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この話、噂には聞いておりました。

新世界の通天閣から日本橋につながる商店街に中国系のお店が増えており、なにげに活況を呈しています。

低価格のカラオケ居酒屋、カラオケ中華という業態が多い。かつてはシャッターの多い寂しい通りだったことを思えば、それ自体はいいことです。

が、中国の事業家の方々は、この一帯を中華街にしたいという構想を持っているそうで、地元の人々が困惑しているという話です。

インバウンド需要で復活した労働者の町


現在、大阪全体の景気がよく、不動産価格も上がっています。が、新世界界隈は、上昇の程度が激しく、3年前の3倍になっているというから凄まじい。もっとも、もとの価格が低かったということであり、全体の地価上昇に合わせて、この地区も適正化していったということでしょう。

もともと新世界は、あいりん地区が近いこともあり、日雇い労働者が多くいる町でした。今は、日雇い労働も昔ほど需要がなくなったため、この地区の労働者は全体に高齢化しています。界隈には、労働者向けの簡易宿泊所が多くありましたが、現在は、外国人観光客向けの安いホテルに切り替えて盛り返しています。

それにつれて、界隈の飲食店も観光客でにぎわうようになりました。今回の中国人によるカラオケ中華の話は、その流れに乗るものです。

立地としての価値は高いが


確かに、新世界という立地そのものは良いと思います。難波と天王寺の間にあり、どちらにも近い。この2つの都市がつながれば、それは大きな価値を持つようになるでしょう。だから中間地点の新世界が盛り上がることは、非常に意味があります。

難波から新世界にかけて、日本橋の電気屋街の裏筋あたりに夜市でもやれば、ものすごい観光資源になるだろうなあと妄想したりするのですがね。

しかしわれわれ大阪人には、新世界が都会になるなんてとても考えられないことでした。なにしろ実態を知っています。西成のあいりん地区は、東京でいう山谷のようなところです。日雇い労働者が集まってくるので、街には仕事にあぶれた人たちが昼間から酔っ払って管を巻いていたりします。昔は暴力沙汰なんて日常茶飯事で、物騒でした。日本最後の大きな暴動が起きたところでもあり、今でも西成警察は要塞のようです。

NHKの朝ドラの舞台になったりして、観光地化が進んできていますが、それでも筋を一つ入れば、怪しげな雰囲気に満ちています。なにせ、少し足を延ばせば、日本最大の遊郭がそのまま残っていて、ここは異世界か!と混乱すること請け合いです。

星野リゾートが、この界隈に高級ホテルの建設を行うと発表した時は、大阪人はみなひっくり返ったものですよ。

星野さんは、東京の人だから、新世界の猥雑さをご存じないのでしょうね。

華僑の進出方法


同じように中国から来た人たちにも偏見がありませんから、新世界あたりは、地価が安くビジネスチャンスがいっぱいの場所に映ったのでしょう。

知らないので怖いもの知らずです。以前、大阪の不動産屋さんに、新世界あたりの土地のことを聞いた時は、安くてお買い得だけど、じゃりン子チエの鉄のような一筋縄でいかない人たちが多くいるからやめときなはれと諭されたこともあります。

中国の方は、じゃりン子チエをおそらく知らないのでしょう。それなら仕方ない。

それにしても、ビジネスチャンスがあるとわかると、同胞を集結させて一大勢力になっていこうとする華僑の姿勢は、やはりパワーがあります。

以前聞いた話ですが、華僑が展開していく方法とは

1.一人の成功者が出現する

2.真似して成功しようとする者が集まってくる

3.最初の成功者グループが、ノウハウや資金を提供し、追随者をサポートする

4.成功者を多く出し、その地域で大きな勢力となっていく

というものだそうです。特に3は、個人の善意ではなく、華僑ネットワークの伝統というか掟のようなものとして行われるのだと聞いたことがあります。それが、この事例でも生かされていたようです。

この騒動をきっかけに地元が動き出すのか


もっとも記事にあるように、今の時点での中華街構想は壮大過ぎて、現実性がないと思われても仕方ないでしょう。なし崩し的に巻き込まれたくないという地元の方々の困惑もわかります。

いずれにしろ、星野リゾートの建設が進み、観光客が増えてくるとなると、新世界の商店街も何らかの開発が必要です。そうじゃないともったいない。

中華系パワーに乗っていくのか、あるいは、それに巻き込まれないように、独自のコンセプトで開発を進めていくのか。

これをきっかけに地元の方々が一丸となって動きだすことができれば、いいんでしょうがね。