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アメリカの産業成長を牽引するのはIT・デジタルとともに、ヘルスケア分野だといわれています。

ヘルスケアにもIT・デジタル化が絡んでいて、例によってGAFAMが力を入れています。

突出しているのはアルファベット(グーグル)ですが、その他の企業もこぞって注力しています。

もちろんGAFAMだけではなく、この分野にユニコーン企業(評価額が10億ドルを超える、設立10年以内の未上場のベンチャー企業)は多い。

国別の内訳をみると、アメリカ企業が半分以上、次いで中国、EU、インドなど。日本にはユニコーン企業はなし。この分野で非常に遅れていると言わざるをえません。

日本でも切実な医療費の削減


言うまでもなく、少子高齢化、人口減少が進む日本では、医療費の削減が大きなテーマとなっています。

日本の一般会計支出の3割が社会保障費です。このうち3割強が医療費。諸外国に比べて、優先順位が低いということはありません。

それなのに、この分野に有望な新興企業が少なく、改革も進まない、つまりコストダウンが進まないことは、日本の大きな問題です。

高齢者層へのマーケティングに真剣に取り組む時期がきている

予防、デジタル、個人対応


アメリカの状況をみてみると、ヘルスケア分野の改革は、(1)健康管理・予防の強化、(2)診療やカルテなどのオンライン化、デジタル化、(3)スマホなどによる診療や管理の個人対応、という方向になっています。

大雑把にいうと、スマホで個人ごとに最適な健康管理・予防ができて、必要な時は、やはりスマホでオンライン診療をしてもらえて、データを自分で管理できるというものです。

例えば、健康診断の結果がスマホに送られてくると、医療機関監修の専用アプリやオンライン診療などで内容の分析や治療方法などについてアドバイスを受けます。

必要ならば、治療を受けるなり、ドラッグストアで薬を買うなりを自分で選択し、その後の経過もスマホアプリで観察します。自分で健康管理をするわけで、意識を高めていかなければなりません。

健康管理・予防が強化されれば、病気そのものが減り、国の負担も減ります。その分、医療機関は、必要な患者に集中することができるようになり、充実した治療ができるようになるという算段です。

既得権益層の強い日本


日本でこうした改革が進まないのは、アメリカにはない国民皆保険制度というものが素晴らし過ぎて、付け入る隙がないからだと思われます。

保険制度があるおかげで我々は、安価で医療を受診することができます。

日本の場合、医は仁術という考えがあるのか、診療報酬が細かく点数が決められており、医者の収入を抑える方向になっています。

保険内治療である限り、ブラックジャックのようにすごく腕がいいので報酬も高いというわけにはいかないようです。

我々患者にとっては有難いのですが、お医者さん側とすれば、収入を増やすには、患者数を増やすか、医療行為を増やすかが課題になります。

そんな不埒な医者は少ないと怒られるかも知れませんが、経済合理性とはそういうものです。結果として、患者の診療回数が増えるし、投薬も増えるというものです。

この他、医療従事者、薬剤師、製薬会社、保険会社などガチガチの制度の内に、多くの利害関係者が存在するため、少しの変化でも、割を食う人が出てきます。

要するに既得権益層が多く複雑なので、抵抗が強く、改革が進まないということですな。


改革が必要だと誰もが認めていても、個別の利害調整が難しいので先送りになるというのは、どの組織でもあることですね。

この話、日本の全体に関わることなので重大なのですが、それでも先送りにしようという勢力が強いので仕方ありません。

いよいよ切羽詰まって、どうしようもないところまでいくのだろうなと思う次第です。