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自動車メーカースズキの鈴木修会長が、会長職の辞任を発表しま
した。

御年91歳です。

お元気ですねー

まあ、しかし、事業承継の在り方を考えさせる事例です。


引退時期が難しいカリスマ経営者


鈴木氏といえば、小さな自動車メーカーを世界企業に育て上げたカリスマ中のカリスマです。

「おれは中小企業のオヤジだ」と言って、販売店との折衝も、市場調査も、労使交渉も、海外企業との提携交渉もすべてやるスタイルの経営者でした。

トヨタの社長でさえ、鈴木修氏には一目も二目も置いていました。

ただ、43年も経営トップにいると、取沙汰されるのが、後継者問題です。

5年前のインタビューでは、記者からしつこくその問題を聞かれて、切れ気味に「後継者が、おれを越えられないんだから仕方ない」「辞めろと言われたら喜んで辞める」などという意味の発言をしており、絶対権力者ぶりを露呈していました。

本人は、まだやりたかったのでしょうね。自信もあるでしょうし。

ただ、自動車産業全体が大きく変わる渦中ですから、大事なところで、健康問題とかあれば大変ですから、仕方なかったのでしょう。


「弱者の戦略」に適した体制


ランチェスター戦略でいうと、スズキは弱者ですから、弱者の戦略で戦わなければなりません。

つまり、弱者なりに勝てる市場を見つけて、差別化や集中や局地戦を展開することです。

その際、チャンスをものにするためには、素早い決断をしなければならない場合もあります。

スズキの場合、能力が突出した鈴木修氏に権限を集中する体制が、生き残るための最適の方法だったのでしょう。

ただし、この体制は、ワンマンになり、事業承継の際には足かせとなります。

ずっと前線にいた鈴木修氏は、自分以上の経営者はいないと思っているでしょうから、なかなか後進に任せることができません。

難しい問題です。


後継者育成は、コミュニケーションの質が大切


私も年齢的に、後継者育成を相談されることが多くなってきました。

確かに、後継者育成がうまい会社、へたな会社があるように思います。

うまい会社は、後継者にうまく経験を積ませています。

やはり、経営に必要なものは経験です。修羅場の経験など座学で学ぶことはできませんから、経験してもらうことが一番です。

ただ闇雲に経験させるのではなく、コミュニケーションをとり、基本的な考え方を統一しておくことは必要だと思います。

後継者育成がうまい会社は、結局、この意思疎通がうまい会社です

一方的に押し付けるだけでは、反発もあるでしょうから身に付きません。ちょうどいいコミュニケーションが必要です。


経営者は自分の考えを整理してまとめておく


といってもこれが難しい。

特に後継者が子供の場合、どうしても一方的に押し付ける形になってしまうようです。

親子で口も聞かない会長と社長というコンビをいくつ見たことか^^;


まあ、その時のために我々のようなコンサルタントがいるわけですから、ぜひ活用してください。


私は、経営者は、自分の考え方を整理してまとめ、形にしておくべきだと思っています。

難しく考える必要はありません。自伝という形でもいいし、年代記でもいい。備忘録でもいい。

整理してくれる人を雇って、早いうちにまとめておきましょう。

そのための費用は惜しむべきではありません。


同じ経営理論を学び、共通言語を持つ


あるいは、自分がいちばんしっくりくる経営理論などがあれば、後継者に学ばせることです。

同じ考え方を学べば、共通言語ができますから、コミュニケーションがスムーズになります。

そのうえで、しかるべき経験を積んでもらえれば、より多くを吸収できるはずです。


いずれにしろ、後継者と目する人が決まっているなら、取り掛かるのに早すぎることはありません。

経営は一流だったけど、後継者を育てるのに失敗したね、なんて言われないようにしたいものですね。