tiktok
(2021年9月30日メルマガより)



ここ最近、国内の新型コロナウィルス感染者が急激に減っています。

それは喜ばしいことなのですが、その理由がわからないらしい。

専門家といわれる人たちも「こんな感染対策ではコロナは収束しない」と散々言っていたはずですから、いまの状況には首をひねっているのだとか。

困ったものですな。


先日、テレビを観ていると、コロナ減少理由の仮説の一つとして、未ワクチン接種者の人流が減っていることが挙げられていました。

いま国内ワクチン接種者の割合は50%程度だったと思います。高齢者から順番に接種していったので、未接種者の多くは若者のはず。

従来、重症化しにくいと言われていた若者は、わりと平気に出歩いているのかと思っていたのですが、ここにきて、外に出なくなっているということか。

テレビでは、TikTokなどのSNSによって、コロナ感染した若者の投稿が拡散され、恐怖感が増したのではないかと推理していました。

それが正しいかどうかはわかりません。

が、そんな説がまことしやかに流れるほど、TikTokってメジャーなんだなあと、私はそちらの方に感心しました。

聞くところによると、いまや若者の2人に1人が使っているというではないですか。

私には馴染みのない分野だったので、なおさら感心した次第です。



TikTokとは


TikTokは、動画の投稿をメインとしたSNSです。

スマホに合わせた縦長の動画が特徴です。アプリを開くと、様々な方が投稿した多種多様の動画をいっぱいみることができます。

日本人だけではなく、アジアの人たちの投稿が多くみらます。

10数秒程度の短い動画が多く、同じ音楽に合わせて踊るようなスタイルの動画が続きます。

どうやら、TikTokには、スマホから簡単に投稿するためのフレームワークが用意されており、一般ユーザーが参加しやすいように工夫されているようです。

動画は、こちらが選択しなくても勝手に、画面に流れてきます。興味ないと、指でスウィッシュすれば次の動画に切り替わります。

いくつか見ていると、似たような動画ばかりが表示されるようになったことに気づきます。

TikTok側が、動画の視聴秒数から、こちらの興味を類推して、似たような動画ばかりを選んでいるようです。

これは危険ですね。10数秒と短いから視聴にストレスがありません。そのうえ、自分の興味ある分野ばかりが映し出されるので、ついつい見てしまいます。

しかも、放っておけば同じ動画が延々繰り返し流れるので、頻繁に指でスウィッシュしなければなりません。この動作が、退屈になるのを防いでいます。

暇つぶしには最適、というレベルを超えて、油断していると、とんでもない時間を過ごしてしまうことになりかねません。




中国では後発の動画投稿サイトだった


TikTokは、中国の企業バイトダンスが運営するSNSです。

もともとは、スマホのニュースサイトの運営をしていた企業ですが、その延長として、TikTokを開始したようです。

そのビジネスモデルは、プラットフォームモデルかつ広告モデルです。

すなわち、多くの一般ユーザーが投稿し、視聴するためのプラットフォームを準備し、そこに広告を載せることにより収益を上げています。

基本のモデルは、ユーチューブと同じ。もっというと、ニュースサイトも、外部ライターが書いた記事を掲載し、広告収入を得ているので、似ています。

似たようなビジネスは多くあり、TikTokが特別なわけではありません。


上の記事を読むと、短い動画の投稿サイトは、TikTokが最初だったというわけでもないようです。

中国に、先行する似たサービスがあり、人気だったそうですが、アメリカでの普及に注力していたので、その隙に、TikTokは、中国で地盤を固めてしまったらしい。

おおらかに先行サービスをパクって躊躇しないのは、中国ベンチャーの強みです。なにしろ、中国市場という14億人の需要があるので、差別化してニッチを狙うよりは、成功した先行者の真似をしてしまった方が、短期的な実入りが大きいというものです。

そう考えるベンチャーたちの競争に打ち勝って、市場を占拠したのだから、中国のトップ企業は、中身もしっかりしています。

TikTokの場合、視聴の容易さ、好きな動画を選択するアルゴリズムの的確さ、投稿の簡便さにおいて、優れており、さらにいうと、マーケティングに関する投資を間違えなかったということでしょう。


