(2015年3月19日メルマガより)


■皆さんご存知でしょうが、
ファミリーマートとユニーが統合に乗り出すようです。

ファミリーマートは日本のコンビニ3位。

ユニー傘下のサークルKサンクスは4位。

3位と4位が合併することで、ローソンを抜いて、2位となります。

ユニーの社長は「これでセブンイレブンと我々の2強だ」とローソンが聞いたら激怒するような発言をしております。

が、そんなにうまくいくのか?と疑問に思うわけです。


■今回、ファミマとサークルKサンクスが統合すると、売上は2兆5千億円を超えます。

1位の1位のセブンイレブンは、3兆5千億円。

2位のローソンは1兆9千億円。

数値的にいうと、それぞれ1.7倍の差が開いていないので、射程距離内です。

(ランチェスター戦略の射程距離理論による)

確かに、ファミマとユニー連合は、1位を狙える位置を得たわけですが、ローソンに逆転される可能性だってなくなっていません。

そんなに浮かれることでもありません。


■そもそもコンビニはなぜ統合したがるのか?

ローソンもファミマもコンビニ大手は統合することで規模を拡大してきました。

サークルKサンクスもそうですね。

それだけ規模の経済が効くビジネスだということもあるでしょうし日本のコンビニ市場がそろそろ飽和してきているということもあるでしょう。

各チェーンが特徴を出して競争するという時代はとうに終わって、業界の勝ちパターンが明確になり、規模の戦いになっているということになるのでしょうか。

規模が大きくなると、バイイングパワーが増して仕入に有利になる。

物流が効率化する。

情報システム投資が効率化する。といったメリットが出てくるわけです。

が、統合に伴うややこしいゴチャゴチャも抱えなければなりません。

もともと商品も違うし、システムも違うし、文化も違う2社が統合するというのは大変なことです。

サークルKとサンクスなんて、未だに統合の決着がついていないと言われているぐらいです。


■その点、トップのセブンイレブンは、ずっと1社で成長してきたので強い。

統合がなかったということは、余計な仕事を抱え込む必要がなかったということです。純粋に売上をあげる仕事にかかることができる。

その証拠。。といいますか、一店舗あたりの平均年間売上高にはえらい差がついています。

セブンイレブン2.33億円。

ローソン1.71億円。

ファミマ1.67億円。

サークルKサンクス1.52億円。

(日経業界地図2014年版の数値をもとに算出)

こういう数字を見ると、やはりセブンイレブンが規模だけでは測れない強さを持っていることがわかります。


■衆目の一致することろ、セブンイレブンの強さは、商品開発力にあるようです。

おにぎりにしろサンドイッチにしろ、セブンイレブンのものが一番美味しいというのが、定評となっています。

それだけではありません。ドリップコーヒーの販売を成功させたのは記憶に新しいですし、最近ではドーナツの提供も始めています。

棚の半分ぐらいが、セブンプレミアムというPB商品ですし、その他のものも、セブンイレブンには独自商品が多いことが分かります。


■その商品力を支えるのが、ドミナント式の出店戦略です。

セブンイレブンは、特定の地域に集中して出店することで知られています。

全国をいち早くカバーしようとしたローソンの真逆をいく出店方法で、当初は関東の一部地域からスタートしました。

そのため、他のコンビニチェーンに比べて、配送効率を上げることができます。

セブンイレブンのおにぎりやサンドイッチが美味しいのは、まめな配送が可能であり、新鮮な商品を並べることができることが一つの要因です。

ローソンは、とりあえず全国をカバーして認知度を高めようとしたわけで、それが間違いだとは言いませんが、セブンイレブンの効率重視の方針には負けてしまったわけです。

さらにセブンイレブンは、利益を情報システムに投資しました。

もともとイトーヨーカ堂は、情報分析に長けた企業でしたが、セブンイレブンはそれ以上だと思えます。

だからセブンイレブンの品揃えや陳列は、販売情報と顧客情報の緻密な分析によるものであり、日々の細かな改善の積み重ねが、売れる商品開発につながっているものでしょう。


■要するに、セブンイレブンは、スタート時から、一店舗あたりの売上・利益を重視する方針をとっていたわけです。

そのためのドミナント出店であり、情報分析です。

利益が出るから投資できる。投資するからさらに利益が出る。というプラスのスパイラルに乗って、いつしか売上でも店舗数でも先行するローソンを追い抜いてしまいました。

こうなれば、規模でも強い。

バイイングパワーを背景に、仕入においても優位な交渉を進めることができるようになりました

ちなみに、上位3社の営業利益率をみてみると

セブンイレブン30.2%

ローソン13.6%

ファミリーマート12.9%

(日経MJ2014より)

