ソフトバンクが買収した英アームの全貌

■ソフトバンクが、3兆3千億円で買収したアーム(英)についての記事です。

アームは、半導体の中にあるMPU(マイクロプロセッサ)を設計開発している企業です。同社設計のMPUは、インテルの10倍以上生産されているといわれています。

アームのMPUは、省電力で、スマホなど小さなデバイスに適しています。記事によると、インテルとウィンドウズが、パソコン市場を支配していた頃、スキマを探るために開発したものが、ここにきて活きています。

最初は、アップルがiPhoneのために採用したものが、今や多くのデバイスに使われており、ついにはウィンドウズが採用するに至ったとのことです。

■アームの特徴は、開発設計はするが、生産はしないこと。半導体メーカーは、その仕様に自社の付加機能をつけて生産しています。

同社は、ライセンスフィーと、1個あたりのロイヤリティを収入としています。確かに、これなら儲かります。

■だから、アームは、最先端のMPUを開発し続けなければなりません。最先端でなければ、デバイスメーカーの設計部門に「自社で設計すらあ」と言われてしまいます。常に最先端で、業界ダントツの性能なり機能なりを持っていなければなりません。

また、半導体メーカーを顧客にするため、デバイスメーカーとのつながりが薄いきらいがあるようです。いわゆる最終顧客に接近していないため、情報収集を怠ると、すぐに取り残されてしまいます。

記事にもそこが弱みと書かれていますが、相当深刻な弱みだと思います。

■要するに、息の長い強みを発揮できる企業ではありません。

それならば、ソフトバンクはこの企業の何を買ったのか?

※経常利益が214億円。その154倍の買収価格ですよ。

退任撤回、アーム買収 孫正義「本音を話そう」

孫正義氏の話によると

(1)IoTの爆発的な発展により売上が増える。「シンギュラリティー(技術的特異点)」という言葉を使っていますね。人口知能が、人間を超え、新しい時代が来る。すべてのものに人工知能が搭載される。その時、アームのMPUが使用されるはずだ、ということ。

(2)IoTが爆発的に発展した時、どんなことが起きるかは、誰もわかっていない。だから多くのデバイスに使用されるであろうアームのデータが役に立つ。つまり、新しい時代を読み切るために、アームのポジションが欲しかった。

そういえば、ソフトバンクがパソコンソフトの卸をやっていた時にも、ネットの時代に何が起きるのかを知りたい。として、アメリカのIT系出版社を買収したことがありました。それと同じような発想になっています。

実に、孫正義氏らしい大勝負ですねー。

最後までこの時代の変化を見届けてやろう。その主役の座にいてやろうというスケールの大きな気概をお持ちです。

■もっとも、アームがデータを収集するような体制があるのか、それができるのか。

あるいは、アームの位置づけでなければ、データを収集できなかったのか。

そういう疑問はあります。

いや、そういう疑問を持ってしまうと、孫正義のような大勝負はできませんね。アローヨ氏は、そういう現実的な判断をするので、ソフトバンクを去ったのでしょう。

孫正義にしかできない勝負です。今回も勝ち抜いていただきたいものです。



「廃業寸前」が世界トップ企業になった奇跡の物語


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