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「イノベーションのジレンマ」で知られるハーバード・ビジネススクールのクレイトン・M・クリステンセン教授へのインタビュー記事を紹介します。




イノベーションには2種類ある


まずはクリステンセン教授が2種類のイノベーションについて定義しています。

持続的イノベーション:従来の自社の優れた製品を改良すること。顧客は既存の製品を買い替えるだけなので、大きな成長にはつながりにくい。

破壊的イノベーション:富裕層のみが買えた複雑で高価な製品を一変させること。価格が大幅に下がり、多くの人が製品を買えるようになる。

イノベーションのジレンマとは、既に成功した企業が、持続的イノベーションだけになって、既存事業の価値を破壊するような破壊的イノベーションを起こすことができなくなる状態を表しています。

日本企業は既に持続的イノベーションしか起こしていない


だとすると、日本企業が行っている多くのイノベーションは、持続的イノベーションです。

トヨタが誇るハイブリッド車もしかり。

米テスラが手掛けるEVも、教授によれば、持続的なものです。

なぜなら、テスラのEVは高級で、富裕層に向けたものだからです。

本当に多くの人に普及するためには、破壊的イノベーションを起こさなければなりません。

破壊的イノベーションを引き起こそうとする中国メーカー


教授が破壊的なものとして挙げるのは、中国におけるEVの開発です。

中国の自動車メーカーは、自国の一般消費者に販売するために、低価格製品を製造販売しています。

たとえば北京では、15台に1台がEVだ。非常にシンプルな製品で、フロントシートは1人乗り。細い通りでも走れるよう車幅が狭い。スチールでなくプラスチック製だ。今年、中国ではこうしたシンプルなEVの販売台数が約40万台に達する見込みである。これこそが破壊的イノベーションだ。

先日、中国が国を挙げてEV産業を振興しているという記事を書きました。強引なやり方に、さすが中国!と揶揄して書きましたが、そのような部分だけに注目してはいけませんでした。

さすが中国 エコカー規制でやりたい放題

中国メーカーは、国の保護政策の恩恵を受けながらでも、着実に破壊的イノベーションを引き起こそうとしていたわけです。

日本のレベルからすると玩具みたいなもので、安全性基準に疑問が残りますが、それでも産業を変えてしまうような爆発的なイノベーションは、このような未熟な技術から起こるのではないか。

かつて二輪車でホンダが引き起こしたような、普通乗用車でトヨタが引き起こしたようなことが、中国メーカーによって引き起こされているのかも知れません。

日本の自動車メーカーが生き残る唯一の道は


クリステンセン教授は、やはりトヨタの姿勢を問題視していますね。

既存の産業の縮小を恐れて、破壊的イノベーションに対応しようとしないトヨタは、いずれ中国メーカーに駆逐されてしまうと警鐘を鳴らしています。

トヨタが生き残る唯一の道は、中国メーカーが取り組むような低価格顧客層向けの製品づくりに取り組むこと。既存商品の利益を破壊してしまうような分野に取り組まなければならない。と仰っています。

トヨタなど日本の自動車会社が生き残る唯一の道は、(EVの)新事業を別組織で起こすことだ。自社の傘下に置いてもいいが、営業チームやブランド、流通組織は別にすべきだ。「破壊」を起こすには、既存事業とは収益の仕組みを分ける必要がある。このルールに従えば、成功も夢ではない。

日本のメーカーが抱える最大の問題は成長が見込めないことだが、低価格でシンプルなEVにこそ成長の可能性が眠っている。成長は下位市場にあるのだ。

まったくもってその通りだと思います。

そのへんの理屈は、トヨタも重々承知のことだとは思いますが、それでも動けないのは、それがジレンマである所以ですね。