先月の「戦略勉強会」では、ジャパネットについて採り上げました。
テレビ通販で有名なジャパネットたかたです。
いまは、ジャパネットホールディングスが親会社となり、売上高は2487億円です。
ジャパネットといえば、前社長の高田明氏の名調子で知られています。
徹底した消費者目線で、メーカーが思ってもみないような切り口で、商品説明するスタイルが、消費者の支持を集めました。
しかも、高田明社長自身の独特の訛りのある甲高い喋り口調は、一度聞くと忘れられません。
一時期は、テレビやラジオで高田社長の声を聞かない日はない、というほどだったものです。
カリスマ社長引退後も業績拡大
いまは、ご子息の高田旭人氏が、ジャパネットホールディングスの社長を勤められています。
カリスマ社長が引退した後、どうなるのかと心配されていましたが、開けてみれば、売上、利益とも右肩上がりに伸ばし続けています。
現社長は、商品点数を10分の1以下に絞り込み、修理、取り付け、アフターサービスに力を入れる方針を打ち出しました。
カリスマ販売員だった高田明社長の代わりに、複数の販売員だけではなく、制作スタッフ全員で販促方法を考える体制をとっています。
現在のジャパネットの売上構成を見ると、テレビ通販は28%程度。カタログ通販は25%。それに比べてネットでの販売が約48%です。
かつてのように、テレビ通販で衝動買いを誘引するだけではなく、後で、カタログやECサイトを通じて購入してもらうビジネスモデルとなっています。
実際、現在の通販市場は、ネット販売が中心になっており、市場を拡大し続けています。
ジャパネットの業績好調の理由は、まさにネット通販に力を入れて、その市場拡大の流れに乗った結果だといえるでしょう。
ちなみに、通販企業の売上ランキングをみると、1位がダントツでアマゾン。2位はアスクル、3位はミスミ、4位がジャパネット、5位がヨドバシカメラです。
いずれもネット通販に対応した企業です。
スポーツビジネスに進出
2015年に引退した高田明前社長は悠々自適の生活を送っているのかというと、そうではなかったようです。
ジャパネットは、面白いことに、サッカーチームのVファーレンや、バスケットボールの長崎ヴェルカの経営に取り組んでいます。
またサッカースタジアムを中心とした長崎スタジアムシティの建設にも取り掛かっています。
突然のスポーツビジネスへの参入ですが、その道筋を作ったのが、引退後の高田元社長だということです。(現在は、そこからも引退しているようですが)
特に長崎スタジアムシティに関しては、約900億円の工費を自己資金と借り入れで賄い、25年かけて、回収する算段です。
ジャパネットは非上場企業ですから、その雄大な計画が成り立つわけですね。
通信販売の会社が、スポーツ事業に取り組む意図は何か。
これはつまり、長崎という地域を徹底して掘りつくすローカル企業になろうという意味です。
ローカル企業を極める凄み
せっかく通販4位の実績があるのに長崎ローカル企業を目指すなんて勿体ないと言われるかもしれませんが、私は、逆に感心しました。
日本経営品質賞の審査員を長く勤められた長田洋氏は、「生き残る企業の条件は、ナンバーワンの商品を持つか、ナンバーワンの地域を持つかである」と言いましたが、まさに、ジャパネットがやろうとしているのは、地域ナンバーワンの企業になろうとする試みです。
ネット通販の流れに乗って業績拡大し、余裕のあるうちに、地域ナンバーワンのローカル企業を目指すとは、実にしたたかで、かつ堅実な成長戦略ではないですか。
ここで、アマゾンを目指すなんてことを言っていたら、危ういなと思ったところですし、テレビ通販を極めるなんて言い出しても、テレビに伸びしろが感じられない現在、将来性の薄い戦略です。
最近では、BS放送局を開局し、航空機会社のスターフライヤーに出資したということです。
BS放送においては、通販番組だけではなく、スポーツ番組を放映する予定だそうですよ。
ここでもやはり、ローカル企業にならんとする意欲が見えます。
そう考えれば、海もあり、山もあり、歴史もある長崎のポテンシャルは大きい。徹底して、長崎にこだわってほしいと思います。
ここはハウステンボスも買収してもらいたい。
世界中から人を集め、長崎全体を盛り上げることで、自社の価値を高める方向性を極めていただきたいと思う次第です。