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ちょっとこのニュースには驚きました。

日産自動車をV字回復させた立役者であるカリスマ経営者が、19年目に逮捕ですよ。

衝撃以外の何ものでもありません。

各界から賞賛されたビジネス手法


カルロス・ゴーン氏といえば、傾いてどうしようもない状態だった日産自動車を引き受けて、わずかな期間に黒字化させたことで知られています。

その鮮やかな手法は、日本中のビジネス関係者に賞賛されたものです。

コストカッターといわれる通りの聖域なきリストラと、成長分野への大胆な投資は、その後の日本の経営に少なからぬ影響を与えたはずです。

販売面でいうと、トヨタの後追いはやめて、差別化戦略に舵を切りました。すなわち、北米の強いトヨタに対しては、中国や南米への注力を鮮明にしました。

ハイブリッド車に強いトヨタに対して、電気自動車に向かうことを明確にしました。

ランチェスター「弱者の戦略」にてらしても、納得性の高い施策を打ち出していきました。

だから決してコストカットだけの経営ではありません。コストカットと成長への投資のバランスが絶妙だったといえるでしょう。

ビジネス界ではないですが、大阪を立て直した橋下徹氏のやり方は、ゴーン改革を参考にしたのではないでしょうか。

しがらみのない外国人だからできた改革


傾きかけた頃の日産といえば、本当にボロボロで、私も自身のセミナーで「無策な企業の事例」として取り上げることがあるほどでした。

販売戦略としても無策でしたし、なにより組織内に既得権益者が派閥を作って居座ってしまい何もできない状態だったと聞きます。組織そのものが硬直化していたわけです。

そんな状態の組織に大ナタを振るえるのは、外国人しかなかったでしょう。しかも生粋のフランス人ではなく、ブラジル生まれのレバノン人だとか。当時の日産の経営陣が、任せたくなる人物だったのでしょうね。

しかし、そんなカリスマ経営者も20年近く居座ると、組織はおかしくなってしまうというのはあまりにも寂しい話ですな。

クーデターを起こしても排除したかった日産側


もっともゴーン氏が公私混同をしがちな人だというのは、ずいぶん前からうわさには聞こえていました。私が聞くぐらいだから、日産内では知られた話だったのでしょう。

それが今になって「逮捕」という形で表に出るというのは、穏やかではありません。

今回、西川社長の質疑応答を聞いていると、やはり社長自身が主導したクーデターだったことは間違いないと思えます。

つまり西川社長やその周辺(日産の人たち)には、ゴーン氏をどうしても排除したい理由があったということです。

上の記事は、その理由について書いています。

簡単にいうと、日産を100%子会社にしたいルノー(とその株主であるフランス政府)の思惑を避けるための措置だったということです。

一説には、ゴーン氏が日産の独立を主張していたともいわれますが、また別の説では、ゴーン氏は既にフランス政府と密約したんだって話もあります。よくわかりません。

ただ今回、ゴーン氏とその側近を排除すると、とりあえず日産の取締役会は西川社長が主導権を握れるらしいので、それを狙ったということです。相当、切羽詰まった事情ああったのでしょうね。

日産は単独の方が生きていける


ルノー、日産、三菱連合は、合わせると世界2位の自動車製造台数を誇るグループです。

しかし、その中核である日産からすれば、シナジーもない自動車会社を併せて計算されても、ピンとは来ない話です。

ルノーも三菱も、日産からすれば不要な会社です。販売台数も収益も、日産の方がはるかに大きい。ルノーには危機を救ってもらった恩義があるとはいえ、今となっては自分より小さな会社に取り込まれるのはごめんこうむりたいところです。

ルノーからすれば「恩知らず!」と言いたくなりますし、三菱自動車にすれば「薄情者!」ですが、日産は「知るかー、図々しいんじゃ!」というところなんでしょうな。

組織は破壊と再生を繰り返すことが肝要


西川社長の狙いは、日産の独立を担保することだということです。

西川社長はじめ日産の経営陣には、自分なりにやりたい経営があるのでしょうし、単体でも十分やっていけるという自信があるのでしょうね。

ゴーン体制という重しが外れた後には、改革が進んで業績をアップさせる可能性が高いので、期待大です。

もっとも、20年もたてば、しがらみが増えて硬直化していくはずです。

そうなれば、またしがらみのない外部経営者を招聘しなければなりません。

組織というのは、たまに不連続な経営者を迎え入れなければならないという教訓として、とらえておきます。