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メモ。小さな酒蔵さんの逆張り戦略。要するに弱者の戦略です。
その中で異彩を放つのが、『醸し人九平次』(萬乗醸造)だ。ワインを思わせる瓶のデザインや、『human』『黒田庄に生まれて、』など印象的な名前をとっかかりに、白ワインのような繊細な飲み口と味わいで人気を博している。しかも、生産量が年間約15万本と人気の割に少なく、地元の愛知県・名古屋市でも購入に本数制限がかかるほどだ。

日本酒らしくない味、意匠、ネーミング、限定生産。

これだけで弱者としての覚悟がありありです。

大胆な逆張り戦略

この萬乗醸造。創業は1647年。ところが1980年代には、大手酒造の下請け製造をする典型的な地方の小さな酒蔵となっていました。

それを引き継いだ現社長が、生き残るために大胆な逆張り戦略に舵を切りました。

なにしろ、
「20年ごとに世の中は大きく振れ動くという考えのもとで、その流れに対してアンチでいようと意識しています。今であれば、フリー、バーチャル、二次元という大きな流れがあり、それに対しての限定感、リアル、三次元です」

なんてことを言う人です。覚悟が違います。しぶとく生き残る会社にはこういう覚悟を持った社長がいるものだなあと何人かの顔を思い浮かべました。

要するに、典型的な「弱者の戦略」

戦略の中身は、実に典型的な弱者の戦略です。

差別化された製品(素材へのこだわり。手作り。玄人受けする味)、限定生産、海外での評価。

大手企業の行うようなマーケティングやCMに背を向ける姿勢を見せていますが、狙いが地酒チャネルでの定着ですから、そんなものは必要ありません。

科書通りといってもいいでしょう。

ただそれをやりきる覚悟を持つ人は多くはありません。

逆張りなんて、勇気がいりますからね。

物語を作る才能

もう一つ。この方、物語をつくる才能に恵まれています。
「商売人に、政治と宗教の話は御法度ですが……。儲けるという漢字は“つくり”と“へん”に分けると『信者』とも読むなと思いつつ、信者につきものの『教祖に必要なことは何か』を考えた。その結果、3つのことに行きつきました。1つ目は、信じてくれた人を裏切らないこと。2つ目は、奇跡を起こすこと。3つ目は、未来を伝えることです」
カリスマ性のある経営者は、こういう物語づくりがうまい。すごいなーと思っていたら、この方、演劇をやっていた方だったんですね。

参考:萬乗醸造・久野社長 世界が酔いしれる日本酒 ポジション確立へ止めない“進化” 

さもありなん。