4月といえば、新入社の時期です。
私のように歳をとる者もいれば、新社会人となる若い人もいるわけです。
われわれのような職業の者にとっては、春は新入社員研修の時期でもあります。
今年も何社かで新入社員研修の講師を務めさせていただき、本当に有難いことです。
何を隠そう私は新入社員相手の研修が大好きです。
歳をとったからですかね。若い人に素直に育ってほしい。育てたい。という思いが年々強くなってきました。
だから新人相手の仕事は、最もモチベーションを感じます。
企業の皆さま。ぜひ私にお任せください(^^)
「1万時間の法則」を知ってほしい
聞くところによると、せっかく新社会人となっても、すぐに会社を辞める人が多いというではないですか。
まったくもってもったいない限りです。
信念をもって辞めるならともかく、なんとなく合わないとか、思ってたのと違うとか、漠然とした気持ちで辞めるのは、人生にとって何らプラスにならないはずです。
会社に入って「なんか違う」と思うのは当たり前です。それまでと違うルールで動いている場所にいるわけですから。
自分の中の何をリニューアルし、何を守り続けるかを決めながら成長していくのが社会人です。
新社会人には、ぜひとも「1万時間の法則」を知ってほしいと思います。
この「1万時間の法則」とは簡単にいえば、各界で卓越した業績を残した人は例外なく1万時間の下積みを過ごしている。というものです。
経験則ではあるものの、自分の人生を豊かにするには、信じた方がよい概念だと私は考えています。
新社会人は逆に読んだ方がいいかも知れません。
すなわち「どんな仕事をするにせよ、1万時間の下積みができない者は、卓越した存在になれない」
時には荒波にもまれるかも知れませんが、ぜひともその先にある豊かな大陸に向かって、出航していただきたいと思います。
営業ほど価値のある仕事はない
私は営業コンサルですから、営業のことを言います。
特に営業に配属された人に辞める人が多いそうです。
憂うべきことです。
確かに営業は、多くの能力が必要とされる職種です。
行動力も、粘り強さも、論理的思考力も、人間の心理を読む力も、マネジメント力も、リーダーシップも、勤勉さも、誠実さも必要です。
が、それだけに、営業を究めた者は、どんなことをしても成功するでしょう。
それだけ価値のある仕事です。
そんな素晴らしい職種につける幸運をみすみす手放さないようにしてください。
新人の頃は「行動量」がすべて
私は、というと、実は、最初の頃はそこそこ成績を残すことができました。
入社2、3年目までの営業に必要なのは、行動量です。
物怖じせずに、思いついたことを何でもできるなら、誰でもそれなりの成績を上げることはできるはずです。
私はバカでしたから、躊躇するということがあまりなかったのですな。
失敗しても、若い頃なら、許されます。むしろやる気があると、褒められたりしました。
だから入社したばかりの人は、とにかく行動することを心がけてください。
行動量は、すべての糧になります。行動が価値ある経験となり、自分なりのノウハウとして蓄積されていくでしょうから。
ただし行動量だけで通用するのは、2、3年目まで
しかし、がむしゃらに行動する、というのは、入社2、3年目までの特権です。
いつまでも考えずに行動しているだけでは、それは無謀というもの。「こいつ本当のバカか?」と思われてしまいます。
せっかくの経験を価値あるノウハウにしていくためには、自分なりの体系を頭の中に持っている必要があります。
この点に関しては、私は偉そうなことは言えません。
何しろ私はバカでしたから。
動きまわっているばかりで、運まかせに、失敗と成功を交互に繰り返す厄介な営業でした。
さすがにこのままでは通用しないと気付きました。
いまから二十数年前です。急に失敗が怖くなって、恃みの行動量も減ってしまいました。
周りを見れば優秀な先輩ばかり。先輩らが当たり前にできることが私にはできません。いちいち立ち止まって、考え込まなければ動けない。
先輩に聞いても、その先輩の言うことがよく理解できません。何度もしつこく聞くと、うるさがられるし、馬鹿にされるし、萎縮していきました。
私が所属した事業部も、赤字続きで身売りや廃業の噂が出ているぐらいだから、荒んでいたのでしょうね。
けっこうつらい毎日でしたよ。
自分なりの体系を持つこと
そんな中、苦し紛れに始めた勉強に救われました。
勉強といっても「ランチェスター戦略」や「マーケティング戦略」などの入門書の類を読むぐらいです。
でもそれが良かったのでしょうね。入門書は、素人にも分かるように平易に書かれています。確かに、抽象的だし、深い部分は省略していることも多い。
しかし、入門書には体系があります。必ず、全体像がわるように書かれています。
そういった本を何冊か読んでいて思ったのは「営業についても、全体像を見直そう」ということでした。
