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中国EVの躍進を伝える全4回のシリーズ記事です。

英調査会社のLMCオートモーティブなどの調べでは21年の中国のEV生産台数は294万台と世界の6割を占めた。世界の7割弱を生産するスマートフォンに続き、中国はEVでも「世界の工場」の地位をうかがう。
華流EV「デザインも悪くない」 世界に足場拡大 華流EV世界へ(1)

EVの産業集積を立ち上げた中国


ガソリン車において日本に優位性があったのは、エンジン製造の難しさがあったからです。電池とモーターで動くEVならば、組み立ての得意な中国の独壇場となりそうですし、なりつつあります。

世界の工場として実績と経験のある中国は、EV製造においても、莫大な投資を積み上げ、部品の産業集積を作っています。

きっかけはテスラが工場を立ち上げたことですが、いつも辛口のイーロン・マスクが、中国のスピードとスケールには驚いたと伝えられています。

こういう事例を聞くと、袖にされたパナソニックは、結局、グローバル市場で戦うレベルになかったのかなと感じてしまいます。

EVの台数そのものは、ガソリン車に比べると、まだ少ないものの、このままの勢いで突っ切られそうです。

いや、むしろ、生産能力過剰の状況ができつつあり、急いで拡販しようとしています。

現実的で巧みな販売政策


販売政策にも中国らしさが見えてきます。

EUにおいては、デザイン性の高い高級車を中心に導入、ブランド力を高めて、徐々に浸透させようという考えです。

タイにおいては、将来的な製造拠点の設置を餌に、政府から補助金を出させて、普及車を導入しようとしてます。中国の約束する将来のナントカほど信用できないものはないと思うのですが、地場産業を育てたいアジア諸国からすると、それでも飛びつきたくなるのかもしれませんな。

中国製にアレルギーのある日本では、業務用に絞って、進出を図ろうとしてます。宅配用の小型バンや、商用軽自動車が、導入される見込みです。こちらは、既存の自動車会社の緩い対応に飽き足らない事業者や、ベンチャーなどが、積極的に中国EVを採用しています。

投資回収が終わっていない製造設備を遊ばせておくわけにはいかないので彼らも必死です。いざとなればダンピング気味にでも販売してくるでしょう。

EUはどう動くか


こうなると気になるのがEUの動きです。

極端なEVシフトは、強すぎる日本勢を牽制する意図があったはずですが、代わりに中国勢に牛耳られてしまっては意味がありません。

EUがこのまま手をこまねいているわけがありません。

以前のブログに書いたように、突然ちゃぶ台をひっくり返すように、他のエコカーにシフトしようとするかもしれません。


あるいは、中国勢とEUで市場を分け合う現実的な妥協を行うかもしれません。そうなれば日本にとっては厳しいですが、このあたり、ロシア情勢が影響を与えるでしょうね。

ここで下手を打つと強い日本メーカーといえども致命傷を負うかもしれませんから、難しい舵取りが求められます。

経営能力が問われる場面です。