韓国サムスン電子が、中国企業への技術流出に苦しんでいるという記事です。
日経新聞全3回の特集でなかなか読みごたえがありました。
かつて韓国企業のなりふり構わぬ技術獲得
技術流出というと、20年ほど前、日本企業が苦しんだ内容です。しかもその時の相手はまさにサムスンや、LGなどの韓国企業でした。
飽和した日本国内市場での同質化競争の末に、総花的になってしまった商品群を抱えた日本の家電メーカーをしりめに、韓国の新興企業は、一部分に集中することで、日本企業のシェアを奪っていきました。
特に韓国企業の武器はグローバル化です。国内市場が狭いので、最初から世界マーケットありきの戦略をとっていました。そうなると、総花的な商品ラインでは通用しません。強い分野に集中することとなります。
サムスンに関しては、半導体、スマホ、液晶テレビなどで、世界シェアトップとなりました。
その過程で、必要な技術は、先行していた日本企業のものを奪っていきました。最初は日本の技術者を高額の短期バイトとして雇い入れました。2泊3日の韓国ツアーに50万円から100万円の報酬を支払ったといいますから、いいお小遣いです。
日本の技術者が本当にコアな技術を伝えたかどうかわかりませんが、それでも細かな現場のノウハウなど、学ぶべきものはいっぱいあったはずです。
後には、業績不振でリストラされた技術者を大量に雇い入れました。こうなると、技術者側も、元の企業に義理がありませんから、それなりに技術ノウハウを伝えたはずです。
日本企業と合弁で工場を作った際も、露骨に技術を盗みにきたので閉口したと聞いています。まさになりふり構わぬふるまいですな。
その執念には感心します。いまや日本の家電メーカーは壊滅に近い状態で、サムスンもLGも遥か高みに行ってしまいました。
いまは中国企業が、韓国の技術を盗む
ところが歴史は繰り返すものです。その韓国メーカーの技術を中国企業が、なりふり構わず奪いにきているということですから。
その背景には、中国の人口を基盤とした中国企業の台頭があります。
市場があるからお金が回る、お金が回るから技術を買う、技術を買うから商品として強くなる、ということで、かつての韓国企業の台頭と同じ構図です。
法的に技術流出を避ける措置をとっているものの、守り切ることなど不可能でしょう。
中国企業の伸長と韓国企業の退潮は避けられないと思います。
技術は手段 大切なのは顧客の支持
ここでの教訓は、市場の支持を得たものは強く、技術的優位性は思ったほど強くはないという現実です。
ランチェスター戦略では、まず、市場を獲得せよと教えています。自社の得意な分野に絞り、小さな市場でもいいので、そこで市場の支持を得る、つまり市場シェアトップになることです。
市場シェアを得て、顧客基盤さえできれば、ほかのことは後から補完できます。
もちろん商品やサービスとしての強みは重要ですが、それはあくまでも顧客からの信頼を得るための手段です。信頼を獲得し、継続させるために、商品やサービスのアップデートがあるわけです。
最盛期のパナソニックは、ナショナルショップという顧客との接点を押さえており、盤石の基盤を持っていました。
いま時価総額世界1位のアップルは、iPhoneユーザーという強固な顧客基盤に支えられています。
iPhoneユーザーは、アプリやクラウドストレージなどを使用するので、機種変更の際も、iPhoneを選ぶ強い動機があります。
アマゾンも、ただの便利なECサイトとなってしまっては、強固な顧客基盤とまでは言えないので、サービス満載のアマゾンプライムサービスに呼び込もうと必死です。
日本企業では、ソニーが、顧客の囲い込み意識が強いようです。
もちろん露骨な囲い込みはユーザーの反発を招くので、バランスが必要です。自分の意志でユーザーに止まるというさじ加減を間違えれば逆効果となってしまうので注意しなければなりません。
技術流出は避けられないもの
最終的には、ユーザーは自由です。いつかは、去っていく存在だということを意識しておかねばなりません。
つまるところ、ビジネスは顧客の支持を得る、シェアを得る、信頼を得る、ということを常に繰り返していくものです。
既存市場の変化や、新しい市場の登場などを読み切ったものが成果を上げる世界です。
技術を奪ったとか、奪われたとかは、枝葉のことで、織田信長ふうに言えば「是非に及ばず」ということですな。
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