家電量販店のヤマダデンキが、アマゾンとテレビの共同開発を行っているというニュースです。
アマゾン・エフェクトにより、潰れてしまった小売店やメーカーも多い中、ヤマダ電機は、敵と組むのか?と話題になっています。
もっとも「危機においては敵と組む」(byティリオン・ラニスター)というのは兵法の定石のひとつです。
いまいち低迷からの突破口が見えないヤマダデンキとすれば、苦肉の策なのでしょう。
家電メーカーの低迷により、自ら需要を作る必要に
ヤマダデンキといえば、売上高1兆5032億円、利益856億円の家電量販店国内トップです。
店舗数は715店舗(前期)。日本の家電製品が強かった時代に、メーカーの販売チャネルを集約する形で拡大していきました。
家電量販店が台頭する前は、メーカーがそれぞれ独自の販売店を組織していましたが、家電量販店は、定価販売を崩すことで、消費者の支持を得て、主要チャネルとなりました。
今でも、家電売上の8割は、家電量販店経由だといいます。
ただし、国内家電メーカーが軒並み力を失った現在、家電販売は低迷しています。意地悪な言い方ですが、メーカーのマーケティング力、開発力を恃みにしていた販売店側とすれば、売るモノに困ってしまいました。
しかも少子化により、今後も回復が見込めないと予測されます。
企業規模を肥大させた大手量販店側とすれば、メーカーに頼らない需要確保策をとらなければなりません。
ヤマダHDは、「おうちまるごと」といって、家電だけではなく、家具や家そのものを販売する方策を打ち出しました。まるごと扱うことができれば、少子化による目減り分をカバーできるだろうという算段です。
エス・バイ・エルや大塚家具などを買収してきたのはそのためです。
家の中心であるテレビをとりにいく
またヤマダデンキは、船井電機と組んで、テレビの開発製造に乗り出しています。いわゆるプライベート・ブランド(PB)です。
テレビはリビングの中心、すなわち家の中心だから、テレビを制する者は家全体を制す、という考えは、かつてパナソニックやソニーも唱えていました。
ヤマダデンキはそれを引き継いだということです。
が、そこそこ機能品質がよくて値段が安いそのヤマダPBのテレビがいまいち売れていないようです。
そこそこよくて安い、というだけでは、日本の消費者の心を捉えられなかったらしい。
そこで今回のアマゾンとの提携です。アマゾンが持つブランド力、ネットワーク機能を取り込んだテレビを開発したというわけですね。
消費者とつながることに躍起なアマゾン
アマゾンは、消費者とのタッチポイントを増やそうと躍起になっています。つながってさえいれば、アマゾンのサービスを利用する可能性があります。
プライムサービスなんて、年間5000円程度で、動画見放題、音楽聞き放題、電子書籍読み放題なんて、てんこ盛りです。あるいは、AI搭載のロボットや音声機器なども開発し、比較的安く販売しています。そうまでして、消費者の身近に位置取ることが、企業成長のキモになると考えています。
今回のヤマダデンキと開発したテレビは、アマゾンのサービスにつながりやすい機能を備えており、渡りに船というやつです。
開発メーカーと巨大販売チャネルを労せずして手に入れることができたわけです。プライムサービスの収益も見込めますし、それ以上に、別のサービスとのアクセスを容易にできるのですから、メリットが大です。
どちらかというと、ヤマダ側には苦肉の策で、アマゾンにはメリットが大きい施策だと見ています。
アマゾンの厳しい目を意識していく
記事では、今回の提携がヤマダにとって最後のピースだと言っていますね。
テレビを販売拡大し、それをてこに、家に関する様々な商品を丸ごと扱おうとイメージしているのでしょうか。
ただ、アマゾンも、同じ戦略を持っています。アマゾンの場合、家だけでなく人の生活すべてに関わろうという考えですが。
山田会長は、配送や設置、下取りが必要な商品はアマゾンは苦手だとして、住み分けは可能だとみているようです。
いまはそうかも知れません。が、アマゾンには「消費者にはこちらの方がいい」と判断すれば、平気で提携会社を除外する割り切りがあります。
まあ、いつ裏切られるかなんて疑心暗鬼になってもしようがない。
消費者に価値を生み出しているか常にみられている、非常に厳しい監査役がいるようなものだ、と前向きにとらえて付き合っていくべきなんでしょうな。
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