興味ありそうな動画を勝手に配信してくれる


さて、TikTokの特徴の一つは、勝手に興味ありそうな動画を配信してくれるというところです。

これは、情報過多社会に適したサービスです。

とにかく、動画コンテンツは無数にあり、何をみればいいのか迷います。

ユーチューブでも、視聴傾向に合わせて、好きそうな動画を表示してくれますが、それでも、こちらが選択しないと、観ることができません。

が、TikTokの場合は、アプリを開くと否応なしに動画が流れてきます。気に入らないと、スウィッシュすればいい。そのうち、好きそうな動画ばかりになってきます。

このゆるさ、責任のなさが、TikTokのいいところです。

いっぽうでアマゾンのように、無数の中から選択できるというサービスがあり、いっぽうでTikTokのような選択しなくてもいいサービスがあるのが、現代の面白さです。

どちらのスタンスをとるかで、ビジネスのやり方が変わってきます。


短いのでストレスにならない


TikTokが、勝手に動画を流してきても、気にならないのは、一つが短いこと、および、指一つで次の動画に変えることができることです。

これは、メルマガやブログに対するツイッターの存在のようなものです。

いま、ツイッターが全盛といってもいい盛り上がりを見せています。

わずかな文字数で、何を伝えられるのだろうかと思うでしょうが、ツイッターを使う人は、様々な工夫を凝らして、何かを伝えようとしています。

箇条書きで書く人。一部だけを書いて、あとは想像してくれとにおわす人。写真で表現する人。画像に要点をまとめて、それを表示する人。

それぞれが、表現の仕方を洗練させているので、どの方法も、それなりに感心させられるものがあります。

中には、投稿を何回も重ねて、論文みたいな文章を伝えようとする猛者もいますね。

ただ、基本は、要点を簡潔にまとめて書けという需要に答えるものです。裏側には、時間をかけて長い文章なんて読んでられるか、という情報過多社会ならではの人々の本音があります。

TikTokも同じですね。長い動画を視聴する時間も気合もないが、寂しいから何となく流していたいというニーズに応えています。


流れてくるのは、断片やイメージ


ただ、ツイッターにしろ、そこで流れているのは、断片であり、イメージです。多く接していると、全体のイメージを掴むことはできるでしょうが、論拠や因果関係を知ることはできません。

ツイッターなど、論拠はすっ飛ばして、結論を言い切るような投稿が多いので、話半分に聞いておかなければなりません。

これはTikTokも同じです。

最初の話に戻りますが、若者がコロナの恐ろしさをTikTokで知ったというニュースがありました。コロナに関しては、それでよかったかもしれませんが、他のことに関してもそうでしょうか。

TikTokで見たから、そうだと思う、と感情的、感覚的に決めつけてしまうのは危険です。

例えば、都市伝説やカルトの主張などを大真面目に信じている人を、SNSでちらほら見かけますが、根拠を問い直す冷静さや思考の粘りを持っておかなければなりません。

どうも、TikTokをはじめ、SNSから得る情報には、知り合いの知り合いから聞いた話、という程度の親密さがあるようです。だから、公的機関が提供する無味乾燥な情報よりも、信じたくなる素地があります。

身内から聞くトンデモ話を鵜呑みにしていまうのは、未熟な人の特徴です。大人になると、より広い世界の知見を知り、確率的な思考ができるようになり、情報を自分で咀嚼するようになります。

ところが、SNSで接する情報には、狭い世界で語られていることが、あたかも広い世界の知見かのように錯覚してしまう傾向があるようです。

私にはこちらの方が危険なことに思えます。

大げさに思えますかね。

しかし、いまは、トンデモ話を信じ込んでいる人は少数派ですから、笑い話のネタにできますが、そのうち、私の方が少数派になり、大勢の若者から嗤われるようになるのではないか。

いまのSNSの盛り上がりをみていると、そういう恐怖を感じてしまいます。

※都市伝説とか、トンデモ話って具体的に何だ、といわれそうですが、はっきり書くと、それを信じている人から非難が来そうで面倒くさいので、ぼやかしました。お察しください。


親密性を構築する最適なメディア


そんな危険性も頭に入れながら、接していくのが賢い大人だというものですよ。

SNSは、圧倒的な親密性をもって人々に直接届く強力なメディアです。

特に、今回、使ってみたTikTokは、使い方が簡単でしかも中毒性があります。

ビジネスをする者にとって、ユーザーとの親密な関係を構築するには、最適のメディアだと思います。

使いようによって毒にも薬にもなり得る道具ですから注意が必要ですが、うまく使うとビジネスを加速させることができるはずです。

特に小さな企業は、お金がかからない道具ですから、試しでもいいから使ってみるべきですよ。