00

USENーNEXTホールディングスの2021年8月期の売上高は、2083億円、純利益は80億円、最高益を更新しています。

同社は1961年に創業した大阪有線放送を祖にする会社です。

現在の事業は、音楽配信を中心とする店舗サービス事業、インターネット回線などを提供する通信事業、業務管理システムなどを提供する業務用システム事業、動画配信サービスU-NEXTを運営するコンテンツ配信事業、電気やガスの販売を行うエネルギー事業です。

01

それぞれの事業が、バランスよく運営できていることがわかります。

優秀な経営者である宇野康秀氏


現社長の宇野康秀氏は、1963年大阪生まれ。父親が創業した会社を引き継いだ形ですが、宇野氏自身、旺盛な起業意欲を持った方です。

大学卒業後、リクルートコスモスに入社するも1年で退職、人材派遣会社をインテリジェンスを起業し、上場させるまで成長させました。同社は現在東証ジャスダック上場企業のパーソナルキャリアです。

インテリジェンス時代から、サイバーエージェント創業資金を支援するなど、ITベンチャー企業の兄貴的な存在だったようです。

宇野氏は、父親の急逝を受け、インテリジェンスを辞めて、大阪有線放送の社長に就任。当時の同社は、有線放送の設備を敷くのに、電力会社やNTTの電柱を無断で使って知らん顔をしているやんちゃな会社でした。

宇野氏は、使用料を支払うことで、経営を正常化し、事業を立て直しました。その後、動画配信のGYAOを立ち上げたり(現在はYahoo傘下)、U−NEXTを立ち上げたりしながら事業拡張していっています。

この経歴からもわかるように非常に優秀な経営者です。

1兆円企業への道筋が見えない


宇野氏の事業意欲はいまも旺盛で、USENを1兆円企業にするとぶちあげています。

2000億円の売上を1兆円にするためには、宇野氏のいうように「非連続」な拡大戦略が必要です。

つまり、ソフトバンクや日本電産のようなM&Aを大胆に活用した戦略をとっていくということでしょう。

もっとも、記事にあるように、同社には使える資金が100億円程度しかなく、ソフトバンクのような大勝負は現実的ではありません。だから、大風呂敷を言う経営者が好きな株式市場も、いまいち反応していません。

そもそも、成長市場である動画配信ビジネスを手掛ける上で、100億円しか資金がないというのは、あまりにもしょぼい。ネットフリックスなんて、毎年1兆円以上のコンテンツ投資を行っていますからね。

海外のコンテンツを借りて配信しているだけならば、そのうち淘汰されてしまいます。

まったく新しい戦略が必要


諸事情を勘案するに、U−NEXTについては、新鮮なうちに売却してしまって、その資金で、勝てる分野に進出することが現実的なのではないかと思います。

日本電産も、小さなM&Aを繰り返して実績を積み、徐々に事業を拡大していきました。現在は1兆6千万円を超え、2030年には10兆円の目標を立てています。

日本電産永守重信氏は、大口を叩いているようでいて、その経営手腕は地に足の着いた堅実なものです。加速のついた今、10兆円の目標も不可能だとは思いません。

永守氏は現在、77歳です。

58歳の宇野氏が焦る必要などどこにもありませんね。

優秀で意欲のある経営者には、とにかく頑張ってもらわなければなりません。大いに期待します。