日本酸素とは、酸素、窒素、ヘリウム、アルゴンなど、空気中に含まれるガスを抽出して、様々な産業に供給する企業です。
こうした産業ガスは、鉄鋼、化学、医療などで広く使われるので、産業あるところ必ず需要がある縁の下の力持ちといった会社です。
この日本酸素、実は、私が昔、勤務していた会社でもあります。
日本国内トップ 世界4位
現在の日本酸素HDは、売上高1兆1867億円。日本ではダントツのガリバー企業です。
私が所属していた頃は、売上高2000億円程度だったはずなのに。。と驚いていると、この会社、2014年頃から急激にM&Aを繰り返し、今の規模になったようです。
背景には、産業ガス企業の世界的な再編機運があります。
なにしろ世界の産業ガス企業がデカい。
売上高1位のリンデは4兆3914億円。2位のエア・リキードは4兆1349億円。3位のエア・プロダクツ・アンド・ケミカルズは1兆7518億円。
日本酸素HDは4位です。
4位に顔を出すまでになったことは素晴らしいと思いますが、上には上があるということです。
世界との差は大きく、課題山積
しかも、日本酸素HDは、規模拡大に伴う借入金が大きく、キャッシュフローが足りない。そのため、時価総額が小さく抑えられてしまっています。
利益率も低い。これは、ガスを販売するという旧態依然としたビジネスがまだ多いためで、他の大手のように、ソリューションビジネスへの対応が遅れている証でもあります。
大手3社は、日本国内にも進出していて、岩谷産業、伊藤忠商事、エア・ウォーターなどと組んで、それぞれ成長が期待される水素に関するビジネスを推進しようとしているようです。
産業ガス会社が規模競争に邁進するのは、それだけ成長が期待されるからです。特に水素関連ビジネスは需要が大きいと考えられます。
せっかくの日本企業なのだから、国内ではオール日本で頑張ってほしいものですが、三菱グループ枠内にとどまっていて、いまいち迫力がありません。
三菱グループ以外の有望企業にも、提携を進めていかなくてはなりません。営業戦略の再考が必要でしょう。
日本ではダントツ1位でも、安心する時ではありませんね。
サーモスの存在感
個人的には、私の古巣であるサーモスの存在感が大きいことを嬉しく感じました。
サーモスの売上高は約300億円。日本酸素HDの中では3%に過ぎません。
ところが世界シェアトップの実力があり、利益率は約20%とダントツに高くなっています。
なにより、世間的な知名度でいえば、サーモスの存在感は群を抜いています。
サーモスはまだまだ大きくなるでしょう。
世界シェアトップだからといってこんなところで満足せずに、さらなる高みを目指してほしいと思います。