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とぶ鳥を落とす勢いだった鳥貴族が失速してしまいました。2017年10月に280円→298円の値上げに踏み切ってからです。たった18円の値上げだったというのに影響は大きく、2019年7月期の決算では、赤字になると予測されています。

ただ、鳥貴族の不振は、値上げだけではない、というのが上の記事です。

居酒屋チェーンは600店が限界?


実際、値上げ後しばらくは客数の落ちもなかったのです。が、2018年1月頃から急に業績悪化しました。これは、鳥貴族の店舗数が600店を超えてからだと記事は指摘しています。

著者は、これまでの経験則から、居酒屋チェーンは600店が限界だと書いています。つぼ八もそうでしたし、ワタミもそうだったとか。あまりにも急激な拡大路線をとってきた鳥貴族も、600店の壁にぶち当たってしまったかっこうです。

もちろん人件費や材料費の上昇に居酒屋チェーン全体が苦しんでいる状況ですから、値上げは必須です。ここでチキンレースをするつもりはないという鳥貴族側の決断は尊重すべきでしょう。

しかし、成長の壁に当たる頃に、値上げに踏み切ってしまったというのは、これはちょっと悪いタイミングだったと言わざるを得ません。

縮小する市場でシェアを奪ってきた鳥貴族


居酒屋・BARの全体売上は、現在1兆円程度ですが、これは2000年当時からみると、2割近く減っています。

これから日本は人口減少時代に入るので、V字回復は考えづらく、ますます縮小していくでしょう。若者のアルコール離れは顕著ですし、歳をとれば酒量も減りますからね。いい要素がありません。

そのなかで各企業はパイを取り合っています。

まさにそんな状況下で成長してきたのが鳥貴族でした。同社は、競争の源泉を「低価格化」に求めました。それを実現するために、メニューを減らしてオペレーションコストを下げる方策に出ました。鳥専門店というやり方です。これなら、低価格路線でも、メニューにある程度「深さ」を出すことができます。

最悪のタイミングで値上げ


総合居酒屋の「広く、浅い」品揃えへのアンチテーゼとして新鮮だった頃はよかったのでしょうが、確かに店舗数が増えてトップチェーンになったら、「狭さ」が気になってしまいます。たまに行く店だからよかったのに、どこにでもある店となったら、行きづらい。要するに飽きられてしまいます。それにマネされやすい業態ですから、似た業態店が続々登場しました。競争の激しいとろこで値上げしたら、シェアを奪われるのは自明のことです。

居酒屋チェーンでいま元気なのは、磯丸水産や串カツ田中だそうです。いずれも専門業態店です。両社とも拡大意欲まんまんですから、しばらくは増収増益が続くのでしょうが、やはり鳥貴族と同じく、ある程度の規模になると失速してしまうのだろうと予測できますね。

他業態展開か、さらなる拡大か


鳥貴族の成長はこのまま∞に続くのか←2017年2月に書いたメルマガの内容です。いまとなっては、そんなもん永遠に続くわけないやろ!ということですが、鳥貴族とすれば図らずも単一業態の限界をみてしまったわけです。

普通に考えれば、鳥貴族はもう少し店舗を減らした状態で維持し、他業態をつくって成長を目指すというのが一般的な考えです。

が、それだと先達飲食店グループのミニ版になってしまって面白みがなくなりますな。

いや勝手を言ったらだめですね。企業は生き残らなければなりません。そのためなら、面白いとかどうとか言っている場合ではありません。どうか現実的な路線を行ってください。

が、大倉社長は、単一業態での成長に並々ならぬ意欲を持っていた方ですからね。諦めていないかも知れませんね。それはそれで注目していきたいと思います。