を大阪のお好み焼きソースにも拡大、お好み焼きソースという分野でシェアトップとなっています。

売上高222億円、純利益10.5億円はいずれもソース最大手のブルドックソースを凌いでおり、立派です。

オタフクソースは、海外進出に意欲を見せており、お好み焼き文化を海外にも広げるとしています。同社ならやりそうです。

相変わらず先が見えないブルドックソース


一方、業界トップのブルドックソースは、保守的なことで知られています。経営コンサルタントの大前研一氏など「日本で一番退屈な会社」と呼んでいたものです。それが祟ったのか、2007年頃、もの言う株主に付け込まれて、買収されるところでした。

バブル崩壊後、ハゲタカファンドの暗躍が話題になりました。今思うと、付け込まれるような経営をした方が悪いという話なのですが、当時は感情的に、ハゲタカ=悪という捉え方が主流でした。それなのに、ブルドックソースの場合、おたくにも問題ありありだよね、という論調が多かったような気がします。

その後、反省したのか、ブルドックソースは、添加物の不使用を発表、業務用の強化、新しい調味料の開発、広島の事業者の買収など動きを活発化していますが、いまいち伸び悩んでいます。

売上高177億円、純利益6.9億円。

決算説明資料を拝見しましたが、マーケティング施策の部分、SNSを活用するとか、サイトを新設するとか、実効性に疑問が残ります。


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このグラフを見ると、東日本と西日本でブルドックとオタフクが綺麗にシェアを分け合っています。

後発だったオタフクソースの躍進はすごいと思いますし、東日本におけるブルドックソースの流通支配力が未だ健在であることは立派です。

ただ、ブルドックには、このシェアを死守する以外に有効な一手が見えないところが気になります。長期的にみれば、人口が減るわけですから、既存の売上は落ちていきます。それをどこでカバーするのでしょうか。

上場企業なんだから、その戦略を見せていただきたいと思います。