今月から「創業塾」の講師を務めています。
今年で9年目です。こうなるともうライフワークのようなものです。
私もいろんなセミナーや研修の講師をさせていただく機会がありますが、その中でも創業系の講師は、実にやりがいがあります。
受講される方が真剣だからです。大げさではなく、この講座に人生を賭けているという方がいらっしゃいます。
だから、私も、適当なことは言えません。緊張もしますし、それ以上にやりがいがあるというものです。
そんなわけで、創業者や創業希望者の相談を受けることも多いですが、その際に、アドバイスするのは、「まずはトップをとれるところに地盤を築け」「そのためには、小さな隙間を見つけよ」ということです。
創業者はすべからく「弱者」ですから、弱者の戦略が基本となります。
勝てる局面を見つけて、そこでトップになることは、弱者の戦略の根幹です。
その際、「そんな都合のいい隙間を見つけることなどできない」と多くの方が仰るのですが、そんなことはないはずです。
社会は、隙間だらけです。その気になれば、いくらでも見つけることができますよ。
人口減少は最大の社会問題
先々月、公的な研究所が、2070年、日本の人口は8700万人になるという衝撃的な予測を発表しました。
2070年というと、私はもうこの世にいませんので他人事のようですが、そうはいきません。
最初から8700万人の人口しかいない国ならいざ知らず、1億2千万人を抱えた国が、短期間で人口を減らすのだから、税収も急激に減ります。収入が減るのだから、支出も減らさなければならないわけですが、膨れ上がった社会基盤を急激に縮小するのは、非常に困難なことです。
当然、痛みを伴います。少しでも、その痛みを軽減するために、これから様々な施策が行われていくことでしょう。
施策といいましたが、実際には公的サービスの削減です。1億2千万人の人口を支えるための公的サービスを、8700万人仕様に縮小していかなければなりません。
財政破綻した夕張市をみればわかりますが、ゴミ回収から道路の補修に至るまで、削れるところはどんどん削られていきます。
あげく、全地域のインフラを維持させる費用がないということで、都市部に集中させようという大胆な施策をとらざるを得なくなりました。
いわゆるコンパクトシティ化というやつです。
地方創生などという余裕はなくなり、都市部に強制的移住を進められるかもしれません。
それでも充分ではないでしょう。働ける人が減るのに老人は減りませんから、年金財政が維持できません。破綻を避けるためには、受給年齢を一律75歳に引き上げるとか、そうでもしないともたない。どこかで、割を食う世代が出るのは必至という状況です。
いずれにしろ、人口減少は、日本だけではなく、世界の先進国における最大の社会問題です。
混乱にこそビジネスのタネがある
ビジネスは常に社会に寄り添うものですから、ビジネスをする上で、人口減少を避けるわけにはいきません。
端的に言うと、これから日本でビジネスをする者は、何等かの形で、人口減少問題に向き合わなければならないということです。
たとえば、現在、日本の政府は、外国人の受け入れを急ピッチで進めようとしています。人口減少を外国人の移民で埋めようということです。
そもそも2070年に8700万人という予測の中には、1割(870万人)の外国人が含まれています。
賃金水準の低い日本に、そんなに多くの外国人が移住するわけないやろ!という意見はありますが、まあ来ていただけたとして、当然ながら様々な軋轢が生まれることが予測されます。
言葉も文化も違う人たちが、870万人もやって来たら、それは混乱が起きるでしょう。
その混乱を和らげるためにしなければならないことは無数にあるはずです。
政府ができることはほんの一部です。痒いところに手が届くような施策は臨むべくもありません。
そこは、民間の役割です。
要するに、それらがすべて新しいビジネスのタネとなります。
少子高齢化に向き合う企業の事例
日経新聞を読むと、人口減少時代にビジネスするにはどうすべきか、という話がやたら多い。
先月の「戦略勉強会」では、そのいくつかをとりあげました。
こちらは、北海道のドラッグストア「サツドラ」が、過疎地で店舗を成立させるために、自治体と組んで、いつでも呼べるバスを運行させる実証実験を始めたという記事です。
こちらは、カラオケ機器の第一興商が、コロナ禍にもかかわらず、高齢者向けカラオケを伸ばしているという記事です。
まあ、どちらかというと、こんなこともやってますよというアピール記事ですから、このビジネスで成功したという景気のいいものではありませんが、こうした工夫は見習うべきでしょう。
自分だけの小さな隙間を見つける
社会が動く時には、無数の隙間が生まれます。
人口減少というのは、まさにこれから社会が激しく動く最大の要因です。これを捉えずして、いったいどんなビジネスをするというのでしょうか。
しかも創業者は、上のような大手企業と違って、固定費が少ないですから、遥かに小さな売上でも黒字にすることができます。
つまり、小さな隙間でビジネスを成立させるのは、既存の企業よりも創業者が圧倒的に有利だということです。
社会起業だとかSDGsだとか、大上段に構える必要はありませんよ。
常に、儲かるビジネスは、社会のニーズに則したものです。ビジネスを立ち上げ、維持することこそが、社会の問題に向き合っているという証左です。
普段の生活や仕事をする上で、不便なこと、不満なこと、困っていること、必要なことを見ていると、自分だけの小さな隙間が見つけられるはずです。