となっており、セブンイレブンが、規模以上の強さを発揮していることがわかります。

質もいい。量も強い。こういう企業がトップにいると、もう業界内で勝負はついていると言いたくなりますね。


■だけど、ファミリーマートはファイティングポーズを隠そうとはしていません。

サークルKサンクスとの統合に続いて、ココストアの買収にも乗り出すようです。

やる気満々のようですが、勝ち目はあるのでしょうか?


■ある。とは言いにくい。

規模だけ大きくしても、中身が伴わないのでは、勝ち目はありません。

だけど、ない。とも言い切れません。

ビジネスは何が起こるか分かりません。

盤石に見えるセブンイレブンも、何かのきっかけで凋落することもあり得るでしょう。マクドのように。雪印のように。

その時に、2番手につけているということは、大いに意味があります。

敵失を待つというと消極的に聞こえますが、2番手でなければ敵失を機会とすることもできないでしょうから。

ただし、そんなラッキーはそうそう多くはないでしょう。


■コンビニ業界で、地殻変動が起こるとすれば、それは業界の垣根を超えた新業態が生まれる時です。

今のように、商品開発力で店舗収益力を増やす、という勝ちパターンの勝負では、セブンイレブンの優位は揺るぎません。

ただ、飽和しつつあるコンビニは、業界内だけの戦いに止まりません。

スーパーやドラッグや通販やファストフードやコーヒーチェーンやあらゆる業界と競争状況にあります。

ということは、スーパーとコンビニ、通販とコンビニ、ドラッグとコンビニ、業界の垣根を超えた新業態が生まれる可能性があるということです

このあたり、セブンイレブンは「オムニチャネル」と称して、業態の統合を進めようとしています。

(オムニチャネルというのは、あらゆるチャネルというぐらいの意味です)

実際、セブンアイグループは、コンビニ、スーパー、ファミリーレストランだけではなく、金融、通販、出版、チケット販売など多くの事業を持っています。

ただし、コンビニビジネスでは一歩も二歩もリードしているセブンイレブンも、他の業態との融合ビジネスでは、変わらぬ強みを発揮できるか未知数です。

そこに新たな競争がうまれるはずです。


■ファミリーマートに勝ち目があるとすれば、新たな競争のステージに入った時だと考えます。

POS情報に基づき、ジャンルの違う商品群を並べて売るクロスセル。

イートインの拡大やファストフード店との融合。

金融やチケット販売の強化。

地域のインフラであると割り切って、御用聞きや配達の強化。

店内ライブイベントの実施。

こうした試みは、各社とも続けていますが(どれもたぶんあまりうまくいっていないのでしょうが...)その中から、新たな可能性が生まれるかも知れない。

ローソンが、成城石井を買収したり、アマゾンと提携したりしながら、コンビニの枠を超えようとするのはその延長です。

ファミリーマートの場合、今のところ、他業態との融合という意味では目立った動きはありませんが、バックには伊藤忠商事がついているので、そのあたりの準備は抜かりないはずです。

その時に備えて、一定の規模を確保しておこうというのが今の動きだと見ています。

そうじゃないと、重工業ビジネスで遅れをとった伊藤忠としては、どこで勝つんだーという話になりますからね。

意地でも、食品や小売のビジネスをとりにくるでしょう。


■なお、今回は言及しませんでしたが、海外進出も、一つの道です。

特にセブンイレブンとファミマは、アジア進出に力を入れているようです。

が、海外ではどちらも後発組になるため、ドミナント出店という「弱者の戦略」に長けているセブンイレブンが強そうですね、どうも。

いずれにしろ、この業界も、慌ただしい動きが続きそうですね。

見る方としては面白いので、これからも注目していきますよ。