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海外展開の成功企業として取り上げられることが多かったユニ・チャームが、海外戦略の見直しに迫られているという記事です。

中国市場の変化に対応が遅れた


ユニ・チャームの売上高は、7142億円。税引き前当期利益は695億円。(2019年12月期)

2015年と比較すると、売上高は3%程度ダウンしていますが、利益は15%程度アップしています。

同社は、紙おむつや生理用品をいち早く海外(特にアジア)に展開することで業績を伸ばしてきた企業ですが、2010年代になって、中国やアジア諸国の所得水準が上がると、P&Gなど競合他社が参入するようになり、苦戦するようになりました。

とくに中国では、現地企業の品質や生産力向上があって、低価格帯は厳しくなってきました。また中国の消費者の「日本製好き」が高じて、高価格帯は日本の製品をネット通販で購入するという消費行動がみられるようになりました。

現地での販売を見込んで、現地工場での生産体制を整えていたユニ・チャームとすれば、手痛い判断ミスとなってしまいました。

この変化を逃さなかったのが花王です。中国進出に遅れていた同社は、国内の生産能力をアップさせ、日本製の輸出を強化しました。その甲斐あって、花王の中国でのシェアは大幅にアップしています。

ユニ・チャームも、輸出対応に切り替えますが、判断の遅れが響いて、業績の回復に時間を要しました。

いまこそ「弱者の戦略」に立ち返れ


他の東南アジア諸国でもユニ・チャームは苦戦しています。

どうやら同社は、手つかずの市場を開拓するには長けているが、競争激化する市場は苦手にしているようです。あるいは、ブルーオーシャン市場での成功体験に囚われて、競争市場での対応に切り替えられなかったのでしょうか。

一時期は、6000億円を切る寸前まで売上を落としましたが、高価格帯の商品を拡充することを進めて、業績を戻している途上です。


ただ、高価格帯にするだけで、競争に勝てるわけではありません。

記事にある通り、企業規模で劣る同社は、広告宣伝に大きな費用をかけるわけにはいきません。

過去に培ったブランド力があるうちは持ちこたえているものの、時間がたつと、マーケティング費用が豊富な会社が優位になってきます。

ここは、勝てる分野に絞って、一点集中する戦略が必要です。創業者の時代のように「弱者の戦略」に立ち返ることをお勧めします。

戦略不在では生き残れない


ちなみに、記事にあるOODAループとは、非常時に素早く意思決定と行動を行うための理論です。

結果を出すまでに時間がかかるPDCAは、変化が緩やかな環境向けですが、戦場などの非常時は、素早く決めるOODAが機能します。

ただ、個人や小集団の意思決定と行動に関する理論なので、全社的な方向性を決めるには不向きです。

記事を読む限り、現場の判断精度を上げることには言及されていますが、全社的な生き残り戦略が示されていないのが気になります。

戦略がなければ生き残れませんから。。。

ユニ・チャームは、創業者の時代にランチェスター戦略を活用して成長してきた企業だと聞いていますので、個人的には応援しております。