00


動画配信サービスのネットフリックスの株価が急落しています。一週間で約7兆円が吹き飛んだというから凄まじい。4年前の水準に戻ってしまったかっこうです。

きっかけは、2022年度第一四半期決算が悪かったことです。利益も会員数も大幅に落ちたため、成長が鈍化した、あるいは壁に当たったとみられました。

ネットフリックスといえば、コロナ禍の巣ごもり需要の恩恵を受けた企業のひとつです。大幅に成長したため、コロナの期間中、ずっと株価が上昇し続けていました。が、コロナが収束気味になった途端に、株価急落とはわかりやすい銘柄ですな。

もっとも、ネットフリックス株が評価され過ぎだという指摘は以前からありました。動画視聴者の会費収入だけという収益モデルは潔くていいですが、会員の増加が止まれば、すぐに成長も止まります。

会員数を増加させるためには、動画コンテンツの魅力を高めるための投資をしなければなりません。だから現金が会社に残りません。利益を投資に回し続ける様は「ハムスターの回し車にいるようなものだ」とまで言われていました。

いつか成長も止まります。が、今回の株価急落をみれば、市場は「ネトフリはまだ伸びる」と考えていたのでしょうね。それだけにショック売りとなってしまいました。

ネットフリックスは、本気のディズニーに勝てるのか?

弱者の戦略から切り替える時期か


ネットフリックスのビジネスは、動画配信のみです。収入は会費のみ。だからやるべきことは単純で、ひたすら動画コンテンツの魅力を高めることです。

やるべきことがシンプルだということは、新興企業にとっての武器となります。あれこれブレることがなく、組織が一丸となって取り組みやすい。弱者の戦略である一点集中です。

成長期にはメリットが大きい戦略ですが、成長が止まると、脆弱さが露呈します。弱者の戦略は、守りに弱い。

今回、アマゾンもディズニーも巣ごもり需要の恩恵がなくなったのは同じですが、彼らは収益モデルが複数ありますから、動画配信ビジネスの落ち込み分を他でカバーする道があります。

大企業は攻めには一歩二歩遅れるが、守りには強い。そのことをネットフリックスは思い知ったでしょう。

今回、同社CEOは、ゲームに進出するとか、広告モデルをとりいれるとか錯乱気味に発言していますが、そりゃ、CEOとしては何か言わなければならなかったのでしょうな。

ただ、ここは複数の収益モデルを組み込む時期に来ていると考えてもいいでしょう。ランチェスター戦略にいう「グー・パー・チョキ戦略」よろしく、成長が一段落した頃には手を広げ(パー)ることが定石です。ダメなものは後から切れ(チョキ)ばいいのですから、複数の収益の線を持つべきです。

ただ、複線化することで、単純明快なネットフリックスの良さがなくなってしまうのは、避けられません。ここは、次の段階に進むという信念をもって取り組まなければなりません。経営者の手腕が試されるところです。

世界的な動画配信メディアとして存続してほしい


ネットフリックスは、動画配信ビジネスのパイオニアとして、いち早く世界展開しています。それが同社の強みとなっています。

ネトフリは、世界各国の制作会社と提携し、地方色豊かなコンテンツの制作を行っています。動画には各国の字幕がつくので、ヒットすれば世界で視聴されます。

世界に通用するコンテンツ作りノウハウを持っている韓国ドラマは、まさに世界的ヒットを連発しています。

日本の制作会社も、遅ればせながら、世界を意識したコンテンツ作りに取り組んでいますが、これはネトフリのような世界的メディアがなければ叶わなかったことです。

日本のテレビ局、狙うは海外 Netflix・Amazonと連携

こういう役割は無くしてほしくないですね。世界からヒット作が生まれるようになれば、ユーザーは喜ぶし、ネットフリックスも潤うし、世界のコンテンツ制作者も恩恵を受けます。

グローバルな動画配信メディアとして、これからも存続し続けてほしいと思います。