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パナソニックが、かねてから噂となっていた米ソフトウェア会社ブルーヨンダーを買収するようです。買収額7700億円。

パナソニックは既に同社の20%の株式を持っており、今回、完全子会社にするということです。

ブルーヨンダー社の有難いソフト


ブルーヨンダー社は、製造業、流通業向けのソフトを手掛けています。独自開発のAIが、生産管理、在庫管理、配送管理、陳列管理、価格設定まで、サプライチェーンを一気通貫にやってくれる有難いソフトだそうです。

製造業にとって、生産と配送、販売のギャップは悩みの種です。売れる商品を作っていなかったり、売れない商品ばかり在庫していたり、こうしたことはつきものとなっています。

営業からは早く商品を出せと突かれ、生産からは無茶言うな、あるものを売らせろと突き放され、配送からはそんなもん知るかと無視され、間に入った調整役の社員は、大変です。

AIで自動的に最適化してくれたら、これほど楽なことはありません。しかも、需給ギャップが解消されれば、相当の収益となるはずです。

同社のソフトが、額面通りの働きをするならば、需要は大きいと考えます。

基幹事業の育成が急務


パナソニックは、自動車用電池を基幹事業にしようとしていたのに、テスラに振り回されるばかりでいまいち順調にはいっていないようです。

いっぽうで、ソニーは、ソフトとハードを融合したビジネスモデルを組み立て、継続課金モデルも使いこなして、いち早く業績を回復させています。

「鬼滅の刃」大ヒットで復活するソニー「全集中の戦略」

もの売りだけではあかんなあというのが、パナソニックに限らず、日本の大手製造業の総意としての課題となっており、パナソニックにも決断が迫られていました。

モノづくりとITの融合、デジタルによる製造業の改革、いわゆるデジタルトランスフォーメーションが、バズワードになっていますが、パナソニックほどの大きな企業となると、無暗やたらに取り組むわけにはいきません。
ハードに強い中韓の製造業との競争を避けつつ、地上と低空の領域という「(GAFAが)面倒くさくて手を出さない」とみる分野に活路を見いだそうとした。(パナソニック、事業モデル転換探る ソフト大手買収へ
そこにはまったのが、ブルーヨンダー社の事業だったということです。

今後、パナソニックの形が変わる


今回の買収は、かなり大きな決断です。

買収額も大きいですが、それだけではありません。今後、成長戦略から外れた事業を売却していくことになるので、会社の形が変わっていくことになります。つまり、今後の会社の在り方を決める決断でした。

ソニーに比べると、事業転換への取り組みが遅かったなあとは思いますが、仕方ない。パナソニックの未来はこれからです。

いずれにしろ形が見えてくるのは、2、3年後でしょう。

ただ気になるのは、ブルーヨンダーのソフトがそれほどいいものならば、パナソニック自身は、これを使って、よおどの効果を上げたことでしょうが、それがあまり聞こえてこないことです。

私が知らないだけかもしれません。

あるいは、目に見えた効果の後では買収額が跳ね上がってしまうので、隠しているのでしょうか。

買収を持ちかけた投資会社にうまくしてやられた、ということにならないことを願っております。