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最近、和菓子中堅企業の廃業や破産が相次いでおり、その背景について書かれている記事です。

直接の影響はコロナ禍ですが、それ以前に、ここ30年和菓子の消費額は減り続けており、構造的な問題であるといえます。

一番の要因は人口減少ということになるのでしょうが、洋菓子がコロナ禍で持ち直していることを考えれば、和菓子側にも特有の問題があります。

洋菓子に日用食の地位を奪われた


記事が指摘するのは、和菓子が日本人の日常に広がり切れなかった状況です。

当然、戦後すぐの頃は、洋菓子よりも和菓子が日常的だったはずです。希少価値のあった洋菓子は、むしろ非日常な特別なものだったと想像します。

しかし、その後、経済成長とともに洋風な食事が日本人の生活に広がっていきました。洋菓子もコンビニやスーパーの棚で売られる日用食になっていきました。

洋菓子メーカーの努力の賜物ですが、洋菓子という範囲の広い多様性が、開発の創造性にプラスに働いたのだと考えます。

今では日用食としての広がりが、洋菓子職人の差別化意欲を生み、それがさらにコンビニスイーツなどにも還元されるという相乗効果を生んでいます。

市場規模の格差は広がるばかり


ところが和菓子の方は、そうはならなかった。

日本人の生活や文化が急速に西洋化していったという向かい風があったことが大きな要因ですが、和菓子メーカーの創造性や努力の不足もあります。

和菓子は歴史的に日本人の生活に入り込んでいるので、和菓子メーカーは新たな開発をしなくても何とかなったということもありますし、伝統に縛られて開発の創造性が洋菓子ほど働かなかったということもあるでしょう。

そもそも和菓子は砂糖そのものが貴重だった時代の気分を引きずっています。甘さに多様な要素を加味していった現代の洋菓子に対抗するのは無理がありました。

いつしか日用食としての地位を洋菓子に譲り、特別な時に添える伝統食になっていきました。

市場のパイが小さければ、当然、そこに投資できる額も小さくなります。雇える職人の数も差が出てきますし、いきおい意欲のある新規参入者の数も洋菓子側に集中していくことになってしまいます。

これでは洋菓子と和菓子の差は開いていくばかりです。

シン・和菓子を生み出せ


人口減少期に入り、地域の伝統需要をあてにする小さな和菓子店にはますます厳しい状況です。廃業は増えることはあっても減ることはありませんよ。

構造的な問題なので、この流れを止めるのは難しいでしょうね。

意欲のあるメーカーの中には、フルーツ大福をヒットさせたり、洋菓子風の和菓子を開発したりしてパイを広げようとするところもあります。が、洋菓子の多様さに比べるべくもありません。

むしろ洋菓子メーカーの方が、和菓子の素材を採り入れようとしています。和菓子メーカーに必要なのは、この貪欲さではないですか。

市場全体の成長はトップ企業の責任だと思うので、和菓子大手メーカーには頑張っていただきたいものですが、有望な話は聞こえてきませんね。

とまあ、他人任せにしても仕方がありません。イノベーションなんて所詮は、他業種のマネや組み合わせから生まれるものです。タネはどこにでも転がっていますから、各プレーヤーがそれぞれ工夫をすれば、何か有望なものもできるはずです。

それ以上に、皆がイノベーションに取り組むことで、業界全体が活気づきます。

シン・和菓子を業界あげて生み出していただきたいと思います。そうじゃないと、じり貧傾向は止まりません。