それまで、営業のノウハウ本は何冊か読んでいました。ノウハウ本にもところどころヒントになるものはあるものの、一つにまとまるような体系を読み取ることはできませんでした。むしろ、場面場面で覚えておくことが多すぎて混乱してしまっていました。
ところが「ランチェスター戦略」や「マーケティング戦略」の体系から営業を見直してみたところ、全体がすっきりとつながることが分かりました。
それまで覚えることに汲々となっていた営業ノウハウの類も、すべて全体の体系の中に紐づけることができました。
全体が分かれば、枝葉を覚えることは容易いことです。いやむしろ、ノウハウなんて人の話を聞くよりも、自分で経験して工夫していく方がはるかに有効です。
幹がしっかりすれば、枝葉はおさまる。当たり前のことを知ったわけですな。
理論があるから、経験が価値になる
若い頃に理論を知るのは、よしあしだと思われています。
一部の先輩からは「できないやつが机上の空論ばかり言ってる」となじられました。
確かにそうでした。理屈に経験が伴わないのだから仕方ありません。
しかし、現場で経験するたびに、それが体系の中に組み込まれていきます。
理論を持っているからこそ、経験は無駄にならず、自分なりの営業セオリーが出来上がっていきました。
セオリーが決まれば、行動に迷いがなくなります。
確信をもって行動すれば、それは成果につながります。
いつしか営業成績も上向くようになり、それが自信となっていきました。
大げさな言い方になりますが、その頃があるから今があります。
まさに勉強が身を助けたわけです。
営業は純粋な技術であり、誰でも身に着けられる
いまだから言いますが、営業はセンスではありません。ましてや天分などありません。
営業は技術です。だから技術さえ覚えれば誰だって、成績を上げることができます。
確かに個人差はあります。コツをつかむのが上手い人なら、成績を上げるのも早いでしょう。
しかし、ちょっとしたコツなど長い目でみれば大したことではありません。
真面目で勤勉に努力する者であれば、誰だって成績を上げることができます。
若い頃、同僚に比べて出来ないと悩むことなどありませんよ。若い頃、成績を上げるのは、行動力があって元気で人当りのいい者かも知れません。
が、そんなアドバンテージなど入社2、3年でなくなります。
結局は、営業のセオリーを理解し、確かな技術を身に着けた者が生き残ります。
天才肌の営業を見習ってはいけない
できそうでダメなのは、突発的な好成績を残す人です。
ふだんはいい加減でちゃらんぽらん、さぼっているように見えるのに、いざという時、凄い契約をとってくる。
そういう人が、たまにいます。
いわゆる伝説的な営業です。
だけどそういう人の成績を冷静にみてみると、長期的には大して好成績ではないことが殆どです。たまにすごいから目立つだけです。
そういう人が謙虚だと害がありませんが、その人が幅を利かせていて、天才肌の営業スタイルがカッコいいなんて社内で思われるようになると、組織全体が腐っていきます。
そうなるとその存在は害悪以外の何ものでもありません。
私の知っている優秀な営業、コンスタントにいい成績を残す人は、おしなべて真面目で勤勉で誠実です。
真面目で優秀な人が上にいる組織は、やはり生産性が高いといえます。
これから営業になる若い人に言いたいこと
だから営業に配属された若い人に言います。
もしあなたが、自分は営業に向いていない、営業なんてやりたくない、と思ってもあきらめたり投げ出したりしないでくださいね。
まずは、行動することを心がけてください。失敗できるのは若い人の特権です。どんどん失敗してください。
失敗しても褒められるのだから、それこそローリスクハイリターンです。そんなラッキーな仕事ってあまりないですよ。
もしあなたががむしゃらに行動するほどの勇気がない場合でもあきらめないでください。
行動力だけで優位性があるのは、2、3年目までです。それからは、セオリーが必要です。
簡単な入門書でいいので、全体像を理解できるような勉強をしてみてください。
セオリーを知っている者は、経験を価値あるノウハウとして蓄積することができます。
営業は一発勝負のギャンブルなどではありませんよ。
今月達成しても来月の目標があります。今期達成しても来期の目標があります。
ずっとコンスタントに成績を残す人がいい営業です。
いい営業に必要なものとは、真面目さ、勤勉さ、誠実さです。
周りの先輩をみてください。コンスタントに成績を残せる人は、目立たない地道な努力をしています。
その人は、ちゃんと勉強し、ターゲット顧客を絞り、毎日自分でフィードバックしながら営業能力を高める努力をしているはずです。
そういう勤勉で優秀な人をメンターにして、自分もいい営業になれるように、1万時間を過ごしていってください。
50歳すぎて、いい人生を過ごしているなと思えるように、悔いのない毎日を送ってください。